食生活の欧米化がアトピー性皮膚炎を招く

昭和30年代の和食で解決率は80%

下関市立中央病院小児科部長 永田良隆先生

 アトピー性皮膚炎は一昔前までは子供に圧倒的に多く見られた皮膚病でした。ところが今では花粉症に悩まされる大人が増えるのに歩調を合わせるかの如く、思春期以降の大人の発症が増えています(図1)。
 アトピー性皮膚炎や花粉症など、アレルギー疾患は現在日本人の3人に1人はかかっている調査報告がなされ、今や国民病の一つであるとさえ言われるようになりました(図2)。
 急増の背景には環境因子、特にアトピー性皮膚炎では食生活との関連が深いと指摘されています。
 下関市立中央病院の永田良隆小児科部長は、高たんぱく・高脂肪という食生活の欧米化に伴ってアトピー性皮膚炎の患者が増え、症状も重症化、難治化していることに着目。アトピー性皮膚炎を従来の食物アレルギーという狭い観点からではなく、食生活全般の問題として捉らえ、"昭和30年代の食事に戻す”という無理のない食生活改善療法で解決率70〜80%という高い治療成果を上げています。

昭和30年代の食事で、 アトピー性皮膚炎が 著しく改善
個別の食品に対する アレルギーから 食生活全般に観点を

――夜も眠れないほど痒いという症状に加えて大変治りにくいと言われているアトピー性皮膚炎ですが、先生は"昭和30年代の和食に戻す”という無理のない食事療法で大変な成果を上げられているとのことで今日はお話を伺いに参りました。
永田 私共では和食を基本に、アトピー性皮膚炎の原因食品である鶏卵・牛乳・植物油を制限した食生活改善治療で、7〜9割という高い解決率を見ています。
 従来、小児科領域のアレルギー専門家の間ではアトピー性皮膚炎は「食物アレルギー」に基づいた除去食が主流でした。つまり、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)をアレルギー学的検査法で割り出して特定の原因食品を確定し、その食品を食事から排除するというものです。
 私も初めはこうした狭い視野からアレルギーをみていたんですが、すぐに限界にぶつかってこれは特定の食品ではなく食事全般の問題だということに気がついたんです。
 アトピー性皮膚炎は高たんぱく・高脂肪という食生活の欧米化に伴って患者が急増しています。そこで、アレルギーがまだ全く問題になっていなかった時代、昭和30年代の食生活に戻したらどうかということに思い当り、それを実践して行くうちにどんどん治療成果が上がり、健康な皮膚が復活する現象が観察されたわけです。
――いつ頃からそうしたことに気づかれたんですか。
永田 和食を治療に導入したのは昭和57年で、当時こうした治療は医学界では見向きもされませんでした。
 治療を体験したお母さんと子供は1〜2週間で違いが分かるんですが、数量的な方法で測る指標がまだなかったので、昭和59年に日本アレルギー学会で始めて治療成果を報告した時も「病名が違うんじゃないか」って言われた位です。余り成績が良過ぎて納得されなかった。それ位当時は画期的な治療法だったんですね。

主食・主菜・副菜の バランスが良い和食

――アトピー性皮膚炎に限らず、成人病全般に和食の良さが再評価されていますね。
永田 私共でも子供のアトピー性皮膚炎に和食を導入したところ、お父さんの高脂血症やお母さんの肥満など家族の成人病まで良くなったという報告をよく聞いています。
 和食が何故良いか。食事は脂質、たんぱく質、炭水化物、ビタミン、ミネラルの五大栄養素がバランス良く揃って初めて食事と言えるんです。これは主食、主菜、副菜が揃った食事で初めて可能です。和食では主食、主菜、副菜のパターンが自然に身につき、主菜は昨日はお魚だから今日は肉にしようと回転していくのと同時に、主食、副菜はちゃんと摂れるわけです。
 ところが、子供が好きだからと言って朝はパンにチーズ、バター、ジャムをつけて、目玉焼き。夜はハンバーグ、鳥の唐揚げ、ステーキという食事では、五大栄養素のバランスが崩れて全ての動きがどんどん高たんぱく、高脂質にエスカレートしていきます(図3)。同時に、こうした食事では野菜や海藻の摂取量が極端に減ってくるので、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの微量栄養素が不足してきます。これが現代の欧米型食事の最大の欠点なんですね。
 一方和食では、煮つけ、お浸し、味噌汁と、微量栄養素の摂取源となる野菜や海藻、豆類がたっぷり朝昼晩3回摂れます。たとえ主菜に肉を利用しても、肉じゃが、しゃぶしゃぶ、水たきと、野菜や海藻が自然にたっぷり入ってくるようになっているんですね。
体の処理能力を超えた
高たんぱく・高脂肪の
摂取がアレルギーの元凶

アレルギーは 間違った食生活への警告反応

――原因物質を見つけるだけではアトピー性皮膚炎は解決しないと…。
永田 アレルゲン検査で個々の食品を分析して原因物質を除去する除去食だけでは、食生活の全体像を捉えることが出来ず、必然的に行詰ります。
 例えばラスト法※のみではひっかかりにくい、患児のみに除去食を作るのでストレスになったり継続困難になる、栄養バランスを欠きやすい――など家族への影響も含め食生活そのものが崩れる危険性があります。
 私共は、軽症から重症まで1万以上の症例を見てきた結果、アトピー性皮膚炎の多くは高たんぱくで高エネルギーの食事を長期に摂り続けた場合に出現し、
・体の処理能力を超えてたんぱく質を摂取し続けることで、完全に消化されないたんぱく成分(ポリペプチド)が腸から吸収されて、それが抗原になって炎症反応を起こす
・エネルギー利用率を超えて脂質を摂り続けることで、過剰な脂質が皮膚に排泄されて皮膚炎が出る――という結論に達しました。
 言いかえれば、アトピー性皮膚炎は"食生活が不適切な場合に生体にあらわれる警告反応”であることが分かったのです。
※ラスト法(アレルゲン吸着試験)
 患者の血清を各種のアレルゲンと反応させることにより、IgE抗体の有無を判定する検査方法。皮膚反応テストなどより苦痛が少なく行える。
 各抗原ごとに0〜4(〜6)点迄にまとめられ、一般に2点以上を陽性とする。
 軽度では陽性反応が出ないことや、たんぱく成分しか検出できない欠点がある。

アレルギー反応は体内の火事

永田 アレルギー反応は火事にたとえると分かりやすいと思います。
 燃える材料となるエネルギー源を沢山貯め込んだ結果、ポリペプチドが火の粉となって、体内で火事が起こっているわけです。燃料をどんどん提供し続ければ、火事は無限に大火事になって行くわけですが、そこにステロイド剤という水をかけると火の勢いはその瞬間少し収まります。
 しかし、燃える材料が供給され続ける限り、再び火は燃え広がり、そこでまた水をかける、そういうイタチごっこを続けているのが今の治療です。
 鎮火するには、火種を口から入れなければ良い、そうすればどんな大火事でもおのずと鎮火する。それに気づかない限り、どんな解決方法でも、うまくいかないだろうと私達は考えています。

アレルギーの増加から 捉えた三大原因食品 卵・牛乳・植物油

――高たんぱく食が危ないということでは、卵、牛乳、大豆が三大アレルゲン食品と言われてきましたね。
永田 私共ではアレルギーの三大原因食品を、卵、牛乳、植物油としています。大豆を除去して、その代わりに植物油を入れたわけです。
 卵、牛乳ではさらに親の鶏肉、牛肉まで含めて、こういうものを摂り過ぎて完全燃焼(消化)出来なかった結果、アレルギーが起きると見ているわけです。
 実際、アレルギーの患者さんはこうしたものの摂取量が多いことが私達の病院の調査でも明らかです(表1)。被害は、牛乳1に対して、卵20倍、油10倍位とみています。

卵・牛乳と 高たんぱく食の害

――アレルギーは、自分のものでない異種のたんぱく質が抗原(原因物質)となって抗体(IgE抗体)を多量に産み、それが様々なアレルギー性起炎物質を生んで炎症を起こすと理解していたんですが…。
永田 基本的にはその考えで良いと思います。
 食べ物など体の外から入ってくる異種のたんぱく質でも、腸内でアミノ酸レベルにまで分解されて吸収されれば栄養源として役に立ちます。ところが、たんぱく質が完全に分解されないで、アミノ酸が100個も結合した分子量の大きい「ポリペプチド」という中間産物が吸収されると、アレルギー体質の人はこれを異物と判定して、抗体を産生してしまうんです。
――たんぱく質が高分子の状態で吸収されるというのは結局、たんぱく価の高いものを毎日多く摂り過ぎているからですか。
永田 そうです。処理能力を超過して摂っているということですね。
 卵や牛乳はよくアミノ酸バランスが良い、完全栄養食品だとか言われて摂取を勧められていますが、分析的数字でいくらバランスが良くても、体の中に入った時にアミノ酸レベルまで分解出来ないと役に立たない。この発想が今の栄養学には欠けているんです。だから、毎日卵1個は食べなさい、毎日牛乳1本は飲みなさいと言う。
 ところが、卵や牛乳などの動物性の高たんぱく食品は、日本人の体質では毎日食べ続けたら完全に消化するのは無理なんです。実際、アトピーの子供たちのたんぱく源は卵、牛乳、肉が中心で、魚介類、豆類の摂取が極端に少ない傾向にあることが私達の病院で調査されています(表1)。
 成人女性の場合、卵はせいぜい1週間に1個位が適量と思われます。
――1才までは牛乳、2才過ぎたら卵の白身が一番のアレルギー源と聞きますけれど。
永田 臨床経験から、乳幼児では原因として多いのは牛乳より卵だと思います。それも卵全体による被害だと私達は解釈しています。
 卵の白身の中にはオバルブミン、オボムコイド、リゾチーム等、熱をかけても変性しない、抗原性を失わないたんぱく質があると良く言われているんですが、卵黄で被害を受ける人もいます。

植物油と高脂肪食の害

〈過剰な脂肪成分は皮膚に排泄される〉
――植物油がいけないのはどういう理由からですか。
永田 脂肪は燃焼出来る範囲で使ってればいいんですけど、唐揚げなど揚げ物料理で5〜10gも摂ると、1〜2時間走りまわらないと燃焼出来ないほどカロリーが高いんです。
 こうして大量に摂って余った脂肪成分は皮膚に排泄されるようです。そうすると、それが皮膚に炎症を起すことになる。
――適量はどの位のものでしょうか。
 運動を全くしない主婦や2才以下の子どもにとって、植物油の摂取は週3〜4回、炒めものに用いるのが適量だと私達は考えていますが、アトピーの子供たちは週20〜30回も摂っていることが分かっています(表1)。育ち盛りで運動盛りの子供たちは、たんぱく質や脂肪の摂取を大人ほど厳しく制限することはありませんが、それにしても恐ろしい程の回数だと思います。
 なお、脂質は、穀類、豆類、肉・魚などの食品からも摂れるので、運動しない大人の場合はことさら精製した油脂を摂る必要はないのです。
〈リノール酸の摂り過ぎの害〉
永田 もう一つ、脂肪を摂る上で是非知って欲しいことは、脂肪の種類によって働きが違うことです。
 紅花油、大豆油、ひまわり油等、一般に使われている植物油は「リノール酸」系に属する油で、この油はアラキドン酸カスケードといって体内でアラキドン酸に変化します。アラキドン酸は、アレルギーを起こす炎症物質「ロイコトリエン(B4、C4、D4、E4)」を作ります。ですから、リノール酸系の油を摂り過ぎると、炎症物質が過剰に体内に作られるわけです。ちなみに肉・卵にはアラキドン酸が多く含まれています。
 一方、魚油のDHAやEPA、シソ油に多い「α―リノレン酸」系の油はアラキドン酸が過剰になって生じる害を防ぐ働きがあることが分かってきました。
 こうした多価不飽和脂肪酸は大きく、リノール酸やアラキドン酸はオメガ6系列に、DHA、EPA、α―リノレン酸はオメガ3系列に分けられます。それで、オメガ6系列の油はアレルギー症状を促進する方に働き、オメガ3系列の油はこれを防ぐ方に働くわけです。
 私達が理想としている昭和30年代の食事では、このオメガ3対オメガ6の比率は、大体0・33位で、これより比率が大きいとアレルギー反応にブレーキをかける働きをすることになります。

精製食品と、毎日食べ続ける食品は危ない

――植物油が悪玉となるのは分かりましたが、大豆は悪玉でないという先生のお考えをお聞かせ下さい。
永田 大豆はアレルゲン三大食品の一つと槍玉に上げられていますけれど、和食の献立で豆腐、納豆、煮豆、五目煮、おからなどを食べている範囲では大豆の被害を受けることはないと思います。元来、大豆は日本人の体質になじんでいる食品ですから。
 ところが、豆乳、大豆プロテイン、大豆製粉乳などを毎日続けて摂取する場合に被害を受けることがあるのです。こうした精製した大豆食品では一度に大量の大豆が体に入ってくるわけです。例えば豆乳200ccで大豆120粒使う。煮豆で100粒といったら噛み疲れてせいぜい50粒位しか食べられませんが、豆乳だったら体の処理能力に関係なくすっと入って行くわけです。
 この噛み飽きる、食べ飽きるという感覚は大切なんです。「また豆腐!?」、「また納豆!?」という言葉が出るのは処理能力が限界に来て、もう嫌だと反応するからなんですね。ところが、豆乳なんかだと一気に飲んでしまうので、処理能力の限界を防ぐ安全弁が作動する暇がない。こういう場合に大豆たんぱくの被害が出るようです。
 ですから煮豆、豆腐、納豆など和食で使っている範囲を出なければ安全です。また、動物たんぱくと違って植物たんぱくですから被害も軽い。そういう理由で、私達は大豆に関してはそんなに神経質に制限していません。
――噛み飽きる、食べ飽きる、という感覚も大事だということですが、子供がこれを言うと単なる我侭だと抑えてしまいがちですね。
永田 アトピー性皮膚炎の患者では毎日悩みが存続してるわけです。ですから1週間に1回、1ヵ月に1回食べた物が原因であることはまず考えられません。
 鯖なんか食べると直後にワーッと発疹が出る「急性蕁麻疹」では、食べた材料が悪さをする間だけ症状が出て、それが1年中続くってことはあり得ないわけですね。それとの違いが一般に把握されていないように思います。
 ところがアトピー性皮膚炎は毎日症状が持続する。だから、毎日食べ続ける材料に原因があるというのが私達の考えです。和食では旬を大事にしますが、これも一年中、同じものを食べないための大切なブレーキ役になっているわけです。
 また、子供の食わず嫌いでは実際、体に合わないから出す信号の場合もあります。好きなものばかり食べさせるのは無論いけませんが、毛嫌いする食べ物を無理強いするというのも問題です。

実際の食事指導
昭和30年代の食事を試みる

――実際の食事指導はどうされていますか。
永田 私達は血液検査で全脂質中の脂肪酸組成を調べてオメガ6系列とオメガ3系列の脂肪酸の摂取比率を割り出し、実際の食事指導に役立てています。この比率によると、肉・卵と、魚の摂食比率も分かるので、和食のプロフィールを脂肪酸組成で掴む方法を開発しました。それとラスト法の検査結果を目安に、被害強度に応じて、卵、牛乳、植物油、肉を全く摂らない〜少量摂っても良いを4段階に分けて指導しています(表2)。
 ある患者さんの場合、4週間近く頑張ってリノール酸が下がった反面、EPAとDHAが2倍近く上がってオメガ3対オメガ6の比率が0・4になり、前よりブレーキが効き始めているのが分かります。
 それで、この脂肪酸組成の検査結果を見れば、真面目に努力しているかどうかも分かります。
――4週間位で変化が見えてくるんですか。
永田 実際に症状の改善を見る迄にはやはり3ヵ月は続けないと変ってきませんね(図4)。
――今まで摂ってきたのがまだ悪影響を及ぼしているから?
永田 全体を取り除かなくてはいけませんから、そう簡単には変らない。炭水化物なら排泄が早いですけど、脂肪はそんな簡単には置き変らない。2〜3ヵ月位は見る必要があります。

自分で分かる食事のパターン

――自分で食事のパターンを知るには?
永田 外食メニューのパターンがちょうどアレルギーを起こす食事のケースになります。ですから、どれだけ外食を利用しているかは良い目安になりますね。
 ホカホカ弁当は全部バツです。揚げ物が多く、卵は必ずついてくる。ハンバーガーなどファーストフード、ファミリーレストランのメニューも肉と油が主体です。こういう食生活がアレルギーを生む素地になるんですね。

家族も一緒に食べれる メニュー

永田 それと、私達の基本テーマに、家族と共通のメニューというのがあります。食事は一家団欒で楽しく食べるのが理想です。中程度になれば、植物油の炒め煮は週に3〜4回、牛肉・鶏肉は各週2回、牛乳は毎日食べられますから、家族にとっても無理の無い食事になります。
 ただ、そういうものを利用しても和風に調理して欲しいということですね。肉を使うにしても、空揚げ、ステーキ、ハンバーグではなく、肉ジャガ、煮付け等にする。鍋物なら野菜も海藻もたっぷり入って脂肪も抜けるので最高です。
 それでも、たんぱく源はなるべく日本人が昔から摂ってきた魚介類、豆類が望ましいですね。日本人はこうした食品に対しては、大部分をアミノ酸レベルまでに分解出来る体質をもっているわけですから。

IgE抗体が低い人でも、 間違った食事を続ければ アトピー性皮膚炎に

――アレルギーは遺伝が関係している。つまりアレルギー抗体(IgE抗体)が高い人がなると言われていますが。
永田 アトピー性皮膚炎には小さい時から発症したタイプと、大きくなって発症したタイプとあって、大きくなってから出るタイプは昔は殆ど見られなかったんですね。
 アレルギー体質の基礎の上に食生活全般の間違いが乗ってくるのが3歳位までの乳幼児で発症するタイプで、これは遺伝が関係してきます。
 大きくなってから発症するタイプは、アレルギー体質でなく、食べ間違い、不適切な食事だけで起こってるケースが殆どです。
 具体的に言えば、家庭料理を食べていた時代は被害がなかったけれど、一人暮らしで外食を始めたら出た。或は、運動選手で運動でエネルギーを燃焼し切っていた時は良かったけれど、運動を止めたら食べ過ぎでアトピーが出てきた人達ですね。
 こういう人は抗体検査しても殆どが、IgE抗体値が200以下で正常です。ラスト法でも陽性反応が出ない。だからアレルギーとは関係ないとされてしまうんですね。
 ところが、血中の脂肪酸組成を見ればどちらにしても一目で分かるわけです。我々の理論では、アトピー性皮膚炎は高たんぱく、高脂肪と野菜不足で起こってくる栄養失調の結果という考えですから、遺伝が関係するにしろ、しないにしろ、それに気づかない限り、良い解決は見い出せません。
――逆に言うと、IgE抗体値が高い人でも、食事に気をつけていれば発症しないということですね。
永田 そういうことだと思います。

アレルギーは防衛反応、 内向して爆発する成人病
日本人に和食が良いと 言わなければいけない時代

――飽食の時代になって久しい今尚、何故栄養学者達の多くは卵や牛乳を毎日摂れと言うんでしょうね。
永田 敗戦後、伝統的な日本をよりどころにしていた人達が全部自信をなくして、文化、政治、経済、全てに日本は遅れていたということで、若い世代に全てをバトンタッチしたわけです。若い世代は欧米文化に憧れて追い付け追い越せで欧米人の模倣に明け暮れ、食文化をはじめ、あらゆる領域において模倣したわけです。それで相変わらず、食糧難時代、貧栄養の時代の食品分析学に頼って、健康で生きるためにはどんな栄養素が必要かというのを、今以て気付かない。
 ところが欧米では、1960年代後半から栄養学的なアプローチで和食の良さを認め、アメリカでは1970年代にダイエットゴールという食事指針も出しています。世界は既に、人が健康で生きていくためにどういう食事でなければいけないかというテーマで動いているわけですが、やっと日本人もそこに気がつき始めたというのが現状だと思います。
 日本人にとって和食が何故良いかを語らなければいけない時代っていうのはもう狂っているわけですね。そういう時代が、今こんなにも多くのアレルギーや成人病の患者を生み出しているのだと思います。
――結局、アレルギー性の病気も成人病も素地は同じだと…。
永田 アレルギー性の病気と成人病と何が違うかと言うと、体にとって負担になる過剰な栄養を外に出す力のある人がアレルギー体質なんですね。
 逆に、アレルギー体質でない人は、脂肪組織や動脈の中にポリペプチドとかコレステロールとか中性脂肪だとか、体にとって邪魔になる物をため込んでいるわけです。
 ですから、外に出せる人は体内に蓄積しませんから、生命の危険からするとかなり楽なわけですよ。
 邪魔物をヘドロと考えると、ヘドロを外へ出せる防衛反応が敏感な人はアレルギー体質だと我々は思っているわけです。ですからアレルギー症状が出る人の方が生命の危険性は少ない。
 一方、20年も30年もヘドロをため込んで行けばやがては心筋梗塞だ、脳梗塞だ、ガンだとか、取り返しがつかないような疾患となって行く末をたちふさぐんです。
 考えようによっては、アレルギーは間違った食生活を教えてくれるありがたい病気だとも言えると思います。
(構成・本誌功刀)