"清潔病"が招いた免疫力の低下とアレルギー性疾患・新型感染症の蔓延

――家畜化した日本人が健康を取り戻すには――

東京医科歯科大学大学院 国際環境寄生虫病学
藤田紘一郎教授

文明という檻の中でしか暮らせない家畜化した日本人

 寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学を研究されている東京医科歯科大学教授の藤田紘一郎先生は、現代の過度の清潔志向とそれによる生活環境の無菌化が、日本人の免疫力を著しく低下させ、アレルギー性疾患や新型感染症の蔓延をもたらしていると警告されています。
 実際、30年以上前の日本ではほとんど問題にもならなかったアレルギー性疾患は今や4〜5人に1人がかかっているといわれ、克服したはずの感染症はエイズ、病原性大腸菌O|157、多剤耐性菌による院内感染症、薬剤耐性菌結核、そして狂牛病と、新たな形をとって人々に脅威を与えています。
 戦後にはじまった日本人の"超清潔志向"は、太古の昔からヒトと共生してきた寄生虫を人体から一方的に駆逐し、さらに、抗生物質の乱用や、強力な洗剤、抗菌グッズ等の多用により、免疫に重要な皮膚や腸などのバリアの形成に働く共生菌を排除したことが、アレルギー性疾患や過敏症の多発、感染症の暴発を招いたと藤田先生は指摘されています。
 そればかりか、こうした病的な清潔志向は、異物の存在を一切許さない奇怪な人間を生み、自然との共生によってしか存在し得ない生物としての基盤を失わせ、今や日本人は"文明"という檻の中でしか暮らせない"家畜人間"になり下がり、感性の衰弱をも引き起こしているとおっしゃっています。
 健康は自然と共生することでしか得られないと断言される藤田先生に、家畜化した日本人が人間本来の姿へ回帰する道筋を教えていただきました。

微生物との付き合いがアレルギーを抑える回虫が減ってアレルギーが増えた

藤田 アトピーや花粉症、喘息、こうしたアレルギー性疾患が増えてきたのが1965年。一方、回虫の感染率は1950年には約62%だったのが、集団検便、集団駆虫で1965年には5%を切っています(図1)。こうした現象は結核にもいえます(図2)。そうすると全部謎が解けてきたわけです。
 というのは、スギ花粉症は1963年に日光市で発見されたのが第一例です。ところが、日光に杉並木が植えられた17世紀以来、スギ花粉はずっと飛び続けて、日本人は花粉症になりにくいというのが通説だったんです。それが、第一例が見つかってあれよという間にポピュラーになり、今では日本人の5人に1人か2人は花粉症です。その原因は、戦後の日本が進めてきた超清潔志向がもたらした日本の無菌化にあるわけです。 

アレルギーとは無縁のカリマンタン島の子供たち

藤田 私が本格的に寄生虫の研究を始めたのは1968年、日本人商社マンの健康管理でインドネシアのカリマンタン島に行ったのがきっかけです。ちょうどその頃、日本ではアトピーとか花粉症とか気管支喘息などが出始めて、それまでほとんどなかったのになぜなのかということが議論になっていました。
 ところが、ウンチが流れている川で平気で遊んでいるカリマンタン島の子供たちはやたら元気で、皮膚は黒光りしてアトピーや花粉症や喘息の子なんて一人もいない。しかも、自分たちの排泄物を流している川の水をそのまま炊事、洗濯、入浴と生活用水一切に使っているので、全員回虫にかかっています。
 私自身、小学生時代は父が結核療養所所長として赴いた三重県多気郡明星村という田舎で過ごし、そこでは全員回虫を持ち、杉林で杉をゆすって実をとって杉鉄砲にして遊んだり、それでも花粉症にかかっている者なんて誰もいませんでした。そんな少年時代とカリマンタン島での体験から、これは寄生虫がアレルギーを抑えているのだろうと閃いたんです。
 それからは今でもカリマンタン島には毎年行くようになり、現地住民の調査を続けていくうちに4〜5年で、寄生虫の中にアレルギーを抑える物質があるに違いないと確信するようになったんです。

寄生虫の排泄物中に発見したアレルギー抑制物質

藤田 カリマンタン島の子供たちは、アレルギーを起こす抗体の「IgE抗体(図3※)」が非常に高く、それなのにアレルギーがない。後で分かったことですが、このIgE抗体は回虫由来のもので、しかもその大部分が他の花粉やダニなどのアレルゲン(アレルギーを起こす原因物質)とは結合しない、活性のない特殊な抗体(非特異的IgE抗体)だったのです。
 寄生虫を集めて日本で実験を開始したのが1972年。それ以後、誰にも相手にされず手伝う者のない中、ひたすら実験を続け、遂に1977年、寄生虫の分泌・排泄液(尿や糞)の中に見つけた「分子量約2万の糖蛋白(ESC)」が、他のアレルゲンとは結合しない「非特異的IgE抗体」を産生することで、アレルギーを抑えることを確認しました。
 アレルギー反応を一言でいえば「肥満細胞の破れた状態」です(図3|(a))。例えば、鼻の粘膜にある肥満細胞が破れると、ヒスタミンやセロトニンやロイコトリエンなどの起炎物質の作用で、くしゃみ、鼻水、鼻づまりがおこる。同じことが気管支の粘膜におこれば気管支喘息、皮下ならアトピー性皮膚炎になるわけです。肥満細胞の表面には、IgE抗体がくっつく鍵穴のようなもの(IgE抗体レセプター)があり、この鍵穴に花粉などのアレルゲンと結合したIgE抗体がくっつくと肥満細胞の破裂がおこるのです。
 ところが、この寄生虫由来の活性のないIgE抗体が肥満細胞を覆いつくしてしまえば、花粉やダニが入ってきても鍵穴に結合することはできないので、肥満細胞は破れることがなく、アレルギー反応はおこらないというわけです(図3|(b))。 

ヒトと寄生虫の絶妙な共生関係
──寄生虫は薬には使えない──

藤田 この「分子量約2万の糖蛋白(ESC)」が、分泌・排泄液に発見されたというのには大きな意味があります。
 寄生虫はヒトの免疫系からの攻撃をかわす手段として、排泄物を身の回りにばらまき、それをヒトに攻撃させることで自分はぬくぬくと生きているのです。一方、宿主側からすれば、このような寄生虫の行為が、宿主のアレルギー反応を抑えてくれていると考えられます。こうした関係は、有史以前からのヒトと寄生虫の長い間のやりとりでできあがった共生関係と考えられます。
 この特殊な糖蛋白を薬として使ってアレルギーを治す実験を今やってまして、この糖蛋白を遺伝子組み換えで大腸菌に埋め込んでアレルギー抑制物質をつくることに成功し、それをアトピー性皮膚炎をおこしたネズミで実験してみると、アレルギーがおこらないんです。ところが、この抑制物質は強力な抗アレルギー剤である半面、免疫のバランスを崩し、がんになりやすい体質にもしてしまうんです。
 ヒトの免疫は、免疫反応を促進するヘルパーT細胞に存在するTh1とTh2の2つの工場でつくられ、Th1はがん細胞を、Th2はアレルギーを抑える働きを持っています。この2つはちょうどシーソーの上でバランスをとる形で存在していますが、私が開発した抑制物質を投与すると、Th1とTh2のバランスを崩してしまってシーソーが動かなくなり、Th2は大きくなってアレルギーを抑えるけれど、Th1は小さくなって発がんやウイルス増殖を抑えるインターフェロンなどが分泌されない体になってしまうんです(図4)。
 一方、生きた寄生虫の感染では、宿主の免疫を常にTh2優位の状態に固定するのではなく、時にTh1優位の状態に戻し、免疫のバランスをとっていることが分かってきました。このように、ヒトと寄生虫には実に「共生の妙」ともいうべき関係があるわけです。
 ですから、この実験は回虫がアレルギーを強力に抑制していることを示すと同時に、西洋医学の限界を示している実験でもあるわけです。つまり、がんとかアレルギーは西洋医学的な手法では無理、自然治癒力を上げるという東洋医学的な発想でいかないと無理だということです。それには、やはりもっと自然にふれあうということなんです。
 では、アトピーの子に回虫の卵を飲ませたらどうなのか。ところが、回虫の卵を飲んでも回虫は孵らない。寄生虫が孵る自然のサイクルというのがあるんです。
 例えば、私は今「きよみちゃん」というサナダ虫と共生しています。きよみちゃんが産んだ卵は1日200万個もウンチに出ますから、卵はいくらでも差し上げられますけれど、それをなめても飲んでも苦いだけです。
 サナダ虫はサナダ虫の卵をもつヒトのウンチが川に流され、孵化したときにミジンコに食べられ、そのミジンコをサケやマスが食べ、その感染したサケやマスを食べないと、ヒトの体内には入らないんです。だから、私のサナダ虫を増やすには神田川ではダメです。富山に行って神通川でウンチして、富山の神通川にはミジンコがいてサケがのぼってきますから、そのサケの身を食べないといけないんです。
 文明が発達して水洗トイレばかりになると、サナダ虫は絶滅してしまうということです。

いろんな微生物との付き合いがアレルギーを抑える
──旧東ドイツの子供の方がアレルギーが少ないのは──

藤田 日本では最初、私のこうした主張は誰も相手にしませんでした。ところが外国では"寄生虫に感染しているとアレルギーが少ない"というデータは、いろんなところから報告されていたんです。
 一番はっきりしているのはドイツです。ドイツでは40歳以下の人がアレルギーにかかる率は旧東ドイツより旧西ドイツの人の方が高く、子供では約3倍も多いんです。
 それまで、喘息やアトピーの原因には、公害や排気ガス、食品添加物や農薬などがあげられていました。そうすると、公害がひどかった旧東ドイツの子供たちの方がアレルギーが多いはずです。調べてみると、旧東ドイツの子供たちは寄生虫にかかっている子が多く、寄生虫がアレルギーを抑えていたということだったんです。
 日本でもその後、寄生虫がアレルギーを抑えるという私の研究が認められ始めてから、京都大学や大阪大学、和歌山大学の耳鼻科の先生達が結核をはじめとするいろいろな細菌感染もアレルギーを抑えるというデータを報告し出してきて、結局、結核でもウイルスでも回虫でも、ヒトはいろんな微生物と付き合っているとアレルギーが抑えられるということが最近になって分かってきたんです。

行き過ぎた清潔社会が免疫力を低下させた
家畜化した日本人と抗菌・消臭グッズの氾濫

藤田 日本人は今、衣・食・住が完全に与えられ、満たされた人生を送っているように見えますが、見方を変えれば、日本人は住み家と餌が常に用意されている「家畜」としてしか生きられなくなったといえます。
 家畜化した人間が最も必要とした条件が"清潔"です。
 世の中の製品はいつの間にか全てが抗菌グッズになり、初めが臭わないというふれこみの抗菌靴下、それからはパンツからシャツ、布団、テレビ、ボールペンからキャッシュカードに至るまで、抗菌加工しないと物が売れない有様です。
 ところが抗菌加工にはそれだけ余分な物質が加わっていますから、それに対する過敏症は当然おこってきます。
 もっと大変なのは、それがゴミとなって土の微生物を殺し、川の微生物を殺し、海のプランクトンを殺していることです。赤潮がやたらに多くなっている一つには、プランクトンを殺すことでプランクトンが餌にしている藻類が異常繁殖することがあります。飲み水も化学物質でいっぱいですから、それを塩素で処理することで、飲み水にクロロホルムが発生する。これが東京とか大阪など大都会の水道水の現状です。
 抗菌グッズとセットになって氾濫しているのが消臭グッズです。ウンチすることでいじめられた小学生は汗やウンチの臭いを消す医薬品や化粧品で臭いを消しにかかり、若者は洗浄力や消臭効果の強いシャンプーで朝シャン、中年男性までがせっせとオーデコロンをつけて、自分の臭い消しにやっきです。
 こうした行き過ぎた清潔志向は免疫力を落としているばかりでなく、環境を汚染し、感性をも衰弱させ、それがまた人間に返ってくる。その一つの顕れが化学物質過敏症であり、さらには子供から大人まで現代の日本社会に浸透している、陰湿で陰惨な行き過ぎたイジメです。 

共生菌の排除とバリアの崩壊

藤田 行き過ぎた清潔志向は、我々の体を守ってくれる常在菌、例えば皮膚常在菌や腸内細菌など、常に生体と共存して私達の体を守っている「共生菌」も追い出してしまいました。
 例えば、正常な皮膚には常在菌が10数種いて、皮膚の脂肪を分解して皮膚脂肪酸を作って皮脂膜を形成しています。皮脂膜があるから、皮膚は常に保湿され、整った角質層がダニや細菌などが体の中に侵入しないようにバリアになっているわけです。
 ところが、抗菌グッズの使用や洗いすぎで皮膚常在菌がとり除かれると、皮脂膜が形成されないために角質層はバラバラになって、乾燥肌になってしまいます。ドライスキンはもともとお年寄りの病気で10年前は若者1に対してお年寄り10でしたが、今は若者1、お年寄り1の割合で、若者の間に非常な勢いで乾燥肌が広がっています。乾燥肌になると、ダニなどのアレルゲンが入ればアトピー性皮膚炎に、悪いバイ菌が入れば皮膚が化膿してしまいます。
 我々の実験では、お風呂に入って普通の石けんをタオルに付けて洗うと皮膚常在菌が90%なくなってしまう。しかし、10%残っていれば12時間で元に戻ることも分かっています。だから1日1回お風呂に入って石けんで洗うのはOKだけれども、今はやりのボディーシャンプーなどは合成洗剤ですから、そんなもので洗うと、根こそぎとられちゃうんですね。石けんでもお年寄りは、お風呂に毎日入るのは良いけど石けんで洗うのは1日おきにしておくと良いということになります。

文明が興した新型感染症
エイズ・O―157から狂牛病迄
清潔病と抗生物質の乱用

藤田 行き過ぎた清潔志向の延長にあるのが抗生物質の乱用です。共生菌の排除には、この抗生物質の乱用もあります。
 抗生物質はバイ菌には効いてもウイルスには効かない。ところが、風邪の大部分はウイルスなのに、効くはずがない抗生物質を乱用する。それは、抗生物質を出すと儲かるという診療システムにも問題があります。それで、抗生物質の乱用で何がおこるかというと、新型感染症の蔓延です。
 多剤耐性菌による院内感染症はもとより、エイズも、エボラ出血熱も、マラリアの横行も、結局人間が便利とか快適とか経済効率とか、自分の都合の良いことばかりを追求した結果、変なバイ菌が出てきてやられているわけです(表)。
 近年、日本を含め先進諸国で猛威をふるったO|157も、過度の清潔志向と抗生物質の乱用等で腸内善玉細菌が減り、腸内細菌叢が滅茶苦茶になって(図5)、ありふれた大腸菌の一部が凶悪化した結果です。

免疫を超えてしまった病気"狂牛病"

藤田 それでも免疫力が強ければ人間側が勝つし、抗生物質が効けばそれでも良いわけですが、人の努力で阻止できないのが狂牛病です。
 狂牛病は今までのバイ菌やウイルスと違って、免疫力を飛び越えていますから、どんなに免疫力があって元気であろうが、食べたらお終いです。立体構造が違っているだけで、アミノ酸構造は全く同じですから、異常プリオンが正常プリオンに感染するのを止めることが今のところは出来ませんし、異常プリオンは焼いても煮ても駄目ですから、もうこれは免疫力を完全に超えているものなのです。
 草食動物である牛に、最初は羊の肉骨粉を与え、羊のスクレイピーという病気が牛に感染したのが狂牛病です。羊の肉骨粉ならまだ許せるのかもしれませんが、次は牛の肉骨粉を食べさせたわけです。完全な共食いです。当然、変な牛が出てきます。同じ病気は実はニューギニアにもあったんです。人食い土人さん(ニューギニア高地人)たちが人の脳を食べて全く同じ病態、脳がスカスカになる「クル」という病気になったんです。
 ですから、今回の狂牛病というのは、神様が人として一番やってはいけないと戒めたことを、人間がやり続けてきた結果なんです。

自然性を取り戻す
──バイ菌と共生し免疫力を高める生活──
自然とふれあう

藤田 バイ菌と共生していく生活の知恵はそんな難しいことではなく、今いったことをやめれば良いことです。
・抗生物質をやたらに使わない。
・洗い過ぎない。石けん手洗いは良いけれど、殺菌剤や殺菌剤入りの石けん、合成界面活性剤の液状石けんは使わない。うがいは良いけれど、普段からイソジンなどでうがいしているとあっという間に喉の常在菌をやっつけて、かえって免疫力を落とします。
・もっと自然にふれあう。泥んこ遊びしている子供たちにはアレルギーが少ないというデータが出ています。とにかく自然にふれるだけで免疫能が非常に高まることが分かっています。
 結局、人間も動物ですから、動物性を発揮出来る生き方をしないといけないんです。私達の体は、遺伝子的にも細胞学的にも1万年前と全く変化していないんです。 では、1万年前はどんな生活をしていたかというと、裸や裸足でジャングルや野原を走り回り、体の中には回虫やらバイ菌やらウイルスやらが入ってくる。そうすると、我々の体はそれを無害化してくれる様々な免疫担当細胞を備えていくわけです。ところが今の清潔社会では、回虫担当免疫細胞にしろ、結核担当免疫細胞にしろ、いろいろな免疫担当細胞が体の中で仕事を失っている。
職を失った免疫担当細胞が何をするかというと、花粉とかダニとかゴミとか、ことさら攻撃しなくても良いものにも反応を起こすようになるんです。
 だからなるべく自然に戻る。1万年前には戻れないけれど、コンクリートの部屋でコンピュータゲームするよりは、外に出て泥んこ遊びをしたり、休日には野山に行って森林浴したり、川や海に釣りに行ったり、これで大分違ってくるんです。

植物食中心のスローフードへの回帰
──世界一免疫力の低い日本の子供たち──

藤田 動物として一番大事なことは"食"です。食事中は小言を言わない、楽しく食べる。
 そして、穀類、野菜、豆類、果物類の植物性のものを中心にすれば、これらが善玉腸内細菌の餌となって腸内細菌叢のバランスを整え、免疫能が上がり、がんにもアレルギーにもかかりにくくなる。これはもうはっきりしています。
 今、日本の10歳以下の子供たちは免疫力が世界一低く、70歳以上は世界一高いといわれています。実際、今の日本人が長寿なのは私の親の世代、いわゆる粗食世代が元気だからです。ところが、今の10歳以下の子供たちはハンバーガーにスナックという食生活で育っていますから、腸内腐敗菌の餌となるものを毎日食べて、すっかり免疫力を落としているんです。
 インドネシアのバリ島で、4月だけで200名のコレラ患者が出た時期がありましたが、かかったのは日本人の若者だけ。その頃、私達もバリ島にいましたが中年以降の日本人は誰もかかっていない。インドネシア人はもちろん、オーストラリア人も1人もかかっていませんでした。結局、きれい過ぎる社会でコンビニ食を食べている日本の若い世代がやられているんです。肉類、インスタント食品、パンとコーヒー、洋食、間食、こうした食生活で免疫が低下し、アレルギーや感染症を増やしているわけですね。
 一方、アメリカはファストフードを生み出し、最近は遺伝子組み換え食品で世界の食糧をコントロールしようとしていますが、自国民に向けては食事ピラミッド(図6)をつくって、「日本やアジアの伝統食を見習いましょう」、「赤身肉は月1回にしましょう」、「毎日食べるものは穀類、野菜類にしましょう」、「ファストフードやコンビニ食は止めましょう」と大キャンペーンを打って、その結果、がんの死亡率は逆転して下がってきました。フランスでも、自分の食生活は自分の国でつくろうと自給率を高めています。
 安くて便利で簡単ならいいというのは日本人だけです。清潔指向と一緒に走っているのが食べ物の劣悪化で、それと並行して免疫力が低下していく、このままいけば日本人は今後ますます弱くなっていくと思います。
(インタビュー構成・本誌功刀)