アプライドキネシオロジーを使って、筋肉のバランスを調べ、その不調や痛みをとる話
NPO法人 日本キネシオン協会 吉冨賢一理事長
筋機能調整療法(DKS ダイナミック・キネシオ・シナジー) の開発
NPO法人 日本キネシオン協会 吉冨賢一理事長は、東京オリンピック(1963年)の翌年に、ボクシングでメキシコオリンピックの強化選手に選ばれ、特訓中、医師も驚く激しい椎間板ヘルニアになりました。種々な療法を試みましたが、社会に出てからも痛みは残りました。
手術をせず治す方法はないものかと東洋医学(良導絡医学)や、筋肉応用機能学(アプライドキネシオロジー)の研究を行い、ゲルマニウム粒で身体全体のバランスをとり痛みを和らげる方法「筋機能調整療法(DKS)」を開発されました。
キネシオンとは
──先生が提唱しておられるキネシオンというのは、いわゆる筋肉機能学といわれるキネシオロジーと関係があるのですね?
吉冨 はい。筋肉応用機能学というアプライドキネシオロジーから出発して、ゲルマニウム半導体の持つ電位調整を活用して、痛みを取り自然治癒に導く工夫をした療法を目指しているんです。キネシオとイオンの合成語でキネシオンです。
──それはわかりやすい言葉になりましたね。痛みがあるとストレスのもとになりますから、その悩みが解決されるというのは良いですね。
アームテストと オーリングテスト
吉冨 アプライドキネシオロジーの手法をアームテストというやり方で使いまして、筋肉や臓器の異常が探り出されて、自然と治ってしまう工夫をしています。
──アプライドキネシオロジーというのは、害がなく誰でも簡単に使える手法として知られていますが、実に深い哲理が背後で支えているように見えるのですが。大村先生が広げられているオーリングも根っこが一緒のように見えますが。
吉冨 大村先生のオーリングテストは、医学に応用されたものは医師のような医学の資格がある人でないと使えないような高度な知識で支えられている程度の高いものですが、大村先生は、一方で、その原理を生かして普通の人が生活レベルでも使える範囲でも公開しておられます。
私どもは大村先生の学会とも協力関係にあります。もともとは大村先生のオーリングテストもアメリカでグッドハート博士が1970年代の初期に発表された母指対立筋を使ったキネシオロジーの講義を、アメリカにおられた大村先生が聞きに行かれて学ばれたものが元になっているのですね。これは被検者の親指と人差し指でOの字をつくり、これをオーリングというのですが、それを検者が両手の親指と人差し指でそれぞれオーリングをつくって、それで被検者のオーリングを広げようと力を加えたときの被検者の抵抗力を調べる方法です。
例えば、被検者の空いている方の手に体に良くないタバコなどを持たせると被検者のオーリングはスッと開きます。タバコは体に良くないものとみんな知っているので今更調べなくても良いのですが、被検者にタバコとわからないように封筒に入れてテストしても、スッと開くのです。封筒にその人に合うかどうかわからないサプリメントを入れてテストすると、堅く閉まればその人の体に合う、スッと開けばその人の体に合わないと判定できます。
調べたいものが、体に合っていれば母指対立筋に力が入りますし、体に合わないものであれば、その力がスッと抜けるのですね。その事象をもとにいろんなことがわかるし応用も利くのです。
メキシコオリンピックのボクシング強化選手に選ばれた私は、宮崎でのロードワーク中に激しい椎間板ヘルニアになってしまい、それを治そうといろんなことをやった中でカイロプラクティックを学ぶ機会があり、そのご縁でアプライドキネシオロジーを勉強し、その応用として母指対立筋の指ではなく、片腕を真横とか前にあげて伸ばして、それに手首のところで検者が軽く力を加えて抵抗できない、または抵抗できるかで調べるやり方です(図1)。これだと、片手でできて便利なので、更にいろいろ自分なりに工夫してアームテストと名付けて自分
でも使い、特に医学の資格がない人でも、関心のある方々にはお教えしています。このテストは二人一組でやります。一人は被検者として、床に平行に片腕を横か前に伸ばします。伸ばされた被検者の腕の手首のところを、検者は下に押しながら「抵抗してください」といいます。そして被検者は、検者の下方にかけられた圧力に抵抗します。
アプライドキネシオロジー
──アプライドキネシオロジーというのは、そもそもどういうものなのですか?
吉冨 1970年代の初期に、アメリカのミシガン州のジョージ・グッドハート博士らが豊富な臨床体験で得られたマッスル(筋肉)テストの技術を発表したもので、「それぞれの筋肉の強さ、あるいは衰弱は、筋肉に特定な対応をする臓器の健康状態や病状に密接に関連している」という発見です。そして、それぞれの筋肉は鍼灸でいうところの経絡に関係していることも見出したのです。
アプライドキネシオロジーでの発見として、体が有害な刺激にさらされると、筋肉は即座に弱くなること、逆に体に良いものを摂取すると、筋肉は即座に強くなることがまず第一にあげられます。
そして調べる筋肉の衰弱は、それに対応する臓器の弱りを示すので、アプライドキネシオロジーは疾病を見つける上でとても役立つ方法であり、信頼できる診断テクニックという評価を獲得してきたのです。
栄養障害の検出や投薬の反応もわかるということもあり、様々な応用が利くことが次第に明らかになってきたのです。このテストは迅速に、かつ、簡単に実行でき、再現性も良いので科学的といえるわけです。
被検者が何も知らされずにテストされても、筋肉は同じ反応をすることもわかりました。
例えば、番号だけ書いてある封筒に様々な物質を入れてテストしても、つまり顕在意識が気づかずとも、筋肉は正確に反応することもわかりました。こんなこともありました。千人のうち五百人に人工甘味料を入れた封筒を渡し、残りの五百人に有機ビタミンCを入れた別の封筒を配り、二人ずつ組にして代わる代わるテストしたところ、全員が人工甘味料には弱く、有機ビタミンCには強く反応したことが封筒を開けたときわかったのです。
このようなデモンストレーションを通じてこのキネシオロジーテストは市民権を獲得してきたのです。
痛みの解決!!
吉冨 私は、それは酷い椎間板ヘルニアに泣かされたので、この技術を応用して「痛み」の解決に使うことを思いついたのです。
「肩が痛い」「膝が痛い」「腰が痛い」などの訴えの原因は「機能低下した筋肉や臓器がもたらしたバランスの乱れにある」と考えて、その筋肉や臓器をキネシオロジーテストで的確に特定し、そこにゲルマニウム粒を用いて機能を回復させると痛みも瞬時に消失することを見つけたのです。
まず筋力のバランスですが、運動、骨格の支持、姿勢の保持、重力バランスの調整などは全て筋肉の活動によるものです。そして全ての動作は一つの筋肉が行っているのではなく、指を一本曲げるにしても、ただ立っているだけでも、必ずいくつかの筋肉が協調して働いています。
私たちの体では骨を支える左右・上下・前後の筋肉が「拮抗・協調」して働いているのですが、この骨格筋の「筋力バランス」が乱れると、過緊張側と弱化側が現れ、骨の歪みが起こり、この乱れが長期に及ぶと「腰椎ヘルニア」「側湾」「脊柱すべり」「変形性関節症」「五十肩」なども起こるようになります。
一般的によく行われている療法では、コリやハリのある側を弛めて「痛みを緩和」させたり、「バランス」をとろうとするものが殆どですが、私どもは過緊張側ではなく、拮抗している弱化側、つまり弛緩したり機能が低下している筋肉の方に問題があるとして、弱化した筋力を正常化し、全身の筋力バランスを回復させることを第一に考えています。
中でも、体の要になっている腰の筋肉・大腰筋の筋力バランスを重視しています(図2参照)。このバランスが回復すると小胸筋のバランスもとれ、梨状筋やふくらはぎの筋力の乱れも整います。身体全体の筋力バランスの中心を担っている大腰筋のチェックはとても大事になります。
生体反応ポイントを チェック
吉冨 身体活動は全て電気現象で起こります。
人の体は60兆もの細胞でできているといわれますが、この一つ一つの細胞は4万個ないし6万個の元素からなっています。
こう考えると、細胞一つ一つが電子の集合体であり、細胞で形成される身体は巨大な電子ネットワークシステムと見ることもできます。
インパルスとイオン
吉冨 脳での思考・運動・感覚・触圧覚・温度覚・痛覚などは、神経の興奮=活動電気=インパルスの発生によって、体液や細胞液の濃度などは膜電位によってもたらされています。全てが電気現象によってもたらされるものです。「イオンチャンネル」といわれる電位の差による受動拡散運動が起こり電気現象が発生しています。その拡散によって移動しているのが、人体に溶け込んだ電解質のイオンです。特に筋肉の活動に重要なイオンは「ナトリウムイオン」「カリウムイオン」「カルシウムイオン」です。
内因性発痛物質
吉冨 細胞が傷つくと「内因性発痛物質」が発生し、それを「侵害受容器」というセンサーが感知するとインパルスを発生させます。そのインパルスが電気ネットワークにより脳まで到達し、脳は「痛み」として認識しています。
つまり痛みとはその箇所で内因性発痛物質が発生しているということです。特定臓器の異常は体表部分に痛み=「放散痛」として感じることもあります。内因性発痛物質の多くはプラスイオンを帯びているので、異常が生じた筋肉・内臓・関節などにはプラスイオンが停滞していることが多いのです。
東洋医学では内臓の「氣」エネルギーと対応する体表の反応ポイントを「経穴」とか「ツボ」と呼び、これが生体電導で連なった「経絡」という身体ネットワークをつくっています。異常筋肉・異常臓器は「プラス電気状態=機能低下状態」であり、反応ポイントも「プラス電気状態」になっているので、これを中和すると異常器官も正常な機能を回復すると考えています。
ゲルマニウム
吉冨 ゲルマニウムの粒を皮膚の反応点(図3)に貼るとウソのように痛みが消えることが多いのです。これは、鍼治療法の一つ、良導絡が初期の時代、トランジスターを使って痛みをコントロールしていたのにヒントをいただいて、半導体の性質を持つゲルマニウムの粒を体表に貼るのですが、痛みをよく中和して消してしまうことに気がついたのです。ゲルマニウムは、体温程度の温度で活性化し、マイナスの自由電子を持つ良質のものでないと駄目なのですが、これを傷ついてプラス電気を持つ筋肉や内臓に対応する皮膚、ここもプラス電気を帯びて
いるのですが、ここに貼ると、「プラスイオン」を中和してくれるのです。
「痛いと動かせない」→「動かせないと痛み物質のプラスイオンが停滞する」→「痛みの増加」だったのが「プラスイオンの中和」→「動かせる」→「痛みの緩和」が図れるわけです。「プラスイオンの停滞」は筋肉や内臓の機能低下状態を生んでいますので、良質ゲルマニウムを皮膚に貼ってプラスイオンを中和することで機能の回復を図ります。
──良質というのは?
吉冨 純度が驚異的に高い半導体ゲルマニウムを、レンズのように磨き上げています。貼付シールのノリでかぶれた人はまれにありましたが、今までの37年の歴史で金属アレルギーというのはありません。
機能低下した器官をアプライドキネシオロジーで的確に特定し、プラスイオンを中和することで、筋力バランスを整えると痛みは治まり、あとは自然治癒力で自然と回復していくことが多いのです。経験による手触りや観察も大事ですが、アームテストと命名した肩の三角筋を使ったアプライドキネシオロジーでポイントを選定し、効果の判定もできるというのが私どもの特徴で、いささかの誇りを持ってダイナミック・キネシオ・シナジー(動的な筋肉運動機能制御効果=略称DKS)と名乗らせていただいております。高度保健福祉医療を踏まえた東
西共生医療=統合医療目指して今後とも精進して参りたいと念じております。
──どうぞ引き続き頑張ってください。