口呼吸は万病の元

戦後50年の子育ての誤りから、今、日本は「免疫病列島」に

日本免疫病治療研究会会長 西原研究所所長(健康・美容医学) 西原克成先生

今、日本人の体がおかしくなっている

 がん・糖尿病などの成人病はもとより、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー疾患、また、多くは難病とされる自己免疫疾患が目立って増えています。
 重力進化学を確立し、それに基づいて免疫病を研究されている西原克成先生は、「今、日本人の体ばかりか精神までおかしくなっているのは戦後、欧米思想を無批判にとり入れた結果、赤ちゃんの子育てから始まって成人後も引き継がれる"間違った生活習慣、体の使い方”にある」と警鐘を鳴らされています。
 西原先生は、今春定年で退官されるまで30年以上にわたり、東京大学医学部口腔外科で形態学と機能学の両面から基礎医学と臨床に携わられ、その間、人工歯根療法と世界にさきがけて成功させた人工骨髄造血器官の開発研究により、・進化のメカニズム、・免疫システムの発生、・骨髄造血の発生──の脊椎動物3つの謎を解明されました。
 西原先生は、これによって必然的に導かれた「生命原則(いのちのきまり)」に基づいた生活習慣こそ、免疫病の予防・治療の決め手となることを、数多くの素晴らしい臨床成果によって実証されています。

免疫病列島日本
──生命原則からはずれた生き方が病気をつくる──
生命の3つの条件が滅茶苦茶
「呼吸」・「食べ物」・「睡眠」

西原 生命の目的とは何でしょう。その前に生命に必要な条件は何でしょう。
 生命に必要な条件はまず「呼吸」です。呼吸は5分間止まると死んでしまいます。次が「食べ物」、3番目に「睡眠」です。この3つが今日本では滅茶苦茶になって、日本人の大半が半病人、免疫病です。
 命というのは水溶液のコロイドの生体内でエネルギーの渦が回っています。その時に体の部分部分が作り替わって、60兆個の細胞で出来ている体は、(骨など何年もかかって作り替わるものもありますが)、大雑把にいえば約2ヶ月で全部作り替わります。
 これを「リモデリング(作り替え)」とか、「新陳代謝」といいます。陳とは古い、ですから新陳代謝とは新旧の交代です。それには呼吸、食事、睡眠が不可欠です。
 そして生命の目的は、新旧の交代です。細胞はある時期がくるとエイジング(加齢・老化)する。そうすると体を丸ごと作り替えなければいけない。これが遺伝現象であり、生殖現象です。そうすると、生命の最終目的は子作りということになり、命は大切にしなければいけないということがわかってきます。
 今、日本人に一番必要とされるのは自分の命を大切にすること。あまりにも命を粗末にしながら、子供に勉強やスポーツを強いたり自分自身仕事をし過ぎたりレジャーに走ったり、命をどう使うかを真剣に考えての人生設計は全くなく、その場限りの刺激を求めて、気づいた時は免疫病です。

生命はエネルギーの渦
──エネルギーの渦がうまく回転しないと病気になる──

西原 脊椎動物のリモデリング、新陳代謝は、・質量のある物質(酸素や栄養やミネラル)と、・質量のない物質‖エネルギー(重力、温度、湿度、圧力、音波、電流、光、放射線、精神的ストレス)で、二重にコントロールされています。
 そして、リモデリングの際に起こる「エネルギーの渦」が、生命現象の本質なのです。
 エネルギーの渦が円滑に回って生命現象がスムーズにいく時は、体の中では、質量のある物質(栄養や酸素、ミネラル)が消化(同化)され運ばれ、そこで代謝され細胞レベルで呼吸してリモデリングされ、その際に出来る老廃物が運ばれて排泄されます。
 このエネルギーの渦がうまく回転しないと、体がおかしくなったり病気になります。特に、機能性の疾患、免疫病や神経麻痺、筋肉麻痺などが起こります。
 ところが、現代医学ではリモデリングの際に重要なエネルギー、特に重力についてほとんど無視しているために、免疫病が治せないのです。一方、東洋医学ではこういう病気を昔からエネルギーを使って治しています。
 エネルギーがうまく回らないために病気が起こるということを知らないと、とんでもないことになるわけです。

生物は重力を中心に進化する
──重力進化学で脊椎動物3つの謎がとけた──

西原 個体発生は系統発生を繰り返す(受精卵が成体になるまでの過程は、それが進化したと同じ過程をたどる)という、ヘッケルの生命発生原則(図1)があります。
 我々哺乳類は本当に4億年前にはサメのような原始魚類だったし、5億年以上前にはホヤだったのです。ホヤが遺伝子重複で体節化して、頭進(頭の方向に向かって泳ぐ)すると、そのスピードに従って、重力方向と動物の進む方向との合成で、時間と共に同じ遺伝形質のまま身体の形が変わります(図2)。そして、この形態の変化が累代わたって続くのが、進化なのです。
 従って生物の進化は、宇宙を構成する5つの要因、・時間、・空間、・質量のある物質、・重力をはじめとする力学作用、・質量のない物質‖エネルギー(光・温熱・放射線・電流・圧力・湿度・精神作用・気)が深く関与します。
 ところが、これまでダーウィンを中心とした進化論は質量のある物質だけで進化を解明しようとしたために、・進化学、・免疫システム、・骨髄造血の発生という脊椎動物3つの謎が解けなかったのです。
 「質量のある物質と、ない物質‖エネルギーは、等価である」というのがアインシュタインの統一理論ですが、生命科学に重力をはじめとする生体力学を導入すると、脊椎動物の進化は、重力をはじめとする生体力学因子(電磁波から温度、酸素、栄養など、全てを含む広義の外的・内的環境因子)の変化への対応によって、「用不用の法則」に従って起こる現象であることがわかってきます。
 つまり、遺伝子の引き金は重力刺激がなければ引かれない、使わなければ引かれないということなのです(写真1)。
 私は脊椎動物3つの謎を、世界ではじめて開発した人工骨髄造血器の移植で、造血巣を、本来あり得ない哺乳類の部位や、骨髄造血を行わない原始動物に発生させることに成功し(写真2)、一気に解明しました。すなわち、
・進化は重力に対応して起こる
・免疫システムとは細胞レベルの消化・呼吸・代謝のことであり、このシステムの障害が免疫病
・骨髄造血の発生は脊椎動物が海から上陸した時に6倍の重力に対応して起こった軟骨の骨化にともなう腸管造血系から骨髄造血系への移動である──ことがわかったのです。
 そして、これによって、これまで原因不明、治療困難とされてきた免疫病にも解決の糸口が見えてきたわけです。

免疫とは白血球の消化

西原 免疫システムを簡単にいえば、身体に入ってくる全てのもの(食べ物・バイ菌、ウイルス、薬、毒物、ガス、温熱刺激、圧力、重力)を、血液細胞(赤血球・白血球・組織球)が、消化(吸収し同化)することに他なりません。
 もっと簡単にいってしまえば、免疫とは"白血球による消化”なのです。
 ですから、体の外から入ってきたものが完全に消化されれば問題ないわけですが、入ってくるものが白血球の手にあまるものだったり、体の使い方が間違って免疫力(白血球の消化力)が落ちていると、免疫系が消化不良を起こし、消化・分解しそこねた有害物質が、体の中でいろいろな症状、炎症を起こすわけです。
 例えば、アトピー性皮膚炎などでは、分解しそこねたゴミは皮膚や皮下組織に捨てられるため、湿疹が出て猛烈な痒みを起こしてしまうわけですね。
 今の医学で免疫病が治らないのは、免疫を免疫系の一側面にすぎない組織免疫反応、つまり自己非自己の免疫学だけからみているからです。
 しかし、免疫を白血球による消化と理解すれば、難病とされる免疫病も、白血球を活性化させ、免疫系を障害しない生活習慣を身につければ良いことになります。

戦後の子育ての誤りが日本人をダメにした
──口呼吸は万病の元── 
赤ちゃんの子育て6つの誤り

西原 個体発生は系統発生を繰り返すというヘッケルの発見した進化学の法則通り、ヒトは生まれた後にも系統発生を繰り返し、300万年から200万年前頃からのヒトに起こったことが生後1歳頃に再現されます(図1・表1)。これを理解しないと、赤ちゃんの正しい育て方はわかりません。
 今、赤ちゃんの子育て6つの誤りがそっくりそのまま、子供から青少年、成人の身体の使い方の誤りにつながっています。
 江戸時代から昭和前半まで続いた我が国の正しい育児法がどうしてこんなに出鱈目になったのか。戦争に敗れて、伝統的な育児法を忘れて、欧米流の育児法を安易に導入したためです。
 その後、欧米では当時の育児法の誤りに気づいて40年前からここ10年前には改めているのに、日本の医学者は不勉強のために60年前の誤った欧米流の育児法を頑迷に守っているのです。
・早すぎる離乳食
 哺乳動物は哺乳のシステムを持って生まれる。これは何を意味するか。生まれた時は腸がまだ出来そこないということです。
 ゴリラの離乳は2歳です。ヒトは24歳で全ての器官が解剖学的に完成します。それに対してゴリラの完成は12歳です。ですから、動物学的にいうと、ヒトは4歳までお乳だけで育てなければ本当はいけなかった。
 ヒトの場合はどんなに短くても、赤ちゃんの腸が完成する1歳までは絶対に、母乳ないし乳児用ミルク以外やってはいけません。1歳までは赤ちゃんの腸が完成していないため、お乳以外の蛋白質はポイズン(毒)となるのです。
 世界各国で育児書のバイブルとされ、日本でも昭和41年に翻訳されて厚生省の虎の巻にもなった『スポック博士の育児書』では、「離乳食、5ヶ月」とあります。
 ところが本家のアメリカでは、ハチミツを与えた乳児に、成人には無害な、ハチミツ中に混入するボツリヌス菌の芽胞によって起こる突然死、「乳児ボツリヌス症」が出ることが昭和55年頃にわかり、腸の性質を調べてみたら、「1歳未満の赤ちゃんにとって離乳食の蛋白質はポイズン」であることがわかった。それで離乳食は2歳頃からとなり、ちょうど日本の戦前までの、江戸時代からの伝統的な育児法にそっくり回帰しました。
 厚生省は昭和55年に「離乳食の開始は生後5、6ヶ月」と変えましたが、それでも早すぎる。早すぎる離乳食で、日本中アトピーだらけの子供達でいっぱいです。
 今、一昔前までは考えられなかった食べ物、例えば3千年以上も日本人の主要食品であり続けているお米や、果物でもアレルギーを起こす子供が増えています。
 離乳初期はミルクの他には砂糖、水(白湯)、ほとんどが澱粉のスターチ類(葛粉や片栗粉、コーンスターチ)に限り、たとえ固形物ではなくても果汁(果物には蛋白質からなる酵素が多い)などを含めて、蛋白質を含んだ離乳食は離乳後期に与えないようにしないと、アトピー性皮膚炎やアナフィラキシーなどの食物性アレルギーを引き起こす原因になります。
・おしゃぶりを早くとり上げる
 1歳までの赤ちゃんは、食べ物の通り道である食道と、空気の通り道である気管が立体交差していて鼻呼吸しか出来ません。このお蔭で息継ぎせずにお乳が飲めるわけですが、ヒトだけの特徴として離乳期になると食道と気管が交差してつながり、口で呼吸が出来るようになります。
 母乳から離乳食に移行するこの時期におしゃぶりをさせないと、万病の元となる口呼吸の癖がつきます。
 日本では、おしゃぶりは1歳でとり上げなければ子供をスポイルするという60年前の欧米の過ちを今でも踏襲していますが、ドイツで歯形が目茶苦茶になった原因を調べたらおしゃぶりが1歳でとり上げられていたことに気付いて、以後欧米ではおしゃぶりは3〜4歳頃まで使わせるようになりました。
 おしゃぶりでは、・口が塞がるので自然に鼻呼吸となり、・舌が活発に動くのでアゴと横隔膜が発達し、・左右均等に口を動かすことで片噛みも予防され、乳歯が生え替わる時にはきれいな歯並びになります。
・おんぶや抱っこが不十分で、仰向け寝をさせない
 人類はまったいらのところに真上を向いて寝ることを覚えた。
 横向き寝やうつぶせ寝をすると下側の鼻孔がうっ血してふさがり口呼吸になりやすくなり、さらに鼻周辺の空気は酸素より重い二酸化炭素がたまって酸素不足となって、これが呼吸器がまだ未熟な赤ちゃんにとって突然死の原因にもなります。それがわかって、ここ10年の間に、本場のアメリカではうつぶせ寝をさせなくなりました。
 そして、おんぶや抱っこ、揺りかごなどで赤ちゃんをよく揺さぶってあげると、呼吸する筋肉が刺激され、よく息が出来るようになります。
・舌でなめながら、ハイハイを十分にさせる遊びをさせない
 血圧は、進化の過程での爬虫類段階のハイハイ(腹這い)から、哺乳類段階の高這い(四つん這い)に替わった時に高まります(表1)。
 水の中の見かけ上の重力は陸の6分の1で、胎児は羊水の中で6分の1Gという無重力に近い状態で300日を経過し、1Gの陸に誕生します。胎児の血圧は15ですが、1Gの世界になると30になり、ハイハイを覚えるようになって90にならないと立ち上がれない。2足直立では重力は約2倍近くになるからです。ハイハイを徹底的に十分させないと虚弱な子供に育ってしまいます。
 そして、ハイハイしながら畳や床をなめる。なめることで認識力や舌の感覚が発達し、身の回りの雑菌やバイ菌に対する免疫力がついていくのです。
 日本でハイハイをさせなくなった大きな理由は、昭和55年頃を境に或る時突然何も考えることなく、本当のアメリカ式の生活を知らないで、家が仮想のアメリカ式と称するマンションに変わってしまったことです。突然畳がなくなってしまった。それに合わせて育児法を変え、「ハイハイはお父さんのお腹の上でさせればいい」と。こんなこと出来るわけがない。そうこうするうちに日本中がおかしくなってしまいました。
・冷たいミルクを与える
 胃腸が34℃になれば消化吸収はうまく行われなくなります。
 昭和55年に改正した厚生省の母子健康手帳。それまでは太古の時代から営々と38℃の乳をやってきたのを、「お乳は冷たくていい」という一遍の通達を出したために、その時から急激にアトピーなどの難病が出てきました。
 原因がわからないから治す方法がわからない。私の所にくれば簡単に治ります。米国のソルトレイク(大塩湖)からとった塩は死海のよりもミネラルが豊かです。その塩を40℃のお湯に溶いて飲ませて、正しい呼吸法をやればすぐに治せます。
 そして、12歳までは絶対にアイスクリームを与えては駄目です。36℃以下の食べ物は12歳までは絶対に好きにならないようにしないと、まともな子は育ちません。
・乳母車を早くやめ、歩かせる
 ヒトの体で、重力によるダメージをもっとも受けるところは足の関節です。
 関節頭には白血球をつくる造血巣があるので、早くから立たせ、無理に歩かせると、関節に無理な力が加わり、内出血を起こし、それが常態になると免疫系が確実にやられます。
 歩く練習は徐々に、幼稚園に入る頃までは歩き疲れたら積極的に乳母車に乗せたり、抱っこやおんぶをすることです。

子育ての誤りが成人3つの悪習癖に

西原 この子育て6つの誤りで、成人の「口呼吸」・「片噛み」・「寝相」の3つの悪習癖が、完壁に習得されます。
・免疫病は口呼吸病
 口呼吸は免疫病の最大の要因です。そして、多くの日本人が無自覚な口呼吸をしています(表2)。
 本来、鼻は呼吸器官、口は咀嚼器官で、人類は言葉を習得したために、口から空気が出せるように、気管が鼻だけでなく口にもつながってしまったからです。
 口呼吸はなぜいけないのか、万病の元なのか。
 鼻と咽喉、口腔には5つの扁桃腺がとりまくようにあって、この集団を「扁桃リンパ輪」といいます(図3)。扁桃リンパ輪は白血球をつくるところ(造血巣)で、免疫の中枢、最前線基地となっています。ですから、扁桃リンパ輪がうまく機能しないと、その影響は小腸の白血球造血巣(GALT)から、さらに全身にある白血球造血巣にまで影響し、全身の免疫病の引き金になり、万病の元となるのです(表3)。
 風邪を引くと呼吸器の症状だけでなく、下痢したり、関節痛を起こしたりするのもこのためで、「風邪は万病の元」というのも、風邪ではまず最初に、扁桃リンパ輪が直撃されるからですね。
 口呼吸をしていると、空気中の細菌やウイルスは喉と鼻の奥の呼吸粘膜と咽頭扁桃でろ過されますが、口の中の粘膜と口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)や舌扁桃では食物中のバイ菌はろ過しても、空気中の有害物質はフリーパスで気管や肺に取り込まれてしまいます(表4)。
 そして、鼻呼吸では空気は複雑な鼻孔を通って加湿され酸素を取り入れやすくしますが、口呼吸では乾燥した空気が直接体内に入り、口腔だけでなく、鼻と喉の粘膜も乾燥して、扁桃リンパ輪にウイルスや細菌やカビが巣くい、感染した白血球がそれを全身に運ぶようになるわけです。
 さらに、口呼吸で常に口を開けていると、口の周囲の筋肉が緩んで舌が気道をふさぐようになり、睡眠時無呼吸症候群の原因にもなります。
 そして、鼻の嗅覚神経は内臓全ての神経につながり、特に副腎に関連しています。副腎は自前のステロイドホルモンやアドレナリンを出すところですから、副腎がやられたら即免疫病になるということです。
 口呼吸をしていると鼻腔が乾いてきて肥厚性鼻炎や蓄膿症、鼻茸など鼻の疾患にもなりやすく、それがまた口呼吸を促進するという悪循環が生まれてきます。こういう場合、鼻の治療も大切ですが、つとめて鼻呼吸をしていると鼻の疾患も良くなってきます。
・片噛み・早喰い・冷たい物中毒
 口呼吸が始まると、利き腕側が普通利きアゴとなり、片噛みの癖が始まり、顔から全身歪んできます。そして、口呼吸する人のほとんどが片方の奥歯でくちゃくちゃと早喰いする、みっともない食ベ方をしています。
 よく噛まないで食べ物を飲み込むと胃腸から吸収される時に、腸管の白血球造血巣(腸管リンパ装置。GALT)が障害されて、細菌やリンパ球が白血球に取り込まれたり、アミンなど悪い蛋白の分解物が白血球に吸収されます。そうすると、扁桃リンパ輪と同様、腸粘膜から体の中に吸収された、これらの悪い物を抱えた白血球が皮膚に捨てられるのです。
 さらに現代の日本人は冷たい物中毒で免疫系がやられています。冷温エネルギーで、栄養吸収をおこなう腸管粘膜上皮の遺伝子の引き金がうまく引かれなくなり、赤ちゃんの腸のように、消化されない高分子の蛋白質がそのまま体の中に入ってくるようになるからです。
 4℃のビールを飲むのは先進国では日本だけです。ある軍医の体験談ですが、生水も1口30回くらいよく噛んで唾液と混ぜてから飲めば、薬も栄養もとれない戦地でもコレラや赤痢が防げたということです。
 また、重力進化学でみると、生殖器は腸の造血器の一部ですから、冷たい物で生殖器も障害され、精子形成不全、無精子症、子宮内膜症なども起こってきます。
・寝相・短時間睡眠
 誤った寝相、短時間睡眠は免疫系に大きなダメージを与えます。 「エビのように自由自在な寝相で健康な寝返りで健康な睡眠」と指導している臨床の先生がいました。ビデオを撮ってみたところ、健康な寝返りなんかない、決まったところにドサッ、ドサッです。
 横向きやうつぶせで寝ると、顔と背骨が体重でつぶれてしまい、骨盤まで歪んで痔や腰痛症を起こします。さらに、骨髄に免疫の要の造血の場があるのが高等動物の特徴ですから、骨が曲がると大抵はやがて免疫病になります。
 そして寝る時間が短いと、骨休めが不足して、老化が進み寿命が縮みます。曲学阿世の方々が「質のいい睡眠を3〜4時間とればいい」という。その短時間睡眠で何が起こるかといえば「突然死」です。
 寝ている間だけに血液が作り替わる。血液のみならず、あらゆる細胞が大体1晩で、大人で8時間睡眠した時にはじめて1兆個の細胞が作り替わるのです。

免疫力を高める正しい生活習慣・体の使い方
正しい生活習慣で免疫病も治り、美形にも

西原 結局、健全な身体機能を維持し、免疫病を防ぐには、
・呼吸は、常に腹式による鼻呼吸を心がけ、決して口呼吸をしない
・食事は、ゆっくり時間をかけ、1口30回噛んで、食後最低30分は筋肉運動と頭脳労働を避け、ゆったりと過ごす。免疫系にダメージを与える冷たい物はとらない
・睡眠は、鼻呼吸と仰向けの正しい姿勢で最低8時間はとって骨休めをし、副腎と脳下垂体を強化する──これだけでも多くの免疫病が改善し、最後には完治してしまうことも多いのです。
 さらに、顔の表情筋が鍛えられ、たるみや歪みが矯正され、目はパッチリ、歯並びも肌もきれいになり、顔全体が引き締まって小顔になり、脳も活性化するので、いきいきした美人になります。

腹式の鼻呼吸で酸素を十分取り込む

西原 白血球など血液の消化力には十分な酸素が血液に含まれていなければなりません。酸素不足や疲労によるホルモンの不足が原因となり、消化がうまくされなくなります。
 鼻呼吸でも胸式の浅い呼吸では酸素は十分取り込まれません。腹式呼吸で、横隔膜を十分動かすことが重要です。
 昼間は、意識して口を閉じて(上下の歯は1mmくらい開け、決して歯を食いしばらない)鼻呼吸に心がけ、背筋を伸ばし、胸を張り、吐く時は肛門を締め上げるようにして腹式呼吸します。
 睡眠時は、紙絆創膏などを唇に張るか、濡れマスクをなどを使って開口を防ぎ、鼻呼吸しやすいよう鼻孔や鼻腔を広げるノーズリフトを使うと良いでしょう(写真、イラスト参照)。ノーズリフトを使って鼻を高くしただけで、喘息発作が止まることがあります。両側の歯で十分咀嚼西原 食べる時は必ず口唇を閉じ、左右の奥歯を均等に使って1口30回以上咀嚼し、まず口の中で食べ物を十分消化します。
 冷たい物、反対に熱すぎる食べ物も避け、穀類・豆類・野菜類・魚介類中心の日本の伝統食を基本に、腸内細菌叢を整えることも重要です。
 片噛みの矯正には、普段使わない側のアゴでキシリトールガムを、力を入れずに縦に口を動かして噛むのをすすめます。

仰向け寝の8〜9時間睡眠で骨休め

西原 睡眠時間は小児で10〜12時間、成人でも最低8〜9時間はとって、骨休めを十分にします。
 寝る姿勢は仰向けを基本とし、気道を塞ぐ高いマクラは厳禁、枕はなしか、せいぜい1cm程度の低い枕、または頭の重みで沈む羽根枕、赤ちゃんはドーナツ枕を。
 温泉療法というのがあります。温泉でぬるいお風呂に長い間つかって骨休めをしてまた1Gの世界に帰ってくる。この落差でもって元気になるんです。ナポレオンの3〜4時間睡眠は有名ですが、彼が湯船の中でいろいろ仕事をしていたことはほとんど知られていません。ただし、用不用の法則で、ずっと無重力の状態にいたら、骨がスカスカになって回復不能の状態になってしまいます。
 どうしても連続で8時間睡眠がとれない人は、昼間仮眠をとったり仰向け姿勢で休むなりしないと、若さにまかせて短時間睡眠で過ごしていると、40代、50代でバテて、最悪の場合突然死を招きます。

偏った体の使い方を避ける

西原 足を組んだり、頬杖をついたり、同じ側でショルダーバッグをかけたり、こうした偏った体の使い方をしていると、体全体が歪んで免疫系を障害します。
(取材構成・本誌功刀)