アレルギー、欧米型がん、動脈硬化性心疾患の急増に、"間違った油のとり方”
リノール酸のとり過ぎと、α―リノレン酸の不足
名古屋市立大学薬学部長 奥山治美
成人病の予防に、油の評価が革命的に変化
リノール酸からα―リノレン酸へ
心筋梗塞などの動脈硬化性疾患、欧米型のがん、アレルギー──など、生活習慣病の急増には、食生活の欧米化が関わっていると言われています。
中でも問題なのは脂肪の摂取量で、脂肪の総摂取量は現在、昭和30年代の約3倍にものぼり、その中でもリノール酸系の植物油の増大(図1)が問題視されています。
脂肪については長い間、「コレステロールの多い動物性脂肪を減らし、植物性油に多いリノール酸を増やす」ことが言われてきました。
ところがここ10年余りの間に、リノール酸のとり過ぎこそが、動脈硬化性疾患、がん、アレルギーなど、21世紀に持ち越された成人病や慢性病(21世紀病)の急増をもたらし、同時に、リノール酸のとり過ぎから相対的に不足するα―リノレン酸がこれらの疾病の予防に働くことが明らかになってきました。
リノール酸とα―リノレン酸はいづれも生体に必須の脂肪酸で、かつ体内では生成されず、食物から摂取しなければならないところから「必須脂肪酸」と呼ばれています。
体にとってはどちらも重要ですが、リノール酸が成人病予防になるという間違った神話の上にファーストフードなどの普及で必要量の7倍もとられている一方、α―リノレン酸は魚や野菜離れもあって不足傾向にあります(図1)。
1992年の創立以来98年まで、日本脂質栄養学会の会長を務められた奥山治美・名古屋市立大学教授は、「欧米型の病気やアレルギーの急増が動物性脂肪の増えた結果というのは間違い。日本人の動物性脂肪の摂取量は欧米人のまだ半分程。戦後の食生活での大きな変化は、総脂肪中のリノール酸の摂取比率が増えたことで、これが日本人の間に欧米型のがんや心疾患、アレルギーを急増させている最大の原因」と指摘されています。
奥山先生に、急増する欧米型の疾病(21世紀病)予防と関連して、理想的な油のとり方を伺いました。
脂肪酸の体内での代謝と成人病
体内の脂肪酸の代謝で分けられる"3系列の油脂”
――成人病の予防に役立つと言われてきたリノール酸が、実は悪玉だったということですが、まず脂肪と脂肪酸の違いからお願いします。
奥山 脂肪はグリセロールに脂肪酸が3つ結合したもので、油脂の種類は、体内での脂肪酸の代謝によって、
・飽和脂肪酸↓一価不飽和脂肪酸の系列、
・リノール酸↓γ―リノレン酸↓アラキドン酸と変化していく「リノール酸(n|6)系列」、
・α―リノレン酸↓エイコサペンタエン酸(EPA)↓ドコサヘキサエン酸(DHA)と変化していく「α―リノレン酸(n|3)系列」――の3つに分けられ(図2)、これらは体内で相互変換することはありません。
食べ物によって脂肪酸のバランスは異なり(図3)、植物では種子にオレイン酸やリノール酸が多く、光合成と関わるα―リノレン酸は葉に多い。また、動物では飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸を主体に、餌から少量のリノール酸やα―リノレン酸が入ってきます。
ですから同じ牛肉でも、餌によってリノール酸とα―リノレン酸の比は大きく変わり、牧草育ちのオーストラリアンビーフではその比は2対1位ですが、とうもろこしや大豆で育った和牛は15対1位となっています。
体内での脂肪酸バランスは疾病や健康に重要に関わっていますが、このように、食べ物を選ぶことによって、体の全ての細胞の脂肪酸バランスを変えることができます。そして、体の脂肪酸バランスを変えるには比較的、長期間を要します。
リノール酸神話の崩壊
――リノール酸とり過ぎの害とアラキドン酸への代謝経路――
――リノール酸が「コレステロールを減らし成人病を防ぐ」という神話は、どこから生まれたのですか。
奥山 油でも何でも食べ物が体に入ると、それに応じて体は変化しますが、食べてすぐにパッと変わる変化と、長くとり続けた変化は違います。リノール酸がコレステロールを下げるのはあくまで短期的な変化で、これがリノール酸神話の元になっています。
例えば、若い人に1週間単位で動物性脂肪とリノール酸の多い油(高リノール酸油)をとってもらった実験では、血中のコレステロールは、動物性脂肪の方が高リノール酸油より2倍も高くなります。
ところが、長期にとり続けた時には、リノール酸は、"動物性脂肪に比べて血中コレステロールを下げる”ことはなく、むしろ、リノール酸のとり過ぎと、それによって相対的に不足するα―リノレン酸系列のアンバランスが、欧米型のがん(大腸がん、肺がん、乳がん、前立腺がんなど)、冠動脈心疾患などの動脈硬化性疾患、アトピーやぜんそくなどのアレルギー疾患の主要な危険因子となっていることが、最近の多くの研究で明らかになってきたわけです。
――なぜ、リノール酸のとり過ぎが、多くの慢性病や成人病の危険因子となるのですか。
奥山 その答えはリノール酸の代謝経路に見つかります(図2・4)。
リノール酸は体内でアラキドン酸(AA)に変化し、アラキドン酸からはいろいろなホルモン様物質(エイコサノイド)が合成されます。リノール酸をとり過ぎると、体内ではアラキドン酸が過剰に作られ、過剰なアラキドン酸からは炎症を起こす物質(炎症メディエーター)や、血小板の凝集を高めて血管を狭めたり血液の粘性を高める物質が作られ、血の巡りを悪くしたり(虚血)、炎症を起こす結果、高血圧や血栓、動脈硬化、アレルギーの原因となるのです(図4)。
リノール酸のとり過ぎと成人病・アレルギーの急増
――"虚血・炎症”――
動脈硬化性疾患と虚血・炎症
奥山 リノール酸神話の背景には医学の分野で、指標と原因を取り違えている事にも問題がありました。
例えば、動脈硬化の原因に高血圧やコレステロールが言われていますが、これらは動脈硬化の原因ではなく、指標なのです。
高血圧の場合、歳をとると血管が狭くなって末梢まで血流が十分行かなくなります。そうすると、体は血圧を上げて一生懸命、末梢まで酸素と栄養分を送ろうとして、血圧が上がります。高血圧は血管が細くなって血の巡りが悪くなっている(虚血)という指標の一つです。そして虚血は、リノール酸のとり過ぎで過剰に作られるプロスタグランジンI2やトロンボキサンA2などを介して促進されます(図4)。
コレステロールもそうです。
最近の研究で、冠動脈心疾患の主要な危険因子はリノール酸のとり過ぎで、高コレステロール血症はそれほど危険なものではなかったことが分ってきました。
確かに、動物性でも植物性でも油脂の摂取量が多いと長期的には血清コレステロールが上がります。ですから、コレステロールの高い人は動脈硬化になりやすいとは言えます。但しこれは欧米(すなわち、動物性食品が非常に多い欧米食)で成り立つ相関関係です。
例えば、7ヵ国6地域の人を血清コレステロール値の高低によって4群に分けて、心疾患の死亡率を25年間調査した「7ヵ国スタディー」では(図5)、
・北欧や米国では、血清コレステロール値の最高群と最低群とでは心疾患死亡率に2倍強の差が出た一方で、
・日本(九州の漁村と農村)やギリシャ・イタリアなどの地中海地域では、最高値群と最低値群の間に死亡率の差は殆どなく、さらに、北欧の血清コレステロール値の最低群(190mg)の死亡率は日本の最高群(210mg)より4倍も高い――という結果になりました。
この結果は、北欧ではコレステロール値を最低群に引き下げたとしても、日本や地中海地域並に心疾患の死亡率を下げることは期待できないということです。
なぜ、こういう結果が出たのか。地中海地域と日本に共通している食環境は、"どちらも魚介類を多く食べている”ことです。つまり、必然的にリノール酸系列とα―リノレン酸系列の摂取比率が北欧の人たちより低かったからなんですね。
動脈硬化の悪玉にコレステロールが言われてきたのは、リノール酸が短期的にコレステロールを下げるのと同様に、コレステロールを沢山食べると、血漿中のコレステロール値がパッと上がるからです。しかし、これも一時的な変化で、長い目で見ると食べ物のコレステロールは、血清コレステロール値にも動脈硬化にもそれほど深い関係はないんです。
ただ、遺伝的にリポ蛋白が細胞の中にとり込まれない「家族性高コレステロール血症」では、コレステロールは問題となります。こういう人は、食べたものが細胞の中にとり込まれないから、コレステロールの多いものを食べると血清コレステロールが上がります。
活性酸素の過剰生成も
虚血・炎症から
――酸化LDL・がん――
――動脈硬化の危険因子として最近、悪玉コレステロールといわれるLDL(低比重リポ蛋白)が、活性酸素の攻撃で酸化した「酸化LDL」が言われていますが。
奥山 心筋梗塞の時に確かに酸化LDLは存在しますが、では、酸化LDLはなぜ上がるか。
それは、血の巡りが悪くなる(虚血)結果、炎症が進み、炎症細胞から活性酸素が出て、LDLを酸化する――つまり、活性酸素によるLDLの酸化の前に、虚血・炎症という現象があり、その虚血・炎症の前にはさらに食べ物の脂肪酸のアンバランス、すなわち高リノール酸・低α|リノレン酸があるということです(図6)。
がんにも、このメカニズムが働いています。
がんは臨床的に「持続性の炎症が高がん状態とし、発がんを促進する」と理解されていますが、リノール酸↓アラキドン酸↓炎症メディエーターの亢進――という機序が、欧米型がんを増やしているのです(図6)。
反対に、α―リノレン酸↓EPA・DHAというα―リノレン酸系列が、欧米型がんを抑えることは動物実験では明らかになっており、さらに人での臨床試験でもこの結論は支持されています。
リノール酸のとり過ぎがアレルギー反応を起こす
奥山 一方、アラキドン酸から作られる炎症メディエーター(ロイコトリエンや血小板活性化因子)の過剰産生が、アレルギーの反応性を高めていることはいうまでもありません(図7)。
中でも、アラキドン酸から作られるロイコトリエンは非常に強力で、アレルギー症状を出やすくしたり、症状(炎症)を強めたりします。
成人病・アレルギーの予防
"α―リノレン酸系列(n―3系列)”
α―リノレン酸↓
EPA↓DHAの代謝
奥山 このように、リノール酸系列(n―6系列)が、体の中の代謝によってできるホルモン様物質(エイコサノイド)などを介して、血の巡りを悪くして炎症を起こさせるのとは反対に、α―リノレン酸↓EPA(エイコサペンタエン酸)↓DHA(ドコサヘキサエン酸)というα―リノレン酸系列(n―3系列)はそれを抑えるので(図7)、結果的に動脈硬化、がん、アレルギーなどの病気を抑えるのです。
さらに、α―リノレン酸系列はリノール酸系列の代謝を競合的に抑えるだけではなく、α―リノレン酸から炎症メディエーターは作られにくいか、または非常に活性が弱い。
他にもα|リノレン酸系列は、・インスリンの感受性を高める、・炎症性大腸疾患(クローン病)の予防・改善、・学習能力を高める、・鬱病や痴呆症の予防・改善――などのいろいろな働き、薬理効果が見られています。
――こうした効果は、α―リノレン酸をとるよりも、直接、魚からEPAやDHAをとる方が、効果が高いと言われていますが…。
奥山 n|3系列の中では、EPAやDHAの方が、アラキドン酸代謝を抑える効果はα―リノレン酸よりも5倍前後高いと考えられています。
ただし、シソ油、エゴマ油、食用亜麻仁油(フラックスオイル)などの高α―リノレン酸植物油はα―リノレン酸が多いということ以外にリノール酸が少なく、「高リノール酸油をシソ油などに置き換える効果」は、「高リノール酸油の食生活をそのままにしてEPAやDHAを補給する効果」に劣りません。
ですから、今世紀中に解決できなかった21世紀病の予防には、高リノール酸油を高α―リノレン酸油に置き換えると同時に、EPA、DHAの摂取を増やすことが重要なポイントになります。
――α―リノレン酸系列のとり過ぎの害はないんですか。
奥山 動物実験の結果から考えても、今の日本人の普通の食事環境では、n|3系列のとり過ぎを心配する必要はまずありません。
――魚油は酸化しやすいことが言われますが、この点では心配ないですか。
奥山 酸化した魚は味や臭いが悪くなりますから、普通は食べません。
また、体内にα―リノレン酸系列が入った時に、体内での過酸化を促すかというと、ビタミンEやCなどが十分あれば、そんな心配もありません。むしろ、先ほど酸化LDLでお話ししたように、α―リノレン酸系列は活性酸素の生成を抑える方に働きます。
油のとり方
全体量を減らし、リノール酸とα―リノレン酸の比を1〜2対1に
――それでは、油のとり方ですが、脂質はとり過ぎだから全体に減らしましょうという考えもありますけど、先生はやっぱり比率が問題だと…。
奥山 量と比率の両方ですね。
脂質全体では現在、日本人はエネルギー比にして平均25%、若い人では30%を超えています。まず、これを20%以下に抑える。
そしてリノール酸系列とα―リノレン酸系列の比率を、理想的には1対1、そこまでいかなくても2対1位にα―リノレン酸系列を増やす(表1)。
厚生省の『日本人の栄養所要量』では5年前の「第五次改定」で初めて脂肪酸の摂取バランスの重要性が指摘され、n|6系とn|3系の適正比4対1という比は今回の「第六次改定」でも引き継がれましたが、4対1という比率は日本人の現状を言っているに過ぎません(表1)。
揚物は避け、調理油は、シソ(エゴマ)油・亜麻仁油。
魚介類を適量摂取
――具体的には、どんなとり方をすればよろしいですか。
奥山 リノール酸は米や麦、大豆、また卵や肉にも必須量の2倍以上含まれ、普通に食事をしている限り食べ物から十分とれ、リノール酸欠乏とはなりません。ですから、リノール酸は食品からとって、油としてはいらない(表2)。
一方、病気の予防に積極的に油を変えていくには、α―リノレン酸を増やす。調理油は、シソ油やエゴマ油、食用の亜麻仁油(フラックスオイル)など、α―リノレン酸が多い油に置き換えるのが一番です(表2)。
――α―リノレン酸は食品からだけでは量的にとりにくいのですか。
奥山 α―リノレン酸系列は植物の葉や根っこ、海藻に含まれ、種子ではシソやエゴマ、亜麻の実に多い。
しかし野菜や海藻からとるには量的に少なく、多いキャベツの葉で0・5%位が油で、その4〜5割がα―リノレン酸ですから、キャベツ1kg食べれば2・5gはとれる事になります。でも、それはなかなか大変ですね。
――先生のお宅では?
奥山 天ぷらや揚物は食べません。野菜炒めやサラダドレッシング、魚を焼く時などにシソ(エゴマ)油を使って、夫婦2人で1ヶ月1瓶弱で済みます。
ただ、加熱調理の場合、α―リノレン酸系列の油は高温に弱いから温度を上げ過ぎない事が大切です。ちょっと温度を上げ過ぎると魚の臭いがしてくるので、フライパン料理には適しません。ホットプレートを使うといいですね。
――シソ油とエゴマ油は違うのですか。
奥山 日本でシソ油として市販されているほとんどはエゴマ油です。エゴマ(写真)は、シソ科の植物で、昔は日本でも東北や中部地方で盛んに栽培されていましたが、今は油の原料はほとんど中国から輸入しています。
――油紙などに使われてきた亜麻仁油も最近は、食用が出回って来ましたね。
奥山 ええ、少し市場に出るようになりました。特に、日本人が作った食用亜麻仁油(フラックスオイル)は臭いがなく、優秀なものが出来ています。
――油からではなく、魚をとるのではいかがでしょうか。
奥山 それでも良いのですが、魚を食べる事で安心して、天ぷらや揚物が多くなれば駄目、野菜炒めなどもリノール酸系列の油で炒めるのでは駄目ですね。
日本人は先進国で一番沢山魚を食べます。ですから、人並みの魚、野菜を多くとって、油を極力減らせば、非常に健康的な食生活だと思います。
――最近、酸化しにくい、また悪玉コレステロールを減らすということで、オリーブ油などオレイン酸の多い油が評価されていますが。
奥山 地中海地域では脂肪摂取量が多いにも関わらず冠動脈心疾患が少ないところから、オリーブ油(オレイン酸が多くリノール酸が少ない)が再評価されています。
確かに、オレイン酸は酸化に対して安定性が高く、炎症メディエーターにも変換されないので、21世紀病に対して安全性は高いと言えます。ただ、リノール酸の代謝を抑える力は弱く、それはα―リノレン酸の方が断然強いです。
また、オリーブ油には動物の発がんを促進する作用が疑われており、脳卒中を起こしやすいラットに、高オレイン酸油(オリーブ油、高オレイン酸紅花油、高オレイン酸ひまわり油など)や菜種油(キャノーラ油。リノール酸が少なく、α―リノレン酸が多い)を与えると、寿命が4割前後も短縮されます。
これらは脂肪酸が原因ではなく、油脂に含まれる微量成分に何か有害物質があるからだと思われます。今後、有害成分を含まない高オレイン酸油が開発されれば、評価できると思います。
精製した油の方が安全
――そういう意味では、油は精製度の高いものの方が安全ですか。
奥山 そう思います。
面白いことに、ごま油を炒って焙煎した一番搾りには抗酸化物がいっぱい入っていますが、一番搾りと精製した油では、精製した物の方が酸化しにくいんです。
ごま油や大豆油はα|リノレン酸も含まれていますが高リノール酸油に属します(図8)。ただ、微量で有害な物質は入っていないので、健康な人が、ほんの時たま料理に合せて少量使う位はいいでしょう。
γ―リノレン酸もリノール酸同様、炎症に働く
――アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患に、月見草油などγ−リノレン酸の多い油も言われていますね。
奥山 γ―リノレン酸を長期にとり続けると、リノール酸同様、体内でアラキドン酸を増やす結果、アレルギー・炎症メディエーターの産生量を増やします。
アレルギー性疾患の薬は、アラキドン酸代謝とその代謝産物の生成や働きを抑えることで薬理効果を発揮しているので、これらの医薬品とγ―リノレン酸と一緒にとるのは禁忌です。
γ―リノレン酸がアレルギー性疾患用の特定保健用食品として認められたという話も耳にしましたが、γ―リノレン酸を与えながら、抗アレルギー薬を使うという医療は矛盾しています。
動物性脂肪は魚から
――最後に、動物性脂肪(飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸)の摂取量は欧米に比べまだまだ少なく、日本人の動物性脂肪の摂取量は今のところは安全圏ということですが。
奥山 コレステロールに限って言えば、先ほどお話ししたように現在の日本人の摂取量ではほとんど心配ない。むしろ、日本や欧米の高齢者ではコレステロールが高めの人の方が、低めの人より長生きの傾向にあるというデータも報告されています。
ただ、肥満や肥満に伴う合併症(糖尿病など)の予防・改善にはもちろん、控えるべきです。
――動物性脂肪は食物連鎖によって、それ自体にアラキドン酸を含んでいるのではないですか。
奥山 肉などからとるアラキドン酸の量は1日平均0・3g位でそれほど問題はありません。
リノール酸よりアラキドン酸の方が生理活性は10倍位強いんです。しかし、それを考慮しても、リノール酸の1日平均摂取量は約15gで、リノール酸が主な問題であるのは間違いないことです。
動物性食品を魚に限れば、そんな心配もいらず、むしろアラキドン酸を抑えるEPAやDHAが大量に含まれているので積極的に21世紀病を予防します。
動物性食品は魚中心にすることをおすすめします。