がんを治す力は自身の中にある!!
がんになる前より健康で幸せ──ウェラー・ザン・ウェルの実現
NPO法人 ガンの患者学研究所 川竹文夫代表
「千百人集会」から「ガンの患者学ワールド」まで ウェラー・ザン・ウェルをサポート
「がんになる以前より、心身共に健康で幸せな毎日を送ることができるウェラー・ザン・ウェル(Weller Than Well)≠目指さなければ、せっかくがんになった意味がない」と熱く語る川竹文夫さん。
NHKプロデューサー時代に腎臓がんを発病した川竹さんは、発病をきっかけにがん自然退縮≠フ研究を始め、自らのがんを克服。その体験を踏まえて制作したNHKスペシャル『人間はなぜ治るのか』では、食事の改善・心の転換によって生還した末期患者たちが新たな人生を謳歌する姿が大きな感動を呼びました。
1997年にNHKを退職。医者まかせではない、患者主導のがん克服を提唱し、患者による患者のためのボランティア団体「ガンの患者学研究所」を設立。ウェラー・ザン・ウェル実現への支援活動を本格的にスタートさせました。
2003年には、闘病中の千人とがんを克服した百人(実際は124人)の体験交流の集い「千百人集会」を成功させ、多くのがん患者に希望と勇気を与えました。
今年10月には、志を同じくする学者、医師、患者たちが結集する第一回「ガンの患者学ワールド」を開催。同時に、「日本ウェラー・ザン・ウェル学会」が設立されます。
がんを治すためには「いかなる治療法を選択しようとも、心・食事・生活を改めることが不可欠」と説く川竹さんに、ウェラー・ザン・ウェルを実現する方策、日常生活における知恵をうかがいました。
「日本ウェラー・ザン・
ウェル学会」の設立
成功体験に基づいた
教科書作り
〜共通項こそが
完全治癒の法則〜
川竹 私たちがこの10月に設立する「日本ウェラー・ザン・ウェル学会」では、最初の具体的目標として大学医学部で使う医学教科書を作る構想を持っています。
現在使われている教科書は全て死体解剖が出発点になっています。病気は元気な人が何かのはずみでなり、例えばがんになり、さまざまな手を尽くすけれど再発転移をしているうちに、やがて冷たい死体になる。このどんどん下降線になっていくプロセスだけを詳しく解明しています。
がん患者がなぜ治りにくいか。根本はがんは最終的には治らないと思っているからです。だからどんな治療をやっても、闘う前から心が負けた状態になっています。これは精神神経免疫学でいう、最も免疫が下がった状態です。
がんは免疫が下がってきた結果としてがんになったのですから、病気になって真っ先にやるべきは免疫力を上げることです。
ところが治療という名の下に、麻酔で免疫を下げ、臓器を取ってもっと下げ、その上に抗がん剤などでさらに免疫力を下げる。免疫を叩くことを次から次にやって、治るわけがない。結局、がんは治らないという前提で出発しているから治療法も誤るのです。
しかし、治った人から学ぶという前提があれば、がん治療の体系は全部変わるはずです。
私たちが作ろうとしている医学教科書は、死体解剖から始まるのではなく、私たちの言葉でいう「ウェラー・ザン・ウェル」、すなわち、がんになる以前よりも心身共にずっと健康で幸せな人生を実現した人の体験を、各専門分野の諸先生がいろんな角度から科学的に分析をして、体系化しようというものです。
2003年にがんが治った百人が、闘病者千人に体験を語る「千
百人集会」を開きました。その時に参加したがんが治った124人の方は、予想した通り、それぞれがてんでバラバラ、何種類ものことを試み、同じ組合せの人は一人もいませんでした(図1)。
しかし、詳しく見ていくと、全員に共通した要素がある。それが完全治癒の法則だといえると思います。それをあぶり出して、体系化できないかと構想したのが「ウェラー・ザン・ウェル学会」です。
「成功哲学」を編み出したナポレオン・ヒルは20年間をかけて各界の成功者約500人に会い、そこから成功法則を導き出し、30年間かけてそれがどこまで実践的に通用するかという検証を重ね、結局、50年かけて彼なりの「成功哲学」を作りました。
私はその手法を借りて、多くの先生方と患者さんと協力をして「がん完全治癒の法則」を見つけ、死に瀕したところからなぜ治ることができたのか、その理想的なモデルを分析することから始まる教科書を作りたいのです。
絶望コンビの医者と患者。
「自然治癒」の言葉がない
絶望に彩られた教科書
川竹 今の医学は、事業を成功させてお金を儲けようと思った時、倒産ばかりしている人や、一度も成功を味わったことがない人に、学ぶようなものです。
私は築地の国立がんセンターの患者でしたが、がんセンターの総長は歴代何人もがんで亡くなっています。自分たちが日夜粉骨砕身努力し最善の手を尽くしてもほとんどの患者さんが結局は治らない。
治らない患者さんをたくさん見てきた人ががんになったら、自分も治らないと思います。その治らない、治せないと信じている医者のところに、患者が駆け込む。治せないと思っている医者と、治らないと思っている患者がコンビを組んで、がんと闘って勝てるわけがない。これを絶望のコンビと私はいっています。
そして、今の医学教科書はその絶望に彩られているわけです。
自然治癒とか自然治癒力という言葉はがんの教科書にはありません。一方で「創傷治癒」という言葉があります。切り傷はほっといても治る。腕が折れても添え木しておけば治る。そこまでは医者も理解できる。けれど、がんが自然に治るのは理解できない。
病気は気づきであり、 新たな人生の価値を 獲得する恵み
川竹 しかし、さまざまな病気が治るのも、最終的には自然治癒力が治しているわけです。薬やさまざまな治療は後押しすることはあっても、決定的なものではない。最後の鍵を握るのは自然治癒力です。それが働かない限り治らないし、それが働きさえすればさまざまな病気が治るのです。
その言葉が教科書にない。教わってもいないから自然治癒力が信じられない。同時に、原因に目を向けないから、未だにがんの原因はわからず、原因を突き止めるというところも欠落しています。
しかし、治った人は自分がなぜがんになったのか原因を探って、勘なり感性なりでそれをつかみ、どうすれば良いかを自分で選んでいます(図2)。医者はそれすらやっていません。
医者も患者も、「病気は新たな人生の価値を獲得した恵みである」という側面に気づかないまま進むから、原因もわからなければ、生き方も変わらない。食べるものも変わらないし、ライフスタイルも変わらない。どこかでまた再発するかも知れないと思って、ずっとびくびくして暮らしているわけです。これはとっても残念なことです。
原因を理解し、自分の努力でなすべきことをなし、がんを治す。その過程で必ず新しい気づきに出合う。そうすると、がんになる以前よりも、心身共に健康で幸せな人生を送れます。
医者が患者から学ぶ 第一回「患者学ワールド」
川竹 千百人集会の冒頭で私は、「21世紀は人類の歴史が始まって初めて医者が治った患者から学ぶ時代がくる」と挨拶しました。それが「ウェラー・ザン・ウェル学会」の設立によって、具体的に実現できると思っています。
今年10月に開催する第一回「ガンの患者学ワールド」は、医者が患者から学ぶという新しい時代の幕開けを宣言するイベントになると思います(詳細は15頁)。
学者、医師、元患者たちの6人が話をさせていただくのですが、私を含めて3人が元患者で、その一人、近藤町子さんは私のセミナーを聴いて相談に来られ、その時私は「あなたは絶対治りますよ」といいました。セミナーを聴き、さらに『完全治癒の法則』という私のビデオで学んで、着々と実践していたからです。本当に見事に、「悪性リンパ腫4期B」という、現代のがん医療の水準でいえば完全にアウトな状態から生還され、今は年齢には全然見えない若さで、再婚もし、幸せいっぱいという、がんになる前の健康であった時代よりもさらにもっ
と、健康で幸せになっている、ウェラー・ザン・ウェルの一番良いモデルです。こういう人から学ばないといけないのですね。
"治ったさん”と
"これからさん”の交流
「治ったバンク」の力
川竹 第一回「患者学ワールド」が開催される日に、私たちは「治ったバンク」を本格始動します。
「治ったバンク」は、私たちが"治ったさん”と呼んでいるウェラー・ザン・ウェルを実現した治った患者さんに、人材バンクのように登録していただき、"これからさん”と呼んでいる闘病中の患者さんに引き合わせることで、アドバイスや励ましを受けることができるシステムです。例えば、職場の上司との折り合いが悪く、そのストレスでがんになった人がいたら、似たような体験をもつ患者さんに引き合わせるのですね。
一番大きな力になるのは、現実に治った人です。がん患者は皆、「治る」という一言がほしいのです。そして、治った生き証人にこそ、会いたいのですね。
精神神経免疫学では、あらゆる病気の発病と治癒に心が決定的影響力をもっているといいます。がんを克服した人に会うだけで、免疫が上がります。それを皆さんに体験してもらいたいのです。
患者は皆、病院に行く度に医者から、半年後に転移するとか、転移したら治療法がないとか、ホスピス行った方がいいとか、いろんな杭をハートに打ち込まれます。がんと闘う一方で、それ以上のエネルギーを使って、がんに対する誤った絶望的なイメージと闘わなければならない。それを逆転するには尋常な力ではいかない、ものすごい大きな力で一気に押し上げないとダメです。
それにはやはり、治った先輩が肩叩いてくれたり、握手したり、大丈夫だよと、壇上からではなく、膝を付き合わせて1時間でも2時間でも話をしてくれるシステムがあれば一番良いと思うのです。
「がんを治す力は
自分の中にある」
「ウェラー・ザン・ウェル」
私の場合
〜きっかけは腎臓がん〜
川竹 私が肉体的に一番健康だったのは大学入学当時あたりだろうと思います。それからは、下宿生活でだんだん暴飲暴食になり、その勢いで就職し、仕事仕事でメチャクチャになり、今から16年前の1990年、44歳の時に右腎臓がんと診断されました。
当時はNHKプロデューサーとして多忙な毎日を送り、極端な時は1週間の睡眠時間の合計が二桁未満ということもあり、ストレスも多く、仕事のスケジュールを考えていると箸をもつ手が震えてご飯がうまく口に運べないこともありました。
疲れているのは当たり前と思っていましたが、微熱やひどいだるさが続くようになり、ある朝、どんなに頑張っても起きられない。さすがに「これはちょっとおかしい」と思っていた時に、たまたま会社の人間ドックがあり、がんが発見されたんです。
医者にいわれるままに腎臓の全摘手術を受けましたが、昨日まで顔も名前も知らなかった医者という赤の他人に自らの運命を預けてしまった無力感に苦しみました。
手術後、医師から「また元通りの生活に戻れますよ」といわれた一方で「腎臓がんは脳と肺に早く転移する。まあ3年以内だろう」みたいなこともいわれ、その言葉がいつも気になっていました。
その時、広島放送局時代に制作した被爆と発がんの因果関係についての番組を思い出しました。広島や長崎のがん患者には被爆という外的要因がありますが、私をはじめ一般のがん患者には明らかな外的要因はない。そこで初めて、「病気の原因は自分自身の内側にあるのではないか。医師のいう元の生活に戻るのではいけないのではないか」と思い当たり、「医者まかせではいけない」と自覚したのです。
それからは手当たり次第にがんに関する本を読み、独自に勉強する中で、医者に見放されたような末期がんや進行がんから、自分の力で生還した人々の本に出合い、「がんを治す力は自身の中にある!」と確信したのです。
92年に現代医療とは異なる方法でがんから生還した人々を取材し、『人間はなぜ治るのか』という番組を制作し、この番組が今日の活動の出発点となりました。 制作過程でがん克服者の多くが玄米菜食を実践していると知り、私も玄米を食べるようになりました。ビーフシチュー、トンカツ、ビフテキが大好物の肉大好き人間の私が、肉をきっぱりやめ、卵、牛乳・乳製品、魚もやめて、玄米菜食を徹底しました(図3参照)。すると体調がどんどん良くなり、心もどんどん変わって明るくなっていったのです(図4・14頁図7)。
97年に「ガンの患者学研究所」を設立して以降、がん患者さんのウェラー・ザン・ウェルのサポートに専心するようになり、誌の発行やホームページ発信や、講演やセミナーで全国を飛び回り、最近は、全国128万人といわれるがん患者さん全員に、『あなたが治るために』という小冊子を配るのが夢で、それをこの2年間くらいでやろうと頑張っているところです。
忙しさはNHK時代をしのぐほどですが、朝5時起床、夜10時就寝を守り、玄米菜食、適度な運動と、規則正しい生活を送り、心身の健康度は病気になる前よりもはるかにレベルアップしています(図4)。
日本では増え続けるがん。
国を挙げての食生活改善で
アメリカでは減少
川竹 128万人という数は厚生労働省が発表している現在の全国のがん患者数ですが、実際は300万人くらいいるのではないかといわれています。
日本ではがんになる人も、がんで亡くなる人も増え続け、がんで亡くなる人は年間5000人単位で増え、去年1年で12000人が亡くなっているといわれます。一方で、5年間生き延びる人も増えているといわれますが、西洋医学では結局、再発や転移が防げないために、最終的にはつかまってしまう。そういう人たちが死亡者数も増やしているのです。
アメリカでは1990年以降、がんの死亡者が減り続けています。その最大の理由は食生活の改善です。古くは1977年の「マクガバン・レポート(表1)」に始まり、最近では1日に野菜・果物を5皿以上とる「ファイブ・ア・デイ運動」だとか、あるいは「肉食半減運動」、また、小児科医や産婦人科医が「1日1杯の牛乳も飲んではいけない」というキャンペーンをやったり、さまざまなことが相乗的に効果を上げた結果だと思います。
皮肉なのは、アメリカではマクガバン・レポート以来、かつての日本人のような食事を理想のモデルとして努力し、着々とがんになる人、がんで亡くなる人の数を減らしているのに対し、日本はアメリカ人が捨てようと必死で努力している食事を未だに理想のモデルとして、がんになる人、亡くなる人を増やしていることです(図5)。
アメリカの対ガン協会が出した、がんになってからの食事レポートには、「ベジタリアンの食事がとても良い」ということを明確に書いてあります。それは日本でいうと玄米菜食だと思います。玄米菜食なり、菜食主義の食事が、がんを予防し、治す上で、いかに効果があるかが世界的に認められてきているのは、世界の流れだと思うんですね。
西洋医学に基礎を置きながらも、アメリカでは食生活を改善しただけで、皆が皆、玄米菜食をしたわけでもないのに、部分的に変えるだけでも、如実にがんが減ってきているわけですから、そこをぜひ気づいてほしいと思いますね。
自助療法のすすめ
〜がん克服の鍵は、心と食
食を変えれば心も変わる〜
川竹 現行医療の手術・抗がん剤・放射線の三大療法を、私は全て否定しているわけではありません。しかし、がんの治療は本来、「自助療法→代替療法→三大療法」の順に進めるべきだと考えています(図6)。
自助療法とは、玄米菜食をはじめ、ビワの葉温灸、ショウガ湿布、里芋パスタなどの各種の手当て法、ヨガ、気功、瞑想など、患者自らが自分の行いで自分を助けるものです。
代替療法とは、健康食品、漢方薬、温熱療法、免疫療法などで、がんが進行して自助療法だけでは心もとない場合、代替療法の手助けをすすめます。
それでもまだがんが大きくなる一方の時に最後の手段として、手術、抗がん剤、放射線の三大療法をやってみようというわけです。ただし、「よく勉強して自分の責任で決断して下さい」と私はいっています。
自助療法や代替療法が副作用がないのに対し、三大療法は時として激しい副作用があり、人間の体に備わっている自然治癒力を著しく弱めてしまいます。また、三大療法はがんという結果だけに注目して、切ったり焼いたり毒殺したり、さまざまな対症療法を講じているに過ぎず、根本的な解決にはなりません。
海に浮かぶ氷山をイメージすると、海面に少し顔を出しているのががんの塊で、海面から下に隠れている巨大な部分にこそ、がんの原因があります(7頁図2)。
ライフスタイルや食生活、心の状態などを患者自らが改め、体質を改善していくことがまず必要なのです。
中でも、あらゆる病気の発病と治癒に決定的な影響力をもっているのが心≠ナす。しかし、心のもち方を変えるのは非常に難しく、私自身、瞑想や気功の教室に通ったり、人生論の本を読みあさったりしましたが、うまくいきませんでした。
ところが、玄米を食べるようになってまもなく、玄米を食べるという目に見える行動が、心という目に見えないものに働きかけることに気づいたわけです(図7)。
玄米を始めて2週間で、まず便の状態が変わりました。それまで情けない細い便しか出なかったのが、バナナのような理想的な便になり、朝から体の調子がいい。家からバス停までの道のりも足取りが軽く、鼻歌でも歌いたくなる気分です。そこで、「あれっ、玄米を食べただけなのに心の状態が変わってる!」と気づいたんです。
がん患者に不安を捨てましょうといっても無理です。寝ても覚めてもがんのことを考えてしまうのは仕方のないことです。まずは、直接心を変えようなどと難しいことを考えず、できること、行動することから始めればいいのです。
私が自助療法をすすめる最大の理由は、患者自身が自分の健康に貢献できる度合いが大きい点にあります。いろいろな工夫をしながらコツコツと努力を積み重ねていくので、免疫向上や体質改善という成果は、そのまま生きる自信につながり、そして、単に病気が治るだけでなく、健康度のレベルが発病以前より高くなるわけです。
三大療法でがんが直った場合、「直」には「直前の状態に戻る」という意味があり、がんの直前の状態は、放っておくとやがて重大な病気になる未病の段階です。
一方、自助療法でがんが治った場合、「治」には治水や政治という言葉があり、「コントロールする」という意味があります。つまり、自分の健康を意のままにコントロールできる状態です。がんになる以前より、心身共に健康で幸せな毎日を送ることができる「ウェラー・ザン・ウェル」を実現するのです。
私は自分を「ゴーストバスター(幽霊退治屋)」と思っています。がんは治らないという誤った常識の亡霊をやっつけて、それに打ちひしがれている多くの人々のウェラー・ザン・ウェルの実現を手助けしていくこの喜びは、がんがもたらしてくれたものと感謝しています。