自然に反して病気になったのだから自然に即した生活をすれば治る

真弓小児科医院 真弓定夫先生

医者は、健康のアドバイザーたるべし
増え続ける病人に疑問を抱いて

 子供たちの健康が今とても心配されています。アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患をもつ子は3人に1人といわれ、大人に特有だった糖尿病や高脂血症など成人病も増えています。
 東京武蔵野市吉祥寺で真弓小児科医院を開いている真弓定夫先生は、薬や注射に頼らず、"生活指導を基本”にした大変ユニークな診療で、子供たちの健康を守っています。真弓先生がこうした治療に踏みきったのは、公立の大学病院を6年、個人救急病院の小児科医長を13年、計約20年間組織医療に携って、病気が一向に減らないことに疑問を抱いたからです。
 組織の中で働いて分かったことは医療側がマッチポンプになっていること。「病気の根本原因を正せば病人は減っていくのに、病気になってから診て、治療は薬や手術に頼る、これでは病気も病人も減らせない」と真弓先生はおっしゃいます。
 病気を治すのは子供自身、医者は健康アドバイザーであるべしと、薬は一切置かず、もっぱら生活指導で病気に対処されている真弓先生に、子供たちの健康を中心に、医療の問題点、病気への対処についてお話をうかがいました。

自然に反した生活が 病気や病人をうむ
自然界には存在しない病気 〃アレルギー疾患〃

――子供たちの間でアレルギーや小児成人病の増加が指摘されるようになって久しいですが、やはり相当なものですか。
真弓 アレルギーに関しては多いという言葉では表せない程半端な増え方じゃないです(表1)。
 私が医者になりたての頃には、気管支喘息はかなり大規模な小学校で1000人中2〜3人、アトピー性皮膚炎もその頃は子供に限られてまして、その数も非常に少なかったですね。ところが今、幼稚園や保育園、小学校でアトピー児が1人もいないクラス、喘息の子供が1人もいないクラスは探すのが困難なくらいです。
 アトピー性皮膚炎の子供は全体の30%にものぼり、このままの状態に歯止めをかけずにいると、加速度もついて、21世紀にはアレルギー的な要因を持った子供たちは80%、反対に、正常な子供は5人に1人くらいの割合になるだろうと指摘している小児科医もいます。
 もともとアレルギー疾患は自然界にはない病気で、1906年にピルケという人が提案した言葉です。「アロスエルゴン」というラテン語が語源で、アロスは風変わりなとか奇妙な、エルゴンは反応、つまりアレルギーとは「風変わりな反応」なんですね。その代表的な疾患であるアトピーは「ア・トポス」が語源で、トポスは場所、アは否定語ですから、アトピーは「場違いな病気」ということになります。
 いづれにしても、アレルギーとかアトピーは自然の生活をしている動物にはない病気だということを、知っておく必要があります。

老人病↓成人病 (↓小児成人病)↓生活習慣病

――成人病も増えている…。
真弓 はい、成人病が子供の間で増えているということは、人間の寿命が短くなっていることを示唆していると、私は考えています。
 そもそも、私が大学を卒業した昭和30年にはまだ成人病という言葉もなかったのですが、その頃から今死因のワースト3を占めるがん、脳血管障害、心臓疾患などが今後どんどん増えていくだろうと言われ始めました。
 成人病という言葉は、昭和31年に厚生省が成人病研究班を作ったのがもとになっていまして、それまでは、こうした成人病は老人病だったんですね。それが低年齢化してきたことで成人病、さらに若年化が進んで1970年代後半あたりからは小児成人病という大変奇妙な言葉まで生まれるようになりました。
 もう年齢ではくくれないと思ったのか、昨年9月、厚生省は、成人病を生活習慣病の名称に改めましたね。

自然に反した生活が病気や病人をうむ

真弓 実際、大人を含めてアレルギーや成人病が急増している背景には、食事は勿論のこと、衣料、住宅内の空気も含めて大気など、生活環境が大きく変わったことがあります。
 結論的にいうと、自然に反した生活が病気を作り、医者もそれに輪をかけた治療を施して、かえって新たな病気や病人を増やしているということなんですね。
 それに、心の問題が根底に大きくからんでいるわけです。例えばこういうことです。「鼻たらしは達者」という言葉があるのですが、外を薄着で元気に飛び回っている子供は鼻水が出るのは当たり前です。反対に、冷暖房完備の家の中で厚着してテレビを見ている今の子供たちは鼻水すら出ない弱い子なんですね。ところが、病気でもなんでもない鼻水でお母さんは風邪というイメージを描く。そうすると子供というのは感受性が高いですから、母親が言葉でなくイメージを描くだけで、鼻水程度で本当の鼻風邪になっちゃう。
 動物のお父さんお母さん、人間でも今から2世代前のお母さんはそんなイメージを送りませんから、喘息もアトピー性皮膚炎も少なかった。その代わり、鼻水が出た時、熱が出た時はどうしたらいいのか、家で対応出来ましたし、医者に行ったところで今のように混んでいませんから、十分説明が出来て生活指導で終わることも多かったわけです。
 ストレスはどんどん増加する一方ですから、これからは、ますます心の部分が大事になってくると思います。
 そこで、アレルギーや成人病の2本柱は、
1.生活を自然に保つこと――生活環境でも優れた伝統の食文化、衣文化、住文化をいかに自然な状態に近づけていくか
2.マイナスイメージを送らないこと──になるわけです。

どんな食べ物が良いか
意図的にパン食へ

――生活全般をより自然に戻すという手始めは食事ですか。
真弓 今の食事の問題点ではっきりしているのは、動物性食品のとりすぎと、ご飯をとらなくなったこと。この2点です。
 ご飯は、戦後GHQがアメリカで小麦が大量に余った昭和20年代、米を食べると頭が悪くなるとか、米は太るとかいった宣伝を流して意図的にパンに変えていった背景があります。
 その結果、体の適応(消化吸収)能力を超えて動物性食品がとられるようになりました。なぜなら、パン食には、ハンバーグ、ハム、ソーセージ、牛乳、チーズなどの動物性食品の方が合うからですね。調味料にしても塩味・味噌・醤油じゃパンに合わない、ドレッシングだとかマヨネーズ、マスタードと油づけにしてしまったわけです。

お金で曲げられた〃健康に良い〃食品の横綱格は〃牛乳〃

――そうした動物性食品の中でも、子供たちの間にアレルギーを増やしたのはやはり卵、牛乳…。
真弓 その前に、今のお母さんたちは病気そのものの情報はたくさん持っていらっしゃるけど、病気にならないためには、どんな食べ物をとったら良いか、どういう生活環境が良いか、そういった体に良い情報は全部経済優先の歪められた情報しか伝えられていないことを知っていただきたいですね。
 その代表が50年もかけて作られた牛乳神話です。牛乳神話は昭和22年から50年間かけて、厚生省が保健所を中心に国民を洗脳し、それを牛乳メーカーがバックアップして意図的に作られたものなんですね。
 人を含めた霊長類は全部、温帯から亜熱帯にかけて発生し、その中で生息している動物ですから、本来、人間の食べものは穀類、草(野菜)、海藻、木の実、小魚となるわけです。ところが、人間が火を使い出し、農耕牧畜を始めて人口が増え始めると、その中で住めなくなって、はみ出した人たちがいた。そのうち北の方にはみだした人がヨーロッパの人で、北へ行ったら穀類や、小魚、海藻は十分とれませんから、そこでやむを得ずパンや肉や牛乳を飲食するようになったわけです。
 ですから世界中で一番牛乳を飲んでる国民はノルウェーとなるのですが、ノルウェーの骨折率は日本の5倍、これはカルシウムとマグネシウムのミネラルバランスを崩してしまったからなんです。
 勿論おっしゃった通り、牛乳の大きな問題点には、牛乳蛋白が抗原となって免疫細胞が正常細胞を攻撃し、アレルギーや小児糖尿病をおこすこともあります。特に、粉ミルクは、牛の赤ちゃんの飲みものに約30種類もの添加物(表2)を加えて作られているわけですから、今、体質の弱い子供、ひいては先天異常児が増えているのは当然といえば当然なんですね(図)。
 少なくとも昭和10年生まれ迄の医者はそういうことを知ってるわけですから、自分の子供や孫には1滴たりとも牛乳を飲ませたりしませんでしたよ。

人は消化されたもので生きている

――卵もですね。
真弓 卵も全く同じです。
 19世紀のフランスの作家アレクサンドル・デュマは「人は食べ物で生きるのではない。消化された物で生きるんだ」と言っていますが、結局、今の子供たちが消化力、適応力をはるかに超えて動物性のものをとってることに、諸悪の根源があると思います。
 歯の構成からいうと、犬歯があるということは動物性のものを消化する能力が多少はあるのではないかと考えられます。ただし、それもあくまでも昔我々が小魚を食べていたその程度の適応力で、今の様にふんだんに牛乳をとり、卵をとっていたらこれはもう病気になるのは当たり前の話ですね。

カタカナ食をひらがな食に

真弓 ですから体に良い食べ物とは、その民族が食べ続けてきた食べ物ということになり、日本人の場合でいえば、昔はカタカナのものは食べなかったですから、パンはやめてご飯に、スパゲッティーはやめてうどんに、スープはやめて味噌汁にする、と非常に単純明解です。
 これを20年間徹底させれば、病気にならなくなる。もっと言うと味噌汁は必ずとる。味噌汁は医者殺しって言われるほど、毎日飲まれたら医者は困るんです。

アレルギーでは 住環境が最も問題
冷暖房完備が アレルギーをつくる

――卵、牛乳、油、砂糖をやめたらアレルギーにならないと…。
真弓 そんなことはあり得ません。特に、アトピー性皮膚炎では食事よりもっと重要な危険因子があります。
 平均的に、食物は25日間断つと命を落とす、水は5日、空気は5分です。
 食物では、添加物や加工食品も大きな問題ですが、そうすると、まず加工していけないのは、食べ物より水、空気の加工はもっといけないということになります。
 まず、赤ちゃんの部屋の温度は、外の気温との差を摂氏5度以内に保つように心がけて下さい。
 大人は10度の温度差、子供の場合は5度以上の温度差で、自律神経のバランスが崩れ、ホルモンの分泌が乱れ、副腎からのホルモンも出なくなります。
 だから、今の子供は冷暖房の発達で風邪をひきやすく、アレルギーにもなりやすくなっているんです。
 寒い時に部屋の中の温度を、どの位に保ったらアレルギーにならないか。赤ちゃんの部屋の温度はどの位が適当か。冬の場合、昼間で14度以上、夜は5度以上あれば赤ちゃんの発育には全くさしつかえありません。ということは、東京地方の場合は暖房の必要はほとんど全くないといってもいいんですね。
 事実、昭和20年代までに、冷暖房完備の家なんてなかったわけですよ。
 それともう一つ大事なことは住居形態が、温帯・亜熱帯では湿度に対応して、柱と屋根を持ち、土台が高く、縁の下がある、土台は南へ行けば行く程高くなって、湿度と温度に対応しているわけです。
 それが、寒さに対応したヨーロッパや北アメリカの、壁に囲まれた閉鎖的な住居形態をこの日本にとりいれたところから、問題が生じた。こうした住形態で、一番喜んでいるのはダニとカビですよ。昔は、冬は死んでいたのが、今、四季を通して生息して、抗原となる死骸や糞が鼻から皮膚(バリアーの壊れた軟弱な皮膚)から人体に入ってきて、アレルギーを起こすわけです。

汗腺が圧倒的に少ない今の子供

真弓 それと、外気温との温度差が広がるほど、皮膚の働きが落ちてしまいます。
 病院で出産する今の赤ちゃんは、生まれてから約1週間前後、エアコンのきいた病室で過ごすために、汗腺の機能が8割位停止してしまいます。つまり2割の汗腺で体温調節を行なっているわけで、そうなると一生、汗を出す力が弱いまま生きていかなければならないわけですね。
 私が医者になりたての頃は、小学校の検診でも上級生になると男くささがあったんです。汗くさいのが当たり前。しかし、そんな子供はもう20年くらい前から姿を消しています。
 このように、冷暖房完備によって、基本的な皮膚の働きが落ちてしまって、アレルギーばかりでなく、低体温の子供が増えているのも、一つには汗腺がないために体温調節がきかなくなっているからなんです。そうすると、感染症にもなりやすくなってきます。

薬を飲まなければ、 まともな医者にかかったのと同じこと
今の医療の一番の問題点は薬

――先生は、生活指導を治療の柱にされているわけですが、では今の医療で一番の問題はなんでしょうか。
真弓 一番大きな問題は薬です。今日本では1万5千種類位薬を使っていますが、薬や注射で症状は抑えられても根本原因を取り除いたわけではないですから、また同じ問題が起きてくる。それだけでなく、薬によってさらに病人を生み出しているのが今の医療です。それで私は今の医療はマッチポンプだといっているのですね。
 今からおよそ200年前、漢方医の中上風結は、
「病気になっても薬を飲まなければ、まともな医者にかかったのと同じことだ」
「軽い病気を重くしてしまう医者がいなくなれば、天下の病人の8割は減るだろう」と言ってますが、実際にその通りだと思います。
 私も処方箋を切って薬を出すことはあるんですよ。それでも月に使ってる薬は20種を越すことは殆どありませんし、そのうちの5〜7割方はビタミンやミネラル剤です。なぜかというと、熱が出たとか下痢をした、咳が出たとか、こうした栄養素は本来、野菜・海藻・穀類・小魚などの食物からとるのが本当ですけれども、そうした症状を起こすとミネラルやビタミンなどの微量栄養素が体から失われるから、病気の時は補助的に使うわけです。
 注射は特殊なケースのみに丸山ワクチン、それに予防注射を希望した場合に打つくらいです。
 本来、字のごとく薬は体を楽にするものです。そういうものを薬として食べていれば、病気にはなりません。体調を崩したときは、例えば下痢をしたら水と人参でほとんど3日から5日で治ってしまいます。咳が出たら大根、人参、葱、蓮、葛、黒豆をとれば良いということになります。

薬害死で最大のものは解熱剤

真弓 ところで、今エイズの薬害が叫ばれていますが、一番、ショック死を招いている薬はなんだと思いますか。
 解熱剤。これが一番怖いんです。解熱剤のショック死は、私が救急病院にいた13年間で、何例か経験しています。救急車で病院に運ばれた時にはもう亡くなっている…。これほど、解熱剤によるショックは恐ろしいものなのです。
 解熱剤はピリン系、非ピリン系を問いません。要するに、むやみに熱を下げたらいけないということです。不自然に熱を下げたら非常に危険だということです。
 発熱こそ最高の生体防御法なんですからね。体温が高まると、細菌やウイルスの活動が弱まる上に、体がウイルスを追い出す活動も活発になるんです。それを無理に下げてしまうと、病気自体にも悪影響を及ぼします。
 注意してほしいのは、熱にも、健康な熱と危険な熱があることです。
 熱が出ますとやはり体はこたえますから、自然に毛細血管が開いて発汗作用を起こします。ですから、顔や体がほてって赤くなる時は安全なのですが、青くなって手足が冷えている状態、これは危険です。自然治癒能力が落ちて大変体が弱っている状態ですから、医者に飛んでいかなければいけません。
 また、42度以上あったら、脳に障害をきたして体温調節がきかなくなりますから、これも大変危険な状態です。
 ですが、39度くらいの熱が2〜3日続いても、子供が機嫌も良く比較的元気にしていれば、体が要求する水分を補給して、薄着をさせて汗をかきやすいようにしていれば、自然に熱も病気もおさまってくるものなのです。

病気は自然に治す

真弓 今のお母さんたちは、病気の知識はあっても、こうした基本的な知識がないんですね。病気になっても、まずお家で様子をみられることが大事です。
 病気を治すというのは決して症状を止めることではなく、体を症状が出る前の状態にもどすことなんです。熱でも咳でも下痢でも嘔吐でも、その症状によって失われたもの(どの場合も共通しているのは大量の水と、ミネラル・ビタミン類)を足していけばいいわけですから、病気のことなど何も知らなくても、失ったものを補うことだけ考えて対処していれば病気は治るのです。それを早く熱を下げようとか、咳を止めようとして薬に頼ってしまうと、その時はしのげてもまた同じ病気に繰り返しかかることになります。
 症状が現われはじめた時に、お母さんが少しでも早く元の状態にもどそうとする努力をすれば、医者にかかる頻度ははるかに減るでしょう。
 私の医院では普段から診ている患者さんでしたら、ちょっと具合悪い時は電話1本で指示を出せば済む、それでも駄目な場合に通院しなさいということになるんですね。
 病気は子供自身が治すものであって、それをサポートするのがお母さんや地域の人。医者はあくまでアドバイザーで、医者が治すのは間違いだということを皆さんに理解していただきたいですね。
(インタビュー構成・本誌功刀)