高脂血症が増えている

―高脂血症と微量ミネラル―

順天堂大学医学部 臨床病理学教室 三宅紀子先生

動脈硬化最大の危険因子 「高脂血症」が増えている

 脂肪の摂取量が増えるにつれて、コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)など、血液中の脂質の割合が異常に高くなる「高脂血症」が増え、その弊害は若年層にまで及んできて、問題になっています。
 血中では脂質は蛋白質と結合して「リポ蛋白」と呼ばれる複合体で存在しますが、比重の低いリポ蛋白が増えると血管壁に付着・蓄積し、血管内径を狭めて動脈硬化発症のきっかけとなり、動脈硬化が進むと虚血性心疾患や脳梗塞、がん、糖尿病など多くの成人病の要因となります。
 近年、高脂血症や動脈硬化は活性酸素の影響を強く受けていることが分かり、高脂血症でも最も問題となるのは脂質過酸化だと言われています。生体内の微量元素はこの脂質の酸化や抗酸化に深くかかわっていますが、微量ミネラルはまた、脂質代謝そのものにも関与しています。
 順天堂大学の三宅紀子先生は、各臨床科に血液や尿検査などについて高度のサービスをしている臨床病理学教室で、主に高脂血症の分野で活躍され、研究の一環として脂質代謝異常と微量元素の研究もされています。
 今月は三宅先生に、高脂血症について、微量元素の影響も含めてお話を伺いました。

高脂血症とは
増加する「高脂血症」

――脂肪の摂取量が上がるにつれて高脂血症もずいぶん増えているということですが、臨床病理のお立場からもそれを実感されますか。
三宅 高脂血症はここ20年くらいで極端に多くなっていますね。
 成人病に関しては、塩分の摂取量を抑える指導も功を奏して脳出血などは減る一方で、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など動脈硬化性の疾患の比率が高くなってきています。高脂血症は動脈硬化を促進する大きな要因となるので、健康診断で高脂血症と指摘された方はライフスタイルを見直して、こうした成人病にならないように注意して欲しいと思います。
 特に男性ではお酒を多く召し上がっておつまみも美味しいものを召し上がるとなると、どうしても体重が増え、血圧も上がり、比較的若い時期から動脈硬化が進む傾向があって、問題になっています。そうした背景もあって、今、健康診断や人間ドッグなどでは高脂血症や動脈硬化の指導が中心になっています。

高脂血症の診断

――臨床病理というのはそうした一般の検診より、より高いレベルで検査をするわけですか。
三宅 そうですね。検査値の高い低いは誰でも判断できますけれども、例えば血清中の脂質にしてもいろいろ種類があって、その構成に異常があるかどうかなどをみるにはある程度のトレーニングが必要です。臨床病理ではそうした検査の詳細を各科の臨床の先生に報告し、治療法や薬を選択するときの指標に役立てていただいています。
 例えば、高脂血症の診断ではまず最初に・総コレステロール値、・中性脂肪値、・善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロール値――の3つを検査します。その結果、総コレステロールが血中(血清中)に220mg/dl以上、中性脂肪が150mg/dl以上、HDLコレステロールが45mg/dl以下のときにはさらに検査を進めます。
 次に、血液の中では脂肪は血中でスムーズに流れるためにアポ蛋白という蛋白質と結合しており、またその種類もいろいろありますので、それぞれのアポ蛋白と脂肪との比や値などを調べます。
 その結果によって高脂血症のタイプ、例えば心筋梗塞や狭心症になりやすいタイプ、あるいは糖尿病や腎障害が原因になっておきるタイプであるとかが分かります。それに応じて治療方針がたてられ、糖尿病や腎臓病なども、もともとの治療レベルを上げるということが可能になってきます。

高脂血症のタイプと 関連する疾病・合併症

――高脂血症にもいろいろタイプがあるわけですね。
 高脂血症が原因となる合併症は主に動脈硬化性の疾患ですか。
三宅 高脂血症は大きくわけて、遺伝、食事、環境などの因子によってもたらされる「原発性高脂血症」と、糖尿病、甲状腺機能亢進症、クッシング症候群などの内分泌疾患、その他、肝臓疾患、肥満症、痛風、ネフローゼ症候群、慢性腎不全などに由来しておきる「二次性高脂血症」があります。
 高脂血症が原因でおきる疾患としては、動脈硬化、それに由来する虚血性心疾患、高血圧、脂肪肝、膵炎、また糖尿病や肥満などの促進因子になります。いずれにしてもこうした疾患の原因は高脂血症だけではなく、いろいろな因子が関係して相互に影響しあっています。

血清中の脂肪と リポ蛋白粒子

――血液(血清)中の脂質についてもう少し詳しく知りたいのですが。
三宅 主な血液中の脂質は、コレステロール、中性脂肪、それとリン脂質の3種類です。
 中性脂肪は主に食物から、コレステロールは食物からとりこまれるのが約20%で、残りは肝臓などで合成されます。
 食事からとった脂肪は動物性脂肪であれ植物性脂肪であれ、みんな一度トリグリセライド(中性脂肪)の形になって小腸から血液に吸収され、それが主に肝臓に行ってその中で種々のコレステロール、あるいは中性脂肪になって再度、血中にとりこまれます(図1)。
 血中ではこれらの脂質は、先ほど申し上げたアポ蛋白という蛋白質と結合して「リポ蛋白粒子」という粒子となって溶け込んでいます。リポ蛋白粒子は、脂質と蛋白質の構成比率によって比重が異なり、脂質の量が多いものほど軽く、低比重のものが異常に増えると高脂血症となります。
 リポ蛋白粒子は比重の低い順に次の4種類に大別されます(図2)。
1.「カイロミクロン」
(直径80〜1、000nm)
三宅 食べ物から摂取した脂肪はみんな一旦、小腸で中性脂肪(トリグリセライド)になるわけですが、トリグリセライドは小腸の粘膜細胞で、カイロミクロンという中性脂肪が大変多くアポ蛋白は1〜2%しか含まれない最も比重の軽いリポ蛋白粒子となります。このカイロミクロンに含まれるトリグリセライドは外因性トリグリセライドと呼ばれます。
 カイロミクロンは食後2〜6時間くらいの間に血液に取り込まれ、酵素(リポ蛋白リパーゼ)の作用でカイロミクロンレムナントという形になって肝臓に行き、もともと肝臓にある内因性トリグリセライドと共に、肝臓の中で新たな脂質代謝が行われ、新たに中性脂肪、コレステロール、リン脂質となって、再度血中にとりこまれるわけです。
――成人病との関係で注目される「高中性脂肪血症」はカイロミクロンの値で測るのですか。
三宅 カイロミクロンは空腹時には殆ど血中に存在しません。一般の検診で測定される中性脂肪は空腹時に測定され、血液中の全てのリポ蛋白粒子中のトリグリセライドが対象になります。中性脂肪の正常の上限値は150mg/dlで、これを超えると、動脈硬化を促進しやすいと言われます。また、この時1000mg/dlと異常に多い場合は、急性膵炎を発症することがあります。
2.「VLDL(超低比重リポ蛋白)」
(直径30〜80nm)
三宅 最近注目されているのがVLDLで、コレステロールが少なくて肝臓で合成された中性脂肪(内因性トリグリセライド)が多いリポ蛋白粒子です。
 肥満や糖尿病で非常に高くなりやすいのがこのVLDLです。
3.「LDL(低比重リポ蛋白)」
(直径20〜25nm)
三宅 LDLは脂質の含量が多く、ほとんどがコレステロールで構成されています。
 悪玉コレステロールと呼ばれ、動脈硬化の発症や促進には、LDLの増加が一番関係していると言われています(図3)。
――成人病検診では何故、悪玉とされるLDLコレステロールを直接測定しないのですか。
三宅 LDLを簡単に測定する方法がまだないので、今のところ臨床や疫学調査のレベルまでは、総コレステロール値から中性脂肪値に0・2をかけ、そこからHDLコレステロール値を引いてLDLコレステロール値を出しています。
 今後、もっと簡単に測定する方法が開発されれば、検診レベルでLDLコレステロール値が直接測定されると思います。
4.「HDL(高比重リポ蛋白)」
(直径8〜12nm)
三宅 HDLはアポ蛋白の量が約50%と高く、脂質はコレステロールの他にリン脂質を含んでいます。粒子が小さいために、血管壁を自由に出入りし、出る時に余分なコレステロールを自分の体にとりこんで肝臓まで運び、肝臓に代謝を命じている掃除役です。善玉コレステロールと呼ばれ、血中コレステロール値を下げるのに役立ち、成人病予防にはHDLは高目がいいと言われてます。
 合成は肝臓と小腸で行われています。
――HDLは低いと問題になる?
三宅 そうです。基準値は40〜70mg/dlとされていますが高い方が良く、45mg以下だと要精密検査となります。
 「低HDL血症」は動脈硬化を促進することが明らかになっていますから、総コレステロールが高くてHDLが低い時は、虚血性心疾患、糖尿病、肥満などに注意する必要があります。また、HDLと共に総コレステロールが低い場合は、運び役の蛋白質を合成する肝臓の病気が疑われます。

 血中の脂質と酸化
危険なのはLDL自身でなく 変性コレステロール

――LDLが悪玉とされていますが、LDLそのものは危険ではない。LDLが活性酸素などで酸化されて変性コレステロールになるとマクロファージが食べる対象になって、マクロファージが変性コレステロールを食べ過ぎると泡沫細胞になってそれが血管に沈着して、動脈硬化になると言われていますが(図4)。
三宅 今一番言われているのはそれなんですね。
 LDLは受容体を介して脂質代謝が行われますが、変性LDLになってしまうと変性LDLはLDL受容体を介さずに、マクロファージの持っているスカベンジャー(掃除役)受容体にとり込まれて、代謝され、泡沫化します(図5)。泡沫細胞が形成されると、動脈硬化性の病変が形成され、また進展を促進します。
――LDL以外の脂質の酸化も問題になりますか。
三宅 診療レベルでは、LDLの量が少なければ酸化LDL(変性LDL)も少ないだろうから取り敢えずLDLのコントロールが重要だろうという考え方がされていますが、理屈としてはHDLもLDLもVLDLも全部、酸化する可能性があります。
 取り敢えず現状では、血液の中に一番多いのがLDLであるところから、酸化LDLを中心に研究が始まって、酸化LDLが問題になっているわけです。
 今後は糖尿病などとの関連もあって、VLDLの酸化、変性が問題になってくると思います。

変性脂質と糖尿病

――それは何故ですか。
三宅 VLDLは糖尿病や肥満で非常に高くなりやすいリポ蛋白粒子ですが、今、日本人で高脂血症との関連で一番問題になっているのが糖尿病です。
 日本人に多い成人型(・型)糖尿病の初期は、インスリンは普通より多く出ているのにもかかわらず、血糖値が上がってしまうという「高インスリン血症」が多いんです。インスリンには高脂血症を促進するホルモンを刺激する作用がありますので、高インスリン血症の方は高脂血症になりやすいんですね。一番多いのが中性脂肪が高くなるケース(高中性脂肪血症)で、中性脂肪と共にコレステロールも高くなってしまうケース(複合高脂血症)もあります。
 高インスリンが原因となる高脂血症は、血糖のコントロールが良くなってインスリンが下がってくれば自然に良くなってしまうわけですが、血糖のコントロールが十分でないと、コレステロールや中性脂肪に血糖がベタベタくっついてしまって、脂質が糖化、変性してきます。それがやはりマクロファージにとり込まれて、動脈硬化を形成したり促進したりするわけです。
 それ以外にも酸化LDLも出来やすくなって、悪循環的に動脈硬化が進むということがあります。

LDLの酸化を防ぐ

――LDLの酸化を防ぐ、あるいは酸化LDLを減らすについては?
三宅 一つはLDLの量を抑えてしまうこと。
 もう一つは体内の酸化に対する防御システム、抗酸化能力を高めるという考え方ですね。抗酸化物質の投与もこの考え方によっています(図4)。

高脂血症と微量ミネラル
個々の微量ミネラルの 脂質代謝と抗酸化の働き

――抗酸化能を高めるということでは、微量ミネラルも非常に関連が深いわけですが…。
三宅 微量元素(微量金属)は抗酸化作用だけでなく、脂質代謝や、脂質の酸化(鉄イオンや銅イオンなどの遷移金属イオン)にも関与しており、高脂血症と深くかかわっています。
 抗酸化作用と微量金属に関しては、東フィンランドのサローネンという先生の研究グループが活発に研究していますが、抗酸化的に働く微量ミネラルであるとか、微量ミネラルを補助する物質と動脈硬化の進展と関係があることが分かっています。
 このようなことから、抗酸化的に働く微量ミネラルが血液の中に多ければ、動脈硬化の関連する疾患の発症率は下がるのではないかとは言われています。
 高脂血症に関連して、脂質代謝や抗酸化に働く個々の微量ミネラルには、次のようなものがあります。
〈亜鉛〉
三宅 亜鉛が欠乏すると血清遊離脂肪酸が上昇し、さらに脂肪組織へのグルコースの取り込みを促進します。亜鉛はインスリンの活性化にも関与していますので、それも遊離脂肪酸の上昇の一因と推測されています。
 血清コレステロール値と亜鉛との関係では、高コレステロール血症群では正常群と比べて、有意に血清亜鉛値が減少しているという報告があります(Samman。1988年)。
 さらに、健康な男女に1日150mgの亜鉛を投与したところ、男性では相関性がなかったのですが、女性では血清LDLコレステロール値が低下し、血清亜鉛値とLDLコレステロール値の間には弱いながらも負の相関関係が認められました(図6)。
〈クロム〉
三宅 3価クロムを含む「クロム含有耐糖因子(GTF)」が糖代謝に関与していると推定されていますが、糖尿病患者では尿中へのクロム排泄量が上昇することが報告されています。
 さらにGTFを含むビール酵母の投与で、血清コレステロール値が有意に低下したことが報告されています。動物実験でも、クロムを添加した餌を与えると、血清コレステロールやトリグリセライドの低下がみられていますので、クロムの脂質代謝への影響が推定されています。
 メカニズムはまだ明らかではありませんが、耐糖能異常が脂質代謝に影響を及ぼすことは明確になっています。クロムの糖代謝および脂質代謝への関与は今後の検討課題の一つです。
〈マグネシウム〉
三宅 マグネシウムにはLDLとVLDLの低下、およびHDL上昇作用があると報告されています。
 これはマグネシウムが、脂質代謝に関与する酵素に含まれていること、また、マグネシウムの低下がカテコラミンの分泌を促進し、カテコラミンによって血清脂質に変化が及ぶこと──などが原因ではないかと推定されています。
 正常な人を対象にしたマグネシウムの投与では、脂質の代謝に影響したという報告がある一方で、なかったという報告もあり、明確ではありませんが、マグネシウムが脂質代謝に関与する種々の酵素に関与していることから、マグネシウムが脂質代謝に何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できません。
〈セレニウム〉
三宅 セレニウムは、過酸化脂質を防ぎ、過酸化脂質による動脈硬化性病変の初期変化を抑制する作用があると考えられている生体内の抗酸化酵素「グルタチオンパーオキシダーゼ(GSHPx)」の主要構成成分です。
 1366名を対象にした調査で、血清セレニウム濃度が上昇すると血清LDLコレステロール値が上昇する傾向にある、さらに血清セレニウム濃度とGSHPxの活性、HDLコレステロール値とは正の相関があったと報告されています(東フィンランドのSalonen。1988年)。
 また、虚血性心疾患群と正常群を含む3000名のデンマーク人男性についての検討では、血清セレニウム値と血清コレステロール値では負の相関がありましたが、HDLコレステロールとトリグリセライドとは相関が認められず、さらに、虚血性心疾患の既往歴のある群は正常群と比較して血清セレニウム値、血清コレステロール値、トリグリセライド値が有意に上昇する――という報告があります(Saudicani。1992年)。
――セレニウム濃度が上昇すると、LDLコレステロール値も上昇するというのは?
三宅 血中セレニウム濃度が上がると、LDLの値も高くなる一方でGSHPxの作用で、酸化LDLは高くならないと推定されます。
 しかし、セレニウムを過剰にうさぎに投与したレポートでは、コレステロールも中性脂肪も極端に下がって、しかも、酸化LDLも下がってくることが動物実験では報告されています。
 心筋梗塞がおこった人を対象にした追跡調査では、心筋梗塞になる前のセレニウム摂取量は低い傾向にあり、そういう方にセレニウムを投与したところコレステロール値が下がり、酸化LDLの値も改善した――というレポートもあります。

食生活と高脂血症
食事と血中の脂肪

――一旦、食事からとった脂肪は全部中性脂肪として肝臓にとりこまれるということですが、よく高中性脂肪血症はアルコールや糖分、高コレステロール血症は動物性脂肪のとり過ぎが原因と言われるのはどうしてですか。
三宅 一つ言えるのは、糖分を多くとるとインスリンがたくさん出ますね。そうすると、トリグリセライドの値が高くなるんです。
 動物性脂肪に関しては欧米を中心に、ある程度長期の疫学的トライアルがあって、動物性脂肪を多くとると、初めはトリグリセライドが上がって来ますが、何週間かするとコレステロールが確実に上がってくることが分かっています。
 反対に、植物性脂肪、中でもリノール酸やオレイン酸はコレステロール値が上がりにくいというデータが出ています。ですから、実際にどういう食事をするとどういう脂質が血中に多くなるかということは、あくまでも現象面で分かっていることなんです。
 ただし、常にトリグリセライドを肝臓で供給していると、肝臓ではいろいろな脂質代謝が活発に行なわれていますので、そうすると血液の中に多く出て来ることが分かっています。
 ですから、かなりの量の脂肪を毎日とって肝臓にたくさん脂肪を供給すれば、遺伝的なことも含めて個人差はありますけれど、確実にその人の本来の値に比べて高くなることが分かっています。
 しかも、食事が原因による高コレステロール血症ではほとんど一緒に中性脂肪も高くなってしまうので、動物性の脂肪をこれだけとったからコレステロールが増えた、糖分をこれだけとったから中性脂肪が高くなるということは明確には言えないのですね。

脂質に 順応していない日本人 研究も発展途上

――人種間ということでは日本人の体質は脂質に弱い、やられやすい傾向があると聞いていますが?
三宅 遺伝的要素、環境的要素が長い間、高脂肪食にさらされてない状態できているので、抵抗性がない可能性は十分にありますね。ですから、同じようなライフスタイルをとったときに、欧米の人たちに比べて早く重症化してしまう可能性は否定できないと思います。
 今は日本でも生まれた時から栄養過多というケースが増えて、若年層にも肥満が多くなり、そういう人はやはり高脂血症のリスクが高くなっています。多分、今20代、30代の方があと20年、30年、経ったときに、さらに今とはだいぶ傾向が変わってくると思います。
 脂質代謝に関して日本はまだ発展途上で、動物性脂肪の摂取量が猛烈に高く、高脂血症が非常に多い欧米では、高脂血症の頻度が高い分だけ心筋梗塞や狭心症の率が高く、そういう地域では食事における脂質代謝の関係を、機能性食品や民間療法を含めて多くのレポートが出ています。
 アメリカの方にはセレニウムの抗酸化作用などごく一般の知識でしょうし、ミネラルだけでなく、ビタミン類、フラボノイド類――など、抗酸化物質の知識も日本人に比べてずっとポピュラーでないかと思います。
 ただ、最後に申し上げたいことは、マスコミなどによる情報過多も多分に影響して、現代人は高脂血症についてもずいぶん過敏になり、精神的ストレスとなってそれがまた成人病に良くないという面を見落しにできないことですね。
(取材構成・本誌功刀)