健康は、足腰の元気から
――足腰を丈夫にして、老化を防ぐ――
国立病院東京災害医療センター名誉院長 西法正先生
高齢化社会に入って、より不可欠な足腰の鍛錬
内臓のチェックは丹念にしても、骨や筋肉のチェックには無頓着な現代人。しかし、昔から「老化は足腰から」といわれるように、足腰が弱ると内臓諸器官から精神まで衰えてきます。
車社会に加え、高齢化社会に入った現代では、骨や筋肉の弱りからくる弊害も深刻になっています。推定患者数約500万人、予備軍を含めると1千万人以上ともいわれる骨粗鬆症はその象徴的なあらわれでしょう。
「西式人工ひざ関節」の生みの親として知られ、整形外科医の第一人者として活躍されてこられた西法正先生は、「医学の進歩で内臓の不調や障害はとり除けても、足腰が丈夫でなければ日常生活の向上は望めない」と、普段の生活から骨と筋肉を丈夫にする「健骨法」をすすめられています。
西先生は、現役最後の10年間を広域災害医療の基幹施設の設立に奔走、1995年、高度救急医療と専門医療を兼ね備えた世界初の災害医療施設「国立病院東京災害医療センター」を立ち上げられ、初代院長として患者サービスを重視した病院づくりに尽力されました。退官後の現在は、名誉院長として週1回の外来と後輩の指導育成にあたられています。
「上にも下にも横にも真ん中にも十分気をつけて、眠らずに努め、励め」という仏陀の教えを支えに医療の向上に心血を注いでこられたという西先生。時に鋭い眼光を放ちながら、穏和な笑顔と古武士のごとき姿勢で、足腰を中心に骨と筋肉から老化を防ぐ「健骨法」を教えて下さいました。
骨と筋肉からみた体の老化
骨と筋肉の働き
西 体の支持組織は、骨と筋肉からできています。骨と筋肉は非常に強靱な腱で結合され、体の動きは基本的に筋肉が収縮する力が骨に伝わることでなされます。
骨は、脳と脊髄を守る頭蓋骨と脊柱、心臓や肺を守る胸郭、手足の運動をつかさどる上肢骨と下肢骨と骨盤の、計206個で骨格を形成しています。
骨格に付着して関節を動かしている筋肉が骨格筋で、全身に大小約400種あり、体重の約50%をしめ、骨と協力して体を形づくり、運動を行っています。
骨と骨のつぎめには運動をスムーズに行う関節があり、関節をつくる相互の骨は靱帯(主に弾性線維からなるひもまたは帯状の結合組織)で強く結ばれています。関節は、関節を構成している骨とそれを動かす筋肉と共にテコを形づくって、・同じ結果を得るのに力が少なくてすむ、・運動範囲の増大、・運動スピードの増大──等の働きをしています。
骨と筋肉の老化・足腰の衰えと全身の老化
西 骨は、蛋白質(コラーゲン)を基材に、リン酸カルシウムを主体にした骨塩(骨ミネラル)からでき、ゆるやかな新陳代謝を繰り返して、古くなった骨は溶かされて吸収され、新しい骨が形成されます。老化にともなって、骨の吸収に見合う骨形成が行われなくなると、骨がスカスカになってきます。これが骨粗鬆症です。
骨格筋は、細長い線維状の筋細胞が集まった組織で、主成分は蛋白質(コラーゲン)です。筋肉の老化は、筋肉の線維が脂肪に置き換えられるということになります。
この骨と筋肉の老化を防ぐには食生活と運動が鍵となり、特に運動の基幹となる足腰の骨と筋肉が衰えると、全身の老化につながってきます。
「老化は足から」と昔からよくいわれるのは、
・足の筋肉はもともと退行しやすく、例えば握力と脚力では20代を100とすると、60代で握力は80%程度保っているのに、脚力は半分の約50%まで落ちてしまいます。
・また、足は「第二の心臓」といわれるように、足の動きには血流促進作用があります。
・さらに、足は行動すべての基本ですから、足が衰えると社会生活から遠ざかりがちになり、精神的にも老化するからです。
一方、全ての動作の支軸となる腰は、主に背筋と腹筋で支えられ、背筋と腹筋が弱くなると、腰痛を起こすだけではなく、姿勢が悪くなり、内臓にも悪い影響を与えます。例えば、前屈みの姿勢で胸郭が圧迫されると呼吸が制約され、肺に十分な酸素を吸い込めなくなり、結果的に心臓や脳の働きが悪くなります。
年をとると、老化による筋力の衰えがさらに老化を促進するという悪循環も生まれるので、年をとってきたら常に足腰を丈夫にする心がけが必要です。
足は健康の土台
足の3つの働きと足の仕組み
西 直立歩行する人間の足は、・体重を支える、・歩行、・緩衝作用(ショックアブソーバー)の3つの機能があります。
そのため、足(フット)は大小26個の沢山の骨からなり、体重がかかるカカトの骨(距骨と踵骨)は非常にしっかりして大きく(図1)、また、それぞれの骨は靱帯で結ばれ筋肉で保護されることで縦横のアーチを形成し(p9図3)、このアーチが足の強さや安定性、歩行時の弾力性を保ち、骨と骨のすき間では移動の際のショックを受けられるようになっています。
歩くとなぜ良いか
──1日1万歩のすすめ──
西 健康のために「1日1万歩」がすすめられています。
歩くのはなぜ良いのかというと、歩くと、・全身の筋肉がバランスよく使われ、・また、足の筋肉は大きいために血液のプールとなっていて、歩く度にミルキングアクション(搾乳行為)といって、足の筋肉が収縮と弛緩を繰り返して血液循環を良くし、全身の機能を高め、さらに1万歩歩くと、・現代人が余分にとっている約200〜300キロカロリーの余剰エネルギーを消費しながら基礎体力がつき、運動不足が解消されるからです。
歩行は、生活習慣病の予防・改善にもすすめられています。軽い運動ながら呼吸・循環機能を高める効果はランニングと同じくらいあり、さらに、肥満の予防と改善・血糖値を下げる・血圧を下げる・心臓病の予防──など多くの効果が認められています。
歩く健康法では、ある程度の距離または時間の持続がポイントになります。そのためには正しい姿勢で正しい歩き方をしなければなりません。ちなみに、今の人は一般にせいぜい毎日4000〜5000歩程度しか歩かないといわれ、一方、1日1万歩では、距離にして6〜7km、普通の速度で時間にして約1時間半程度になります。少し速度を速めれば時間はもっと短縮され、消費カロリーも増えます。
体の弱い人では徐々に距離や時間をのばしていき、また関節にトラブルがある人は水中歩行、正常な人でもう少し鍛えたいという人は階段や坂道を努めて歩き、階段などでは2段上りをするとさらに良いでしょう。
足の正常な形成に、"はだし"のすすめ
西 足の正常な形成には、はだしがすすめられます。はだしでは、足本来の機能が過不足なく使われ、また外界の刺激を直接受けることで、次のような反応が起きます。
・土ふまずの形成 体をやや前傾にすると、親指は伸びたままで床を押さえつけ、他の4本は曲がって床をつかみます。はだしでは常にこの運動が行われ、土ふまずを形成していきます。
・発汗作用 足の裏は精神的緊張による汗をかきやすく、緊急時に足を踏ん張るのに役立ちますが、常に靴下や靴をはいているとムレてしまいます。
・屈曲反射 痛いものを踏むと反射的に足を引っ込め、また足裏をくすぐると親指が曲がるのは、足裏の筋肉が敏感に反応して収縮するからです。はだしでいると知らず知らずのうちに外界の刺激を受け、小さな筋肉が発達します。
・寒さ慣れ 体の表面まで送られた血液は動脈から毛細血管を通って静脈に返されますが、足の表面が冷たい状態におかれると、血液は毛細血管を通らず直接静脈へ流れます。この反応は「寒さ慣れ」、医学的には「寒冷血管拡張反応」と呼ばれ、寒さから身を守るために体に備わっている防衛反応で、はだしに慣れると寒さに強く風邪をひきにくくなります。
砂の上のように歩きづらい所は筋肉を鍛え、砂利道のような所は足を刺激し、屈曲機能を高めますし、また、足先をよく使う坂道歩きや木登りをするにも、はだしでの運動は心も体もリラックスできる自然の空間が望まれます。「幼児ははだしで草原で遊ばせよ」という西洋の諺がありますが、子供はなるべくはだしで遊ばせ、大人も家に帰ったら畳の上で素足でいる時間を長く持つことです。
"靴"をはく習慣が、疲れ足・扁平足を生む
西 一方、靴は足を保護し、疲労を防ぎ、足の機能を補助します。しかし、足に合わない靴や、適正な靴でも長時間はき続けると、足を傷めるもとになります。
足の正常な機能を妨げないために第一は良い靴を選ぶ(表1)。足の親指は一歩ごとに反り返るので、1日1万歩だと片足で5千回もの屈伸運動になります。そのため、わずかな足の指の異常でも痛んできます。足に合わない靴、無理な姿勢をもたらすハイヒールや厚底靴などは「外反拇趾(図2)」や、「ハンマー趾(図2)」を招くもとです。
第二に、長時間はき続けない。日本人に比べて欧米人に扁平足が多いのは(表2)、靴をはき続ける習慣が常に足を束縛して靭帯や筋力を弱めていることが大きく、さらに、舗装された堅い道路や堅い床を歩くことも関係しています。ですから、欧米人は扁平足に限らず、足に何らかの異常を持つ人が多いのです(表3)。
直立歩行に適するように、人間の足の裏には縦横のアーチ、つまり土ふまずが形成されています。そのアーチがつぶれたものが「扁平足」や「開き足」で(図3)、足の疲れや痛みの原因になります。正常な足でも堅い床を歩き回ったり、長時間歩くと足が疲れて痛む「疲れ足」になり、これは一過性の扁平足の状態ですから、疲れ足から扁平足が起きる仕組みが分かります(図3)。
足の変形や疲れ足の予防には、「シックス・ポイント・エクササイズ」をおすすめします(図4)。私が昭和38年にヨーロッパから持ち帰った体操で、足の変形を予防するだけでなく、全身の血流改善にも役立ちます。寝ながらでもできるので病気の人にもすすめられます。
足の筋肉の痛み(こむら返り・間欠性跛行・肉ばなれ)
西 足の筋肉を使いすぎたり脱水症状などで筋肉が疲労すると筋肉の"痙攣(こむら返り)"が、また、ジャンプした時などでは突然筋線維が断裂する"肉ばなれ"が起こることがあります。
「こむら返り」がふくらはぎに起きたら、足首をもってもう片方の手で足の指をすねの方に曲げます。こむら返りは特に、代謝異常を来す糖尿病やバセドー病、肝硬変、慢性アルコール中毒の人では起きやすく、こむら返りが度々起きたり、全身の筋肉に起きると精密検査が必要です。
中年以降に多い「脊柱管狭窄症」などで脊髄の神経が圧迫され、神経が異常に興奮しても足の筋肉がひきつれたり、また「間欠性跛行」といって、歩くとふくらはぎを中心に足の筋肉が痛み、休むと軽快し、また歩くと痛むという症状が起きやすくなります。間欠性跛行は足の閉塞性動脈硬化症でも起き、糖尿病の人などは特に要注意です。いずれにしても、足の血流が極端に悪くなって筋肉が酸素不足になることから起きます。
「肉ばなれ」はふくらはぎや太ももに起きやすく、肉ばなれを起こしたらまず冷やして安静にして、1〜2日たっても歩けない場合は専門医に診てもらいます。
こうした足の筋肉の痛みに対しては、日頃から足腰を鍛え、足の血流を良くし、運動前には水分の補給と、ストレッチングを含めた準備運動を十分行い、過剰にならないように運動量を調節することが大切です。
関節などのトラブルとその改善〈ひざ痛・変形性膝関節症〉
西 整形外科外来で、腰痛に次いで多いのが「変形性膝関節症」です。早い話が長年の機械的な摩耗からくるひざの老化現象で、体重の2〜3倍もの力がかかるひざの関節は、40〜50年もたてば悲鳴を上げてくるのも当然です。特に太っている人のひざへの負担ははかりしれないものがあります。
変形性膝関節症は老化にともなってひざの軟骨がつぶれ、足の筋力が弱まるにつれて痛みだし、体重がかかるひざの内側の軟骨が摩耗して、すねの骨(脛骨)が徐々に内側に曲がって足全体がO脚に開いてきます。骨や軟骨がはがれ落ち、はがれた軟骨の成分がひざの滑膜を刺激してはれ、炎症を引き起こし、袋の中に水(関節液)がたまり始めます。ひどくなると歩くことはもとより、立ち上がることさえできなくなります。
予防と改善には、大腿四頭筋(図5)を鍛えると非常に効果があります。大腿四頭筋は4つの筋肉からなる太くて強い筋肉群で、体重がひざを直撃しないように力を分担して支えたり、ひざを持ち上げる時に働くので、この筋肉が加齢や運動不足で弱ると真っ先にひざがやられるのです。
図6のように、ひざの周辺に瞬間的に力を入れてパッと力を抜く運動をくり返すと、大腿四頭筋が鍛えられる上に、パンピング作用(ポンプのような働き)となってひざにたまった水(関節液)の吸収も促します。また、血管のない軟骨は、関節液から栄養を補給しているので、この運動で関節液の新陳代謝が促されて栄養状態が良くなると軟骨も強化されます。
減量と適度な歩行も不可欠です。歩く時は杖を使い、杖は必ず良い方の足の側に用いて、杖と一緒に悪い方の足を出し、杖に体重をかけながら良い方の足を前に出します。支持のあるサポーターや足底板も有効です。また、温めて血行を良くすることも大事です。
大腿四頭筋の訓練を中心に以上の改善法を1〜2ヶ月続けても効果が得られない場合は専門医に相談しますが、くり返し水を抜く治療法はかえって骨を壊す原因になるのですすめられません。
〈変形性股関節症〉
西 中年女性に多いのが、上半身と下半身をつなぐ股関節の「変形性股関節症」です。
歩いたり無理した後に足の付け根が痛むことから始まり、次第にじっとしているだけでも痛んだり、股関節がよく開かなくなってきます。単なる老化現象ではなく、先天性股関節脱臼などもともとの原因があって、中年期になって二次的な股関節の変形が起こるケースが多いのです。
大腿骨頭にかかる重みは全体重の2・4倍にもなりますから、治療はまず減量。つぎに、股関節の可動性を増し筋力を強化する体操です(図7)。痛みも軽くなり、悪化を抑えてくれます。ひどい場合には手術となりますが、その前に減量、そして治療体操を試みることです。
そして、積極的に杖を使うこと。股関節にかかる負担が大きく軽減され、修復を助けます。
〈大腿骨頭壊死〉
西 「特発性大腿骨頭壊死」という、足の付け根の骨が腐ってしまう病気があります。美空ひばりさんがこれにかかって名前が知られるようになりました。
原因ははっきりしない点もあるのですが、二大要因がアルコールとステロイド(副腎皮質ホルモン)剤で、肝臓障害や脂質代謝異常も関係するといわれています。それらの要因により、大腿骨頭への血行が悪くなる、あるいはステロイドや悪玉コレステロールなどが大腿骨頭を直接破壊することが原因と考えられています。ステロイド剤使用者や、お酒やタバコの好きな中年男性は要注意です。
体の支軸となり、行動の基幹となる〃腰〃 脊柱構造からみた腰
──腹筋と背筋の重要性──
西 "腰痛は二足歩行の人間の宿命"といわれるのは、腰には上体の重みがすべてかかる上に、体の支柱である脊柱が、重力に対抗して体を支えるという静的な機能と、あらゆる方向に動くという動的な機能の、相反する機能を要求されているからです。
脊柱は、横から見るとゆるやかなS字状カーブをなして椎骨が連なっています(図8)。このカーブは人間が重力に逆らって直立したさいに、バランスをとるために自然に形づくられたもので、胎児や新生児には見られません。椎骨と椎骨をつなぐ椎間板(図8)はクッションの役割をして、背骨を自由に曲げ、運動によって背骨にかかる衝撃を和らげてくれます。
脊柱を支えているのは、背筋群と腹筋群、それに胸腔と腹腔の圧力です。背筋の増強が脊柱を支え保護し、腹筋力の増強が腹腔内圧力(腹圧)を増大させて腰部全体の支持力を高めます。
腰椎も背筋と腹筋に支えられているわけですが、腰椎は、前の方に反っているので重力に対して体を支えるには、腹筋群より背筋群の方が強くなければならず、事実成長期には背筋の方が腹筋よりも約10%強くなっています。しかし、30代後半になると背筋の方が弱くなります。それは背筋は体重という負荷に刺激されて発達するのに対し、腹筋はある程度運動しないと発達しないからです。
姿勢と腰痛
──問題の多い座位──
西 姿勢の基本は骨盤の傾斜で決まり、骨盤の傾斜が強くなる"反り腰"も、骨盤の傾斜が少なくなる"曲がり腰"も、脊柱の自然なカーブがくずれ、体重のかかり方が狂い、それを補うために背骨の周囲の筋肉が緊張してきます(図9)。こうした不正姿勢を長く続けていると、腰痛や肩こり、背骨全体を痛めるもとになります。
不正姿勢は、立位より座位の方が問題になります。立位では腹筋や背筋その他の筋肉が働いて脊柱のバランスがとりやすいのに対し、座位では背筋や腹筋がゆるんでその分余計に腰に重みが加わり、腹圧も減少します。また、立位では重心を移しながら姿勢を変え、体のいろいろな筋肉を使いますが、座位では主に背筋と腰筋しか使われないからです。
特にあぐらをかくと、体が前かがみになり、椎間板の後方も腰の筋肉も引き伸ばされて、疲れや痛み、こりが起こってきます。さらに、立ち上がる時に腰にも足にも負担がかかるので、中年以降の人はイス生活の方が良いのです。
しかし、イスも柔らかいイスに長時間座ったり、背中を反らせてお腹をせり出す反り腰を続けていると腰痛を招きます。最近若い人に腰痛が増えているのは、日頃の運動不足に加え、車の運転やパソコンなど、長時間机の前に座り続ける生活が大きく影響しています。
腰痛の予防と改善
西 内臓などの疾患(表4)からくる腰痛を除くと、腰痛を起こす要因としては、・運動不足あるいは過剰、・外力によるストレス、・骨粗鬆症を含めて老化があげられ、その多くは直接的には背骨の歪みや変形によります。
予防と改善は、腹筋と背筋のバランスをとりながら、全身の筋肉を鍛えることが最も重要となり、それには、腰痛体操(図10)と、歩行が非常に有効な手段となります。そして、どんな行動を起こす時も、無理のない正しい姿勢で行い、偏った運動を避けることです(表5)。そして、常日頃から腹筋と背筋を鍛えて正しい姿勢を維持し、歩行に心がけ、過剰なストレスを避け、骨粗鬆症を防ぐ食生活に心がける──等、生活習慣の改善が最も重要になります。
中高年からの鍛錬法
──体の声を聞きながら、自分なりの健康法を──
西 足腰の健康は全身の健康につながります。年をとってきたら、特に悪いところがなくても、足腰の筋肉を鍛える運動を日常生活にとり入れることです。しかし、無理は禁物です。
普段の生活で、自分の出来る範囲の運動を継続していくことが良い結果を生みます。例えば、毎朝のラジオ体操。それも無理な人は、始めと終わりの深呼吸だけでも効果があります。酸素をたくさん吸うことで、循環器系に非常に良いというだけでなく、呼吸筋や横隔膜を丈夫にします。朗読や歌は腹式呼吸の良い鍛錬になります。
そしてよく歩く。歩くのは全身の筋肉を使い、それだけでも老化の予防に役立ちます。その場合も、足腰の弱っている人、トラブルのある人は杖を積極的に利用し、骨粗鬆症で腰が曲がってしまった人は乳母車式のショッピングカートを押しながら歩くと良いのです。
健康増進の三大原則、栄養・運動・休息のうち、運動は中年からは予備力がないことを肝に銘じて自分の体の声によく耳を傾け、自分なりの健康法に努めることが肝要です。そして、筋肉や骨など整形外科的なトラブルでも、体の一部の故障ととらえず、"心と体まるごとの健康を考えたセルフケア"を心がけてほしいのです。最後に私のすすめる「中、高年齢者の生き方12項」を示します(表6)。