細胞に無理をさせない生き方で、死ぬまで元気に!

鍵は「自律神経」と 「ミトコンドリア」

新潟大学名誉教授 安保徹先生

健康はもとより存在する。 ──その存在を、生かすも殺すも、己の生き方次第

 安保徹先生は、長い免疫研究の中で、「生命体は自分自身では失敗しない」ことを強く実感され、免疫力を向上し、"死ぬまで元気”を実現する鍵は「白血球に対する自律神経によるコントロール」にあることを見出されました(本誌2001年10月号に掲載)。
 安保先生はその後、"死ぬまで元気”を実現するには、自律神経系と同時に、ミトコンドリア系の元気の維持が非常に重要になり、その要諦は、「無理をしない」ことにあると見抜かれました。
 安保先生は著書『大往生できる生き方 できない生き方』(PHP文庫・税抜533円)で、
「大まかにいってしまえば、ほとんどの病気は体に大きな負担がかかることで起こります。昔から「無理をすると体をこわす」という言葉はごく自然に私たちの生活を律してきました。しかし、病気になっても西洋医学によってすぐに治せるという一種の万能観が広く行き渡るようになってからは、この言葉の重みが次第に失われていきました。」
「でも、「無理をすると病気になる」という生活の知恵の裏づけが科学的に示され、具体的なメカニズムが解明されれば話は別です。」
 それには、細胞内で生命体のエネルギーをつくり出している「ミトコンドリア」と、白血球の活動をコントロールする「自律神経」の、二つの生命現象の基本メカニズムをよく理解することが大事だと安保先生は述べられています。
 「白血球に対する自律神経によるコントロール」のお話を伺って丸12年となる本号で改めて、"死ぬまで元気に生きる”生き方をお話ししていただきました。

治癒力を発揮できる体作り    鍵は「自律神経」と      「ミトコンドリア」
 自律神経は   健康のコンダクター   ──自律神経の白血球支配

安保 現代医学の治療は、各部位の狭い範囲での接近手法、すなわち対症療法をとっています。大きく捉えると、遺伝子治療も、臓器移植も対症療法といえるかもしれません。しかし、体はそれでは修復しきれない、統合的なメカニズムをもっています。そうした体のメカニズムを、私はこれまで「自律神経と白血球の法則」で説明してきました。
 生きているときの健康をつかさどっているのは、交感神経と副交感神経の二系統からなる自律神経です。多くの病気には「白血球の働きが自律神経によってコントロールされている」という共通のメカニズムが関係し、白血球がバランスよく働いていれば病気になりにくく、そのためには自律神経がバランスよく働いていなければならないのです(図1・表1)。
 ほとんどの病気は体に大きな負担、すなわち、無理をかけることで起こります。では「無理」とは何か。簡単にいうと、自律神経のうちの交感神経の緊張が長く続いた状態です。
 体を酷使したり、過剰にストレスがかかると交感神経が緊張し、交感神経が緊張すると筋緊張が起こり、筋緊張が起きると血流が悪くなり、血流が悪くなると低体温になり、免疫力も低下します。このように、交感神経の緊張が続くと、先ず病気の下地がつくられ、さらに、交感神経優位の状態が続くと、血圧や血糖が恒常的に上がりやすくなり、食事などの生活習慣とあいまって、高血圧症や糖尿病を引き起こします。
 さらに、交感神経の緊張で増え続ける白血球の顆粒球(交感神経が放出するノルアドレナリンやアドレナリンが骨髄を刺激してつくる白血球)が直接、体を傷めつけます。
 顆粒球は活性酸素を武器に細菌などの外敵を攻撃しますから、顆粒球が必要以上に増えると、活性酸素も過剰に増え、顆粒球は悪者と化し、悪者と化した顆粒球は、普段ならほとんど攻撃しない粘膜の常在菌を過剰に攻撃して炎症を引き起こします。胃潰瘍や十二指腸潰瘍、歯周病、クローン病といった潰瘍性の疾患はストレスとの関係が指摘されていますが、これはストレスが顆粒球の増加を促す──というメカニズムで発症していたわけです。
 一方、リラックスすると副交感神経が優位になり、血流がよくなり、体が温かくなってきます(表2)。
 副交感神経が興奮するとアセチルコリンが放出され、リンパ球が活性化したり、増加します。リンパ球(NK細胞・B細胞・T細胞など)は、ウイルスなどの外敵(抗原)に対して抗体をつくり、その抗体をつかって攻撃する白血球で、がん細胞などを攻撃するのもこのリンパ球です。
 しかし、リンパ球が増えすぎると、外界の刺激に過敏に反応しすぎて、普通なら悪さをしない物質に対しても抗体ができ、それらを異物として排除しようとするアレルギー反応が起こります。さらに、常に副交感神経が優位だと、逆に血管が広がりすぎて血流が悪くなり、結果的には、低体温、免疫低下という流れになり、やはり、病気の素地ができてしまいます。
 つまり、人間は無理をしすぎても、楽をしすぎても病気になる。元気で長生きするためには、副交感神経がやや優位な状態がベストなのです(図1、表1・2)。
 交感神経緊張のデメリットはさらに、生命現象の要ともいえるミトコンドリアのはたらきを抑制することです。交感神経の緊張状態によって血流障害が起こると、細胞は酸欠状態になり、そうすると、細胞内で酸素をつかってエネルギーをつくっているミトコンドリアの機能が抑制されてしまうわけです。

生命現象の要  「ミトコンドリア」の活性化  ──がんもメタボも 認知症も関連

安保 ほとんどの病気は無理な生活によって起こる──そのもう一つのメカニズムが、生きるのに不可欠なエネルギーをつくり出している、細胞内の小器官「ミトコンドリア」です。
 過酷な生活が続くと、体がだるくなったり、顔がやつれたり皮膚に張りがなくなったりするのは、エネルギーが十分につくれなくなったり、蛋白質の合成がうまくいかなくなって起こる現象です。
 ミトコンドリアは、細胞の中でエネルギーをつくり出す小器官で、もともとは私たちの先祖が単細胞の細菌のような生物だった頃に、細胞の中に寄生した別の細菌だった生き物です。
 私たちは、20億年前に「解糖系生命体」として、酸素のない世界で、解糖系によってエネルギーを得て、分裂をくり返しながら生きていました。このご先祖細胞は酸素が嫌いで低温が好き、さかんに分裂して増殖する特質をもち、老化を進める要素がないので、不死の生命体です(表3)。
 しかし、シアノバクテリアの出現で、大気中に酸素が放出され、このため、私たちの先祖細胞は生きづらくなっていたのです。
 そこへ、酸素の大好きな「ミトコンドリア生命体」が出現し、ついには私たちの先祖細胞に合体したのです。
 ミトコンドリアは、酸素をつかって、より効率よくエネルギーを生成し、高温が好きで、老化のもととなる活性酸素をエネルギー生成の際に発生させます(表3)。
 このような、まったく異質な二つの生命体が合体するには、折り合いがつくまでに約8億年という長い時間が必要でした。
 もともと、母体の細胞やミトコンドリアの細胞は原核細胞といって、分裂・増殖が主な仕事の原始的な生き物でした。それに対して、8億年かけて完成した新しい細胞は、より高度化した真核細胞で、ここでミトコンドリアは分裂抑制遺伝子をもちこみ、必要なとき以外は分裂させないようにすると同時に、酸素の処理を受けもちます。
 このときから、バランスをとることが生きるために必要になりました。かたや分裂したい、かたや分裂させない、かたや酸素が嫌い、かたや酸素が好き、かたや不死、かたや老化のもとの活性酸素を出す、かたや低温が好き、かたや高温が好き──という、この両者のバランスの上に生きているのが私たちなのです(表3)。
 無理な生き方をして交感神経の緊張状態が続くと、血流が悪くなって低体温、低酸素、高血糖になり、酸素を必要とするミトコンドリアにとっては非常に生きづらい環境となります。こうなると、細胞の内部環境が、解糖系に有利に、ミトコンドリア系に不利になり、ミトコンドリアは本体との折り合いがつけられなくなってしまい、そうすると、分裂抑制遺伝子が機能を停止し、本体の素顔、つまり原核細胞当時の性質が出て、猛烈な勢いで分裂を始めてしまいます。
 分裂促進遺伝子、つまり、がん遺伝子の活性化がそこから始まります。内部環境に適応するために解糖系に先祖返りしたのが、がんだったのです。生きにくい環境の中でさえ、なんとかして生きようとする必死の存在、それががんなのです。そう理解すると、がんを治すには、がん細胞の中で仮死状態に陥っているミトコンドリアが元気を回復するために、体を温めたり、深呼吸をしたりして、低体温と低酸素から脱却すればよいのです。そうすれば、ミトコンドリアの分裂抑制機能が復活し、進行がんでも約7割の人は自然消滅で回復に向かいます(表
4参照)。
 子供時代は、成長(分裂)と瞬発力が主体で、よく食べて生きています。大人は二つの系の調和の時代です。老人になるとミトコンドリア系にシフトし続け、瞬発力は低下しますが持続力は残り、食べる量が少なくてもOKです。
 大人の調和の時代に、怒りや不安があると、交感神経緊張から血管収縮が強まり、低体温と低酸素を招き、解糖系が盛んになり、瞬発力がさらなる怒りを助長し、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病などメタボリックシンドローム関連の疾患が起きやすくなります。この状態が長引くと分裂の世界(がん)に入ります(図2)。
 日本人三大死因の、がん、心臓病、脳卒中も、自律神経のバランスを整え、ミトコンドリアが円滑にはたらいていれば防げるのです。
 お年寄りは、ミトコンドリア主体で生きていますが、ミトコンドリアが一番多い赤筋(持続力に働く遅筋)と脳神経が使えないのが寝たきり老人、認知症老人です。深い呼吸、ほどほどの有酸素運動、好奇心をもって脳を使い続けた人がぼけずにいられるのです。

 自律神経系と  ミトコンドリア系を元気に    大往生を遂げる生き方
 病気は怖くない   ──検査漬け・     薬漬けにならない

安保 病気は怖くない、無理をすれば体を壊し、楽をしすぎれば能力低下で体を壊す──そういう視点で無理と狂いを修正すれば、体は自然に元に戻る力がある。このシンプルな自信が生きるための大前提です。
 血圧の上限基準値は、昔は180、あるいは年齢プラス90、それが私が医学部を卒業した頃には160、さらに150、140となり、今は130が検討されています。降圧剤を出さないと、多くの開業医院が潰れる危険すらあります。しかし、降圧剤は全身の血流を滞らせ、低体温を招いているのです。
 コレステロールも然り。総コレステロール値220mg/dl以上が治療の対象とされてきましたが、脳卒中や心筋梗塞の死亡率が一番低いのは220〜300mg/dlです。コレステロールはミトコンドリア系で代謝しますから、コレステロール降下剤を飲むと、ミトコンドリアの多い部分からダメージを受けることになります。
 働き盛りの人やスポーツマン、活動量の高い人が、血圧やコレステロール値が高いのは、その必要があってのことです。動脈硬化を恐れて血圧やコレステロール低下剤を飲んでいるつもりが、実はそのこと自体が健康を損ねていることに、そろそろ気づいていただきたいものです。
 血圧を日に6回も測定しているという人もいます。しかし、そんなものにぴりぴり一喜一憂するよりも、元気で活発、爽快であるという、体の感性をどうして大切にしないのか。
 私は声が大きいのは血圧が高いからです。常時190で健康です。私が信じている基準値は180ですから別段心配はしていません。大切なのは血圧値よりも血色の良さです。
 人間の体の仕組み、血圧でも、コレステロールでも、免疫でも皆、それぞれの人生、進化の流れを背負って巧妙に調節されています。へたに手出しする世界ではないのです。薬も飲まず、不調を感じたら養生する人、病院嫌いが、長生きする時代に入った感があります。団塊世代に期待するところです。
 検診したグループと検診しないグループを長期に追跡した調査では、検診したグループのほうが発がん率は高い、インフルエンザワクチンで脳炎を起こすケースがある、そういう論文はどこかで必ず遮断されています。それと同じようなことが、いろいろなところで起きています。

無理せず、楽せず、いい食事

安保 今日本は豊かです。豊かさは、過保護、食べすぎ、運動不足をもたらします。この楽すぎる世界で、能力低下が起こり苦しんでいるのです。
 子どもの病気のほとんどは能力低下から来ています。筋肉が発達しないで、骨格の丈夫さが十分でない。姿勢が悪く、能力が低いから疲れる。だから授業を最後まで聞けない。ちょっと傷つく言葉を受けると学校に行けなくなる。自殺する。その弱いまま大人になれば、上司に叱られると会社に行けなくなります。
 こんなふうに、大人は忙しさでからだを壊し、子どもは楽をしすぎて、能力低下で命を絶つという独特の世界になっています。
 無理せず、楽せず、いい食事。これが健康長寿の秘訣です(表5参照)。

 玄米食で少食に ──蛋白質のとりすぎに注意

安保 人間は、最初は解糖系で、年とともにミトコンドリア系になっていきますが、その切り替えはふつうは自然に起こります。
 子どもは解糖系ですから、おやつが必要ですが、エネルギー効率のいいミトコンドリアの世界に入ればおやつ、おやつといわなくなるでしょう。自然に切り替わっていくわけです。
 江戸時代の貝原益軒の『養生訓』は、どうやったら病気にならずに隠居生活を送れるか。理屈はわからずとも、ミトコンドリアの世界の生き方として「腹八分目」が出たわけです。食べすぎるとからだの負担になることを勘が悟らせたのです。
 蛋白質を食事量の10%程度に下げれば、がんや別の大病からも生き延びることができます。厳格な玄米菜食、つまり、肉や魚をほとんど食べない食事がまさにこの蛋白質の割合になっています。真の免疫は、低たんぱく食で発揮されるのです(図3)。
 しかし、がんといった究極の状態以外では、そこまで厳格に蛋白質を制限する必要はないでしょう。私は魚はほぼ毎日、肉もたまに食べています。蛋白質の割合でいえば、15〜20%というところです。厳格な玄米菜食では、長寿ではあっても早めに枯れた感じになります。私はもう少し気迫もほしいし活力も失いたくないので、蛋白質をこの程度まで増やして折り合いをつけているわけです。
 ただし、肉好きの人は要注意。蛋白質の割合がすぐ40%くらいになってしまいます。最近はやりの「低糖質ダイエット」では、肉や脂肪は無制限に食べてよいといっているそうですが、それは百寿者の証を立てた後でいって下さい。
 お米は長い歴史で、安全性が証明されています。健康に長生きできる「長寿食」はやはり、栄養バランスや消化管を長く働かせるという観点から、和食を中心にした食事が一番。主食のご飯を中心にいろいろなものをバランスよく食べる和食は、免疫を向上させる長寿の食事です。
 中でも、主食としておすすめしたいのが玄米(表6参照)。白米は、糠や胚芽といった米の中で一番栄養のある部分を捨ててしまっています。玄米には炭水化物の他に、蛋白質やミネラル、ビタミンB群などといった生命維持に必要な栄養素が多く含まれ、食物繊維は白米の6倍といわれます。ある研究結果からは、糠の成分にはがん細胞にアポトーシス(細胞の自然死)を起こさせる作用があることが報告されています。
 ただし、玄米にも弱点はあります。玄米は種子そのものなので、身を守る植物の知恵として動物にたくさん食べられないように多少の毒素(主にフィチン酸、アブシジン酸)が入っています。玄米ばかり食べていると少しやつれたり、人によってはお腹の調子が悪くなったり、色素沈着が起こって色黒になることもあります。ですから、私は厳格な玄米食はせず、玄米を白米と混ぜたり、五分づきや七分づきのご飯を食べるようにしています。

 体の声をよく聞きながら    5つの食品で健康作り

安保 自律神経のバランスをよくし、ミトコンドリアを活性化してくれる以下の5食品の特徴をよく理解すると、どのような食品を選べばよいかはすぐに把握できます。
@「丸ごと食品」 玄米・大豆・小魚・小えび・ごま・くるみなど、食べ物を丸ごととる。野菜や果物、魚などの皮には機能性成分や食物繊維が豊富で、丸ごと食べられる食品は、動植物がもつ生命維持に欠かせないさまざまな栄養素をバランスよく、無駄なくとれます。できるだけ農薬や添加物などの心配が少ない食品を選び、素材のよさを活かした調理法でいただきます。
A「発酵食品」 味噌・納豆・漬物・チーズ・ヨーグルトなど、麹菌や乳酸菌がもたらす旨味と健康効果は高く、食品が本来もっている栄養素をより消化しやすい状態に変化させ、その変化によってうまみが増すのです。注意したいのは、本物の醸造、発酵過程を経たものを選ぶこと。
B「食物繊維が多い食品」 きのこ・海藻・いも・根菜など、食物繊維が豊富に含まれている食品は、腸内環境を改善し、噛みごたえや腹ごたえがよいので肥満予防にも効果的です。ちなみに、食物繊維の多い野菜は、ミトコンドリアの「細胞呼吸(酸素伝達系)」を助けるカリウム40をたくさん含んでいます。
C「イヤイヤ食品」 酸味・苦味・辛味などある、酢、レモン、ねぎ、しょうが、唐辛子、ゴーヤなど、独特の風味をもつ食品は、排泄を促し、副交感神経が優位になって免疫力がアップします。ただし、食べすぎると反動で交感神経が優位になってしまうこともあるので、少量、適量摂取を心がけます。
D「体を温める食品」 しょうが・ねぎ・こしょう・唐辛子・えびなどは、体を温め、免疫力をアップさせます。体内の酵素活性は体内深部温度37・2度で活性化します。ミトコンドリアも然りです。自律神経のバランスを整え、ミトコンドリアを活性化するには、体を温める作用のある食品を意識してとります。なお、普段から冷たい飲食物をとる習慣は体を冷やしてしまいます。

 献立のポイントは、「〜ねばならない」と思わないこと。

 健康的な体作りのために、私は玄米食をすすめていますが、白米がいけないわけではありません。肉や砂糖なども同様です。「体によい」と同じものばかりを食べ続けるのは、かえって体によくない場合もあります。
 大切なのは、体の内なる声に耳を傾けること。「お腹がすいた」、「水が飲みたい」、「酸っぱいものが食べたい」など、体はその時々で必要なものを摂取できるようにサインを出しています。そのサインを見逃さないのが最も大事です。
 「丸ごと食品」「発酵食品」「食物繊維が多い食品」「イヤイヤ食品」「体を温める食品」をしっかりと食べるようになると、次第に体の声が聞きとれるようになってきます。体からの声に耳をすませながら、季節などに応じていろいろな食品を食べるようにします。

 元気な長生きに欠かせない   「早寝早起き」と        「適度な運動」

安保 睡眠は免疫力を左右する大切なものです。睡眠時間の長さと共に、時間帯も大切です。
 早寝早起きは、自律神経の日内変化(日中は交感神経優位、夜は副交感神経優位になる)と睡眠をうまく連動させてくれます。逆に夜ふかしは自律神経のリズムを崩し、免疫力に悪影響を及ぼします。
 私が実践している「日の出起床法」は、夜9時には就寝し日の出と共に起きる方法です。こうすると、日の出の早い夏は約7時間、日の出が遅い冬は約9時間という絶妙な睡眠時間が得られます。気温が高く気圧が低い夏は体にとってあまり過酷ではないので少なめの睡眠でやっていけます。一方、気温が低く気圧が高い冬は生物にとっては過酷な季節であるため、睡眠は長めに必要だからです。
 適度に体を動かすことは、長生きの秘訣です。体を動かすと血流がよくなって体が温まり、同時に、筋肉が動いて熱を発生させることにもなります。
 エネルギーの多くは食べ物からつくられますが、筋肉を動かすことでも熱は発生します。筋肉を動かすことは、熱を発生させると同時に、体の中に熱源をつくることにもなるわけです。筋肉を鍛えることは将来の寝たきり防止にもつながります。
 ミトコンドリアを強くするには、たっぷりの酸素と適度な運動の習慣が必要です。外に出てゆっくりと深呼吸をする。深呼吸したくなるような緑豊かな自然の中で、見えない栄養の「日光」もとりこめば最高です。
 今の暮らしは、体を使うことなく楽に便利になっていますが、昔の暮らし方を取りこんでみるのもいいと思います。私は雑巾がけをします。体が温まり、喜んでいるのを感じます。母親のことを思いだしたりもします。
 体を温めると免疫力がアップするので、適度な運動は「死ぬまで元気に生きる」ためには欠かせません。一番の運動は強制されない「気ままな野良仕事」だと思いますが、なかなかそういうわけにもいかないので、簡単にできる体操を覚えて日課にするのがいいでしょう。