腸をきれいに して、病気になり にくい体づくり

コーヒー洗腸と 玄米菜食の効用

銀座胃腸クリニック院長 林 剛一先生

 胃腸内視鏡の世界的権威、新谷弘実先生の開発された「新谷式大腸内視鏡挿入法」は腸を伸ばさず、"腸を畳んで入れる”という独自の挿入法により、無痛で安全な内視鏡検査が実現されました。
 銀座胃腸クリニック院長の林剛一先生は、新谷弘実先生から「新谷式大腸内視鏡挿入法」を伝授され、以来、年間約2000件以上の大腸内視鏡を手がけられ、早期の胃がんや大腸がんの治療を数多く執刀されています。
 新谷先生は内視鏡外科と同時に、患者さんの食歴、生活習慣を調査。「食生活・生活習慣」が様々な病気や、生活習慣病に大きくかかわってくることに気づかれ、「新谷式健康法」を導き出されました。
 林先生は、新谷先生のもとで、食事や栄養療法やコーヒーエネマ(洗腸)などによる「新谷式健康法」も学ばれ、銀座胃腸クリニックでは人間ドックをはじめ、コーヒーエネマや食事指導など、予防医学にも力を入れています。
 林先生に、健康生活に重要な腸洗浄と食生活について、コーヒーエネマと玄米菜食の効用を中心に、お話ししていただきました。

健康の基本は
「良いものを摂取」
「悪いものを排泄」
新谷弘実先生に学ぶ

──林先生は新谷弘実先生の愛弟子でいらっしゃるそうですね。
林 消化器外科医を務める中で、大腸内視鏡は普通の内視鏡とは違って、クネクネ曲がっていて非常に難しい。そこで10年前にニューヨークで1年間、新谷先生に直接「新谷式大腸内視鏡挿入法」を教えていただき、何とかお墨付きをいただきました。
 同時に、食事療法やコーヒーエネマなどいわゆる「新谷式健康法」も叩き込まれ、とてもよく教えていただきました。
──コーヒー洗腸はもともとゲルソン療法で行われているものですが、新谷式健康法イコール、ゲルソン療法ではありませんね。
林 「ゲルソン療法」は約70年前に、ゲルソン医師が始めた自然療法の一つで、食事・栄養療法などにより、最終的には全身の免疫力を上げるというものです。その一つにコーヒーを使った洗腸があり、新谷先生はそれを高く評価され、取り入れられたわけですね。
 新谷先生ご自身は、世界中の多くの人々の胃や腸を診断される中で、膨大な数の患者さんの食歴や生活習慣のデータをとられ、誤った食生活や生活習慣が、様々な病気を引き起こす要因となることを突き止められ、今の「新谷式健康法」を導き出されました。
 コーヒーエネマはゲルソン療法に由来していますが、あとは新谷先生のオリジナルと理解して良いと思います。
──林先生はそれまで、食事やエネマなど代替療法への興味はなかったのですか。
林 ずっと西洋医学一辺倒できまして、見向きもしませんでした。それでも、手術が成功した後に抗がん剤で免疫を落として亡くなる患者さんも多く見てきましたから、多少の疑問はありました。
 アメリカに行って実際に、肉や卵、乳・乳製品を多く食べている人の腸は汚く、新谷先生の指導通りにされている人の腸は非常にきれいなのを直接目にして、食事の大切さ、和食の素晴らしさに気づきました。 内視鏡目的で留学したわけですが、それ以上の良い経験を得たと思っています。 a
 腸相でわかる健康度
林 私自身日本に帰ってから、内視鏡で年間2000人以上もの患者さんの腸内を診察、治療してきて、人相、手相があるように、腸にも人それぞれの腸相があることに気づきました。
 腸相、すなわち腸内の状態を見るだけで、その人の食生活や健康度がある程度わかります。
 腸相が良いと、腸粘膜がピンク色で柔らかく、宿便がありません(写真1・2)。こういった人は見た目も若く健康的です。
 腸相が悪いと、腸が硬く、大腸のヒダには宿便が残り(写真3・4)、有害物質や毒素が発生して、肌荒れや口臭や体臭、慢性的疲労感など様々な体調不良が出てきます。
 子供の頃はほとんどの人がきれいな腸相を持っていますが、年齢と共に悪い腸相になる人が多い中で、95歳くらいのご老人でも赤ちゃんのような状態を保っている方もいます。
──内視鏡で見なくても、腸相を自己判断する指標はありますか。
林 すぐにお腹が張る、便やオナラが悪臭がする、便秘気味である、下痢気味である、便が黒っぽい、便がコロコロして水に沈む──などは腸内が汚れている人に多く見られる症状で、要注意です。 a
便の停滞・腸の汚れは
万病の元
林 結局、健康の基本は良いものを摂取≠オて、悪いものを早く出す≠アとだと思います。
 現代人の腸内環境は、食生活の欧米化で高蛋白・高脂肪・低食物繊維食になり、農薬や化学肥料、食品添加物などの摂取が増え、さらにストレスも加わって非常に悪くなっています。
 また、口から入った食べ物は通常、12〜24時間前後で便となって排泄されます(図1)。しかし、便が腸内に長く停滞して腸内悪玉菌が増えると、夏場キッチンに生ゴミを放置しているのと同じで、36・5度ある腸内では腐敗が進み、有害物質や毒素(硫化水素、アンモニア、メタン、スカトール、アミン類など)が多量に発生し、腸内環境は悪化していきます(図2)。
 大腸で発生した有害物質や毒素は、大腸粘膜に直接ダメージを与えてポリープやがんの引き金になり、さらに大腸粘膜から吸収されて体内に入り、血液を汚し、血行を阻害し、代謝を悪くして、様々な体調不良や病気を引き起こすことにもなります。
 食欲不振、吐き気、頭痛、めまい、肌荒れ、ニキビ、ジンマシン、肥満、倦怠などのトラブルから、大腸ポリープや大腸がん、前立腺がん、乳がん、潰瘍性大腸炎やクローン病、肝臓や胆のう疾患、動脈硬化や心血管障害、高血圧や脳梗塞、糖尿病、アトピー性皮膚炎など、多くの病気や老化の要因や誘因になることがいわれています。
 大腸粘膜は、大腸で発生した有害物質や毒素以外に、口から入る有害物質、例えば農薬やダイオキシン、食品添加物なども吸収しますから、それらをいかに吸収されないうちに便として早く排泄してしまうかが大切です。

腸を洗浄する
──コーヒーエネマの効用
自然排便を促進し 新陳代謝をスムーズに

林 排泄を促す方法として手っ取り早いのが洗腸、腸を洗うことがあります。それによって、腸内に停滞している便や有毒物質が取り除かれ、腸内環境が良くなり、腸の生理機能が活性化され、自然排便が促され、自然治癒力や免疫力も向上してきます(表1)。
 コーヒーエネマは、水分を流し込んで便を固まらないようにし、腸が自然に膨らんで腸の自然な排便反射(図3)を促すので、腸の運動(蠕動)リズムのトレーニングになります。ひどい便秘で1週間以上出ないという方でも、1日1回定期的に行うと、
腸のリズムや習慣性がつき、2〜3ヶ月から半年も続ければ自然な便意が戻ります。やらない日があっても、その時間になると自然に排便できるようになります。
 下剤は、漢方系を含めてほとんどが刺激性下剤ですので、腸はその刺激に頼って自然な排便反射がなくなってしまいます。薬自体の毒性もあり、それが腸を汚す原因にもなります。コーヒーエネマは副作用もなく、便秘薬から離脱できるという利点もあります。
 毎日きちんと排便がある方でも、腸のヒダや腸壁に汚れや食べかす(食物残滓)、いわゆる宿便が残っている方が多いので、コーヒーエネマを健康法として続けていると、新陳代謝が良くなり、自然と適正体重になり、肌がきれいになり、病気になりにくい体になってきます(表1)。
 健康法以外にも、人工肛門をつけた方など、自然排便ができない排便障害の方は、1日1回行うと、悪臭も出なくなり、急に大便が出てくるようなトラブルもなくなります。

良いものを摂取する
玄米菜食のすすめ

林 自然排便を促すには、エネマだけではなく、同時に規則正しい生活リズムと食事パターンを築き、植物性食品をしっかりとる、良い水をしっかりとることが大事です。現代人は肉類・乳製品など動物性食品の摂取が多く、週に何回も焼き肉を食べに行く人の腸相は、例外なく悪いといってもいいでしょう。
 比率は、植物食85%、動物食15%を目安に(図4)、植物食のうち野菜は30%を目安に生野菜と温野菜をバランス良く、豆類は5%、果物は5〜10%程度で十分です。
 人間は消化酵素や歯や爪の構造から、もともと植物食に向いた消化機能をもち、動物性の蛋白質や脂肪を完全に消化することはできません。また、人間より体温の高い動物の肉を食べると、人間の血はベトベトになってしまうのです。
 動物食は魚介類、それもなるべく小魚中心に、1日100gくらいで十分です。魚も食べすぎると腎臓や肝臓の負担が大きくなり、ミネラルを損失してしまいます。
 主食として理想的なのは、玄米です。玄米には不足する栄養素はないといわれ、特に胚芽と糠には40種類以上の成分が生きて入っています。玄米に多い食物繊維やフィチン酸には、食品添加物や農薬などの化学物質、腸内で作られた多くの毒素や老廃物を体外に排出する働きがあり、便通も良くします。玄米に雑穀(押し麦、アマランス、アワ、ヒエ、キビ、キヌア)を混ぜたご飯はさらにすすめられます。玄米がどうしてもだめな人は、5分搗きなど分搗米にすると良いでしょう。
 野菜はたっぷり。葉菜類、根菜類、海草類、キノコ類をいろいろと組み合わせることで、いろいろな種類のミネラルやビタミン、食物繊維、酵素などを補給することができます。
──先生ご自身も玄米食で、牛乳などは飲まれないのですね。
林 はい。玄米菜食にして、肉はもうほとんど受付けなくなりました。
 牛乳は一切飲みません。妊婦に「たくさんカルシウムをとりなさい」と牛乳摂取を奨励した時期があり、その年代に生まれた子供たちは結構アトピーが多いのです。また、ハーバード大学の研究では、乳・乳製品をとるほど骨粗鬆症が多いと報告され、乳脂肪による害もいわれています。
 腸内細菌叢を良くするのには、ヨーグルトをとるより、十分な食物繊維と、味噌・納豆・漬け物など、日本の伝統的発酵食品を適度にとる方がはるかに健康的な食生活となります。
 そして、@良く噛む、A規則正しい食事時間を守り、夕食は就寝4〜5時間前にすませる、B「腹八分目」で過食しない、Cなるべく間食を避ける──など、体に良い食習慣を守ることが大事です。