細胞賦活の源泉は"酸素”にあり
健康長寿の秘訣は、最大効率で酸素をとり入れる「正心調息法」
医学博士 塩谷信男先生(99歳)
1902年(明治35年)3月山形県上の山町に生まれる。1926年東京大学医学部卒業。
京城帝国大学医学部助教授を経て、1931年東京渋谷に内科医院を開業。1986年閉院。
今年白寿、「人と違った点があるなら、それは人よりも深い呼吸を続けてきたこと」
塩谷信男先生は生まれつき虚弱であったことから中学生の時より二木式腹式呼吸法を熱心に実行、腹式深呼吸による多大な健康効果を体感されました。
長じてからは医学生、医師として呼吸法の実践、研鑽に励み、60歳で宇宙の無限力を想念しながら深呼吸する「正心調息法」を完成。91歳の時、地球の建て直し、真の平和な世界の招来に、正心調息法を世に出され、現在に至る迄、執筆、講演活動を通じて普及に力を尽くされています。
84歳で東京渋谷の医院を閉院され、相模湾を眼下に臨む風光明媚な熱海のケアマンションに移られて15年。塩谷先生は今も朝はマンション屋上でゴルフの打ちっぱなしを1時間、週1回はコースに出られ、87歳の時に日本初のエイジシュート(ゴルフの1ラウンドを自分の年齢かそれ以下のスコアで回ること)を達成された後も92歳、94歳と3回のエイジシュートを達成されています。
塩谷先生のこの驚異的な大健康力こそ正心調息法の偉大さを物語るものであり、しかも、・正心、・深呼吸、・想念(イメージ)の3つの要素から成る正心調息法は、エブリワンに通じる普遍的な健康長寿法、幸福をもたらす奥義と、塩谷先生は断言されています。
ヒトの脳細胞は20歳まで成長し、ヒト本来の寿命はその5倍の100歳であり、「長寿と胸をはれるのは100歳を越えてから」とおっしゃる塩谷先生は今年白寿。
「私に人と違った点があるなら、それは人よりも深い呼吸を続けてきたことです」と語られています。
病弱でも負けん気は人一倍
──病気の百貨店とからかわれるほど、子供時代は大変ご病弱だったとか…。
塩谷 ご病弱だった(笑)。生まれた時誰もが「この赤ん坊は育つまい」と思い、「今夜が臨終です」と医者に言われたこともある。
ご病弱でも負けん気は強くて、子供同士喧嘩しますね。この野郎って噛みついたり引っ掻いたり。その相手は大抵、(下級生を苛める)上級生。
喧嘩というのは楽しいよ。その時は楽しいなんて思いやしませんけど、楽しいのは何か鬱憤を晴らせるから。だから強い。
力がないから、投げられる、飛ばされる、池に放り込まれたりもしますけど結局、勝つの。奥の手を使って(笑)。そのうち誰も僕と喧嘩しなくなって、クラスメイトも上級生から苛められなくなった。
それは本当に三つ子の魂百迄、到頭、喧嘩する間違った行動がずっと今まで続いてきた(笑)。
──先生は前の皇后様からお誕生日祝いに戴いた富士山の絵にご署名をお願いしたり、東大の物療内科教室に在籍当時、手当ての効果を堂々と進言されて教授から破門されたりと、とても率直なご性格なんですね。
塩谷 率直じゃないの。少しおつむが足りなくて、思慮が浅いの。
だから思ったことをずけずけ、どんな人にも言うの。それが皇后様は気に入って下さったけど、時々は出てけってことにもなる。師匠に対してあるまじきことを言うでしょう。
しかし皆、特に後が全部良くなる。僕は本当に失礼だと思ったら言いません。失礼じゃないと思うからつい行動しちゃうの。
──教授は後年「儂は塩谷を見誤っていた。実に立派な臨床医」だと言われたそうですね。
正義漢で負けん気も強い。当然、ご丈夫になりたいというお気持ちも強かったでしょうね。
塩谷 人一倍強かった。
中学1年の時の先生から教わった「二木式腹式呼吸」を皮切りにいろいろな健康法を試みて、その努力のお蔭で大学卒業時には平均レベルの健康に達し(図1)、特に呼吸法では自分でも驚くほど日毎に体が強くなり、ありとあらゆる呼吸法を試みました。
30代半ばで肺結核にかかった時も当時の結核治療、安静と栄養摂取は一切無視。痰に菌が出ず感染の心配がなかったから診療しながら、「病気で苦しんでいる人を治すために医者になった。医者は天職。天職を正しく遂行している以上倒れるわけがない」という確信の下、「絶対治る」という想念と、当時の常識とは全く逆を行く"肺に酸素をたくさん入れる呼吸法”で1年余りで治してしまったの。
酸素こそ、全身60兆個の細胞の活力源病気は細胞の酸素不足から
──酸素がいかに大事かということですね。
塩谷 生きていく上で一番必要なのは酸素。人は食べ物がなくても1週間、水がなくても3日間くらいは大丈夫だけど、息をしなければ5分と生きていられない。
「呼吸」というのは、吸った酸素を肺から血液にのせて全身に送り出し、代わりに不要な二酸化炭素を肺から放出する作用(図2・3)。ところが、二酸化炭素を運んできた血液は十分にそれを放出するのに、酸素をもらって巡る血液は大変少ない。そのため、普通の呼吸では、全身60兆個ある細胞が、その能力を発揮するのに十分な酸素がもらえず、絶えず軽い酸欠状態にあるわけです。
そうすると、細胞は正常に働けず、精神力、知力、体力の全てが著しく衰える。これが病気の根本的原因で、成人病もボケも病気は全て細胞が酸素不足で正常に働いていないから起こるんです。
特に酸素を必要とする脳細胞
──胎児の脳からが酸素不足。故に人は天命に背く──
塩谷 60兆個の細胞全てが酸素を必要とする中、殊に脳細胞は体の細胞の7〜8倍も酸素を必要とし、これは人の全酸素摂取量の20%にも相当する。だから高山病では真先に脳細胞がやられ、最悪の場合は死に至る。
その酸素が十分に脳細胞に行ってますかって、行ってないの。なぜか、母親の呼吸が皆浅いから。
あなたのお腹の中に赤ちゃんが宿るとする。その胎児の脳細胞が出来た時に神は「脳細胞の働きはかくあるべし」と決めている。そして、脳細胞は分裂して2つになり4つになり、そうすると、ここの細胞は何、ここの細胞は何と、その使命(機能)を持って来るんです。
ところで、胎児の脳細胞はどうして生きることが出来ますか。
──お母さんの血液から酸素と栄養をもらうからですか。
塩谷 その通りですね。ところがお母さんの血液には十分な酸素が入っていない。
そうすると、胎児の脳細胞には一番必要な酸素が十分に来ないから、既に胎児の脳細胞からして、凸凹ないびつな細胞になって、その不完全な脳細胞が分裂していくんだから、神様がいくら「脳細胞の働きはかくあるべし」と言ったって、元の素材が不完全だから、分裂して次々出来る細胞も全て不完全。
だから、生まれてからいくら教育しようが、一生懸命いい子を産もうと胎教しようが、脳細胞が間違って作られているから、生まれながらにして子供は母親を刺したりするような下地が出来ている。
これが程度の差こそあれ、全人類に及んでいる。これで人間の世界が幸せになれるか。戦争は子が親を刺すよりもっとひどい。間違った脳細胞では一遍に何万人もダーッと殺すことを平気でやるようになる。やれるんだからやるの。
これが、神から与えられた通りの脳細胞の働きだったら、そんな馬鹿なことはやろうという気も起こらない。喧嘩もしませんがな。
──しかも、脳細胞の7割は眠っていると言われますね。
塩谷 眠っているのではなくて、脳細胞が3割しか実力を発揮できていないの。
深呼吸すると、普段の3〜5倍もの空気が肺に集まる。この数字がそのまま、脳細胞の能力の差として出る。正しい息で脳細胞を活性化すればボケも防げる、脳内ホルモンの分泌も促進されるからウツも防げ、正しいことを晴れ晴れ楽しく出来るようになるの。
同じことが、全ての臓器や器官に言えます。つまり、慢性的な酸素不足で諸細胞が弱まると、体の機能や抵抗力が低下し、病気やストレスに弱い体になってしまう。
酸素を十分に吸うと、頭も体も健康になるのはこうした理由からなの。
正しい腹式呼吸で、肺底まで酸素を送り込む
──では何故、人間は呼吸を浅くしてしまったんですか。
塩谷 浅くなったのは人間が自分でやったんだから仕方ないの。吸わなくてすむから吸わないの。
あなた方に肺いっぱい深呼吸しなさいって言っても、肺尖には空気が行っても、肺底はおろそか。
ここが大事なとこで、肺いっぱいに空気を吸ったつもりでも、横隔膜が下がらないと、釣り鐘状の肺の底は広く、肺底まで空気はなかなか行けない。空気は狭い肺尖にいっぱい行って、広い肺底はカラカラ(図4)。深呼吸したつもりになっても本当に十分に入ってないわけよ。それで、肺に戻ってきた血液は酸素を十分にもらえず、手ぶらで帰って行くしかないの。
腹筋を使って横隔膜を動かして、深く呼吸することが大事なの。
そうすると、横隔膜が下がって腹圧がかかるから、全長7mもある腸管を刺激し、よどみやすい血液を押し出して、消化したての新鮮な栄養分がすみやかに全身に回るようにもなる。
だから、普段から四六時中、それが出来なくても1日のうち1回でも正心調息法をやって、或いは正心調息法とやかましいことは言わなくても、腹式深呼吸をやって、肺に深く空気やっていれば大丈夫。深呼吸だけでも人間は、子供は、ぐっと変わってしまう。
──大正時代に腹式呼吸がずいぶん流行ったって聞いてますけれども、その中で早死にする方もあったとか。あれはどうしてですか。
塩谷 間違っているから。逆式なの。空気を吸う時にお腹を凹ませて、出す時膨らます。それで、本当に空気が出たり入ったりしますか。出っこないの。
赤ちゃんは自然に腹式呼吸をしてます。吸う時にお腹が膨らんで、吐くと凹んでいる。これが天然自然の理。そういう子供でもわかる理屈がわからない、それで早く死んだわけ。
酸欠では遺伝子も働かない
──今遺伝子治療が随分いわれてます。あれは先生はどう思われますか。
塩谷 いいことですよ。
そもそも酸素が足りないんだから、遺伝子は正しく伝わってないから、いじくっていいの。ただし、いじくり方が下手だから、うまくいくかどうか、結果はわかんないの。
──先生の調息法で、本当に宇宙と一体になっていれば、遺伝子も正常になるとご本に書かれてますね。
塩谷 変わるの。遺伝子を変えられなかったら、何の修行もいらない。したって無駄なの。変えられるからするの。遺伝子が変えられなかったら、そこで全人類はストップですよ。
──酸素がおそらく眠っている遺伝子のスイッチを入れるんでしょうね。
塩谷 遺伝子が目覚めるんでしょうね。遺伝子が本当に正しく働くには、酸素がなければ働きません。だから酸素を十分にやったら遺伝子は生まれた通りの力を出す。だけど、酸素が足りなければ出そうにも出す力がないの。だから、何よりもかによりも、空気を吸うこと。
──そしたら、今の人工的に遺伝子をいじくる医療より、ずっと調息法をする方がいいですね。
塩谷 比較になりませんよ。いじくる必要何にもないの。酸素、やりさえすればいいの。
何故かっていうと、遺伝子だと細胞の問題になるでしょ、どの細胞も皆、宇宙の無限力、創造主が与えてくれてるんですよ。
ただその時に、こっち側が凹んだり、こんなんなったり、全部は受けられないだけで、けれども、受けたものだけでも正しく育てることは出来ますね。小さく受け取ったものも大きく育てることが出来る。受け取ったままっていうことはないの、それだったら、人間は進化しないの。
大気汚染も活性酸素もかなわない酸素の力
──今、大気汚染がすごいですね。
塩谷 うん、すごいの。
──それでも?
塩谷 それでもいいの。大気汚染で汚物を吸う、有害物を吸う、しかし、酸素も一緒に吸うから、それらに対抗してくれて、なおかつ酸素は働くから。
有害物質を吸うのは悪い。けれど一緒に酸素をもっと沢山吸って、酸素に働いてもらって、ネガティブな要素を出来るだけ排除していく。
そして必ず鼻で呼吸する。鼻には空気中の有害物を浄化する機能があるけれど、口は食べる器官でそういう機能はないの。
ただですね、これも程度問題で、もっともっと汚染されれば、酸素は負けますよ。なんぼ呼吸法をやったって。
──吸った酸素の約2%が体の中で活性酸素になる。酸素を一杯吸うと活性酸素もまた増えるのでは?
塩谷 活性酸素は何にも心配することないの。余計な知識が増えちゃったもんで心配してるけど、それより何より、酸素本来の働きの方がずっと強いんだから。
「活性酸素? ああ、入っても結構結構」と思って、もっといいのが入るんだから、何も心配しないで深呼吸してもらいたい。
何10年、何100年、今まで活性酸素だ何だと言ってなかったでしょう。それでも昔から、深呼吸すると皆丈夫になったんだから。
──酸素吸入はいいことですか。
塩谷 アホッ。悪いこと。無駄なこと。但し、酸素が足りなかった時には当然吸ったらいいよ。
──元気な人、つまり自力で十分呼吸出来る人がやることではないですよね。
塩谷 うん。あなたね、松葉杖ついて歩いてみなさいと言われたら困るでしょう。杖は足の悪い人がついたらいいの。
宇宙の無限力と一体になる 宇宙とつながれば本来の姿が現れる
──普通は調息法だけですよね。先生のは正心と調息法とドッキングさせたところがすごいと思いますね。
塩谷 人間はそうでしょう。心と体があって初めて人間よ。どっちか一つじゃ駄目よ。
──正心調息法は普遍的なエブリワンのものであると。
塩谷 その通り。空気を吸うということはどんな人間にも当てはまるの。誰にも許可要らない。
──それで宇宙とつながるんですか。
塩谷 つながっているの、知らないだけで。それを自覚するのは100人に1人もいないわけ。知らしてやらなきゃ。
目に見えない太陽の光も、虫メガネで集めれば紙を燃やす力があるでしょ。このように、宇宙の無限力はどこにも存在しているんです。そして、誰もがこの力を平等に利用できる。
──先生は宗教じゃないっておっしゃいますけど、大断言(15頁参照)を聞くと宗教の匂いを感じてしまって、それで引いてしまう人もいるのでは?
塩谷 匂いはしますよ、当然しますよ。空気を吸っていれば空気の味がするのと同じ。大宇宙には宗教だって何だって、この中に入っているんですから。
でも、教祖でも何でも、既成の宗教は殆ど全てと言っていいくらい、言うこととやることと違う。
──言うこととやることが違っていると、どうなるんですか?
塩谷 それは外道。でも、言わないよりはまだましなの。
いい種蒔いたんだから。だってね、種を蒔くと、芽が出て実がなりますよ。種は悪人が持ってようが、邪な人間が持ってようが、誰が持ってたって構わない、蒔けばいいんだから。蒔かなかったら一生芽が出ませんがな。悪人でも、蒔けば植えれば、芽が出る、実がなりますがな。
──人間の進化の歴史を辿ると、人間が進化を止めたということはないんですよね。まだまだ先へ進化をするんでしょうね。
塩谷 それは進化じゃないの。
進化っていうのは、本当の姿が現れるの、神から人間はこうだぞといわれた姿が現れるようになるの。これからは。
──正心調息法をやれば、本来の姿が現れる。
塩谷 やればなるの。呼吸だけじゃないんですよ。何よりも宇宙の無限の力と一体だと。この悟りがなければダメですよ。
吸った吐いたを一生懸命やれば健康体にはなりますけれど、こちらの方には進みませんよ。脳細胞がそれだけちゃんと働くようにはなるけども。
だから私の方法はまず何よりも宇宙の無限の力と一体になると想念する。それが第一歩。
あと、例えばあそこに行こうと足を踏み出しますね、同じところを踏んでたら、いつまで経ってもそこにいるだけですが、あすこに行くっていう頭があれば、それさえあれば進むでしょ。
来るべきカタストロフィーと大断言
──先生の大断言は、来るべき地球のカタストロフィー(大変動による破局)と対応しているんですね。
塩谷 そうです。この地球がやられる。ここ迄人間が堕ちると、それを回避することは出来ない。
回避は出来ないが、それに巻き込まれない、上手に対処することは出来る。それは、神と一体になって正心調息法をやって、「宇宙の無限の力が凝り凝って真の大和のみ世が生り成った」と大断言を念ずると、そこに行くんですから。
──先生は運命は変えられるとおっしゃっていますが、カタストロフィーが必ず来るというのとは矛盾しないんですか。
塩谷 矛盾しないの。
宇宙の無限力とこっちが一緒になった時に、或は一緒までいかなくても、その力を持っていれば変えられる。
例えば、広島に原子爆弾が落とされるのは3千年前既に予言されていて、その通り起こったでしょう。大抵事はそう起こるわけ。しかし、もっと大きな力が加わるとそれも変えられるわけ。
自分の本来の姿、あなたの本当の姿は宇宙の無限力と一体なんですよ。だから、宇宙の無限力といつにした時に、必ず救われるわけなの。
──それは人間の努力で出来るのですか。
塩谷 人間の努力じゃないの。
努力は一つだけ。それは宇宙の無限力と一体になると行動を起こす努力。そうした時に宇宙の無限力、即ち、この天地を動かした力、これが働く。
──その努力とは、調息法をして、大断言を唱えることですか。
塩谷 そう。だって、調息法はそのために生まれたのよ。ただ健康長寿だけじゃないの、それは一般向きの話。それで健康長寿になるのはそれはそれで結構なの。
しかし、調息法にはもう一つ、奥がある。それが、今度の、おそらく5〜6年後には来るカタストロフィーを乗り切ること。
さらにもう一歩進んで、ただ壊して壊れっぱなしってわけじゃないの。壊した後に今度は本当の大和のみ代が生まれるんだから、その産婆役になったり、お手伝いになったりすることなの。
さらに一歩進んで、新しいものができた時に今度はそこで本当の世の中をつくるわけ。
そこまで行くわけ、あなた方は。私は行かないわけ。もうあっちへ行っちゃっているから(笑)。
健康長寿の秘訣は行住坐臥の腹式呼吸人間100歳が当たり前。
行住坐臥の腹式呼吸で18ホール回っても疲れない
──先生は今年99歳におなりになったそうですが、とにかくお若いですね。
塩谷 人間は100まで生きて当たり前なの、長生きじゃないの。
何故かっていうと、脳細胞は20迄発育する。その5倍は100。肉体は25迄発育する。その5倍は125。
だから、人間の本来の寿命は125という説もあるけれど、ところが、肉体には生命はないの、生命は脳細胞にあるの。だから100歳が本来の寿命なの。そこ迄はどなたも可能なの。正しい呼吸をやって脳細胞を正常に働かせていれば。
だから僕は決して長生きじゃないの。そっから先が長生き。100過ぎてから。
──先生のお話は、先生という現の証拠つきだから説得力がありますね。健康で長生きという。
塩谷 私はこの年になったって、あなた方と一緒に速足したって疲れませんがな。ゴルフ18ホール回ったって若い連中と変わりない。18ホール回って私の方が余計に疲れるかってノーノー。一緒に歩いた方なら知っています。酸素が入っていくから。
腹式呼吸でございます、深呼吸でございますと、その時だけやったんでもいいの。だけど、日常茶飯事において、いつの間にか空気が肺底まで入るようになれば、もっといい。
だから、初めは努力、歩く時でも何でも、或いは何もしていない時に、臍下三寸と、背骨の中間、田んぼの十字の真ん中の、丹田に息を吸い込む。そうやってればいつの間にか習慣になって、行住坐臥の呼吸が生きてきますがな。
自前の歯で、自然食──玄米食を始められたのは?
塩谷 大学卒業して家から独立した頃からだね。
僕は自然のものを食べることにまず重点を置いている。加工しないもの。加工すれば必ず損なわれる。自然は本当の形であって、本当の働きをする。
そうすると、もう加工された時に違ってきますでしょ。違ったからって元に戻すわけにいかない。違ったら違ったでいいが、違いが少ないほど、つまり、加工の程度が少ないほどがいいわけ。
だから玄米と、おかずもなるたけ加工しないもの、しかもなるたけ生の野菜。
ただ、家じゃ玄米と野菜だけだけれども、外に出れば出されたもの食べないわけにいかないこともある、礼儀にかなわないことも起こるから。
──"三食食べて少食で”ということですが。
塩谷 お腹が空いたら、ご飯を食べたらいいの。ただ、良く噛んで食べるか、ガーッと掻き込むかで違いが出てくる。良く噛みさえすればいいの。
僕の歯は自前ですよ。
──アルコールは召し上がらないんですね。
塩谷 酒飲むのはアホッ。アルコールは人間の脳細胞を誤魔化す。活力を失わせるんですよ。何でそれを飲むんですか。飲みませんよ。肉や魚は余所行ったら食べますけれど、アルコールは飲みません。
反対に水は百薬の長。沢山飲んだ方がいいの。
呼吸法、無理は禁物、正心で想念をもって
──最後に呼吸法のやり方を。
塩谷 なるべく堅い椅子で、膝が床と平行、平らになるよう座る。
顎は軽く引いて、背骨は真っ直ぐ。真っ直ぐったって、ステッキのように固まるんじゃないよ。横から見て背骨の自然なカーブ通り、但し左右には決して傾けず、正面から見ると真っ直ぐ。
目は軽く閉じる。よく半眼って言うけど、あれは雑念がいろいろ入るの。余計な物が入らない方がよろしい。軽く全部閉じる。
手は鈴の印。肘を体側につけ、両手甲を垂直にして指を組んで鈴の形に作り、中は中空に、お握りを包むようにフワッと、そしてなるべく中を広く開けて、小指の底のところはぴったりくっつける(15頁写真参照)。仙人が行をする時に皆、この鈴の印を組むと聞いています。
そして、空気を臍下丹田に吸う。と言っても、皆さんはお臍の下の皮の方へいっぱい力入れる、或いは肩を上げて胸いっぱい吸う。そうじゃないの。空気は腹壁と背骨の中間に吸い込む気持ち。そうすると肺いっぱいに空気が入る。そして・〜・を繰り返す(15頁表)。
何時間やったらいいかってよく聞かれますが、決まりがないの。呼吸数にして1回につき25回くらい。20回くらいで止めてもかまわない。
──吐き出す時には絞り出すんですか。
塩谷 そんな必要はないの、お腹を静かに凹ますだけでいいの。絶対力まない。力みは禁物。我慢する必要もない。呼吸が苦しくなる前に止めるの。10分で苦しくなるならその手前、7〜8分に。
無理はどんな動作でもダメ。全てナチュラル、いつでも無理はないようにせねば。
そして、呼吸を止めた時に想念を入れる。丹田に力を入れて、自らの「思い」が叶った様をイメージしながら、何か病気のある人、治りたい人は、「何々病が治った、治った」と。そうすると病気も治って行く。
僕は60で呼吸法を完成して、普通60代から下降線をたどる健康度が上昇線に転じ、80代でかかった前立腺肥大症と白内障をこのやり方だけで治したの(図1)。
──無念無想は駄目ですか。
塩谷 無念無想になれっこないから。そんなアホなことしなくていいの。
呼吸法やっても「心猿飛び来る」で、ご本人は絶対無念無想になっていないんだから。心猿が飛び来っても、そっちの方に気を進めなければいいの。
それより、一生懸命やって宇宙の無限になっちゃえばいい。つまり一念に凝集すればいい。「宇宙の無限の力、丹田に収められた。全身に満ち渡った」と。
そして、吐き出す時は、「体内の老廃物がことごとく吐き出されて、全身がきれいになった。若返った」と想念する。
──自分の欲望、健康になりたいとか、お金儲けしたいとか、そういう欲望から調息法を始めてもいいとも先生はおっしゃっていますね。
塩谷 そうなの。皆欲望持ってるんだから。欲望は正しく使えばいいの。欲望が悪いものだったらね、神様はね、人間にそういう性質与えたりしませんよ。
私の呼吸法には「正心」という言葉がつくでしょ。何事も前向きに考え、常に感謝を忘れず、愚痴をこぼさない。この心でもって調息法をすればいいんです。人の心にはそれぞれ波長があり、その波長に合ったことが起こる。愚痴をこぼす人は愚痴の種がついて回る。感謝を忘れずに物事を前向きに考える人には不可能も可能になるんです。
(取材構成 本誌・功刀)