目は心の窓、全身を映す鏡
生活習慣病から見た目の健康と全身の健康
回生眼科 山口康三院長
目の神秘にひかれ、全身治療を目指して内科医から眼科医に
回生眼科院長の山口康三先生はスタートは内科医。
人間を細分化し検査・治療する現代医療に対し、身体全体を見て心身の活力を高めていく治療を目指す中、「眼底をのぞくと身体全体の不調がいち早く発見できる」場面に多く遭遇され、眼科に転じられました。山口先生は、眼底の状態から、その人の食事、運動、ストレスの状態がわかり、全身の病気の早期発見・早期治療に役立つとお話しされています。
高齢人口の急増・食生活の欧米化・運動不足・過剰ストレス・環境汚染物質の氾濫──等、現代生活特有の歪みが、がんや糖尿病をはじめ多くの生活習慣病の急増をもたらしています。その事情は目においても同様で、ドライアイ、白内障、緑内障、黄斑変性症など生活習慣病の要素が強い病気が増えています。
生活全般の改善なくして生活習慣病の予防・改善、進行の阻止、根治は不可能という確信の下、目の治療にあたっても、生活指導を治療の根幹におき、目を通して真の健康づくりを日々サポートされている山口先生に、急増している目の生活習慣病を中心に「日常生活がつくる目の健康と全身の健康」ということでお話ししていただきました。
目が不調だと全身も不調
元気なお年寄りは耳は悪くても目はいい
──先生は目を通して全身の健康度を診断されたり、また、目の治療にあたっては生活指導を根底におかれているのはどういうわけからですか。
山口 もともと私はスタートは内科で、学生時代から身体を細分化し、検査づけ、薬づけになっている現代医療に疑問を抱き、身体をトータルにとらえる食事療法や東洋医学に関心をもっていました。
医師になって初めて赴任したのが当時長寿村とされていた神奈川県藤野町でした。そこで、85歳以上の元気なお年寄りにアンケート調査を試みたところ、聴力が悪くなっている方はいても総じて皆さん視力は非常にいい。そして少食でよく動く。85歳以上、90歳以上のお年で日常、山道を上り下りの重労働をされ、食事は野菜をたくさんとって、うどんを常食されてました。
この体験も、私に目と全身の関連、また食事や運動の重要性を気づかせてくれた大きなきっかけの一つとなっています。
目は、身体の中で最も進化した器官といわれ、この目から人間は外界からの情報の70〜80%を取り入れています。ですから、目が不調だと身体全体が不調になります。視力が落ちると怪我もしやすい、間違って毒や腐ったものを食べることもある、生命にとってはそれだけ危険度が高くなるわけです。
目は心の窓
全身を映す鏡
山口 さらに、目は外界と身体内部の両方を見せてくれるダブルウインドウになっています。瞳を通して外界の様々な現象を大量の電気信号に変えて脳に送ることによって外界を構築させてくれている窓であると同時に、身体の中の状態もよく見せてくれる窓なのです。
昔から「目は心の窓」、「目は口ほどにものをいう」といいますが、実際、目は精神状態をよくあらわし、健康度を測れるいろいろな信号を送っています。
東洋医学では「目は五臓六腑の精」という説(表1)がいわれます。
現代医学でも眼球結膜(白目)が黄色くなれば黄疸、眼瞼結膜(裏まぶた)が青くなれば貧血、若い方で角膜の周囲が白濁すれば先天性HDL(善玉コレステロール)低下、まぶたに黄色腫(黄色い粒状の脂肪腫)ができれば高コレステロール血症、目の下の隈はアレルギーなどを疑います。
目を通して分かる
身体の血管・血液の状態
眼底の血管から身体状況がわかる
山口 そして目は唯一、流れる血液の状態を直に確認できる器官なのです。
毎日、眼底(眼球の奥)をのぞいていると、眼底の血管(網膜血管)から、食事、運動量、ストレスの状態など、身体の健康状態がわかってきます。
眼底をのぞくと網膜血管の4対の太い動脈と静脈、つまり、幹となる中心動脈、中心静脈がそれぞれ4本づつ見えます(図3)。
動脈と静脈が交差する部分は血管壁を共有しているので、動脈が硬化して静脈を圧迫している程度によって動脈硬化の状態がわかります。また、網膜血管は脳の血管に密接に関係しているので、網膜血管に動脈硬化があれば脳の血管にも動脈硬化があると推測できます。動脈硬化があればコレステロール値を聞いてみたり、食生活を聞いたりするとやはりと頷くことが多いですね。
血管の太さからは、血圧も推測できます。動脈と静脈の直径比は通常2対3ですが、これが動脈が細くなって1対3などになると高血圧と見当がつき、実際、血圧を測ってみると概ね当たっています。
──黄斑変性症や糖尿病網膜症などで新生血管が出るとレーザーで焼き切るとか聞きますが、新生血管もやはり眼底でわかるのですね。
山口 そうです。新生血管は結局、網膜の栄養や酸素が足りないから体が補完的に出す血管だと思います。血管が充血するのも、目がちらつくのも結局、病気を治すための体の働きからなんですね。
ところが、新生血管が健康な血管なら問題はないんですが、出来たばかりのぼろぼろの弱い血管で、非常に出血しやすく、実際には役に立たず、かえって出血を起こすので目には良くないんです。
──眼底出血を起こすとどうなるのですか。
山口 眼底出血では、多量に出血したり、視力に最も関係する黄斑部近くで出血したり、広範囲に出血すると、視力低下を起こします。出血が硝子体まで流れてくると黒いゴミのようなものがちらつく飛蚊症が出ます。
眼底出血は、外傷や網膜剥離など目の病気でも起きますが、最も多いのは高血圧や糖尿病からくるものです。ですから、眼底出血では高血圧症や糖尿病の診断、病気の程度がすぐわかり、糖尿病や高血圧では目の症状がなくても眼底検査が行われます。
──眼底出血などは、生活改善で治りますか。
山口 眼底出血で視力が0・1まで低下した71歳の女性が、視力の回復は困難といわれて私のところに来ました。
漢方薬と食事を含む生活全般の指導で、1年後には、視力が0・8に回復しました。
ポイントは血液の浄化・血流の改善
──目の症状から見た血流の悪化──
山口 目はもう一つ、目の表面の結膜の血管も見られます。富山医科薬科大学の寺沢先生が研究されて、結膜の血管から東洋医学でいう「・血スコア」、つまり血がどろどろして流れにくくなっている状態を見ていらっしゃいます。
血液がどろどろして流れにくく
なっていると、動脈硬化、高血圧、血栓、ひいては心臓病、脳梗塞、糖尿病、さらにがんなど多くの生活習慣病の引き金になります。
これは、目においても同様です。
ですから、食事をはじめとする生活改善で、浄化されたサラサラした血液が目の隅々まで流れ出すと、目だけではなく、体全体の状態が快方に向かっていきます。
このことを、目の症状から照らしてみましょう。
〈結膜下出血(白目の出血)〉
山口 流行性結膜炎や外傷がなくても、寝不足、疲れがたまった時、アルコールを飲んだ後などに、白目(眼球結膜)が出血することがあります。しかし、それで誰もがなるわけではない。結局、血流が悪くて血管が切れやすい人がなりやすい。
生活状態を聞くと、肉や油っこいもの、砂糖、水分を外に出してしまうカフェイン飲料やアルコール飲料などを多くとっている、運動不足、クーラーをガンガンかける、ストレス過多──という方が多く、同時に頭痛、腰痛、冷え症などを訴え、結膜の血管を見ると非常に流れにくくなっています。
眼底出血とは違って、視力低下や他の目の病気の原因にはなりませんが、身体全体にとっていい状態ではなく、a
身体全体の赤信号といえます。
〈逆さまつ毛〉
山口 角膜や結膜を傷つける原因となる逆さまつ毛も、まぶたの血流が悪くなって、普段流れないところに血液が流れ、通常生えないところにまつ毛が生えてしまったと考えられます。
抜けば簡単に治りますが、血液の流れを良くしなければまた生えてきます。体全体の悪化や、がんの前兆であることもあります。
〈霰粒腫(まぶたの中のグリグリ)〉
山口 まぶたには、涙がすぐに乾かないよう、目の涙の前に脂肪の膜を張るために、脂肪を分泌する腺が多数あります。この腺がつまって、まぶたの中に半球状のグリグリ動くしこりができるのが「霰粒腫」です。急性のものは赤く腫れて痛みがあり、ものもらい(麦粒腫)に間違えられやすいのですが、全く別のものです。
切れば治りますが、再発することが多く、何度も切っていると必要な脂肪が分泌されなくなってドライアイになってしまうので、切らずに治すようおすすめしてます。
やはり、血流の低下が大きく影響するので、甘いものや油っこいもの、カフェイン飲料やアルコールをとらないように指導しますが、10歳以下の子供は1〜2日で治ることが多いのに、大人になると半年〜1年かかることもあります。子供は新陳代謝が高い上に、親に食べ物を禁止されれば勝手にはとれない。一方、大人は食事の注意を勝手に解釈してなかなか守れないんですね。そういう場合は厳しく食事の話をして守らせると、大人でも良くなって来ます。
なお、脂肪は35℃以上で溶けるので、まぶたを蒸しタオル等で1日3回1回5分ぐらい温めるのも良いですね。
〈目のむくみ──結膜浮腫・中心性網膜炎〉
山口 目はむくみやすい器官です。
寝過ぎたりした後のまぶたのむくみ(眼瞼浮腫)などは2〜3時間もすれば元に戻ってしまいますが、白目がむくむ「結膜浮腫」、網膜の黄斑部がむくむ「中心性網膜炎」は視力低下につながります。
むくみが生じても、水分代謝や血液の流れが順調であれば、余分な水分が血液循環にのってすぐに吸収されて排泄されますが、水分代謝、血液循環が悪いといつまでもむくんでいるわけです。
急増している目の生活習慣病と、その予防と改善
白内障
──生活習慣病の要素が強い目の病気、その中でも最近急増が目立つものにはどんなものがありますか。
山口 視力低下に関するものでは、何といっても「白内障」が、高齢人口や糖尿病人口の増加等で増えています。
白内障は55歳までに15%、75歳までに50%、85歳までに90%の人がかかります。しかし、30代で白内障の手術を受けなければならない人もあれば、70代でも若い方と全く変わらない人もいて、その違いはやはり食事や運動、心の状態が大きく関係しています。
白内障は水晶体のたんぱく質が老化や活性酸素、糖化などで変性して白濁し、視力が低下してくるわけですが、重要なのは身体の状態が低下して、目にいくべき栄養と目から排出される老廃物の自然の流れが阻害されているということです。
白内障では手術が発達しているので、眼科に行くと「矯正視力が0・1〜0・4に落ちて日常生活に不便を感じたら手術。それまでは待つよう」にいわれますが、それは非常におかしなことです。
白内障を予防・改善するためにも、進行を阻止するためにも、日常生活を変える必要があります。
・水晶体は目に入ってきた光を網膜に焦点を合わせる働きの外に、紫外線など有害光線を吸収して目に入れないように網膜を守っています。ですから、サングラスや帽子等で紫外線を避ける。
・血流を悪くする肉や甘いもの、油っこいものを避け、水や柿茶を飲んで血流を良くする。利尿作用が強く水分を体の外に出してしまうカフェイン飲料、アルコール飲料はとらない。
・活性酸素が非常に関係するのでタバコは吸わない。白内障の20%は喫煙が関係し、1日にタバコを1箱以上吸う男性は白内障になる可能性が205%、女性は65%増えます。
・正常な水晶体はビタミンCを高濃度に含んでいますが(14頁・表3参照)、白内障では非常に低濃度、あるいは消失することさえあります。さらに、ビタミンCは活性酸素を消去し、白内障形成に対する糖の悪影響を軽減するので、十分な摂取が大切です。
・首のこりをとり、目の周りのツボをマッサージするなど目の血液循環を良くすることも大切です。
──生活習慣の改善で進行を阻止するのはよく理解できますが、一旦、白濁した水晶体は、ゆで卵の白身と同じで、元の透明な状態に戻すのは不可能だといわれますね。
山口 ところが、実際に治った例、視力が改善した例はあるんです。
矯正視力が0・2まで下がり手術をすすめられた41歳の女性は、駄目で元々ということで私のところに来られたのですが、漢方薬と生活指導で視力が1・2まで上がりました。また、最近では52歳の男性が漢方薬に断食療法をとりいれて、矯正視力0・1が0・7まで上がりました。
こういう症例に出合う度に、人間の体は自然治癒力が出始めるとすごいものだと感嘆しています。がんの方なども、白血球がへばって死んだように動かないんですが、こういう治療で自然治癒力が発現すると、体が元気になって白血球も本当に生き生きと動いてきます。
エスキモーには最も少ない緑内障
──緑内障も最近増えてきているそうですね。
山口 今まで「緑内障」は高眼圧によって視神経が侵されると考えられていました。そのため診断も眼圧検査中心だったのですが、日本人の場合、眼圧が高くない「低(正常)眼圧緑内障」が多いことが最近になってわかってきて、今まで見つからなかった緑内障が見つかってきたというのが増えてきた一番の理由です。
緑内障では次第に視野が欠け(視野狭窄)、進行すると失明に至りますが、初めのうち症状はほとんどなく、知らないうちにかなり進行してしまう危険な病気です。
簡単に視野異常を見つける方法としては、何も受信していないテレビ画面の中央を見て、その画面の一部が灰色に抜けているように見えれば、視野異常の可能性が高くなります。
──低眼圧でも緑内障になるのはどういうわけですか。
山口 原因はまだよくわかっていないのですが、視神経がもともと弱い、血行障害がある、あるいは眼圧が生まれつき低いなど、正常眼圧でもその方にとっては高眼圧になるということが考えられます。
──眼圧が高いとはどういう状態で、視神経にどう影響するのですか。
山口 血管のない角膜や水晶体など目の前半部は房水が栄養を送っています。この房水の流れが悪くなり、房水がうまく排泄されないで前眼房にたまると眼球全体の内圧が上がります(図4)。
視神経乳頭は構造的に眼圧に弱く、視神経乳頭が圧迫されると、視神経の血流が悪くなって視神経がだんだん枯れていって死んでしまうのです。
──やはり、生活習慣病の要素が強い病気なのですか。
山口 私はそうとらえています。
緑内障の危険因子としては肥満、関節炎、高血圧など、また眼圧を上昇させる因子にはカフェイン、タバコ、逆に、眼圧を下げる因子には運動、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンEなどがあります。
現代医学では初期の治療として眼圧を下げる以外に有効な手段はなく、これを主な治療手段としていますが(最近は眼の血流を良くする薬も使われる)、眼圧を下げることが緑内障に良いというよりも、眼圧が下がるような日常生活が緑内障の予防に良いと考えられます。
・緑内障の人に特に不足傾向が見られるビタミンAやB、眼圧を下げる作用のあるビタミンB、C、E、視力低下を予防するビタミンBl2を多く含む食品をとる。
・魚油やシソ油などに多いα|リノレン酸系(n|3系)の脂肪酸を多くとっているエスキモーは世界で一番緑内障の少ない民族で、同時に動脈硬化が少ないことでも有名です。血流の阻害に働くリノール酸系(n|6系)の脂肪酸は極力控え、魚などからn|3系の脂肪酸を適量摂取します。
・週5回1日40分の散歩を3ヶ月続けて点眼薬なみに眼圧が下がったという報告もあるくらい、適度な運動も大事です。
──白内障のように、漢方薬や生活改善で緑内障が治った例はありますか。
山口 眼圧を下げる薬で良くならない方が、食事療法で高眼圧だけでなく高血圧も下がった方がおられます。また、眼圧のコントロールや血流の改善によって、視神経の働きが良くなった、進行が止められたという症例は多くあります。
ただ、残念ながら、一旦、欠けた視野が戻ったという症例には出合っていません。しかし、根気よく続ければ視野の改善も不可能ではないと思っています。
欧米では成人後失明第一位の黄斑変性症
──黄斑変性症は欧米では成人後失明原因の第1位といわれ、日本でも最近増えているそうですね。
山口 高齢人口の増加と共に増えています。
食生活の欧米化で血行が悪くなっているのも関係していると思います。黄斑部は血液循環に最も依存しているところなので、今までお話ししてきた血流を良くするあらゆる生活改善が大事です。
また、現代の環境は、過食、過剰ストレス、環境汚染化学物質、紫外線の増大──等、活性酸素が体内で過剰に生成しやすい要因が多く、急増にはこうしたことも関係していると考えられます。
黄斑部は網膜の中心で、視力に最も関係しているところです。そのためか、体の中で最も代謝の活発な組織で、同時に、活性酸素などフリーラジカルも最も多くつくられています。そのため、抗酸化物質のビタミンCやミネラルの亜鉛が非常に多く存在しているところです。
ですから、予防・改善にはビタミンCや亜鉛をはじめとする抗酸化に働く栄養素を十分とって不足させないことが重要です。
中でもビタミンCの血中レベルが低い人は、黄斑変性症に2〜3倍かかりやすくなることがわかっています。ビタミンCは、天然の紫外線フィルターの役目をし、網膜の老化を遅くします。
黄斑部に異常があると、ものが歪んで見えます。異常を簡単に調べる方法は、縦横に線が並んだアムスラーチャート(図5)を、片目で中央の点を凝視し、線が真っすぐに見えれば正常、曲がって見えれば異常です。このような患者さんに食事指導をしながら、漢方薬を投与すると歪みがとれてきます。
ドライアイ
山口 急増ということでは、最近最も増えているドライアイは、画像メディアの多用、コンタクトレンズの使用、部屋の乾燥などの外因以外、食事や精神的ストレスも強く関与しています。
漢方薬の処方として、朝鮮人参と乾燥を防ぐ漢方薬の組み合わせで随分良くなります。
目を良くする日常生活 食事と栄養
──重要な微量栄養素。
中でもビタミンC──
──まずは食事から血流を良くすることが大切なのですね。
山口 日常、血液を浄化し、血流を良くする食事(表2)に心がけることがまず第一ですね。
目の悪い方は、生水や野菜・果物から水分をとらないで、利尿作用の強いコーヒーやお茶などカフェイン飲料をたくさん飲まれる方が多いのです。野菜を多くとり、浄水された生水を1日2リットルはとりましょう。アルコールも水分を外に出し、目を脱水させてしまいます。タバコは血管を収縮させて血流を悪くします。
──栄養素の面からいうと、最も目に重要なものは何ですか。
山口 目は全身の器官の中でも最も栄養素を消費し、また必要とするところです。特に、ビタミンC、酸素、亜鉛などは大量に消費しています。酸素を身体の中で最も活発に消費する組織は網膜です。そのため身体全体に酸素や栄養素が十分行き渡らないと、目にも十分な酸素や栄養素が行き届かないことになります。
特に注目すべきはビタミンCで、前房(11頁・図4)中では血液(血漿)中の約26倍も含まれ、目が悪くなると水晶体や房水中のビタミンCが減少したり消失することが注目されます(表3)。
また、ビタミンCは血液の浸透圧を上げるので、房水の過剰産生を減少させ、前房の排出を改善させることで眼圧を下げます。
ビタミンCは目の中の結合組織を強くするだけでなく、硝子体中にも高濃度に濃縮されています。飛蚊症がある方は、1日1500mg以上とることで、飛蚊症を減らし、硝子体のダメージを減らすことができます。
適度な運動
山口 運動した後は視力も良くなります。
運動は目の血液の循環を良くし、目に必要な酸素や栄養素を運びやすくし、また代謝で生じた老廃物を除去するために大きく役立ちます。
血液を全身へ送り出すのは心臓ですが、末梢の毛細血管まで行き渡った血液を心臓に戻す静脈にはポンプの働きがないので、全身の筋肉がその役目をしています。筋肉の大部分は足にあるので、全身の血液を流すためには若い方なら、1日1万歩、年配の方でも1日最低20分は歩くようにしましょう。
さらに、汗をかくことによって体内に溜った重金属などの毒素を排出することもできます。
ただし、過度の運動は活性酸素の過剰生成を促すなどかえってマイナスです。網膜剥離の恐れがある場合は、振動を与えるとますますはがれるので安静が大事です。電気カミソリや、バイオリンを弾いたりするのも目に振動を与えるのでいけないんですね。
目とストレス
山口 白内障では恐怖、緑内障では抑圧された怒りや欲求不満、ドライアイではストレスを減らすことが良い結果につながります。
今迄お話しした食事・栄養の改善、適度な運動、過剰なストレスをためない──などの注意は、他の目の病気や症状、さらに全身の病気や症状の改善につながります。
ぜひ目から全身のサインを読みとって、身体全体の健康を確保していただきたいと思います