病気を治す医学へ

鍵を握る自律神経と白血球の関係

新潟大学医学部 安保徹教授

病気を治す新しい医学へ
間違った治療法では、病気は治らなくなる!

 アトピー性皮膚炎、気管支喘息、膠原病、潰瘍性大腸炎やクローン病、多くの現代人を悩ませているこれらの炎症性疾患は、病院に通っているのにかえって悪化してしまった、それなのに患者も医者も難病だからしかたないとあきらめていることが多い、ということを見聞きしたことはありませんか?
 それは、病院の治療法が根本的に間違っているからだと気がついた免疫学の大学教授がおられます。新潟大学医学部の安保徹先生です。
 安保先生は「白血球に対する自律神経によるコントロール」のご研究を通し、現代医学は、一つには、痛み・発疹・発熱などの症状を生体の治癒反応とは見ていないこと、もう一つに、消炎鎮痛剤やステロイドホルモンが白血球の顆粒球による炎症増悪をかえって招いているという事実を見過ごしていることに気づかれ、そのため患者の病気を悪化させるような治療につながっているケースが圧倒的に多いことを見抜かれたのです。そして、このことを正確に理解して取り組むと、難病といわれる病気も確実に短期間で治癒に導くことができることを事実
で明らかにしておられます。
 今月はこの「病気を治す新しい医学」を広めておられる安保徹先生のご提唱に耳を傾けてみたいと思います。

現代医学で病気が治せないわけ
お医者さんの目標は…

安保 今、お医者さんが尊敬されない時代になってしまった。人よりたくさん勉強し、困っている人の病気を治せるのなら絶対尊敬されるはずなのに、それがそうでないのは、変な考え方が医学の中に忍び込み、医師がそれを判断できない状況になって、病気を治せなくなっているというか、かえって悪化させるケースが多くなってきたからなんです。
 今、医学部で学ぶ医学は、あまり治療のことは習わない。病気について断片的に習って、ぱっと外に放り出される。それで慌てて先輩の医者がやっている処方を真似して、一生懸命に薬を出す。それも、患者さんが訴える症状を消すことだけで精一杯で、2年くらい経つと慣れてきて、一段落した時にはただ症状を消すための治療、例えば咳が出ると咳止めを出したり、熱が出ると解熱剤を出したりになってしまっている。
 そうではなくて咳が出るのは、何か咳で外に排泄するような状況にあるのじゃないかとか、赤い顔になって熱が出ているのは、血管拡げて血流を盛んにして何とか壊れた組織を治そうとする働きではないかというように考えるような力を失っているのが現状です。
 で、5年10年と経っていくと、管理職になったり、自分で開業したりして、環境が変わって別な方にエネルギーをとられて20年位経ってみても、やっぱり病気は治せない。30歳位で世に出て20年経つともう50歳でしょう。そろそろ人生たそがれの時になって、こんなことで良かったのかなぁと、やっと我に振り返って思う医師が多いんですよ。
 本当は患者の自然治癒力を無視して、不快な症状を消すことを目標にしてはいけなかったんですね。病気の捉え方を間違ったために病気と闘う人間の全体像が見えなかったんです。

現代医学の功罪

安保 現代医学は、過去100年の間に無菌法、麻酔と外科手術、ワクチンと免疫、抗生物質の発見でかなりの病気、特に感染症を克服しました。しかし、薬に依存しすぎる今の風潮では、自己免疫疾患、アレルギー疾患、がんなどについても薬に対する過剰な期待はますます肥大しているように思われます。
 医学の進歩は分子生物学の研究によって支えられているのですが、この研究は謎が次々と解明されて面白い反面、細かいことを分析的に研究すればするほど、もっと細かいことを研究するようになるのが関の山で、全体像が見えるということがない。狭い範囲での生体反応の理解は進んでも、生体全体の中での反応の仕組みの研究はないがしろにされているのです。

症状は治癒反応
──現代医学の根本的間違いとは──

安保 我々は自然治癒力というものを持っているのに、現代医学はそれを勘違いして、咳が出ると咳止め、熱が出ると解熱剤といった具合に、多くは不快な症状を消すことを治療の目標にしてしまっています。そうではなく、痛みだとか咳だとか発熱だとかの様々な症状は、体が壊れた組織を何とかして治そうとする働きなんです。
 しかし今の医学は、咳は外に排泄する状態にあるとか、熱は体が血流を要求して血管を思いっ切り拡げた時に出るというようには考えない、考えている余裕もない。ひたすら薬の名前を覚え、症状に合わせて薬を出し、廊下にいっぱい待っている患者を捌いていく、そういう医療になっています。
 それで私はこれでは駄目だ、病態をちゃんと考える医者にならなければと思い、免疫学の研究に入ったわけです。例えば感染症で人間全体はどう動くとか、大気圧で病気の重症度が変わるとか、そういうものの中に免疫の全体像が潜んでいるのではないかと考え始め、7〜8年前から、こうした研究の取り組みから「白血球に対する自律神経によるコントロール」の仕組みが分かり、現代医学の根本的な間違いが分かってきたのです。
 たまたま今日、リウマチでプレドニン5mgを毎日飲んでいるという51歳の女性から、体がどんどん冷えてこの暑い夏にカーディガンを放せない、私の記事を読んでステロイド剤をやめ始めたらもっと悪くなったという相談がありました。それは当然の反応なんです。
 ステロイドを止めると、関節に水がたまったり、熱を持ってあっという間に腫れたり、見かけ上は悪化する。しかし、実はそれは治癒に向かう反射、治癒反応なのです。
 霜焼けでは、手足が冷えて雪靴に雪が入ったのも分からないくらい無我夢中になって遊んで、家に帰ってストーブにあたると赤く腫れ上がって痒くて痛い。その時、手足を冷水につけるとスッと痛みがとれる。ところがそれは治癒に向かったから痛みがとれたのではなく、冷やしたことで血流を抑制した結果、痛みがとれたわけです(図1)。
 リウマチもこの霜焼けと同じで、ステロイドも痛み止めも血流を抑制して冷やす世界だから、それで痛みや炎症がとれたからといって治癒には向かっていない。痛みや痒み、発熱や冷えなどもろもろの症状を乗り越えた時に血流が回復して治っていく(図1)。そういう概念がないと、解熱剤、鎮痛剤、痒み止めで症状を止め、薬が切れ再び症状が出るとまた薬、そんなことを続けていたら何時までたっても治癒には向かわず、最終的には破綻するわけです。
 原因が分からない時の痛みってすごい恐怖を呼びますが、例えば霜焼けでも急にあっためると痛いけど、「人肌でやっていくと大丈夫だよ。2〜3日も経てば自然に治るから、ちょっとの辛抱だよ」といってあげると、子供達はもう痛みを忘れて遊び出す。
 だから、病気の痛みでも、病気が治るとき血流を回復させるために、血管を拡げるプロスタグランディンは痛み物質でもあると、そういう説明を聞いた時には痛みの恐怖感は全然ない。そうなると、痛みも消える。なぜなら、痛みは大脳皮質で、すごい増幅されているからです。がん性疼痛も血流を悪くさせる抗がん剤を使った人達だけです。
 とにかく、難治とされるアレルギー疾患、膠原病、自己免疫疾患、あるいはがん、胃潰瘍、高血圧、糖尿病などの生活習慣病…、現代医学でこういう病気が治せないのは、
・痛み、発疹、発熱などの症状を「体の治癒反応」と見抜けない
・消炎鎮痛剤やステロイドホルモンが、顆粒球由来の炎症を悪化させることを知らなかったからで、この二つを理解すると病気は短期間で治癒に向かっていきます。

免疫細胞・白血球に対す自律神経によるコントロール
白血球の顆粒球とリンパ球

安保 私は免疫の仕組みを体全体でとらえようということで、細胞間のつながりといったことを心がけて研究をしてきました。
 免疫とは体を守る仕組み、体に備わっている防御システムです。免疫の主な役割は、体に侵入した異物(ウイルス、細菌、異種たんぱくなどの「非自己」や、自分の体の中から生まれたがん細胞などの「非自己」)を撃退することにありますが、その中心的な役割を果たしているのが免疫担当細胞の白血球です。
 白血球は、原始的なマクロファージが大もとで、それが進化した顆粒球とリンパ球の二大細胞群に分かれます(図2)。
 顆粒球は真菌や大腸菌などサイズの大きい異物やその死骸などを食べて分解し、体を守っています(図3)。細菌の侵入した現場では、顆粒球が大量に繰り出され、そのため炎症などがあると、血液中の顆粒球がドッと増え、通常3500〜4000個(血液1mm3中)が1〜2万個になることもあります。
 一方のリンパ球は、ウイルスなどの微小な抗原を処理するのが得意で(図3)、ウイルスなどが侵入してくると、これを「抗原」と認識し、抗原の活動を邪魔する「抗体」を作って捕まえます。この「抗原抗体反応」は、リンパ球のT細胞(胸腺で成熟)とB細胞(骨髄で作られる)の連携プレーで行われます。リンパ球は一度出会ったウイルスや細菌を抗原として覚えており、二度目に同じ抗原が侵入すると、大量の抗体を作って、抗原の働きを阻止します。
 顆粒球とリンパ球の大もとのマクロファージは、体内に異物が侵入すると、これを食べたり、くっついて殺すなどの働きがあります。単細胞生物時代は、マクロファージが異物を食べて排泄するといったごく単純な防御システムで事足りていたわけですが、多細胞生物時代になると、この程度の防御システムではとても寿命を延ばすことができず、リンパ球と顆粒球に進化していったのです(図4)。

痛み、発赤、発疹、発熱、下痢、喘鳴…

安保 病気になったと気がつく症状の代表的なものに、痛み、発赤、発疹、発熱、下痢、喘鳴があります。
 現代医学では、患者にとって不快な症状を薬を投与することによって消すことを治療目標にすることが多いのです。臓器別にいわゆる対症療法で診療しようとするわけです。
 しかし、これらの症状には、血管を拡げ血流を増やす副交感神経反射であるという共通点があります。内因性の痛み因子でもあり、血流を増やす血管拡張因子でもあり、発熱因子でもあるプロスタグランディンは、消炎鎮痛剤を投与すると産生がとまるので、痛み、発赤、発熱は軽減しても、病気は治る方向には向かわないのです(図5)。
 血流が増えるのは、抗原抗体複合体を洗い流したり、組織障害を修復したりするのに必須な治癒反射と理解する必要があるのです。霜焼けでも、赤く腫れて痛くても、この症状を乗り越えたところに治癒があるのでしたね。副交感神経は消化管の蠕動運動と分泌、気管支平滑筋の収縮を支配しているので、下痢や喘鳴はその治癒反応としておこるのです。
 逆に、病気のきっかけや始まりとなる血流障害の多くは交感神経の過緊張によって引き起こされることが多いのです。血流障害は顆粒球増多を招き、組織障害を引き起こすのです。この引き金に過労、心の悩み、不規則な生活、消耗などのほか、ステロイドホルモン剤の使用や非ステロイド消炎鎮痛剤の長期使用があります。

ステロイド剤の問題点

安保 ステロイドはコレステロールから作られます。コレステロールが体内で過剰になると老化を促進したり、動脈硬化を促進したりするので、皆注意するけど、コレステロールが悪玉になるのは、コレステロールが活性酸素で酸化コレステロールになるからです(図6・7)。体の中で食物から正常に作られるコレステロールでさえ、その排泄が問題になるのに、外からステロイド剤を与えたら排泄不可能でどんどんたまって、20年くらいで破綻を来してしまうのです。20年というのがね、すごい時間でしょう。例えば10歳で塗り出して20年って
いったら、30歳だからね。子供は排泄能力が強いから5年くらいは上乗せしても、35歳で破綻を来して死に至るわけです。子供の頃から使っていると、最後は引きこもり、もう身動きできなくなるから廃人の人生になっちゃう。で、その時は、まさかステロイドの害だと思ってないから、腎不全とか肝障害とか出てもアトピーに別な病気が上乗せされたくらいに考えて、内科とかに移るでしょう。そうやって何が何だか分からないで死んでいくわけ。すごい世界だ。薬があんまり強過ぎてね、だから、痛み止めとステロイド、この2つに、あとは抗がん
剤。この3つを使わなきゃよく治る。がんも治ります。
 ステロイドを離脱する時に来るリバウンド(ぶり返しの症状)は使う前よりもっと強く起こる。薬を止めた時に、また治ろうとする反射がぶり返して、出だしよりももっと強く起こるわけ。それは薬で冷やされてる分が上乗せされているから。だからステロイドも痛み止めも離脱しようとするとき、すごい呼び戻しが来るから、大変なわけ。だから離脱させるには、はじめからそこを説明しないとね、患者さんも不安で大変だ。リウマチの人が急に痛み止めとかステロイドを止めたら、あっという間に膝が腫れ上がってきて、すごい熱を持ちます。それは
あらかじめ話しておいても大変なくらいで。それでもちゃんと本を読んでもらったり説明したりすると、痛み止めだったら3日で大体症状が治まる。ステロイドの場合は、一通りおさまるのに1ヶ月はかかります。
 アトピー性皮膚炎とか、すごく増えているでしょう? なんでこんな爆発的に患者数が増えるわけ? 毎年何万人単位で増えている。これは何かが間違っていると考えなきゃおかしい。答えはステロイドの塗り続け。薬が切れた時は、ステロイドが変性した酸化コレステロールとして停滞しているから、それが排泄されるまでは大変。
 消炎鎮痛剤に対する誤解安保 痛み止めは、消炎鎮痛剤といわれたり非ステロイド系抗炎症剤ともいわれたりしていますが、この名前によって安心だと誤解をしている人が多いですよ。顆粒球の関与する化膿性の炎症や、組織破壊の炎症も抑えてくれるように思って。非ステロイド系抗炎症剤は、プロスタグランディンの関与するカタール性の炎症や、発熱の炎症に対しては特効薬ですが、顆粒球の炎症に対しては増悪剤になるんです。
 ステロイド剤は強力な抗炎症剤として知られていますが、単に、抗炎症作用のみを持つわけではありません。ステロイドは組織に長く停滞した時は変性して酸化コレステロールとなり、その強力な酸化作用を発揮して、周りに顆粒球の炎症を呼び起こします(図7)。ステロイド外用剤を長く塗っている皮膚は、脆弱化したり、老人の皮膚のように黒ずんできます。また全身悪化反応も引き起こします。酸化コレステロールは交感神経緊張をもたらしますので、全身は極度に冷え、体調を損ない、頻脈を作り、不安や不眠を招き、生きる希望を奪う力さえ
もっています。
 悪性腫瘍患者でも、発熱を生じることがあります。傍腫瘍症候群といって、自己免疫症状も伴います。これはがんに対して免疫系が働き始めた有益な生体反応ですが、ここでも解熱のために、非ステロイド性抗炎症剤や、ステロイドが投与される現実があり、がんの治癒を妨げているのです。栄養不足、重労働などが当たり前だった昔は、がん患者や、膠原病患者が悪化する条件に満ち満ちていましたが、今日ではそういうことはありません。今述べたような生体反応を利用して、いずれの疾患も治癒に導くことができるのです。
 病気の原因を考えない医学安保 本態性高血圧症とか、特発性血小板減少性紫斑病という病名には、原因不明という意味合いが強く含まれています。しかし働き過ぎや持続する不安で、高血圧症を来している人々にも、本態性高血圧症という病名を安易につけて、薬物投与がなされている例が多いのです。整形外科などで、腰痛に対して痛み止めが盛んに投与されています。この薬の投与がそもそも間違いなのですが、その結果として高血圧症がきます。これは、消炎鎮痛剤が、血管拡張因子でもあるプロスタグランディン産生を抑制するために、血圧を
下げる力が奪われるからです。このような医源性高血圧症の患者に対しても、本態性高血圧症の診断名のもとに降圧剤が使用されているのです。
 自己免疫疾患は、感染症やストレスによって激しい免疫抑制状態がくることによって引き起こされています。このような状態では、進化した免疫系T細胞とB2細胞は抑制され、顆粒球増多とともに、古い免疫系(胸腺外分化T細胞とB1細胞)にスイッチしています。胸腺外分化T細胞は自己応答性を持ち、B1細胞は自己抗体を産生します。このような古い免疫系の活性化を悪者扱いにしてはいけないのです。自己免疫病や膠原病はリンパ球減少に伴って顆粒球増多があり、顆粒球による血管炎や組織破壊を修復するために古い免疫系が働いていると
考えられるからです。いわゆる、異常自己の速やかな排除です。このような病気に特発性と名付け、原因を考えずに抗炎症剤、そして免疫抑制剤であるステロイドホルモンを投与すれば患者が破綻を来すのは時間の問題となります。むしろ免疫力を高めることによってこそ、このような自己免疫病も治癒していくのです。

白血球に対する自律神経によるコントロール

安保 生体防御の担い手である白血球の基本はマクロファージです。多細胞生物はいろいろな一部の機能を高めた細胞を分化させましたが、単細胞時代の自分自身の性質をそのまま残しつづけたのが白血球であり、マクロファージであるといえます。
 マクロファージは多細胞生物の進化とともに、中胚葉系のすべての細胞の元になっています。また、白血球としての進化を遂げ、顆粒球とリンパ球という分身を産み出したのです。顆粒球は細菌処理にすぐれ、リンパ球は微小抗原の処理に優れています。
 私たちは生体が顆粒球とリンパ球を効果的に繰り出すために自律神経系による調節を行っていることを見い出しました。顆粒球は主に交感神経の支配を受け、リンパ球は主に副交感神経の支配を受けています(図8)。
 このような「白血球に対する自律神経によるコントロール」によって効率よく、省エネで生体を守ることができます。生物はえさ捕り行動(交感神経緊張)で手足が傷つき細菌侵入が起ころうとする時、顆粒球を増やしてこれに備えます。逆に食物の摂取、消化、吸収、排泄の時(副交感神経優位)は、消化酵素で分断された異種タンパクやウイルスなどが入ってくるのでリンパ球を増加させこれに備えているのです。
 この交感神経と副交感神経は互いに拮抗しているのですが、これが良いバランスになっているとき、顆粒球とリンパ球のバランスもとれ、炎症も自ずと鎮まっていくのです。
 万病の元ともいわれ、炎症を招来する人の体内で発生する活性酸素の80%は顆粒球の寿命が尽きるとき周辺にばらまいてしまう活性酸素ですが、この顆粒球の寿命たるや、たったの2〜3日です。健康な人では白血球の約60%が顆粒球、35%がリンパ球ですが、交感神経が優位になると顆粒球が増え、活性酸素が増えて炎症がひどくなります。これを抑えるには副交感神経を優位に持っていって、リンパ球を増やし、顆粒球を減らす方向でバランスをとるようにすれば良いということになります。

血流回復のためには

安保 消炎鎮痛剤、ステロイドホルモン、抗がん剤、制酸剤、Lドーパ、降圧剤、インスリンなど、日常よく使われている薬は、血流障害、顆粒球増多、組織破壊を招く力を持った薬です(図9)。私たちの組織は十分な血流を介して酸素や栄養を取り入れて生きていますが、これらの薬を長期投与したら生体が破綻を来すのは当たり前とも言えます。
 交感神経の過緊張は細動脈の収縮によって血流障害が生み出しますが、副交感神経系の過剰優位でも血管の拡がりすぎによる脈拍低下によって血液がうっ滞することで、むくみを伴う血流障害がおこります。いずれの血流障害でも組織の破壊が生じるので病気が発症します。そして、このような病気を治すためには血流回復が必要です。運動、マッサージ、刺絡療法、ツボ療法、温泉、漢方薬、鍼灸、光線療法、アロマテラピー、気功などが試みられています。
 しかし、いくら自律神経のバランスがとれる良い療法でも、間違った薬を投与されていては、血流を回復することは難しいので、間違った薬を止めることが大前提になります。

病気になってしまったら
がん

安保 代替療法をやれば良いのです。なんで発がんしたかというのを、今までの医学では偶然起こったと見ているわけです。私の目からはそうは思えない。発がんしている人達は、頑張り屋で無理している人、あとは家庭内不和とか、独特のストレスを抱え込んだ人達が発がんしてくるわけです。
 ストレスが続くと、粘膜とか皮膚の再生が促進されるのです。それは、血流が途絶えたり、顆粒球が増えてくると上皮細胞が壊されて、新しい上皮細胞ができる時に、そもそも正常の細胞の増殖に関連する遺伝子であるがん遺伝子が活性化されて、それに引金を引かれてがん細胞が生まれてしまう。がん化がおきるような過重ストレス下の体調で免疫機能も落ちているので、がんの免疫監視システムも抑制されている(図10)。それで発がんするわけです。
 だからニュースキャスターでも、売れっ子の人達の多くがやられるでしょう。頑張り過ぎ。やっぱり良い仕事をもらえると有名にもなれるし、面白いし、ついつい何本も番組に出たりしてるけど、それだけ自分の体の中で破綻を来しやすくなる。で、その時に抗がん剤を使えば、もっとストレスがかかるわけ。抗がん剤でがんは小さくなっても、免疫機能は殆ど残ってないから、何クールか終わって、半年後ぐらいに再発した時に、もう守る力がゼロ。だから全然対処できない。
 で、その時に副交感神経の反射を誘導する健康食品も良いのですが、その前に、こういう無理してなったんだったら無理を止めることが第一でしょう。
 あとはがんになるとすごい恐怖感が襲うんです。その恐怖感から逃れることが大事。がんというのはストレスで起こるんだから、ストレスから逃れると治る。あとは積極的に副交感神経反射を誘導して、血流を増やして、組織の修復を起こさせるようになれば免疫機能も高まるし治っていくわけ。
 がんは治りやすい病気です。こうやって考えて治療して、もう何十人も治していますよ。鶏の卵や拳くらいのがんが乳房にできても、この治療法でまず発育が止まり、半年ぐらいからだんだん縮まりだして、大体1年から1年半で消えちゃうわけ。そもそもがんってそういう病気なんです。私達の福田先生とか私も、抗がん剤を使用しない、がんの恐怖から逃れる、何か評判の良い副交感神経を刺激して自律神経のバランスのとれる治療法をする、この3つをやると、元気ピンピンになって、いま進行がんの6割が治癒します。

リウマチ

安保 リウマチも炎症をおこしている関節液をとって調べると、リンパ球は全然ない。全部顆粒球。だから、免疫抑制の極限なんです。だから免疫抑制剤を使っちゃだめというわけです。
 膠原病で病院に行くと前より必ず悪くなる。で、半年経ち、1年経ち、前より完全に悪くなる。それは治療が間違っているからで本当は免疫を亢進させる治療は暖めたり、恐怖心を除いたりしなければ治りません。
アレルギー
安保 アレルギーは、外来抗原、花粉、動物の毛、ダニの死骸、あとは口から入ってきたものに微量でも反応するわけ。
 その時に反応する人と反応しない人の違いはどうなのか? 思い浮かべて欲しいのは、虫さされの反応。虫や蚊に刺されたのに、腕の裏側まで腫れ上がるような過敏な人もいるし、刺し跡が見つかるだけの人もいるでしょう。それが、アレルギー反応の反応性なわけ。つまり色白で、ぷくっとしている人はすごく赤く腫れ上がる。ところが労務者みたいに毎日陽に当たってつるはしとっている人は、何も腫れない。刺した跡しか見えない。そういう人は、異物の蚊の蛋白とか入ってくるからアレルギー反応はおきるんだろうけどアレルギー反応というのは
、その人が今ふくよかであるかどうかで反応性ががらっと変わっちゃうわけ(図11)。
 過保護でゆったりした生き方で目一杯リンパ球を増やすような体調をつくっている人、甘いジュースを飲んで、運動不足で陽にも当らない、いつも家にいてファミコンやって、これはもう異物がきたら目一杯反応する体質ができているわけだ(図12)。
 だから抗原を避けるとか、ストレスを避けるだけではまだ駄目。それにプラスして体質改善をしないと。やっぱり外に出て遊ぶ。陽に焼け過ぎる危険性ばかりいっているけど、焼け過ぎない危険性もあるわけ。それはぶよぶよで反応しやすい体調になってしまうから。だからほどほどでないと駄目なんです。陽に当り過ぎないのも当り過ぎもどちらも悪い。これだけの太陽光線を浴びながら人間は進化してきたんだから、全く避けても駄目だし、年がら年中浴びてても駄目。ちょうどいいところっていうのは必ずあるわけ。そういう概念が大事です。
 病気になっても破綻を来すまで時間があるから、誰も気がつかない。破綻が近くなるとみんな慌てる。破綻前の5年位で、たいていの人が気がつくのですが医者を尊敬している人達は、まだ気がつかない。人間って、人に頼ると野性動物の勘が働かなくなって危機意識が少なくなる。だから、お医者さんを尊敬し過ぎるような人達は、すごい破綻を来してから脱ステロイドに駆け込むわけ。ところが普通の勘を持っている人だったら、1年たって前より悪くなっていれば、おかしい、こんな薬使いたくないと気がついて離脱しているわけ。だけど野性の勘
のない人、それとすごい真面目な人達が、裁判を起こす人になっていくんですよ。我々は野性の動物勘っていうのを持たないと、変な治療に対して抵抗できない。
 鍛錬もある程度だったら良いわけです。だけど、あんまりやり過ぎて、生体が破綻を来すくらいの鍛錬はもちろん駄目。過保護も駄目だけど。だからちょうど良いところでおさまる世界で生きてなきゃ駄目です。それはのんべんだらりとした世界ではない。やっぱり日中よく活動して、夜間はゆっくり休む、そういう中の正常範囲の世界。
 だから、日中は、気迫を込めて生きる。だけど、それだけ働くと疲れちゃうからぐっすり眠れるという状態でたっぷり睡眠時間をとれば良いわけ。むしろ日中だらだらしてエネルギーが余ると、夜寝るとき疲れが足りない。どうしても夜更かししたくなっちゃう。こういう起伏を伴う正常範囲の内でバランス感覚を持った生活を続けるのが大事です。そうすれば自律神経のバランスは自ずととれ、長年の病気も治り始めることでしょう。