自分でできる健康作り

健康は、食事・運動・心のあり方で決まる

しまさき内科 嶋崎達也院長

"食”・"動”・"心”

「病は気から」、「いのちの元は食べ物」…、古くから言い継がれてきたこうした言葉は近年、ストレス学、免疫学、疫学などの著しい進展にともなって現代医学でも重要視されるようになりました。
 厚生省が成人病に「生活習慣病」の概念を取りいれたのもその一つのあらわれでしょう。
 実際、健康の源は食・動・心(気)の人間の基本的な営みの調和にこそあり、これを無視していくら薬や手術などの化学療法、手技を施しても人は健康を獲得できません。
 しかしながら、制度の問題もあって、現実にはまだまだ薬や手術を主にした医療が幅を利かせています。
 そうした中、南国土佐は高知市の内科医、嶋崎達也先生は、健康は心のもち方、食事・栄養、運動で決まると、診療のかたわらには健康教室を開いて啓蒙に努めておられます。さらに、「病は気から」を科学的にとらえるべく波動測定を応用、最近は「生きがい探し」というユニークなテーマにも取り組んで、広い分野から健康確保の道を探っておられます。
 嶋崎先生に"自分でできる健康作り”というテーマで、食・動・心のあり方をうかがいました。

学生時代の病気が 研究のスタートに…原因不明で動けなくなり、 西洋医学の殻から抜けでる

──先生は診療のかたわら、健康教室を開いて自分でできる健康作りということで、食・動・心のあり方について啓蒙されているそうですね。そうした活動のきっかけは?
嶋崎 実は、僕は栃木の自治医大で寮生活を送りました。
 その時の食事ときたら、天ぷら、カップ麺、菓子パンなどいわゆるガラクタ食品ばかりで、すっかり体調を壊してしまったんです。
 それが影響したかどうかはわかりませんが、ある時から全く動けなくなってベッドに寝たきり、車椅子にも乗れないという状態が4ヶ月間続きました。幸い、留年もせずに卒業できたんですが、あの時は死も覚悟しました。
 とにかく郷里の高知で診てもらっても原因が全くわからず、で、この原因は一体何だ?と。
──わかったんですか?
嶋崎 いえ、内科、精神科といろいろ調べたけれどもわからない。
 もし、このまま自分の健康問題を解決できなければ、たとえ医者になっても何のお役にも立てない。そうした不安から、ストレスとか心のもち方、あるいは食事のあり方、環境問題、そういうことに思い至ったんです。
 それと、なにしろ原因が不明ですから、何か霊的なものかも知れない、あるいは目に見えない宇宙エネルギーといったものがもらえない状態になったのではないかとも考えました。
 それ以来、今通用している一般の常識や科学だけでは体の問題、病気は解決できないと考えるようになり、食事や栄養、環境問題はもとより、気や波動など現代の科学では解明できない、いわゆる未知の科学に目覚めたというわけです。
 実際に医者になっていろいろな症例を診ても、やはり西洋医学だけでは解決できるものは少ないという感を強くしました。

いよいよ 穀類・菜食の時代に 肉・牛乳・卵は 人間の体に合わない

──学生時代の食事が出鱈目だったとおっしゃいましたが、まず食生活についてはどうお考えですか。
嶋崎 肉、牛乳、卵、こういった動物性の高脂肪・高蛋白食品は、基本的に人間の体に合わないものだと思っています。
 こうした食品は現代医学でも、アレルギーや動脈硬化、体の中に酸化物質が増えて疲労しやすくなること、また、がんの要因になることなどが認められています。
 栄養学でも昔は「体に脂肪が何%だから何%の脂肪を食べなさい。蛋白質は何%、カルシウムは何%だからその通り食べなさい」という発想に基づいていましたが、最近の栄養学では、肉や牛乳は消化に悪くお腹の中で腐りやすい。その結果、人間にとってはアレルギーも起こしやすいし、便秘やがんにもなりやすいということに気づき始めました。
 よく肉を食べているアメリカでも、一流選手ほど競技が始まる1ヶ月くらい前からは肉を断ち、マラソンでトップを狙うようなレベルの高い選手は「競技をする前に肉なんか食べたら明日、走れない」とか、「今時、肉を食べてマラソンをさせるのはケガか病気になりなさいと言うに等しい」と言うほど進んでいます。
――まだまだ肉や動物性食品への信仰が篤い日本は遅れていますね。
 動物性の蛋白質には、狂牛病のプリオンとか恐いものがありますね。
嶋崎 養鶏場の卵なども抗生物質などの薬漬けですからね。

ダイオキシンを避けたいなら 穀類・野菜中心に

嶋崎 それにもまして恐いのが環境ホルモンです。
 ダイオキシンなどの環境ホルモンはほとんど水に溶けず、油に溶けます。ですから、牛肉とか豚肉、牛乳、卵など高脂肪食品が非常に危ない。
 ダイオキシンは今盛んに騒がれていますが、実は20年以上も前から起こっている問題です。
 ちょうどその頃から、肉や牛乳、卵の消費量が急上昇し(図1)、時を同じくして喘息、アトピー、花粉症、がん、精神的不安症、自律神経失調症、キレる子供たちが増加してきました。
 背後には、環境ホルモンもかなり影響していると思います。
──日本人の母乳は世界で一番ダイオキシンが多いそうですね。これに対して厚生省は「赤ちゃんは1年も飲まないから問題ない」と言っていますが…。
嶋崎 とんでもない。赤ちゃんは1年で体の基礎ができてしまいます。その時にダイオキシンたっぷりの母乳を飲んだら、不妊症やアトピーになる危険性が高くなります。現に母乳を多く飲んだ子ほどアトピーが多くなるのは実証されています。今、若者の間に精子減少、妊娠能力の低下などの問題が起きているのは、多くの研究者も指摘していますが、ダイオキシンと決して無関係ではないでしょう。
 母乳が赤ちゃんにとって最良の食べ物であるのは自明のことですが、今の状況では母乳は1ヶ月か2ヶ月までで、あとは人工乳でも与えざるを得ないところまで来ていると思います。でないと、子供らの一生は台無しでしょう。がんにかかるか不妊症になるか、事態はそこまで切迫しています。
──私どもは、歯の形状、消化酵素などからも人間の食性は穀類・菜食が基本と考えていますが、ダイオキシンなどの問題からも植物性食品を中心にした方がいいようですね。
嶋崎 植物は根から栄養分を水分で取ります。ダイオキシンは水にほとんど溶けないので、穀物、野菜、海草類は基本的には安全です。ただ、農薬は最大のダイオキシン発生源ですし、空中から降って来たものが付着しますから、野菜類は洗浄に心がけ、無農薬のものを選びたいですね。
 それと、ダイオキシンなどを排出してくれる大事な食物因子として、昔から言われる食物繊維の多いもの。例えば、海草類などは体の中を浄化して、悪いものをなるべく出そう出そうとしてくれるんですね。ですから、今の時代、海草類とか果物類、繊維類、こういったものを意識して食べる必要があります。

波動からも植物性食品は○ 肉・牛乳・卵は×

──まさに本誌で主張している通り、穀・菜食は良いわけですね。
嶋崎 ええ。いよいよもって、これから我々が食べるべきものは非常にハッキリしてきた、白黒がついてきました。
 波動計測器で食品を分析してみても、やはり、自然の山菜とか、自然に実っているもの、自然農法で作ったもの、そういう食品は波動値が非常に高く、肉や卵、牛乳、農薬や化学肥料を使ったもの、あるいはミネラルが不足している食品は波動が低いです。
――波動測定は食品から医学まで広範囲に応用されてきているようですね。
嶋崎 波動はこれからいろいろな分野に広まっていくと思います。
 特に農業に応用すれば、我々の食生活は確実に良くなると思います。
 また、先ほどから指摘している人間にとって基本的に良くない食べ物の類でも、自然の中で育ったものの中には高い波動のものもあるので、一概に全部がダメだとも言えません。

どんな食べ方をしたらよいか 最適の摂取カロリーは 18〜20歳の体重維持を目安に

──現代人はほとんどの人が過食状態ですが、カロリー(熱量、エネルギー源)としてはどのくらいが適量でしょうか。
嶋崎 ご指摘の通りほとんどの人がカロリー過多で、その結果、糖尿病やその他もろもろの成人病が出ているというのが現状ですね。
 カロリーではやはり肉類、油類、砂糖の摂取に気をつけます。特に油や砂糖はミネラルやビタミンなどの微量栄養素が殆どない非常に無駄な贅肉だけになるカロリーです。
 では、どうしたら良いかということになりますが、まず自分の必要カロリーをつかむことです。
 カロリーは個人個人によって適量が違い、ベストを維持するには同じ身長と体重でも、ある人は2000キロカロリー、ある人は1500キロカロリーということがあります。
 それは、まず年齢による違い。例えば若い人と50歳を過ぎた人では随分違ってきます。中年以降、高齢になるほど若い時と同じように食べていると過食になって、アッという間に肥満になってしまいます。
 胃腸の吸収率によっても違ってきます。同じものを食べても、消化率は人によって異なります。
 また、甲状腺の働きの高い人は昔から「ヤセの大喰い」と言いまして、食べても食べても太らない。逆に低い人は「水だけでも太る」と言われてきました。
 それから運動量やその人の体重あたりの筋肉量。それによっても必要量は全然違います。
 さらに、脳というのは非常にカロリーを使いますから、頭の使い方でも違ってくる。
 結論的には、カロリーの適量は「体ができた頃の体重を思い出して下さい」ということです。18〜20歳くらいの時の体重はその人にとっての理想体重だろうと。それからプラス、マイナス10%程度は許容範囲であると。これより超えていれば、明らかに太りすぎだから、たとえ標準体重以下であろうと、20歳くらいの体重に戻すように、摂取カロリーを調整すべきだと思います。

間食はノー、 就寝前の夜食は潰瘍の元

──間食についてはどうでしょう?
嶋崎 間食は潰瘍をつくります。胃・十二指腸潰瘍の原因で一番多いのは、ストレスと間食なんです。しかし、これが意外と、医学誌にも書いてない。
──結局、自分の消化液が、自分の胃の壁を消化してしまうからですか。
嶋崎 そういうことです。つまり、間食は糖分をちょっとだけとることなのに、胃液は食べ物が入ってくると「アッ、食事かな」と思って自動的に1食分出てしまうんです。そして、余分な胃液が残る。
 これが胃を荒らしますから、間食をすれば余った胃液がたくさん残ってそれが胃を壊す。これは当たり前のことで、特に夜寝る前に食べると、夜の間中、おなかが空いた状態が朝まで続きますから、「潰瘍は夜つくられる」ということです。
──それは知りませんでした。
嶋崎 それと、間食は、ほとんどが糖分や脂肪分をたくさん含んだお菓子ですから、これは、食べても、体の骨とか血とか肉になりようがありません。糖尿病になるか贅肉がつくかでしょう。
 お酒も同様です。間食がいかに我々の体を害しているかというのは本当に見たまんまという感じです。
──果物はどう評価されますか。
嶋崎 果物は糖分が結構あるので、あまり良いわけではないですね。波動で調べてもまあまあ良いというくらいです。

地球に優しい食べ方

嶋崎 しかし、果物は何といってもダイオキシンなどに汚染されていない。それに、比較的環境に優しいでしょう。
 今、我々が早急に考えなければいけないのはやはり、地球の環境なんです。果物は自然に木が生えてて、それから実をつけてくれて、それを食べる分にはあまり害を及ぼさない。身近で穫れる自然の(品種改良などを施していない)、それこそ昔から我々日本人が食べていた栗とか桃とかミカンなどはそもそも体に優しいようにできているんです。
 木というのは二酸化炭素を吸収してくれるし、水を保持してくれる、木があるってことは人間にとって生命の根源ですから、それから生える実はいただいて体に悪いことはないですね。
 また、地球環境を考えた時に、1人分の牛肉をつくるための飼料穀物は熱帯の人々がそれを食べ物としてとれば、10〜20人養えるわけです。それを我々が肉のステーキとして食べているという現状は改めないといけないですね。

運動と健康 筋肉をつけて 余分なものを燃やすこと!
──次に運動と健康の関連について…。

嶋崎 まず、筋力と病気は非常に関係しています。
 筋肉は体の中のいろいろなものを燃やしますよね。
──つまり、余分なものが悪さをしなくなるということですね。
嶋崎 おっしゃる通りです。筋肉でこそ、糖分とか脂肪、余分なものが燃える。
 先ほどの必要カロリーの話とも関係しますが、筋肉がある人はある程度食べても大丈夫だけれども、筋肉がない人は、ちょっと食べると全部余ってしまう。何も燃やせない。カロリーは筋肉と脳で全部燃やしますからね。
──関節に痛みが出るのも筋肉と関係がありますか。
嶋崎 はい。膝や腰が痛くなるのは、その関節の周りを囲んでいる筋肉が弱ることによって起こるんです。
 ですから、整形外科の病気は本当は筋肉が弱ることによって起きる方が多い。整形の先生は骨を診ますけれど、我々はまず筋肉を診る。筋肉を診て、その部分の筋肉が弱くなっていると「もうすぐ膝が痛くなりますよ」とか、「筋肉トレーニングしないと、整形に通わないといけなくなりますよ」と注意します。
 この診断は大抵当たりますね。ヘルニアなどもそうで、これを起こさないためには筋力をつけて、若い頃の筋肉に戻すことが大切です。
 特に日本人の場合は、腹筋、背筋が弱い人、それから膝の痛い人が多いですから、これを1日1回はトレーニングするように皆さんにお伝えしています。
──筋肉トレーニングはハードではありませんか?
嶋崎 年齢に合わせて誰にでも簡単にできます。「三日坊主」で終わらせないことが肝心です。また、運動をすれば血流が良くなりますから、動脈硬化の予防になります。
 これは、運動の最も優れた効果で、体力がつけば免疫力、風邪とか、がんとか、そういうのにもかかりにくくなることは十分に期待できます。

運動はストレスも解消
──ストレス解消にもなりますよね。

嶋崎 そこが労働と運動の違いです。
 以前、営林署の方とか力仕事をしている人を前に健康教育をしたことがあるんですが、「私ら、これだけ仕事して大汗かいて筋肉隆々なのに、それで運動せいなんてそりゃ先生、あんたらのことやで」と言うんです。僕は「いや、そうじゃない」と。「それは労働であって、使うべきところしか使ってないから、いくら筋肉があっても他に弱いところがいくらでもあって全身のストレス解消にはなっていない」と話すんです。
 つまり、普段、使わないところの筋肉とのバランスをとらないと、精神安定は得られないのです。労働運動とストレス解消運動は根本的に違うのです。

病は気から 生きがいこそ健康のもと
──最後に、心のもち方を。

嶋崎 心のもち方というのは、本当は体以上に大事なのかも知れません。
 よく「病は気から」と言いますが、それはほぼ100%に近いくらい当たっていると思います。 
 僕の先輩ががんの患者さんと一緒にマッターホルンに登った体験を書いた『生きがい療法』という本を読んでいただくと明白ですが、生きがいをもつことは、健康を維持する上で非常に重要です。
──先生の生きがいは何ですか?
嶋崎 ユングの言う集合的無意識とか、この世とあの世との関係を追求する学問…、今の科学から言ったら眉唾物でしょうけど、この分野は今急激に進歩しています。こうしたことへの探求。
 私の生きがいは、そうしたことに対して、周りの人々がもっと目覚めてくれること。それと、自分が宇宙エネルギーをもっと感じられるようになることですね。
──一生かけて、何か成し遂げる苦労のしがいというのは、やはり生きがいですよね。
嶋崎 全く同感です。僕は「空」というのが非常に好きなんです。空があって、初めてスタートできるんだから、空は全ての原点だと。何事も四苦八苦から始まってのことですから、それを認識しないと次へ進めませんね。

本来の自分であること
──病気は本来の自分を知る最大のチャンス──

嶋崎 もう一つ大事なことは、人間は、子供の頃は本来の自分(表参照)、生まれたままの自分で生きてるんですが、大人になると、いろんな社会のしがらみに出会って、どうしても本当の自分自身からずれてしまう。そう思わなくても、どうしてもずれてしまう(図2)。
 その、ずれた部分が結局、生命力、宇宙エネルギーを落として病気にしてしまう。そこをどうやって、もう一回本物の自分に戻していくか、この部分が大切なんです。
──はみ出している部分ですね。
嶋崎 これを本来の自分にすることによって、そこに成長があるわけです。
 これが人間の生まれてきた意味だし、生きがいだと思いますが、そのためには、自分がずれていることをまず知らなければいけない。たいがいの人間は、自分がずれているなんて思いもしないで、一生を終ってしまいます。
 ところが、病気をした人はずれていることを体が教えてくれている、非常に幸運な人なんです。病気もしないで偽物の自分で生きていて、事故か何かで急に亡くなるとか、そういうケースは最悪で、やはり病気は非常に大切なシグナルなんです。これを正確にキャッチして、初めて良い方向へ動くキッカケとなるわけです。
──気づきのチャンスというか…。
嶋崎 ええ。最大のチャンスです。人によって失恋とかいろいろあるでしょうが、やはり、皆さんが一番よく経験されるのは病気で、そうやって、こちら(本来の自分)へ動き始めるかどうか。それが第二の誕生になります。
 本物の自分でありさえすれば、がんなどの病気も治るし、そうした実例はたくさんあります。
──偽物の自分を放棄して本物をつかむ。死んだ気になって、自分の本来は何かを探すということですね。
嶋崎 けれど、一度つかんだものを離すって、なかなか難しいことなんです。しかし、この解決策が僕が学生の時に体調を崩してから、今日まで考え、実践してきたことの結論なんです。
──なるほど、人生の生きがい探し?
嶋崎 ただし、この目標を阻害する要因がいっぱいあります。
 悪いものを食べて、精神的に不安定で、運動もしないで、その結果不健康だと、それで本物の自分をつかみなさいと言っても、やはり、これには無理があるので、整えるべきものはちゃんと整えて、その上で本当の自分を探す旅を始めないと、理想論ばっかりいくら言ってもダメですから。
 それには、食、動、心の持ち方の三段階が必要ですと、健康教室や講演ではお話しさせてもらっています。
──今日は大変貴重なお話をおうかがい出来ましてうれしく思います。我が意を得たりの感を強く致しました。本当に有難うございました。
(構成・本誌編集部)