日本人に最も適した不老長寿食 スーパー発酵食品"納豆”

強力な血栓溶解作用から、がん、糖尿病、骨粗鬆症、O−157まで

倉敷芸術科学大学 産業科学技術学部機能物質化学科
須見洋行教授

納豆は、成人病予防の最適食品、 日本人に最もあった不老長寿食

 日本が世界に冠たる長寿国であるのは、日本特有の食生活が大きく関係しているのではないかと今、和食は国際的に評価が高まっています。食品別からみて、特に評価されているのが大豆の摂取で、最近開かれた国際会議"成人病予防のための研究会”の議題も大豆が中心になりました。
 日本で大豆は、味噌、醤油、納豆、豆腐など多くの加工品になって食されています。中でも納豆は、大豆のもつ優れた栄養と機能性がパワーアップされた上に、独自の効能を持つことから、日本での研究も改めて活発になってきています。
 納豆の効能には、血栓予防効果、降血圧作用、制がん作用、骨粗鬆症予防効果、整腸作用の他、最近はO157などへの抗菌効果も言われ、その中でも、血栓を溶かす作用は一般に処方されている血栓治療薬より優れていると言われています。
 血栓の発生を防ぐことは、日本人の三大死因のうち、血管障害から起きる「心筋梗塞」と、「脳梗塞」、引いては脳梗塞からくるボケの予防にもつながります。長寿の秘訣は、血栓の予防からと言っても過言ではないでしょう。
 この納豆の血栓溶解作用は、血液中の生理活性物質を研究されている須見洋行先生が、米国留学中の1980年、納豆のネバネバに含まれている酵素の中に発見。その酵素は「ナットウキナーゼ」と命名され、1986年、アメリカで発表されました。
 須見先生は、昔から日本人に食されている納豆は体質的にも日本人にあった食品で、「日本人にとっては最良の不老長寿食」と話されています。
 納豆研究の第一人者で、納豆博士としてつとに知られる須見洋行先生に、納豆研究の最前線を伺いました。

納豆の強力な血栓溶解作用 血栓症を予防するには
──血栓と血栓溶解作用──

――今日は納豆博士の須見先生に、納豆のお話をいろいろお聞きしたいのですが、ナットウキナーゼの発見者であるところから、まずは納豆の血栓溶解作用のお話からお願いします。
 血栓は一般には血の固まりで、血管をふさいだり、血の流れを悪くして、脳梗塞や心筋梗塞などを起こす原因になるものと思われていますが。
須見 人間の血液の中には、血栓を作る要因と、血栓を溶かす要因が同時にあります。
 動脈硬化や高血圧、あるいは外傷など何らかの事情で血管が切れた時には、出血個所で速やかに出血を止めるために血液凝固のシステムが働いて、傷口をふさぐために血の固まり、すなわち血栓が出来ます。
 その後、回復にしたがって血栓を溶解する作用が働き、最終的にはウロキナーゼのような酵素を代表とする血栓溶解系が働いて血栓を溶かすわけです。
――血栓が出来ても、体の中で血栓溶解酵素などが働いていれば、血栓症などにはならないわけですね。
須見 そうです。血液が凝固する作用自体は体にとって必要なもので問題ありません。
 問題は、血液を固める働きと(凝固活性)、血栓を溶かす働き(線溶活性)のバランスが崩れた時に起きます。血栓症では、線溶活性の方が低くなっているわけですね(図1)。
 ウロキナーゼのような血栓溶解酵素は、血管でつくられ、血液中に放出されるわけですが、年をとってくるにしたがって、この酵素の合成能力が低下してきます。ですから、年をとると血栓が出来やすくなり、また一旦出来た血栓が溶けにくくなって、脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなるわけです。
 年をとって血栓症を起こさないためには、この血栓溶解酵素の産生能力をいかに落とさないかにかかってくるわけですね。
――そこで納豆を食べると、ウロキナーゼなどの血栓溶解酵素の産生能力が高まるわけですか。
須見 血液が固まる時には、血液(血漿)中に大量に含まれているフィブリノーゲン(線維素原)という蛋白質の一種が、血小板や血液凝固に働く複数の酵素の働きによって、フィブリン(線維素)という不溶性の蛋白質に変化して、血液を固める方向に働きます。
 血栓の本体はこのフィブリンが特別に固まったものと思っていただければ結構ですが、フィブリンはちょうどプリンのようなゲル状に固まっています。
 血栓が溶けてくると、血液中にはFDP(フィブリン・デブラレーション・プロダクト)という物質が増えてくるのですが、私達は納豆を食べると、血液中にはこのFDPが非常に増えることを確認しました。
 なぜ納豆を食べるとFDPが増えるかというと、これは納豆のネバネバに含まれている酵素「ナットウキナーゼ」が、フィブリンを分解するとともに、ウロキナーゼの元になるプロウロキナーゼの働きを非常に強く活性化するからなんです。

アメリカで発見された 納豆の血栓溶解作用

――先生は1980年代、アメリカ留学中にナットウキナーゼを発見されたそうですが、アメリカで発見されたというのは興味深いですね。
須見 私は血液中の生理活性物質の研究が専門で、当時、文部省在外研究員としてアメリカシカゴ大学マイケル・リース血液研究所で、今お話ししたウロキナーゼなどの研究に明け暮れていました。アメリカでは食生活の関係もあってか血栓症がとても多く、血栓の研究が盛んだったんですね。
 その頃にはすでに、尿から人工的に抽出したウロキナーゼが血栓症の治療に用いられていたのですが、ウロキナーゼはせいぜい10分程度しか活性を保てないので、注射で点滴します。私達はウロキナーゼの経口投与による研究も進めていて、特殊なカプセルを使うと経口投与でもそれなりに効果があることが分かりました。
 多少なりとも経口摂取で効果があるなら、薬ではなく、食べ物で血栓を溶かすものはないかと考えついたわけです。
 当時すでに日本は世界一の長寿国で、日本食を恋しく思いながらスーパーで納豆を買っては食べていたのですが、ある日ふと日本独特の食品である納豆にウロキナーゼに似た成分があるのではないかと思いついたんですね。
 早速、シャーレに人工的につくった血栓を入れて納豆をのせ、体温に近い37度に保って放置したところ、納豆の周囲の血栓はだんだん溶け始め、18時間後には完全に溶けてしまったんです(写真)。
 さらに研究を進めて、納豆の中に含まれているどの成分が血栓を溶かすのか突き止めていくうちに、ついに納豆のネバネバの中に血栓を溶かす働きを持つ酵素があることが分かり、これをナットウキナーゼと名づけてアメリカの学会に発表しました。1986年のことですね。
 納豆の他にも、200種位の食品で実験してみたのですが、血液を固まりにくくする作用はあっても、血栓そのものを納豆ほど強く溶かす食品はなく、今でも見つかっていません。

血栓溶解剤ウロキナーゼより パワフルなナットウキナーゼ

――高齢化社会に大きな福音をもたらす発見ですね。
須見 しかも、ナットウキナーゼの作用は、血栓溶解剤として使われているウロキナーゼよりも血栓を溶かす作用が強いことが分かりました。
 納豆3〜4粒(1g)で、ウロキナーゼが通常処方される約1600単位にも相当するんです。発作直後の危険な状態にある患者さんには、20〜30万単位のウロキナーゼが処方されますが、単純計算でいくとそれは納豆1パック(100g)に相当する効果なんですね。
 動物実験では、ナットウキナーゼが強酸性の胃の中でも、アルカリ性の腸の中でも活性が失われないことを確かめ、さらに健康な人に食べてもらってその血液を人工血栓に加えてみたところ、食後8時間を経過しても血栓を溶解する作用が持続したのです。
 その後、先ほど申し上げたように納豆を食べると血液中のFDPが増える、それも1回食べると次の日の血液や尿のFDP濃度が増えていることが分かりました。
 ウロキナーゼなどを注射するとパッと濃度が上がって2時間以内には消えてしまうのですが、納豆の場合はじわじわと上がって食後2時間位で効果が発揮され、4時間後をピークに8時間位は持続するんですね(表)。
 これは、酵素が生きたまま胃から腸に達し、少しづつ体内に吸収されてじっくり時間をかけて効果をもたらすからです。

成果をあげる"納豆食治療”
――網膜中心静脈閉塞症――

――血栓の予防には、血栓予防薬を飲むより納豆を食べた方がよっぽど良さそうですね。
須見 予防どころか、すでに実際の治療にも応用されているんですよ。
 血栓の治療にはまだまだウロキナーゼなどの血栓溶解薬が主役となっていますが、愛媛県松山市で別所眼科を開いている別所建夫先生は、網膜の静脈が集合したところに血栓ができる「網膜中心静脈閉塞症」の初期治療に、薬を使わないで、納豆食だけで効果を上げています。
――網膜中心静脈閉塞症は、目の網膜の静脈がつまるんですか。
須見 そうです。高齢者に多い病気で、高血圧や動脈硬化が引き金になると言われています。
 目の網膜に血栓が出来ると、下肢にできる静脈瘤のように、網膜の静脈は太くなって、クネクネ蛇行したり出血(眼底出血)を起こしたりします(写真・)。これが原因で緑内障や硝子体出血を併発することがあります。
 この病気は血栓を溶かせば治るのですが、別所先生は高価な上に1週間しか保険がきかないウロキナーゼの代わりにもっと手軽な治療法がないかと考えていた時に私の研究を知って納豆食治療を思いついたそうです。
 そこで比較的軽症の患者さんに、納豆だけとってもらったところ、4ヶ月後には静脈の蛇行がとれ、血栓が溶けていたそうです。その後も私の方に、納豆食治療の成果が報告されてきますが、非常に熱心な先生です。
 この療法が知れわたって、鳥取大学の医学部では、軽症ではなく、急激な視力低下を起こした切迫期の患者さんに納豆食を用いて素晴らしい成果をあげました。このケースでは、止血剤、血管拡張剤、消炎酵素剤の内服、止血剤の点滴と共に、納豆を毎夜食ごとに19日間摂取してもらったところ、血管、視力の改善とともに眼底の状態も非常に良くなり、その後1週間に2度の割合で納豆をとり続け2ヶ月後には完治、その後も再発はないと報告されています(写真・〜・)。
――予防どころではない、納豆食による治療が実際に行なわれているんですね。
須見 血栓溶解薬は点滴による注射で、持続効果も長くて20分、家に帰って1時間もすれば血は再び固まりやすくなってしまいます。
 それに対して、ナットウキナーゼの効果は市販の納豆をそのまま食べれば良く、効果も先ほど申し上げたように、食後8時間は持続します。
 経済的にも、薬価に換算すると納豆1パック(100g)中にはウロキナーゼ約20万円分の効能量が含まれているのですから、血栓症の患者さんにとって実に有難い食品といえます。

ボケ予防に大きな期待
――天才少年は3食納豆――

須見 こうしたナットウキナーゼの作用から、納豆は心臓病や脳卒中、ひいてはボケの予防や改善にも大きな効果が期待されます。
 日本人に多い脳血管型痴呆症の60%は血栓性といわれていますから、ボケに対する納豆への期待度は非常に大きいと思います。
 ところで、世界で一番の秀才児と言われているマイケル・カーニー君、知ってますか。彼は納豆を朝、昼、晩と食べているんです。
――確か1〜2年前に来日したアメリカの少年。
須見 そうです。そうです。10歳で大学を卒業し、13か14歳で大学院を卒業したという。
 彼の母親は日系人で、彼がお腹にいる時も納豆を食べていたんですよ。それで、彼自身も赤ちゃんの時から納豆を食べていて、IQ200という高い知能指数はナットウヘッドと言われているそうです。
 知能には遺伝が大いに関係しているでしょうが、食環境も見落せないですよね。ナットウキナーゼか、健脳食といわれるレシチンか、サポニンか、納豆に含まれるどの成分が良かったのかは分かりませんが、納豆にはそうした知能を向上する成分が随分とあるのは確かです。

まだまだある納豆の効用
抗酸化作用と制がん効果

――今おっしゃったサポニン。これは、がんなどの原因となる活性酸素を消す抗酸化作用で知られていますね。大豆を多く食べる人には、乳がんなどが少ないことが研究されていますが、納豆はどうでしょうか。
須見 大豆や大豆加工食品を多くとる地域の人には、がんが少ないことが以前から指摘されています。大豆や納豆には抗酸化作用が認められていますから、がん抑制作用は抗酸化作用によるところが大きいと思います。
 納豆独自のがん抑制作用については、金沢大学の亀田教授がマウスの左右の鼠頚部(もものつけ根)にがんを移植して納豆菌を注射した実験で、納豆菌を注射しなかった左側はがん細胞が増えていたのに対し、注射した右側はがん細胞が左側の半分、あるいは全くなかったことを確かめ、この納豆菌のがん抑制作用を「KMD1126」と名付けています。
 その有効成分の本体、また、人への効果はまだ不明ですが、いづれにしろ、納豆の抗がん作用は、大豆の持つ抗酸化作用と納豆菌の抗がん作用とあいまって、原料の大豆より強力であることが予想されます。

降血圧作用

須見 ところで、納豆を食べ続けて一番多く経験されることは、血圧が正常域になることなんですよ。
 私達が、成人ボランティア5人に納豆のエキス(納豆に換算して200g)を4日間飲んでもらった実験でも、4人までに降血圧効果が確認されました(平均mm/Hg‥最大173・8↓154・8、最小101・0↓91・2)。
――ナットウキナーゼが血栓を溶かすことによって血液の流れが良くなるからですか。
須見 その効果もあります。
 そればかりでなく、納豆には血圧を上げるのに働く体内の酵素(アンジオテンシン変換酵素)を抑える作用があり、この成分は原料の大豆にも含まれていますが、納豆の方にはるかに多く含まれていることが分かっています。

納豆菌の整腸作用と0157殺菌効果

――去年猛威をふるったO157への殺菌効果もあるということで、納豆の売り上げが急増しているそうですね。
須見 納豆菌は腸内で乳酸菌を増やし、腐敗菌を抑制する効果が高く、整腸作用があります。
 一方で、納豆菌に抗菌性があることは古くから知られ、戦前は海軍を中心に、赤痢や腸チフスに対する研究も行なわれていました。
 O157など病原性大腸菌に対しては、私達の研究でも納豆菌が生成するジコピリン酸が菌の増殖を抑えることが確かめられました(図2)。
 納豆に含まれているジコピリン酸などの抗菌物質は、時間がたっても効果が低下することなく、腸内でも効果が持続します。すでに食中毒を発症した人に納豆がどれだけ効くかは不明ですが、細菌が体内で入った段階で増殖を抑える効果は十分に期待できます。

不老長寿食"納豆”
大いに食べるべし
大豆食文化と納豆

――日本人は長い間、主なる蛋白源を納豆の原料である大豆からとってきたわけですが、納豆はいつ頃から食べられるようになったのですか。
須見 大豆は昔の満州あたりを起源にして、日本には稲作とともに弥生時代に伝わったと言われています。日本に入ってきた当初は煮豆や黄粉として食べられていたと考えられていますが、遣唐使が大豆の加工・発酵技術を持ち帰って以来、豆腐や納豆、味噌や醤油などに加工されるようになり、そうした大豆加工食品は始めは僧侶を中心に食べられていました。
 寺院を中心に、加工技術は日本独自に発展していき、納豆の製法も変遷して、現在の糸引き納豆が庶民の間で食べるようになったのは江戸時代の頃からだといわれています。
 ただ、日本独自の糸引き納豆がいつ出来たかは諸説あって、自然発生的に出来たものが縄文時代から食べられていたという説もあります。

納豆菌は 大豆のよしあしも選別する

――今殆ど輸入に頼っている大豆は、ポストハーベスト農薬や、近頃は遺伝子組み換え大豆も心配ですね。
須見 ところが、納豆菌というのはとても感度が良くて、大豆のよしあしを測るバロメーターなんですね。
 シャーレに水を張って大豆を育てると、発芽率がちょっと落ちたらもう納豆菌はよく育たんのです。ましてや、ポストハーベスト農薬など農薬を大量に使うと納豆の出来不出来にてきめんに影響する。遺伝子操作大豆ではまだ試していませんが、おそらく良い納豆は作られないと思いますよ。
 微生物というのはそれほどデリケートで、例えば酒屋さんが納豆を食べるともう酒が出来ない。納豆菌がちょっとでも入ると酒は作れないんです。
 ですから、納豆菌が食べるものは人間が食べても大丈夫、そういう面白さが納豆にはあるんですね。
――大豆が心配でも、納豆で食べるなら安心ということですね。

大豆より栄養価が高い
――V.B2は大豆の2倍 骨粗鬆症予防のV.K2も――

――納豆にいろいろな効能があることは分かりましたが、栄養的にも元の大豆より優れているのでしょうか。
須見 大豆は長い間日本人の貴重な蛋白源だったわけですが、その他にもビタミンB2やE、必須脂肪酸のリノール酸、神経伝達物質アセチルコリンをつくるレシチン、抗酸化作用に優れているサポニンなど体に有効な成分が豊富に含まれています。
 大豆を丸ごと使用した納豆はこうした大豆の栄養が全て含まれているだけでなく、大豆が納豆菌によって発酵されると、蛋白質などが分解されて、吸収率がグンと高まって栄養効率が非常に良くなる上に、納豆菌の介在によって、ビタミンの含有量が高まったり、新たに生成もされます。
 例えば、脂質や糖質の代謝に必須で肝臓機能に良い「ビタミンB2」は大豆の2倍も含まれています。糖尿病ではビタミンB2の吸収が低下してそれがまた糖尿病を悪化させるのですが、納豆にはインスリンの分泌を促す作用があるのではないかと注目されているトリプトシンインヒビターという成分も含まれています。
 骨を形成するのに欠かせない「ビタミンK2」も、納豆菌によって新たに生成されます。納豆菌が合成するビタミンK2は水溶性蛋白質と結合して体内でより効果的に働く上、納豆には骨の主要な基材である蛋白質やカルシウムも豊富に含まれていますから、骨粗鬆症の予防にはかなり期待できると思います。

消化吸収力は抜群
納豆は酵素の宝庫

須見 さらに納豆は、ナットウキナーゼばかりでなく、生体内でさまざまな働きをする酵素を多種類合成します。
 納豆は蛋白質を分解するプロテアーゼや、澱粉を分解するアミラーゼをはじめ、繊維質を糖に変えるセルラーゼ、ショ糖をブドウ糖に変えるサッカラーゼ、尿素をアンモニアにするウレアーゼなど多くの分解酵素を含んでいます。
 これらの酵素の多くは消化を助けますから、納豆は大豆自身の消化を良くするだけでなく、一緒にとった食物の消化も助けてくれる、まさにスーパー発酵食品ともいえる酵素の宝庫です。

納豆の効果的な食べ方と副作用 

――こうした納豆の効果を発揮するには、どんな食べ方をしたら良いでしょうか。
須見 血栓は夜中の2時頃から朝方にかけての時間帯にできやすいので、血栓の予防には夕食、またおやすみ前にも食べると良いと思います。
 酵素類は熱に弱いので、酵素食品として効果を期待するのでしたら生食に限ります。
 ネギなどの香味野菜は血液の凝固を防ぐ作用がありますから、昔からネギを薬味に加えて食べるのは理にかなった食べ方といえるでしょう。納豆に含まれていないビタミンCが豊富な大根おろしや、すりごまをかけるのも栄養的にバランスがとれ優れた食べ方だと思います。
――生食では、納豆特有のネバネバや臭いが嫌だという人も多いようですね。
須見 そういう方にお勧めなのは冷凍納豆。冷凍庫に凍らして解凍しないうちに食べると、臭いもネバネバも気になりません。
 糸を引くネバネバが強いほど、ナットウキナーゼもビタミンK2も多く含まれています。なるべく糸の引きの強い納豆を食べて欲しいのですが、最近は、納豆の加工技術も進んで、酵素パワーも保ち、臭いも殆どない乾燥納豆や納豆飴なども作られています。
――毎日食べて副作用はないですか。
須見 副作用については殆ど心配ありませんが、血栓予防薬のワーファリンを飲んでいる人は、血液凝固作用のあるビタミンK2が薬の効果を抑えてしまうので食べないで下さい。
 ただし、私自身としてはワーファリンを飲むより、納豆食をお勧めしたいですね。
――ビタミンK2の血液凝固作用は、血栓溶解作用とは反対に働きませんか。
須見 納豆は肝臓で血液凝固因子をつくるために必要なビタミンKを含んでいますが、いくらビタミンKをとっても、これが原因で血栓ができやすくなるという心配は全くありません。
 近頃では新生児に脳内出血を防ぐためにビタミンKを与えますが、そのことで新生児に脳血栓ができるという報告も全くありません。血栓症を予防するには、問題は血栓溶解能力が十分あるかないかなのです。
――出血性の病気にはどうなのでしょうか。
須見 胃潰瘍など出血性の病気がある時は食べない方が良いでしょう。
 研究室では毎日、日に4食も納豆を食べています。今注意した以外の方は心置きなく納豆を食べて下さい。
 年をとると、出血性の病気より、心筋梗塞やボケに代表される血栓性の病気、さらに骨粗鬆症の急増も問題になっています。高齢の方ほど納豆を食べることをお勧めします。
(インタビュー構成・本誌功刀)