2〜3分搗き玄米食は最高のブレインフーズ(健脳食品)

(独)農業・生物系特定産業技術研究機構主任研究官
堀野俊郎先生

ヒトは、日本人は、何故、米を主食としてきたのか

 日本人の主食はお米と昔からいわれてきましたが、その実態は大分あやしくなってきました。米離れがすすんできたからです。一方で、パンを食べるところから始まる食生活の欧米化では生活習慣病が増えてきました。
 米離れは何故起きるのか、それで良いのかという問題意識で、もともと米を主食にしてきたのは何故だったのかという原点まで遡ってのお話を、お米研究の第一人者で、お米にブレインフーズとしての価値があることを発見された堀野俊郎先生(独立行政法人・近畿中国四国農業研究センター)にお聞きし、さらにブレインフーズとしての価値を高める方法と、新しく見つかったお米の魅力を大いに語っていただきました。
 堀野先生は米作り農家に生まれ、小さい頃より米作りを手伝って育ち、社会に出てからは農水省の研究機関で、二十五年にわたってお米の研究、中でも、肉体労働を支えるエネルギー源としてのデンプン食品としてではなく、脳の働きを支える胚芽の栄養成分とその応用を主として研究してこられました。

米離れの背景

堀野 35年から海外の飼料を輸入するようになって、それが年間1千万トンとか2千万トンとか、膨れ上がってくるわけですね。それがニワトリやブタとかウシのエサになって卵とか肉とか切り替わって、結局日本人が食うようになるもんですから、それでエネルギーがとれて米が余るということが一つと、振り返ってみますと、我々が小・中学生の頃は、学校から帰ると、勉強なんかしないで、田んぼの仕事でしたからね。小さいのに車引いて、草刈りして、牛の尻を叩いて。ですけれど、その後昭和40年代に入ってから、農村でも、エンジン付きの
機械が入りましたので、だんだん、力仕事をしなくなってくるんですね。ましてや、都市の方は自家用車。どこかのビルに行けば、みんなエスカレーターやエレベーターで上がったり下がったり。結局、なんか筋肉使わなくなって、結局のところカロリーを使わない。今まで人間が筋肉でやってたことが、エンジンとか、モーターに切り替わってね。
 私でも小・中学生時分は、朝からメシを3杯、一日3食で9杯、10杯食べていたのが、最近は朝、茶碗に半分ですよ(笑)。ですからお米の消費量は減るわけですよね。
 私も最初は雑穀とか、いろいろな研究をやったんですが、米の研究を始めるようになって25年くらいになります。
 当時の状況では遠からず、でんぷんの多い米というのは、みんな食べなくなってくると思いました。実際、消費量が半分になってもおかしくはないというようなことになってきて、それでは米の新しい価値を見つけて、でんぷん以外のところにも、立派な成分があるという研究をしていかなかったらいかんなと思いました。

米の主食としての位置

堀野 米が長い間日本人の主食であり得たというのは、第一に食糧として安定してたということはありますね。
 例えばとうもろこし、コーリャン、大豆は、虫や台風、長雨などの災害で収穫ゼロになることがある。昔は村で収穫ゼロになるということは、村人が全部死ぬということでした。その点、米は収穫がゼロになるということはまず無かった。特に東北地方の福島から南はそうです。
 だから、とにかく種まきして田植えさえしておけば、200キロなり300キロなりの米は必ずとれるという安心感ですね。それがあったと思います。
 それから、収穫した米の粒は比較的大きい。アワやキビだと小さいので砂が入ったら、もう取り除くことができない。けれど、米は何とかなるわけです。
 総合的に考えると、米は食べ物として一番優れてたということでしょうね。何といっても旨いです。いろいろ食べましたけど、雑穀は旨さでは米には敵わないですね。

歴史的視点から見た米
──穀類は脳を発達させた──

堀野 ホモ・サピエンスといわれる我々の祖先は、約20万年前にアフリカに誕生したといわれ、そしておそらく数万年のうちに世界中に広まってます。アフリカを離れて中東からインドを経て、北京原人じゃないですけれど、北京あたりまでやって来た時代には、おそらく揚子江の下流域、黄河の下流域には野生の稲が生えていたんです。途中のインド、バングラデシュ、インドシナ半島に住み着いた人々もいたわけですが、あっちにはインディカ米の祖先が生えていた。これはなんか食べられそうだということで、それを食べるようになった。
 北京原人は、朝から晩まで酒盛りして肉を食べていたように思う人もいるようですけど、そういうことでは絶対ないですね。北京原人が鹿の肉を食べた確率は、人間の数と鹿の骨の数で割れば分かりますが、一生のうち3回だそうです。当時寿命が30歳くらいですから、10年に1回しか鹿は食べてないんですね。だって、逃げちゃいますからね。そう運良く捕まえられるわけはない。で、やはり北京原人の昔から、主食はやはり穀物ですよ。これは逃げるわけじゃないから。
 それで米を主食として食べてきた結果、我々の体も頭も現在のように進化したんですね。米にそれだけの力があったということだろうと思います。
 人類の祖先が、地殻の大変動と気候の大激変によって、それまで住んでいた森が退縮してきて、次第に樹上から追いやられてサバンナ、今でいう森がちょこっとあって、草原があってという、地上に降りて生活をするようになったんですね。その時に食べ始めたのが、穀類。穀類は種が落っこちますね。砂の上に落ちても、サルと違って親指が発達していたヒトは指先が器用で人差し指と共同作業で、これをつまんで拾って食べられたんですね。で、そこがサルと人間の分かれ目。人間だけが穀類の種子を食べるようになったのです。穀類は非常に頭脳を
発達させる栄養分に富んでます。これを食べることを通じて、結局その後、脳みそが大きく発達するのを支えてきたのです。
 中国から朝鮮半島、日本へと移動して来る間、基本的にやっぱり穀類を主食として食ベてきた。そして、その間、脳を発達させてきた栄養素は何かというのが私の研究テーマなんです。
 例えば、揚子江の下流域といっても、20万年とか前は、海面がずっと低かったので、今の東シナ海というのは陸地だったんですね。ですから今の揚子江の下流域から、今の東シナ海全部ぐらい、稲があっちこっちに集団で生えていた。だから、これを食べて東アジア人が増えてこれた。
 その後、海面が上がり、人間は満州の方に移住したり、朝鮮半島に行ったり、日本へ来たり、そういうことになったんだろうと思います。ですから、アジア人、中でも日本人は、米を離れて生活することはできない。

米の構造

堀野 米を食べるということですけれど、大昔から白米ご飯を食べてたわけじゃなくて、長い間、せいぜい籾をはずすために、臼で軽く搗いて、玄米をちょっと皮を剥いだ程度で食べてきたんです。これでずっともう何万年も命を繋いできたわけですから。それが基本なんですね。今みたいに白くして食べるというのは、やっぱりどっかに無理があると思います。
 図1は玄米の断面です。ヨードヨードカリで染めますと、内層のでんぷんが染まります。外側にいくほど染まっていません。外側に近い方はタンパクとか油(脂質)とかミネラルとかビタミンとかがかなり多いんで、なかなか染まらないわけですね。
 こうしてみると米は二重構造になってるわけです。
 でんぷんは、外側に近い方では50%ぐらいしかございません。
 一方、タンパクは外側近くには16〜17%あります。これはパンよりも高タンパクです。
 油も外側に多くて、中にはあまりありません。カリウムも、マグネシウムも外側に多いです。
 表面近くの、サピオ層のサピオというのは、英語でいえばテイスティ、味があるという意味になりますけれども、もともとはラテン語で、よく吟味する、考えるっていう意味ですね。ホモ・サピエンスといいますけど、サピエンスというのはこのサピオという言葉から来てるわけです。考えるサル、よく物事を吟味するサルと、それでサピオ、サピエンス。
 このサピオ層の内側にでんぷん層があるわけです。
 糠は大きく分けると二層です。表面が果皮。果皮の内側に種皮があります。
 果皮があって、種皮があって、糊粉層があって、サピオ層。その内側に普通のでんぷんをたくさん貯蔵してます。
 果皮はケイ酸やワックスも含んでいます。ここは薄くて透明で水をはじく。渋柿の場合は、ここがシブいですよね。玄米もこの果皮がシブいわけです。コーヒーでも、シブ皮がありますよね。玄米で食べる場合は、このシブをどうするかという問題があります。このシブは、何のためにあるかといえば、玄米だって虫なんかに食われたくないですし、またカビがくっつかないように、防御物質として、シブいというか、えぐいというか、苦いというか、そういう味になっています。
 柿シブは、お湯に浸けたりして、シブ抜きして、食べますね。米の場合も同じように、玄米を食う場合はシブ抜きしてからだと食べやすいわけです。
 普通玄米食されると、最初はいいんですけれど、2〜3ヶ月もするともう見るのも嫌という人が多いですね。それは、このシブの作用で、食べているともう体が受け付けなくなるわけです。防御物質としてシスタチンとかが見つかっていますけど、一種のアレルギーを起こさせる物質と思えばよろしいわけですね。
 一方、最近人気の発芽玄米は、少なくとも数時間、長ければ丸一日水に浸けて、途中で水を換えますね。その間にこのシブが抜けているので美味しいわけです。
 だから、玄米を食べる場合は、水に浸けてシブ抜きをするか、もしくは機械的にここを剥げばいいわけですね。従来の精米器は、中の糊粉層とか栄養分のあるとこまで剥いじゃうから問題ですけれども、最近は果皮だけ上手に剥ぐようにした家庭用精米器もあります。
 工夫が足りない精米器では、米の胴まわりはよく剥げるんですが、上下のとがった頭と尻の果皮がまだらで残るんですよ。ところが、良く工夫した精米器では、揃いも揃ってよく剥げます。95%ぐらいは、綺麗にツルっと剥いでいます。食べたとき、果皮が残ってないので、シブみはないですし、舌触りも悪くない。そこが普通の玄米食あるいは工夫が足りない精米器での分搗き米と違うとこですね。しかもマグネシウムだとか、ビタミンだとかその他の栄養素のある層を残せるわけです。

ギャバの発見

堀野 シブみをとるためには、水につけて発芽させ、水を換えればとれるといいました。この発芽といってもいろいろ段階があります。ちなみに玄米の段階の胚芽は、妊娠3ヶ月の状態で3枚の葉っぱが幼型で止まって冬眠しているんです。で、春になって、水が来て、温度が上がりますね。そうすると、妊娠3ヶ月の状態から成長するようになっているわけです。そのとき胚芽に水が届けば、20分、30分でギャバが増え始めるわけですね。ギャバといわれるガンマアミノ酪酸ができたら「そーら、行くぞ」と全力を挙げて発芽するのです。
 グルタミン酸を300mg、0・3%持っているお米の胚芽を水に浸けて、時間の経過で変化する様子を見ますと、まず最初の大体20分ぐらいでグルタミン酸の量が下がってギャバが増えてくる(図2)。この二つは兄弟アミノ酸ですから、すぐ変換されるんです。
 人間の場合でも、昔からよく知られている現象ですけれど、グルタミン酸とギャバで脳神経をコントロールしているわけです。グルタミン酸はアクセルの役割ですから、まあ、頭の働きが良くはなりますわね。働きが良くなって、テンションは上がって、夜も眠らない。それだと、2〜3日でパタリといってしまいますんで、そうならないようにブレーキをかけ、不要な時は休ませる必要がある。アクセル踏み続けて3日目にはどうするんだっていうことになりますからね。
 だからギャバの多いブレーキ役の食べ物もいるんじゃないかという話はあったんですけど、なかなか日常的にとれる食べ物では見つからなかった。
 それが、胚芽を水につけておけば、それでギャバは十分量生まれる(表)ということを見つけたのが我々の研究室です。
 昔から米炊く時、昔は分搗き米ですから、胚芽が残ってる。ご飯炊く時には研いで、1時間ほど水につけておいてから炊けといわれていた。それが頭にあったから、1時間2時間4時間と、胚芽を水につけおいて、それから生化学分析をしたのが我々のアイデア。
 昔から長い経験の中でいわれている伝承、何万年という歴史のなかで、そういう食べ方がいいんだという生活の知恵に目をつけたんです。

ギャバの血圧安定効果と精神安定

堀野 それで、お米の胚芽を使って、ラットの試験をしています。
 普通のエサだけ食べていると3週齢で202の血圧が、16週でほっといても241になる高血圧ラット。それに対して、未処理の生の胚芽をエサに5%添加したラットは202が240に、10%添加したラットでは259と、胚芽を生でやるとむしろ血圧を上げちゃうんですね。ところが、いったん水につけて、ギャバに変換したものを5%添加すると225とマイナスになる。10%添加だともっとマイナスになる。
 米の胚芽を1時間水につけるとつけないのでは、天と地の差が出てくる。そんなことで、臨床試験もやってみました。結果はこんなに出ています。水に浸したコメ胚芽を1日9gずつ食べて1ヶ月、2ヶ月、やめて1ヶ月、で、最低血圧、最高血圧は、人間でも下がりました(図3)。
 それともう一つ、その時は更年期とか、初老期の方を対象にしてましたので、更年期障害とか、自律神経失調症とか、うつだとか、神経症だとか、お医者さんがそういう診断をとりあえず下した方が食べてますと、著明な改善、かなり改善になる人が沢山いて、悪くなる人は一人もいないですね。
 お米の胚芽を水につけて、ギャバを増やした状態であれば、不眠症、神経質、イライラ、興奮、めまい、偏頭痛、精神障害とかお医者さんでも治療が難しい病気も、要するに頭が疲れてるわけですが、疲れがとれれば治ってくるというわけです。

マグネシウムに富むお米

堀野 それから、もう一つ、注目しておりますのがマグネシウム。
 マグネシウムは人体の300種以上の酵素反応に必要不可欠で、必要量の2割が欠乏すると、どこかに何らかの症状が出るミネラルです。不足気味の状態でも神経の機能低下や動脈の痙攣、心臓の働きの低下がおこります。
 このマグネシウムとそれに拮抗するカリウムを比較するため、穀類を分析しました。豆類はカリウムが相対的に多い。コウリャンとか、大麦、小麦などヨーロッパ系のものは約1対1。ソバ、ハトムギ、キビ、アワ、ヒエという東アジア系のものは1対1・5で、相対的にマグネシウムが多いものを東アジアの人間は食っていることになります(図4)。我々はマグネシウムが非常に重要なんではないかと、この分析の結果から思うようになったわけです。
 コシヒカリとかヒノヒカリとか、おいしい米は、マグネシウムに富んでいる。マグネシウムリッチのものを人間が好むということがいえるということですね。
 カリウムは、プラスの一価。マグネシウムとカルシウムはプラスの二価。で、まず一価と二価で拮抗して、二価の中ではマグネシウム、カルシウムで拮抗します。
 大豆は非常にカリウムが多いので、これを食べる時にどうするかっていう問題があります。それでまず、豆乳にひいて、塩化マグネシウムのニガリを加え、豆腐にします。そのときカリウムは水に捨てるわけです。ニガリのマグネシウムは豆腐の中にとりこませて、その結果、Mg/K比は1・5の線上にくるんですよ。米とか、ヒエ、アワ、キビと同じ比率にして、食べるわけです。
 豆腐はタンパク質だけではありません。油(脂質)もかなりあります。水は除いて6割タンパクで、4割は油です。豆腐の旨さの中に油の甘みが入っています。ニガリはタンパクというベースの中へ、さらに油をとりこむ役割を持っているんです。ニガリがタンパクと油をつなぐ、つなぐことで双方の分子の数が決まりますからね。タンパク、油の量に見合ったニガリの量をとりこんでいきまして、あまったものは捨てるわけですね。
 豆腐を真水に泳がせて売っているのも余分なニガリを逃がすためです。ニガリをつなぎとめるのはタンパクに必ず含まれているリン酸です。リン酸はマイナスの電気を持っていますから、このマイナスとマイナスの間にプラスの電気を持つマグネシウムが入ってとめる。リン酸の数だけマグネシウムが入れるわけです。油もリン脂質と呼ばれているもので、リン酸を持っているわけです。で、ここにまたマグネシウムが入ります。豆腐は、油とタンパクの、それぞれリン酸のところをマグネシウムでつないで、ネットワークをつくっているのです。
 そして、おいしい米の玄米外層には、タンパクのカプセルに包まれたフィチン顆粒もあり、その内部にはフィチン酸にカリウムやマグネシウムが結合したリン酸マグネシウムが沢山あるのです。 

マグネシウムとリン脂質
──米の旨味の本源は脳みそを支える──

堀野 米の場合もマグネシウムはすべてこういうリン酸とくっついたものになっています。だから米も一つには、このマグネシウムを食べるのが目的なんです。
 それから今、油といいましたが、単純脂質の米糠の油の他に、白米表面のサピオ層にもおいしいリン脂質という油があるんです。
 土佐の初ガツオ、三陸の秋のさんま、富山の寒ブリとか、脂のったのがうまいですが、米もきっと同じですよ。コシヒカリとか、最近のうまい米は、よく油ののる寒ブリ、あるいはマグロでいえば中とろ大とろクラス。
 で、この油は、普通の油ではなくて、リポタンパクといわれてまして、まずタンパク質で、竹籠みたいなものをつくります。竹籠のすき間にリン脂質が頭を出しているわけです。油は水に溶けない疎水性っていいますけれど、実はその竹籠の中の方は疎水性ですけど、外側は、リン酸とか、タンパクとか、いろいろなものをくっつけて親水性になっているんですね。だから、油が水に溶けてるようにも見える。そういう構造をリポタンパクというんです。
 そういう形で油を貯蔵し、輸送しているわけです。米も水に溶けるリポタンパクの形で、ここにリン脂質を貯蔵しているのです。この油は顕微鏡で染めてみれば見えるんです、直径0・5ミクロンくらい。これは私が世界で初めて見たようです。
 普通、白米って、油っぽくはないですよね。だけど、炊いてますと、80℃とか90℃になったら、急にグラグラッと、泡吹いて、ファーっと良い匂いがしてきますね。その時に、リポタンパクの中の油がファッと出たんです。お湯は泡立ちますね。同時に香りがファーっとしてくる。味が出て、出たら早く食ってしまおうと。これが米のおいしい食べ方なんです。だから冷やご飯にしておいておけば、だんだん味が悪くなるのは当たり前です。
 先ほど、米は他の雑穀などと比べると断然旨いといいました。人類が発生して以来ずっと穀類を主食として食べてきた。穀類の栄養分を糧にして、脳みそを発達させ、維持してきたということです。だから、その穀類の旨味の本源は、必ず脳みそを支える成分につながっていると考えているわけです。
 ところで人間の脳みそや神経系は、水分は別にして、半分は油、さらにその半分はリン脂質です。つまり4分の1はリン脂質なんですね。人間の臓器の中でリン脂質を沢山蓄積している組織というのは、脳みそと神経しかないんです。コシヒカリがうまいというのも、そのリン脂質をターゲットにしているのではないか。人間はリン脂質が好きです。皆さんよく召し上がっているラーメンのダシは豚の頭とか、鳥のがらとか、脳みそとか神経のあるようなところをグツグツ煮て、70℃か80℃でとろ〜り、とろ〜りと、取るんですよね。煮立てると壊れ
るんです。その程度の温度で抽出してダシが出たっていってますけど、ダシのかなりの部分はリン脂質でしょうね。
 このリン脂質を沢山含んだリポタンパク。これが脳みそにいくわけです。脳みそ、神経系に関係ありそうなものは、穀類は沢山もってますよ。
 ギャバもあり、マグネシウムはリッチだし、リン脂質もありということで、お疲れの脳みそにもってこいですね。だからこそ、米は頭脳の働きが命のヒトの主食になり得て来たんだと思うんです。
 果皮を剥いだ2〜3分搗きの米を水に充分つけてから炊いたご飯は凄いブレインフーズ(健脳食品)だったわけですね。