万病は「冷え」と「血液の汚れ」から

〈その1) 万病は「冷え」から

イシハラクリニック院長 石原結實 先生

異端者が医学を革命する!
〜医者が増え、医療費が増え、そして病気や病人が増えた〜

 漢方と西洋医学を融合させた「東西医学」を標榜される石原結實先生は、半断食や玄米食などの食事療法、薬は漢方薬だけを用いて多くの人々を真の健康体に導かれています。
 医師の数や医療費は増える(図1・2)一方で、病気や病人も増えている現実を見ると、「現代医学はどこかおかしいと思わない人はおかしいということになります」、「医学界には優秀なお医者さんはいっぱいいますが、同じ西洋医学という「井戸」の中で研究されている。よって、異端者が出てこないと医学は発展しないでしょうね」と語られる石原先生。
 ご自身が異端者に脱皮できたのは何故か、お尋ねすると、「私は高校時代、ゲーリー・クーパーといわれたくらい下痢ばかりしていたんです。たくさんの病院にかかってもなかなか治らなくて、民間医学の西医学で青汁が良いというので飲んでみたらかなり良くなり、医学生時代、東大名誉教授の二木謙三医博の本を読んで玄米を食べてみたらピタッと治まった。やはり実体験、自分で苦しんでみないとなかなか切り替えられないんですね」とユーモアを交えて答えて下さいました。
 インタビュー中はしっかりお話して下さりながら、終始笑いの渦。ストレス解消も重要と語られる石原先生に、病気の真の原因、予防と治療の要諦を、今月と来月の二回に分けてお話して戴きました。

「冷え」は万病の元
症状は体を治す反応
がん・熱・痛み・炎症etc.

──先生がご指摘されるように、医学はすごい勢いで発展しているのに、がんをはじめとする生活習慣病、アレルギーや自己免疫疾患などは急増の一途ですね。
石原 今の医学は症状を病気と考えていますが、症状は体の悪い状態を何とかしよう、良くしようと治そうとしている反応なんです。その症状を病気とみて抑えるから、お医者さんが増えているのに、病気が増えているんですね(図1・2)。
 人間の体は冷えると熱が出る、喉にものをひっかけると咳をする、悪いものを食べると吐くか下痢する。常に良くしよう、長生きしようと反応しているわけです。
 がんにしても、死んだ人にはがんはできません。がんも生きている反応だとすれば、森下敬一医博がご指摘のように、がんは何とか1ヶ所に血の汚れを固めて、浄化している装置と考えるのが妥当です。

がんも背景には「冷え」

石原 お医者さん達はがんに対して、どうやって切ろうか、どんな化学療法を使おうか、そういうところにしか目がいかない。遠く離れてみる視点に欠けている。だから、背景に冷えがあるとは思いもしません。
 がん細胞は39・3℃以上で死に、35℃で一番増殖します(表1)。ところが今の人は35℃台の体温の人が多い。がんが増えるわけです。
 心臓や脾臓にがんはできません。心臓の重さは体重のわずか0・5%しかないのに体熱の約11%も産生していますし(表2)、脾臓は赤血球を貯蔵している臓器で赤ちゃんのように赤く、温度が高いからです。
 逆にがんになりやすい臓器は、胃や大腸、食道、子宮、卵巣、肺といった中が空の臓器です。細胞が周囲にしか存在せず、中空になっているので臓器全体としては温度が低いからです。
 新陳代謝が亢進する甲状腺機能亢進症(バセドウ病)では、患者のがん発生率は一般の1000分の1以下です。白血病で亡くなった夏目雅子さんは色が白くて細く、目が大きいという陰性体質ですから、体は一生懸命熱を出そうとしてバセドウ病になり、甲状腺が腫れたのだと思われます。それを手術してしまって熱の出しようがなくなり、白血病の一因になったのではないかと私は推測しています。
 近年は現代医学でも、がんに対して温熱療法、加温療法が効果を上げています。このことからも、西洋医学が手を焼いているがんも熱には弱く、裏を返せば、冷えががんの大きな原因になっていることが推測できます。

現代病のほとんどは 「冷え」が原因

石原 ましていわんや他の病気においてをやです。冷え症はもとより、むくみ、肥満、アレルギー、膠原病、高脂血症、生理不順、生理痛、慢性疲労症候群、肺炎・気管支炎・肝炎などの感染症、痛風、糖尿病など、あらゆる病気の大きな要因として冷えがあります。
 糖尿病の患者数は戦後すぐは何千人単位だったのが、今は1620万人。これも冷えからきているというのは、冷えると脂肪と糖分が燃えないからですね。
 高脂血症、高血糖は一連の障害で、それを今やっと現代医学でも「代謝異常症候群」として捉え始めていますが、冷えると血管が縮んで、血流が悪くなり、高血圧も発症しやすくなります。

体温が下がると、 酵素の働きや免疫力が落ちる

──他に、冷えが万病をもたらすわけは?
石原 人間は300万年前にアフリカ大陸でゴリラから派生したとされています。そのため暑さに耐えるための体温調節器官は存在しますが、寒さに対する特別な機能は備えていません。だから冷えに弱く、冷えるとさまざまな病気にかかりやすくなると考えられます。
 ヒトの体は「一種の熱機関」として働いており、人間は体温で生きているともいえます。
 あらゆる生命活動は酵素を触媒に働きますが、その酵素が最も働く温度は36・5℃前後といわれます。体温が36・5℃以下だと酵素はうまく働けず、体の全細胞、臓器の代謝が悪くなります。
 また、体温が1℃下がると免疫力が30数%落ちるともいわれます。体温が下がると免疫の中心である白血球の働き(表3)も落ちてきます。
 冷えると血流が悪くなり、血液がドロドロになり、 漢方でいう
「血」になりやすく、「血」=「汚血」で、それによって病気にかかりやすくもなります。
 このように、冷えるといろいろな病気になるのも当たり前ですね。

現代人の低体温化と 低体温をもたらす要因
現代人は冷えている

石原 私が子供の頃は、子供の体温は大体37℃、大人が36・5〜8℃でした。南山堂の医学大事典には今でも日本人の平均体温は36・8±0・34℃とあります。
 ところが今の若い人の平均体温は36℃前後しかない。若者ばかりか子供の低体温も問題になっています。動脈硬化に伴って目にあらわれる「老人輪」を持つ子供も増加し、がんや糖尿病など、小児成人病も深刻な状況にあります。
 若い人ばかりでなく、私のところに来る患者さんのほとんどは35℃台、高い人で36・2〜3℃。36・5℃ある人の方がむしろ例外的で、中には35℃を切る人もいます。

冷え・低体温をもたらす 現代の生活

石原 それだけ今は昔に比べ、体を冷やす原因がいろいろあるんですね。
・第一に筋肉運動をしない。
(特に足の筋肉不足)
 まず歩かない。家事も昔は洗濯、掃き掃除、拭き掃除と、手や足腰を使っていました。
 人間の体温の4割以上が筋肉から出ます。特に筋肉質の人では動くと8割以上の熱が筋肉から産生されます。よって筋肉運動が十分でないと冷えてきます。
 特に、人間の筋肉の7割以上は腰から下にあるので、よく歩いたり、下肢を使うのは体温上昇に極めて大切です。逆に下肢を動かさないでいると冷えてきます。
・第二が減塩。
 地球上の生命体は海から生まれ、海のミネラル塩は生命維持に欠かせない大切なものです。
 この40年間、高血圧や脳卒中の予防に減塩が盛んに奨励されましたが、それで高血圧が減ったかというと逆に増えているのです。今高血圧の患者さんは3500万人もいます。
 東北の人々が塩分を多量にとっていたのは厳冬を乗り切るために必要だったからで、塩分には体を温める作用があります。
 たとえ塩分制限で脳卒中のうちの脳出血は減ったとしても、逆に脳梗塞(血栓)は増えている。脳梗塞は「硬くなる病気」、「冷えの病気」ですから、むしろ塩分不足の病気なのです。
 非常に衝撃的で興味深いデータが98年の英ランセット誌に報告されています。米国民栄養調査(25〜75歳の20万7729人対象)では、あらゆる病気において、食塩摂取量が少ない人ほど死亡率が高かったというものです(図3)。
 塩分のとり過ぎで問題となるのはナトリウム(Na)と塩素(Cl)以外のミネラルを排除した精製塩だけで、むしろ塩分の摂取不足や排泄過剰、逆に運動不足などによる排泄不足が問題なのです。特に色白で冷え症の人は塩分をしっかりとらないと駄目です。
・第三に水分のとり過ぎ。
 今は多くの医師が塩分を抑え、水分を多量摂取することをすすめています。
 しかし、本当に体が欲しているのならいいですが、飲みたくないのに飲むのは非常に問題です。ことに現代では、街角に清涼飲料水があふれ、子供から大人まで水や甘いもののとり過ぎで体が冷えています。
 雨が降り過ぎると水害が起こるのと同じように、体の中で水害が起こるのを漢方では「水毒」といって、痛みやいろいろな病気の原因になります。
 冷えと水は痛みをつくります(図4)。雨の日は痛みが増すとか、お風呂に入ると痛みが軽減することを考えると、痛みは冷えと水からくることがわかります。ですから、あまり体を動かさない人がお茶や果物ばかりとっていると水分過剰で体を冷やし、痛みの病気になりやすい。リウマチの人には、お茶や果物好きな人が実に多いのです。
 そして、浮腫、水太り。うっ血性心不全などの病気になりやすい。
 不整脈、頻脈も漢方では水毒です。水があると冷える。だから何とか体温を上げようとして脈が速くなる。脈が10増えると体温が1℃上がりますから、頻脈も体温を上げようとする反応なんです。
 結膜炎の涙、アトピーの湿疹、帯状疱疹などヘルペスの水疱も、水分が多いから、それを排泄しようとして起こるわけです。
 目まい、耳なりを主症状とするメニエル症候群も、内耳中のリンパ液という水分が多くなるとなりやすくなります。
・年中、夏型の生活をする。
 夏には体を冷やすための体の生理、生活習慣が備わっています。体は暑さをしのぐために基礎代謝が低下して、熱が産生しにくい状態になり、さらに食べ物からも体を冷やそうとします。
 ところが、現代ではクーラーが体の冷えに拍車をかけ、ビールやアイスクリーム、甘いもの、南方の果物や生野菜サラダなど、体を冷やす食べ物を年中とっています。現代人が低体温になるのは当たり前なんですね。
・ストレス過多。
 現代文明社会はストレス社会でもあり、ストレスがかかると、緊張ホルモンのアドレナリンやノルアドレナリンの分泌が高まり、血管が収縮して血行が悪くなり、持続すると体温が低下してきます。
・薬(化学薬品)のとり過ぎ。
 化学薬品は代謝を高める甲状腺ホルモン剤を除き、ほとんどが体を冷やします。その最たるものは鎮痛・解熱剤です。
 薬の副作用として薬疹や嘔吐がありますが、それは薬で体が冷えた結果、余分な水分を体外へ排泄し、体を温めようとする反応なのです。
 長期に化学薬品を服用すると体を冷やし、それがさまざまな病気の下地にもなります。

特に注意したい 足と、お腹の冷え
〜こんな人は体が冷えている〜

──先生が体重よりも体温を測る方が大事といわれるのがよくわかりますね。特に足が冷えると良くないというのは?
石原 昔から「頭寒足熱」といって、上半身が冷えて下半身が温かいのが一番健康なのです。
 臍から下、つまり腎臓、副腎、泌尿器、生殖器を、漢方では全て合わせて「腎」といい、下半身に生命の源があるとしています。脳など高等臓器は上にありますが、生命力は下半身にあるんですね。
 だから、下半身が弱って冷えて血行が悪くなると、いろいろな病気になりやすい。お年寄りの代表的な症状は全部「腎虚」です。足が痛い、腰や膝が痛い。下半身が細くなる。そうすると目がかすみ、耳が悪くなり、歯がなくなる。
 下半身を温め、血行を良くし、下半身を強くすることは非常に大切ですね。
──私も足が冷えやすいんですが、夏は気持ち悪くて靴下がはけないんです。
石原 それは熱が体の中心部や、足の中心部に保持できずに、表面に逃げているほてりの現象です。だから、ほてりは冷えの裏返しなのです。本当に温かい人は、冷えもほてりもしない。快いんですよ。
──暑がりで汗かきというのも、実は冷え性だそうですね。
石原 冷え性かどうかは、お腹の冷たさ、汗の量、むくみなどで判断できます。
 「自分は暑がりで汗かきだ」、「手足がほてる」という人で、お腹が冷たい人がたくさんいます。漢方では「お腹」は「お中」、体の中心と考えます。よって、中心が冷えていたら、たとえ手足が熱く感じても冷え性と考えられるのです。
 汗をたくさんかくというのも、体内に水分が多いからで、本当の汗は十分に運動した時にかくものです。あまり運動をしていないのにちょっと動いたり、食事をするだけで大汗をかくのは、体内の余分な水分を捨てて体を温めようとする反応です。
 いわゆる「冷や汗」も、水分を捨てて体を温め、ストレスに対抗しようとする反応です。
 むくみの成分は水ですから、むくむ人は冷え症で、水毒傾向があるといっていいです。
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※次号(No384、05年11月号)では、石原先生に〈その2〉として、「万病は血液の汚れから」をテーマに、冷えからくる血液の汚れを防ぎ、病気を未病から防ぐ食事、生活全般についてお話して戴きます。
(取材構成・本誌功刀)