病気も健康も食べものから
みずみずしい食生活が、腸を浄化し血をきれいにする
鶴見医院院長 鶴見隆史先生
病気の根源を治すアナログ的医療と、 「病名診断即薬」のデジタル的な現代医療
静岡県磐田市で鶴見医院を開業されている鶴見隆史先生は、大学病院での研修勤務の過程で、"慢性病や生活習慣病を根治できない、まして病気の予防には殆ど結びつかない現代医療”では、病人を救い、健康を与えることはできないことを強く痛感されました。
すなわち現代医療は病気の原因を外に求め、患部だけを見て、「病名診断即薬」で対処するデジタル的医療であるのに対し、「病気は食物や栄養、意識といった内なる原因で免疫力が落ちた時に起こる」、「体は、食べた物は血となり肉となるという、連続的なアナログ的見方をしなかったらうまくいかない」と、鶴見先生は確信されておられます。
真の医療を求め、大学病院を離れて20年近く、鶴見先生は診察の傍ら、東洋医学、内外の食養法、さらに最新の分子栄養学、酵素学と次々に学ぶ中で、独自の治療を編み出されていかれました。
特に鍵となるのが"ビタミン、ミネラル、酵素の豊富な、みずみずしい食事”という鶴見式食養法で、これによって、がん、アトピー、喘息など難病といわれる多くの病気に、素晴らしい成果を上げておられます。
キーポイントは"腸”の健康
栄養学を重視するアメリカの医療
鶴見 食べ物が、病気や健康に絶大に関与していることは間違いない事実です。
アメリカでは1977年1月にマクガバン報告が発表されたのを契機に、食物とがん、あるいは食物と高脂血症と、"全ての病気に食べ物が関係している”という研究データが次々発表され、1992年には代替医療学会が出来、最近は医学の教育課程に栄養学も入ると言われています。
日本では患者さんから「何を食べたらいいのか」聞かれると、「何食べてもいい」と答える医者が一般ですが、アメリカでそれを言ったら自分の身が危ない、下手すると訴えられるから、医師は食べ物と病気の関係をいろいろ勉強している人が増えていると聞いています。
人間は30歳過ぎると胸腺ホルモンをはじめホルモン系がだんだん退化していくだけではなく、酵素がどんどんなくなってきたり、腸内細菌の悪玉菌が増えたりして、老化現象は起こります。
そういうものをカバーするためには、医者が真実の栄養学を勉強しなければいけない時代に突入していると強く思います。
ただ、その栄養学も千差万別あり、これが最高というのは少ないのですが、それでも今アメリカではそういう優れた栄養学が中心になってきており、そのお蔭なのか、肉を食べる人が減って、ハンバーグを中心としたファストフードの小さな店が潰れてきているという話も聞きます。
風邪も食事から腸の腐敗が原因
鶴見 病気と健康は基本的に食物が大きく関係し、そのつながりとしては私はアナログ的つながりを考えています。つまり、食べた物は血になり、その血が全身にまわり、毒素をうまく排泄するかどうかということです。
そのことが確実にわかるようになったのは、アメリカで開発され最近急速に広まってきた「LBA(Live Blood Analysis)」という、生きた血液を1000倍の光学顕微鏡で拡大した画像をテレビ画面で映し出して見るやり方です。
例えば、風邪の患者の殆どには「アキャントサイト」というトゲのある赤血球が多々見られます。アキャントサイトは食べ過ぎ、白砂糖、酸化したもの、あるいは、肉や魚の蛋白がうまく分解しないものなどを沢山とった時に、腸で腐敗して出て来る赤血球です。
風邪はそういった赤血球が全身にまわって感染源となって扁桃にたまり、そして免疫力も弱り、そこに外から侵入してきたウイルスなどの感染に抗し得なくなることが原因なのです。
腸を浄化し血をきれいにすればがんも治る
鶴見 免疫をつける、抵抗力をつけるためには、腸を浄化し、血をきれいにすることです。しかし、今の医療ではそれについて殆ど考慮していません。
私の食事法でがんが治った患者さんが、大病院に行って「食事療法と免疫療法で治しました」と言うと、「こんなことで治るか」と一言で片付けられる。それほど現代医療は食物と病気を関連づけない。その最大の理由は固定観念です。真面目に関係ないと信じこんでいるからどうしようもありません。それで、がんという部分だけを塞ぎ込んで、ステロイド、抗がん剤をやりまくり、結局、抵抗力をとことん落とし、取り返しのつかない状態で最後は死んでいく…。
初めからそんなことをしないでとことん腸をきれいにし、免疫力をつけ、血をきれいにし、様々な免疫活性物質を用いたら、もっときれいにいく場合が多いのです。それは私の経験から断言できます。
腰痛の人は腸に残存便をためている
鶴見 また、今の医学では腰痛など、痛みを骨に結びつけて考えていますが、それについて私は15年位前から疑問に思っていました。
私のような田舎では腰が、くの字に曲ったお百姓の患者さんが結構来ます。しかし、腰痛では来ない。「腰はどうですか」と聞くと「痛くない」と答える。一方で、背中が真っ直ぐピンとして、レントゲンとっても何の異常もない人がものすごい腰痛を訴えてくることが多いんです。
私は長いこと鍼の勉強をし、そこで見付けた結論は、痛みの殆どは「内臓体壁反射」、つまり腸がものすごく反映しているということです。
急性の腰痛であるギックリ腰の患者さんのレントゲンをとったら、残存便が黒々と写っている。そこで「うんこ出てないでしょう」と聞くと、「毎日出てますよって」と必ず答えます。しかし、ニョキニョキと沢山は出てない。私は1日に500g位出て欲しい。そしたら腰痛は殆ど出ないです。
鍼や整体や操体などでは一時的には痛みがとれても、すぐまた痛くなる。根源的に治すには腸にたまった毒素を出すことです。
私は、繊維の沢山入ったサプリメント(栄養補助食品)と、ビタミンCのサプリメントをどさっと飲ませます。
ギックリ腰で来院した88歳のおじいさんは凝縮食品、簡単に言うと固形物と、そして甘い物、のど飴、こんなものしか食べていなかった。これではいい便が出ません。この患者さんに繊維のサプリメントを普通の約3倍量飲ませたら、翌日「驚いた。便器にあふれるほど出た」と言って来た。腰はと聞くと「ああ、痛くない」そういうことが多いんです。
腸内の腐敗の目安となる大便の臭い
鶴見 人間は木と同じではないかというのが私の考え方です。土壌に水がなくなり栄養素がなくなり、土が腐れば木は枯れます。
腸の中をひっくり返せば土壌です。そこに、臭いものが入るか、臭くないものが入るか入らないか、良い栄養がいくかいかないか。この腸の中が臭い、腐る、腐敗する、異常発酵するということが、病気の原因の最大のキーポイントなんです。
腸の中は食べた物の溜まり場と考えるとわかりやすい。そうすると、どういうものを食べたら腸内が腐りにくいか。
その目安は、大便が臭いか臭くないか。誰が入ったか痕跡すらないような便を出してるのはかなりいいですね。
最近、オランダで大便中の腐敗物質、インドールやスカトールなどを調べて腸の腐敗度がわかる機械が開発され、今年中には日本に導入されるそうですが、その機械で測ると、何ヵ月後にはがんになるということがまだ確実なものではないですが、わかると言われています。
腸内の腐敗度が、如実にわかる"生きた赤血球”
――画期的検査法「LBA」――
鶴見 もう一つの方法は、先ほど風邪のところでお話ししたLBAです。
LBAでは赤血球、血小板、白血球、リンパ球などの血液成分や、あるいは血液中にある様々な異物を見ることができます。
特に、腸の腐敗度は赤血球でわかります。
正常な赤血球は、きれいな円形をしてバラバラになっています。こういう生き生きした血が流れて全身を生き生きと活性化し、組織になったり、あるいは老廃物を吸収して体外に排泄するということが非常に大事なのです。
ところが、免疫力の落ちている人や体調の悪い人は、ルローといって赤血球が連なっていたり、アキャントサイトといって確実に腸の腐敗度を示す赤血球が見られます。
「ルロー(連銭形成)」は、消化酵素がおっつかないで食べ物が分解しなくなった状態です。
東洋医学でいう・血で、赤血球がこういう状態になると血流が悪くなり、新陳代謝がうまく行なわれません。
「アキャントサイト(有棘赤血球)」は、ウニ状赤血球とも金平糖型赤血球ともいいますが、腸内の腐敗菌の繁殖が原因で、毒素そのものといえます。この赤血球が見られるとうんこやおならが臭いから私はこれを"うんこ臭い赤血球”と名づけました。
この他、血液画像にはいろいろな異物が見られ、それによって、どんな食べ物を食べているかとか、全身の症状の推測や病気の予想などいろいろなことがわかります(表)。
「プラーク(垢)」という、コレステロールとか菌などいろんなものがくっついて垢になって血液の中に流れているのが見られます。
「バクテリア」は、生ハムや刺身などバクテリアの多い生ものを食べると無数に画面に飛び交っているのが見られます。
さらに、「バクテリアのまゆ」と言われるバクテリアが胞子を形成したさなだ虫みたいなものが多いと、血管がつまる原因になるのではないかと思われます。脳梗塞の原因は血栓と言われますが、決してそれだけではない、バクテリアのまゆやプラークでもつまる可能性があります。
「シュガークリスタル」は、砂糖が腸で分解しきらないと、赤血球のまわりに点のようなものがあらわれます。血液に残った砂糖には悪い細菌やウイルスがたかり、それが貧血症の原因になります。
果物も糖分が多いですが、果物ではこんな風にはなりません。果物はミネラルとビタミンが豊富で、アルカリ性であり、そして、酵素をたくさん含んでいるので、非常に消化されやすい食べ物だからです。
大腸と各臓器は密接に関係している
鶴見 LBAは、トレーシー・ギブス氏が開発した検査法です。
その先生がバーナード・ジェンセン博士という現在90歳半ばを過ぎても非常に健康な方です。
バーナード・ジェンセン氏は、胎生の研究から、大腸の壁にそって全ての神経節が発生していくということを見つけました。
例えば、下降結腸からは肺が出来る神経節が発生しています。そうしますと下降結腸にものすごい宿便(腸の絨毛にこびりついている古便)や、残存便がつまって何日も出ない状態だと、喘息になると言って過言ではありません。
このように、大腸と全身の臓器というのは密接に関係していることは、胎生から見ると非常にわかりやすい話です。
"水”は、毒素を排泄し新陳代謝を円滑にする
鶴見 このような、体の中の毒素が多い人はまずそれを抜くところから始めなければいけません。
その場合、水は、良い酸素の供給源であり、良い栄養素でもあり、全身の毒を洗い流す力にもなり、そして赤血球のくっつきあっているのを解く力があります。
それほど、水というのは大事なものです。クラスターの小さい、吸収の良い水の摂取に是非、心がけて欲しいと思います。
"酵素”を含んだ 生食・発酵食の 素晴らしさ
鶴見 そして、生きた栄養素を入れるために、生食中心のみずみずしい食生活に転換させることが大事です。
1920年代、アメリカにヘンリー・リンドラーという、殆ど生野菜中心の食生活で、肉を食べる場合も生肉という食事法で病気を治す医者がおりました。1985年に『酵素学』を発表したエドワード・ハウエルは、6年間リンドラーのサナトリウムに勤め、病人たちがリンドラー・サナトリウムで極めて健康になって帰って行くのを目の当たりにし、その食事法に注目し、"生食にしか酵素はない”、そして、"酵素こそが最大の栄養素”であることに気づいたんです。
酵素は体の中で消化や代謝、解毒に働き、酵素なしでは身体活動は一つとして行えないほど重要なものです。その酵素は一生で一定量しかない、つまり、「一定量の酵素が尽きた時が死」だとハウエルは言っています。
ハウエルは一定量の酵素を潜在酵素(図)と呼んでいますが、潜在酵素がどんどん使われて減っていくと病気になる。つまり、消化酵素がひどく使われると、代謝酵素が補充に使われ、代謝や解毒がうまくいかなくなり、その結果、病気になるのです。
この潜在酵素の減少を防ぐには、食物から酵素をとればいいということになります。それでは、どんな食品をとればいいか。
生の食品には全て酵素が存在しますが、・40度以上の加熱、・放射線や電磁波処理、・食品添加物や農薬の過多、・酸化――などで酵素は死んでしまいます。
反対に、酵素の多い食べ物は、生野菜、生の果物、純正発酵の漬物(特に糠漬け)や納豆や味噌、本醸造の醤油――こうした食品です。
病気を未然に防ぎ、また病気を治すには、こういった食べ物を積極的にとることが重要です。
酵素の含まれている食べ物は体の中に入ると、胃の上部で予備消化、つまり食物自身の酵素で食物を分解してしまうので、人は自分の消化酵素を使うのが少なくてすむわけです。
繊維も大事
鶴見 そして、毒素排泄で重要なのが食物繊維です。食物繊維は大便の排泄を促すだけでなく、腸内細菌叢の環境を整えて、腸をきれいにしてくれます。
アフリカには1960年頃までは、盲腸炎や大腸がん、乳がん、肥満、骨粗鬆症などはなかった、しかし、それを過ぎてからこういう病気が増えてきた。その最大の原因は食物繊維をとらなくなったからです。
パプアニューギニアやアフリカの人達は昔はタロ芋ばかり、つまり複合炭水化物96%という炭水化物人間で、蛋白質は殆どとらないのに筋肉隆々、健康体です。そこに秘訣を見なければいけないんですね。
戦後の健康法ワースト4
鶴見 昭和40年を過ぎてから突然、体が冷える、繊維がとりにくいということで、生野菜はいけない、必ず加熱しなさいという間違った食事の仕方、健康法が流行り、現在まで続いております。
この他にも、戦後流行った健康法、食事のとり方で間違っているものがいくつかあります。
・第一番目が今お話しした生はいけないという健康法。
・二番目が、午前中は毒素を排泄する時間帯なのに、朝食をしっかり食べろという食事法。
・水を飲むなという健康法もとんでもない大間違いです。
・さらに、蛋白質を多くとれという大間違い。蛋白質が良いというのは筋肉は蛋白質だからという頭で考えた理屈で、蛋白質の限界値は30g前後ということはすでに1901年にジッテンレンが明らかにしていることです。蛋白質が多いと、腸内の腐敗の原因になるだけでなく、カルシウムの尿中排泄を促し、骨粗鬆症の誘因にもなります。
午前中は毒素排泄の時間帯
朝食は"果物”
鶴見 人間は汗とうんことおしっことで、毒素を出しており、この新陳代謝がうまくいかないと、大変な毒素を溜めやすくなります。
午前4時から正午までは毒素排泄の時間帯ですから、午前中は大便小便をしっかり出し、胃と腸と肝臓を休め、汗をたっぷりかく。皮膚は排泄器管ですから、是非とも朝目が覚めたときは汗びっしょりかいて、全身裸になり、乾布摩擦などもして、皮膚呼吸をさせて欲しいものです。
胃も腸も肝臓も本格的に動き始めるのは朝起きて3時間後です。ですから、午前中に消化が難しい、炭水化物や蛋白質を入れると、胃腸も肝臓もクタクタになり、そういう人ほど重い病気になりやすい。
朝の排泄の時間帯にふさわしい食べ物はみずみずしい果物です。果物は、水、繊維、ビタミン、ミネラルが豊富ですから、細胞に残っている毒素を流す、特にビタミンB群はエネルギー代謝を急速に回転しますから強烈な新陳代謝になります。そして、酵素が多いので消化の負担にならない。
食べ物は果物オンリーにして、リンゴ、グレープフルーツ、イチゴ、バナナなど、できれば3〜4種類組み合わせて適量に、そして良い水、これがベストです。朝は生野菜もとらない。
どうしても胃に充足感のあるものが欲しかったら、果物と一緒に、リブレフラワーを入れた味噌スープを少量飲むのをすすめます。リブレフラワーは、玄米の優れた栄養素が消化吸収しやすくなっているだけでなく、玄米の酵素が生きており、さらに非常に酸化しにくいという画期的な玄米粉です。
冷え性の人、果物をとると体が冷えるという人は、梅干、漬物を少量一緒にとるといいでしょう。また、ブラックジンガーという玄米または大豆を黒焼きにした飲み物の常飲もおすすめします。
そして、午後は急速に胃腸が働くので、しっかり食事をとるのは正午から午後8時までの栄養吸収の時間帯に。特に一番いいのは夕方5時から8時の間です。
そして、午後8時から朝の4時の全身の代謝を司る時間帯は、食事をしない。
是非、このような食生活を試されて、ご自分の体でその素晴らしさを体感していただきたいと思います。
(構成・本誌 功刀)