脳幹を活性化する「オルゴール療法」は根本的治療になり得るか

その2 オルゴール療法の実践と改善症例

日本オルゴール療法研究所所長 佐伯吉捷先生

 佐伯吉捷・日本オルゴール療法研究所所長が世界で初めて編み出した「オルゴール療法」は、オルゴールの響きにより、生命活動の根幹を司る「脳幹」を正し、心身の恒常性を取り戻すという根本的な療法です。
 薬は使わずに、人間本来が持つ自然治癒力を引き出すことで心身の異常を正していくオルゴール療法では、心身のあらゆる不調が改善され、がんやメタボなどの生活習慣病から、難病、精神疾患まで多岐に渡る改善例が続出。今では大病院を始め、多くの医療機関でも採用され、それぞれ成果を挙げています。
 本誌今月号では、先月号「オルゴール療法の原理とメカニズム」に引き続いて、オルゴール療法その2として「オルゴール療法の実践と改善症例」を紹介します。

オルゴール療法の実践 なぜ72弁以上の スイスオルゴールなのか

佐伯 1975年に「スイスオルゴール」の音色に魅せられて以来、全国で1万回以上ものオルゴールコンサートを開催してきた中で「高血圧が良くなった」「耳鳴りが消えた」「血圧が安定した」「うつ病が治った」──等の体験が出始めました。
 なぜそんなことが起こったのか。答えのヒントは1995年、旧文部省と京都大学の共同研究による「人の耳には聞こえない高周波と低周波を含む音楽は、脳幹の血流を促進する」という報告にありました。(人が聞くことのできる可聴域は20〜2万Hz。20 Hz以下は低周波、2万Hz以上の音を高周波と呼ぶ)
 私はオルゴールの健康効果はこれではないかと確信し、阪大の協力で72弁以上のスイスオルゴールの周波数を測定したところ、3・75Hz(ヘルツ)という超低周波から10万2千Hzという超高周波まで出ていることが判明したのです。
 私はこの結果から、スイスオルゴールの響きは、脳幹の血流を促し、それによって、脳幹が司っている自律神経の機能が正され、人間が本来持っている自然治癒力、免疫力が高められ、あらゆる不調が改善する──というオルゴール療法の原理を導きました。
──なぜスイス製のオルゴールなのですか。
佐伯 私どもではスイス・リュージュ社に特注した療法用オルゴールを、さらに日本で再調整して用いています。
 200年もの伝統を持つスイスオルゴールは、金属の堅さ、重さ、木の材質、調律法の大きな違い──など、職人達の高い技術と音を見分ける優れた感性が創り上げたものです。
 スイスオルゴールの美しい音色、テンポをゆっくりさせる機構、
ハガネの鋭い音、木の響きのまろやかさ、優れた調律法などの特性が、脳に良い影響を与えているのは大きいと思います。
──72弁以上のオルゴールでないと効果はないのですか。
佐伯 オルゴールは弁が多いほど重なる音、即ち「倍音(表1)」が伴い、倍音によって超高周波から超低周波まで幅広い周波数が出現します。
 72弁以上のオルゴールは5オクターブの音域を持ち、これにより3・75〜10万Hz超という幅広い周波数が出現するのです。
 私どもでは、副交感神経を優位にするには72弁のシリンダーオルゴール、交感神経を刺激するには144弁のシリンダーオルゴール、もしくは大型のディスクオルゴールを用いています。
──音楽でないといけないのですか。
佐伯 ガラスや金属を叩いても高周波が出ますが、高・低周波だけでは脳幹の血流量は変わらないことが京大と文部省の共同研究でわかっています。
 すなわち、可聴域の中位の周波数帯(中周波)も大切なのです。豊かな音楽や、大自然の様々な音が奏でる響きは、バランスがとれ、ハーモニー(調和・共鳴)が存在します。それもとても大切だということですね。
 ちなみに、単一の楽器で、高〜低周波まで幅広い周波数を持つものはオルゴールの他にはありません。オルゴールと同じような豊富な周波数を体験するには、奥深い森の中で自然の様々な音が聞こえている状態、弦楽四重奏やオーケストラのように複数の楽器が同時演奏される状況しかないのです。

オルゴール療法の実際 ──生の音の響きを、 共鳴箱・身体を通して ──実際にはどのように聞くのですか。

佐伯 オルゴール療法では、スイスオルゴールを共鳴箱(4頁写真)の上、または中に入れて聞きます。共鳴箱を用いるのは、音の強度を高め、高・低周波をバランスよく増やし、空気伝導音だけではなく、固体(骨)伝導(表2)をも可能にして、脳(脳幹)への刺激を十分にし、より高い効果を得るためです。
 音の響きは空気伝導だけでなく、骨伝導を通しても伝わり、骨伝導は空気伝導の約30倍もの伝導力を持っています。オルゴールを直接、手や頬、皮膚や筋肉に接触させると、響きが骨伝導を通して確かめられます(図1)。ですから、音の聞こえない方でもオルゴール療法は効果が見られるのです。
 オルゴールの音を電気的に録音・再生したCDやテープでは脳幹に届きません。電気再生音には高・低周波が含まれていないからです。また、生の音には周波数とは別に、体感する音の力が違うなど、未解明な部分で様々な可能性を秘めていると思います。
──聞く時間はどのくらいですか。
佐伯 症状にもよりますが、基本的にはヒーリングルームで1時間半、自宅で1時間、さらに食後に20分、就寝前に1時間が標準です。
 とにかく1ヶ月は続けてみてください。

基本となる音楽 『カノン』・『ラ・カンパネッラ』

──オルゴール療法に適した音楽というものはありますか。
佐伯 やはり最適な音楽というものはあります。
 私どもでは長年、オルゴール療法に最適の音楽を追求し、高血圧に効果のある音楽、ストレス解消に効果のある音楽、ダイエットや胎教に最適の音楽等々、いろんなメニューを開発してきました。
 中でも、どんな症状にも効果的なパッヘルベルの『カノン』(72弁)は、基本としてすすめています。
 この曲の最大の特徴でメリットは、「くり返し」です。しだいに遅くなるというオルゴールの特性とあいまって、カノンはオルゴール療法のために生まれた音楽といっても過言ではないでしょう。
 カノンの下降旋律は心を落ち着かせ、重厚な低音は心拍を整えます。関西大学保健管理センター所長の飯田教授のデータでは、カノンを聞くと、優位になっている交感神経が沈静化し、副交感神経優位に変わることが観察できます(図2)。
 また、144弁の『ラ・カンパネッラ』(パガニーニ作曲・リスト編曲)は、繰り返される鐘の音が交感神経を刺激すると同時に、オルゴールに布をいっぱい巻いて大人しい音にすると、副交感神経が働いてリラクセーションが生まれます。
 ご自宅用に一台だけ購入するなら、パッヘルベルの『カノン』か、使い方によって交感神経と副交感神経の両方を刺激できる『ラ・カンパネッラ』をおすすめします。

脳幹が正されれば どんなトラブルも改善 大自然と同じ音環境が 根治療法として あらゆる不調に対処

佐伯 オルゴール療法の最大の特長は、対処療法ではなく、自己治癒力、免疫力を高めて心身の不調を正す根治療法にあります。ですから、あらゆる病気に対して効果が期待できるのです。
 今、がんをはじめ、難病に指定されている多くの自己免疫疾患、アレルギー性疾患、自律神経失調症──等々の治りにくい病気が増えているのは、現代の生活環境が海や川、原生林など人にとって住みやすい自然環境から遠く隔たったことにより、脳幹の機能を衰えさせ、自律神経が制御できなくなった結果ではないかと私は考えています(図3)。
 人間に最も大切なのは自然環境であり、自然の音が脳に大きな影響力を持っているのであれば、自然の森に存在する音色や響きに相当するオルゴールの響きは、現代の日本人には重要な機能を果たすと思います。
 オルゴール療法では、若い方はピンクの肌になり、高齢の方はリンゴのほっぺになります。私どもでオルゴール療法をヘルプして下さっている83歳の女性は、長い間大阪市の保健師でしたが、オルゴールを聞くと頬が真っ赤になります。頬に赤みがさすということは、内臓の血流も良くなっているということで、全身が良くなるというのは道理なんですね。
 森の中には人の生命、健康に必要な要素がいっぱいあります。けれども、オルゴールには森では得られないものが一つあります。それは、直接当てることができること。オルゴールを頭に当てると、森の全ての響きを聞くことができるのです。

難病も改善! ──科学的検証より先ず実証

佐伯 オルゴールを聞いた途端、難病の人たちが仰天されます。
 健康トラブルを抱えている方は独特の感覚を異常の中から学ぶのか、「今まで使ってたものとは全然違う」、「体の底から湧き上がる」、「血液がサラサラ流れる感じがする」などといわれます。その感覚は私たち健常人にはわかりませんが、透明度の高い音が脳の奥に届いているのではないかと想像しています。
 自己免疫疾患で難病指定の「特発性血小板減少性紫斑病」に苦しんでいる方の事例ですが、通常、血小板は血液1マイクロリットルあたり15〜40万個含まれ、10万個以下になると血小板減少症とされます。その方は血小板が3千まで落ちて危篤となった時にオルゴールを聞いて、11万、14万、16万と上がり、今は19万をずっと維持されています。
 その理由はわかりませんが、ある国立病院でオルゴール療法を採用したいといってきた時に、部門長の先生が「乱暴ないい方だが治れば良い。日本の医学はドイツから入って今でも検証を重視するけれど、1点でも治ればそれを深く掘り下げるフランス医学が先に日本に入っていたら、この療法は最高位に位置したのではないか」といわれました。
 また、アメリカの脳神経学者が来日して「ホームページで見た。すごい。しかし、日本では理解できないだろう。日本の研究は狭すぎるから」といわれました。
 交感神経の興奮を抑え、副交感神経の働きを優位にする『カノン』を枕元に置きますと、響きを繰り返して15分、だんだん遅くなって止まったところでリラクセーションの極致がもたらされ、熟睡できる。熟睡すると血管が拡張し、血液がすみやかに細胞に行き渡り、細胞が元気になり、神経が働き、各臓器のホルモン分泌も盛んになれば当然健康になる──というのが私どもの考えです。 
 そのアメリカの脳神経学者は、私たちのこの考えを、動物実験で科学的に検証するには、その中の一項目を検証するだけでも10年かかるといわれました。
 それを待ってはいられません。「リウマチ」の激痛で苦しんでいる方は大勢います。私たちは激痛を解放してあげることを優先し、たくさんの改善例を挙げ、それを科学者や医学者に広範囲に研究していただいて、検証されていくのを待っているところです。

脳挫傷から認知症まで 脳のトラブルの改善

佐伯 交通事故で「脳挫傷」を引き起こし、全身不随となった男性(26歳)は、1年半のリハビリで辛うじて右手が動く程度だったのが、病室の枕辺で『カノン』をできるだけ聞いて、2週間後には声を立てて笑い、1ヶ月後には話をするまで改善し、2年半後には職業訓練所に入所するまで改善しました。この症例は、日本音楽療法学会と日本ホリスティック医学協会で発表し、複数の医師から「将来、科学的に検証された時に優れた症例の一つとして貴重なものになるだろう」という言葉をいただきました。
 「脳内出血」で左上肢の機能が全廃した男性(50代)は、オルゴールの個別療法とグループ療法に参加して4回目で、直角に曲がっていたひじが柔らかくなり、左手が下に伸び、現在、血圧は正常、視力は1・2、肝臓も腎臓も正常と診断されています。
 「脳梗塞」で左手足の機能障害と言語障害を持つ男性(50代)は、「2月22日初参加。身体から膝まで温かい。気持ちが良い」、「2回目は2月29日。動かない左ひじがビンビンと振動を感じた。血圧は142〜74」、「3回目、初めて左手をテーブルの上に乗せた。目の上がピクピク動く。膝から上半身がすごく温かい。滑舌が良くなった。血圧は132〜74」、「5回目、姿勢がどんどん良くなっている。麻痺した左腕を自力でテーブルに上げることができた」、「36回目、高さ5cmの段差を装具なしで降りられた」──等々、詳細なデータを取りな
がら回復に努め、職場に復帰するなど驚異的な回復を見せています。
 「アルツハイマー病」の男性(80歳)は1ヶ月間オルゴール療法に通い、医師から「アルツハイマー病から抜け出せている」と診断されました。この方はオルゴール療法が始まるとすぐに洋服を脱ぎ出しました。全身の血流が促進され、暑く感じるからでしょう。末梢血管にまで酸素と栄養が運ばれ、血流量を大きく変化させて細胞を活性化させる結果、脳の萎縮が止まり、回復の兆しを見せたと推測。医師によると、「末梢血管まで血流が大きく促進され、細胞を蘇らせることは考えられないことではない。ただし、すぐにそのような状態になるとは信
じられない」というお話でした。
 どのレベルのアルツハイマー病が1ヶ月で改善するのか、検証が急がれます。医師、病院等の専門機関が積極的に取り組んでもらいたいと切に願っています。

子宮筋腫・不妊症・ 高齢初産・逆子・胎教まで

佐伯 「子宮腺筋症」でのたうち回るほどの激痛が、オルゴールを聞くだけできれいに解けました。月経が2週間も続く女性で、赤ちゃんは無理といわれていましたが、オルゴールを聞き始めて昨年双子を出産しました。
 41歳で「高齢初産」を非常に心配されていた女性は、『カノン』を出産前から聞き続け、全く痛みなく出産できました。ご主人は「自然分娩ができた」と喜んでいました。
 面白いのはオルゴールは脳幹に響くので、オルゴールを置く位置で胎児が動くんです。うちの社員が「逆子」でみごもって、オルゴールを下に置いたらひっくり返ったというのですね。
 オルゴールは「胎教」になるんです。電気による再生音は赤ちゃんには届かないことが証明されています。胎教にいいというCDが山ほど売られていますが赤ちゃんの脳幹には届かないと思います。

過敏症からがんまで

佐伯 「過敏症」で苦しんでいる方は大勢こられます。
 過敏症では、電磁波から、紫外線、臭気、農薬、化学建材等々、化学物質過敏症と併合し、「めまい」や「耳鳴り」、「難聴」というような症状が複合して現れます。
 ある女性は「電磁波過敏症」から「乳がん」と「胃がん」まで含めて36通りの症状を抱えて瀕死の状態で担ぎ込まれてきました。数年経った今、全く1点の曇りもないと尼崎の塚口病院で近藤先生が証明されました。
 リンパ球が少ないと、がん細胞を食べていけない。オルゴール療法で白血球が正常値に戻ればがん細胞を食べていけるんですね。

不正姿勢・腰痛・外反母趾

佐伯 脊柱が3cmほど曲がっている「脊柱側湾症」の高齢女性がオルゴールを聞き始めて1ヶ月半、息子さんが「お母さん、真っ直ぐになってる」と叫んだといいます。
 オルゴールを聞いて、「腰痛」が良くなっていくのも、筋肉が柔らかくなり、骨盤がズレたりしているのが良くなってくるからではないかと思います。
 血流が良くなって筋肉が柔らかくなれば、骨も臓器も限りなく正しい位置に戻ると思います。「外反母趾」が「何でこんなに良くなるの?」という体験もあります。

将来は…… 脳幹を刺激するものが 治療の根幹になる

佐伯 オルゴールセラピストで気功整体師の方に「オルゴール療法が将来は中心に座る。足りないところを西洋医学の薬や手術、
東洋医学、カイロや整体の先生たちが補足して正していくというのが僕の将来見えている姿だ」といいましたら、「とても信じられない」といわれました。
 その方が、最近セラピストの会で、「オルゴールの上に曲がった手を置いて30分した時に、手が伸びて力が入り始めたケースに出合った」「佐伯さんのいうことがやっとわかった」と発表しました。
 オルゴールに限りません。脳幹を刺激するものであったら、それは根本療法になり得ると私は思います。しかし、最も簡便で、寝たきりの方にも実践できる方法としては、オルゴール療法に勝るものはないのではないかと思います。