細胞の元気の素「細胞内ミネラル」の鍵は、マグネシウム
カルシウムパラドックスの本態は、マグネシウム不足
国立健康・栄養研究所 疲労生理研究室長 西牟田守先生
細胞の元気・若さの素 「細胞内ミネラル」
私たちの身体は60兆個ともいわれる多くの細胞から出来ています。その1個1個の細胞が元気でなければ、体の元気は生まれてきません。
では、それぞれの細胞が元気であるためには、どうすれば良いのでしょうか。
ミネラルの出納(摂取と排泄)実験を中心に生体内のミネラルの動態を研究されている国立健康・栄養研究所疲労生理研究室の西牟田守室長は、「細胞内ミネラルこそ細胞の元気、若さの素」であるとしています。
生体の中では、摂取したミネラルと排泄されるミネラルが、細胞と細胞外液と骨の中でやりとりをしながらどんどん動いており、その流れの中で人間は生きています。
そういう視点でミネラルを見ると、例えば不足を言われるカルシウムにしても、体の中のどこのカルシウムが足りないのか、骨のカルシウムなのか、細胞のカルシウムなのかを考えなければ、カルシウムについて理解できないと西牟田先生は警告されています。
西牟田先生に、細胞の健康とミネラルについてお話を伺いました。
細胞の元気の素は
細胞内ミネラル
元気な細胞と病気の細胞
・・先生は細胞の元気こそ、体の元気の素だと仰っておられるわけですが、では元気な細胞である条件とはどういうものでしょうか。
西牟田 我々の体は60兆個とも100兆個とも言われる非常に多くの細胞で出来ています。その一つ一つの細胞が元気ならばその個体は元気な筈であり、逆に、細胞の元気がなくなれば最終的には病気になってしまいます。即ち、一つ一つの細胞が元気である条件を求めることが健康を求めることになります。
細胞はその役割や種類によって、一生の間に生まれ変らない細胞(脳、神経、筋肉、腎臓などの細胞)と、絶えず脱落と増殖を繰り返して新しく生まれ変わる細胞(肝臓、消化管、皮膚、血球などの細胞)とがあって、その元気を保つ仕組は少し違ってきます(図1、図2)。しかし、いずれにしても細胞が元気であるためには、細胞が常に新しい養分を吸収し、不要なものを排泄し、いつでも役割が果せるように準備していることが大切になります。
・・では反対に、元気をなくした細胞、病気の細胞とはどういう状態をいうのでしょうか。
西牟田 細胞というのはある活性を持っているわけで、活動をすることによって活性は低下します。細胞の活性が低下した状態というのが「疲労」状態ですが、細胞はこの状態から再び栄養と休養を受けて元に戻るわけです。
ところが活動し、その後、栄養や休養が適切に与えられないと、細胞は元気をなくしていき、最終的には細胞の中に必要な物質が欠乏し、逆に不要な物質が細胞の中に増えていきます。
ミネラルの立場からは、細胞の中に多いミネラル(細胞内ミネラル)が細胞の中に少なくなって、細胞の外に多いミネラル(細胞外ミネラル)が細胞の中に増える状況だと考えています。
例えば、元気な細胞は本来細胞の中に多いカリウムやマグネシウムなどを十分に貯えていますが、元気のない細胞ではこういった細胞内ミネラルが失われ、逆に、元気な細胞なら排除してしまう細胞外ミネラルが入り込んだ状態になっています。
・・何故、そういう状態が起きてしまうのですか。
西牟田 様々な成人病の危険因子(表1)が関与すると、細胞の中にあるミネラルは尿に排泄され、体の外に失われてしまいます。
これは後で述べますが、体がホメオスタシス(恒常性)と言って、血漿(血液の液状部分)中のミネラル濃度を常に一定に保つ仕組を持っていることとも関係しています。
細胞内ミネラルと 細胞外ミネラル
・・細胞の元気を養うためには先ず、細胞内ミネラル、細胞外ミネラルについての理解がないと始まらないわけですね。
西牟田 そうなります。今のところ体に必要だと証明されている必須ミネラルは16種類あって、その分け方もさまざまありますが、実はミネラルというのは細胞の中に多いミネラルなのか、細胞の外に多いミネラルなのかを考えないと、ミネラルと健康とのかかわりを理解できません。
体は細胞から出来ていると言いましたが、正確には細胞と、血液(血漿)や脳脊髄液などの細胞外液、それに骨から成っています。
ミネラルというのは体の構成要素によって生理的存在部位が偏っており、細胞外液に比べて細胞の中に多い「細胞内ミネラル」と、血漿などの細胞外液に多い「細胞外ミネラル」、そして骨に多い「骨ミネラル」とに分類することができます(表2)。
このうち骨は、細胞内ミネラルと細胞外ミネラルが共存する一種のミネラルのプール(貯蔵庫)になっており、基本的にはミネラルは、細胞内ミネラルと細胞外ミネラルに分けることができます。
細胞の元気の素は 細胞内ミネラル
西牟田 「細胞内ミネラル」は細胞の中に多く、細胞がそれを取り込むことによって活性化できるミネラルであるのに対し、「細胞外ミネラル」は元気な細胞にはあまりなく、細胞がそれを追い出すことによって細胞の活性を保っているミネラルです。
細胞は壁を作っている(細胞膜)わけですが、細胞の中より細胞の外の方が濃度が低く、細胞内ミネラルはその濃度勾配に逆らって、細胞が取り込んでいるミネラルで、エネルギーを使って細胞の中にチャージ(充電、補給)しているということになります。
このように考えると、細胞内ミネラルは細胞の若さや元気を保つ上で重要な存在で、細胞の「若さの素」、「元気の素」であるとも言えます(細胞外ミネラルが足りないと、今度は細胞外液が十分に管理できなくなるので勿論、両方ともに必要ですが…)。
細胞外ミネラルが
細胞内に入り込むと
毒性を発揮する
──カルシウム毒──
西牟田 こうした観点からミネラルを見ていかないと、摂取量だけを取り上げて、例えばカルシウムが足りないからカルシウムのサプリメント(栄養補助食品)をもっと摂ろうとか言った話にはならないわけです。
カルシウムは血漿の方に多い細胞外ミネラルで、細胞の中の濃度に比べると細胞外液の濃度は千〜1万倍も高く、細胞にとってはカルシウムはどんどん追い出さなければいけないミネラルです。ところが、高齢やストレスなどの条件が加わると、骨のカルシウムは減る一方で、細胞の中には多く入り込んで毒性を発揮します。
カルシウムについては、1日の所要量600mgより約50mg摂るのが少ないからということで議論され、足りないと報道されるからサプリメントではカルシウムが今一番売れています。
しかし、細胞にとってはカルシウムは毒で、筋肉細胞に入り込めば筋肉が縮みっぱなしになるし、血管の細胞に入れば血管が収縮しっぱなしになるのです。ですから、年をとると血管の石灰化を起こしたり、人によっては胆石や腎臓結石が出来たりと、骨以外のところにカルシウムが沈着し、カルシウムを不用意に多く摂ることによってかえって健康を害することにもなります。
年を取ると、確かに骨から見ればカルシウムは不足しやすくなりますが、細胞から見たらカルシウムが沢山入ってきて、骨以外の臓器にカルシウム沈着を起こし、カルシウムの毒性を発揮していることになります。それを、単にカルシウム不足と言っていいのでしょうか。
細胞内ミネラル、細胞外ミネラルという基本的なミネラルの概念を理解していないから、問題がクリアにならないわけです。
細胞内の
キーミネラルは
マグネシウム
成人病危険因子の関与で、
細胞中Mgと骨中Caは
尿に捨てられる
西牟田 細胞の若さ、元気の素と言うべき細胞内ミネラルは、先程言ったように、成人病の危険因子が関与すると尿の中に排泄されやすくなり、細胞内には欠乏しやすくなります。
細胞内ミネラルの殆どがそういう傾向にありますが、特にキーミネラルとなるのはマグネシウムです。多くの成人病危険因子の関与で、細胞中のマグネシウムは尿に排泄され、欠乏してきます。それで実際、マグネシウムの投与で、高血圧症、高脂血症、虚血性心疾患が好転することが見られています。
また先程言ったように、成人病の危険因子が関与すると、細胞内のマグネシウムと同時に、骨のカルシウムが尿中にどんどん捨てられるようになります。
1.加齢(細胞内Mg、骨Ca)
老人ホームのお年寄りと女子大生の早朝空腹時の尿中ミネラル排泄量を調べたところ、老人の方がマグネシウム(Mg)を多く失っていました。また、細胞内だけでなく、血液中のマグネシウムも年齢と共に失われやすいことも分ってきました。
これは、骨のカルシウム(Ca)も同様です。
2.エネルギーの摂り過ぎ
(細胞内Mg、骨Ca)
1日に、コレステロールの多いバター60gと鶏卵5個を1週間食べてもらった実験では、血清コレステロールには変化が起きませんでしたが、細胞の中のマグネシウムと骨のカルシウムはどんどん尿に捨てられていきました(図3)。
摂取エネルギーの方が消費エネルギーより多いと、細胞は過剰に摂ったエネルギーの物質を処理しなければいけないわけですから、そういう状態は生体にとって負担になります。そうすると、リンを沢山使わなければ処理ができないという理由からだと思いますが、いずれにしてもカルシウムとマグネシウムの尿中排泄量が増えます。
エネルギー源となる食品は脂質に限らず、糖質、蛋白質、アルコールの摂取によっても、カルシウムとマグネシウムの尿中排泄量を増やすことが知られています。このうち、「空のカロリー」と言われる脂肪、精白穀類、白砂糖、アルコール等にはマグネシウムが殆ど含まれていないので注意すべきです。
因みに最近はダイエットの弊害も出てきていますが、エネルギーが不足すると今度は、細胞内ミネラルのカリウムやリン、亜鉛が尿に捨てられてしまいます。
3.激しい運動(細胞内Mg、骨Ca)
ソウルオリンピックの西独の選手はマグネシウムの服用を義務づけられていたそうですが、私達が行なった大学生の長距離選手を対象にした調査でも、激しいトレーニングによって、マグネシウムとカルシウムの尿中排泄量は増加していました。
反対に、運動不足でマグネシウムの尿中排泄が増えるかは分っていません。但し、無重力状態では骨カルシウムの排泄が増加することが報告されています。
4.ストレス(細胞内Mg、骨Ca)
精神的負担や身体的負担が日常より多くなった状態でも、カルシウムとマグネシウムの尿中排泄量は増加されます。
女子大生に小学3年生の計算ドリルを解いてもらったり(精神的ストレス)、4℃の冷蔵室に入ってもらって(身体的ストレス)、食事内容が同じでストレスをかけない日の値と比較したところ、カルシウム、マグネシウムの尿中排泄量は、ストレスをかけた時の方が増加しました(図4)。
また、ストレスをかけると、カルシウム、マグネシウム、リン等の尿中排泄量が増すばかりでなく、腸管での吸収も、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などでは低下することが分かりました。
マグネシウム欠乏こそ カルシウムパラドックスの 本態
・・成人病の危険因子によってマグネシウムだけでなく、骨のカルシウムが減り、逆に、細胞内のカルシウムは増えて毒性を発揮するということですが、では、細胞外液のカルシウムはどうなるのですか。
西牟田 成人病の危険因子が関与することによって、カルシウムの尿中排泄量も増えるのですが、これは骨の中のカルシウムが減るのであって、細胞内ではむしろ増えていることに注目すべきです。
骨というのはミネラルのプールになっていると言いましたが、骨の中には、体の中の全ミネラル中、カルシウムは99%以上、リンは80%以上、マグネシウムは60%以上、ナトリウムは50%以上蓄積されています。
ところが、カルシウムやナトリウムは細胞外ミネラル、マグネシウムやリンは細胞内ミネラルです。そうすると、骨のミネラル組成を考えてみた場合に、骨というのは細胞内ミネラルの特徴を持っているわけでもなく、細胞外ミネラルの特徴を持っているわけでもない。細胞内ミネラルと細胞外ミネラルの両方から出来ているということになります。
年を取ると、骨のミネラルが少なくなるということはカルシウムだけではなく、他の骨中ミネラルも減るわけです。それでカルシウムなどは骨からは減るけれど逆に、細胞の中には増えます。それで細胞外液の濃度は一定を保っているわけです。これがホメオスタシスの仕組です。
骨からカルシウムが出ていって、細胞の中にカルシウムが貯まるのを「カルシウムパラドックス」と言っていますが、実験すると、カルシウムとマグネシウムの尿中排泄は、健康人の場合にはカルシウムの分子が1個出て行けばマグネシウムの分子が1個出て行くという具合に、大体等モル(同じ分子数)排泄されます。
また、骨の中のカルシウムの量は、マグネシウムの少なくとも5倍以上ないと、骨(ハイドロオキシアパタイト)は安定しません。そうすると、骨からミネラルが供給された時に足りなくなるのはマグネシウムであって、余るのはカルシウムだというのが分かります。
しかも、カルシウムは体の中に1000gあって、マグネシウムは25gです。1‥1の分子数で出ていったとすると、マグネシウムが25g出ていく時に、カルシウムは40gあれば良いことになり、マグネシウムが25g出て行った時にはカルシウムは40g出て行って、細胞の中のマグネシウムはゼロになるわけですから、そこに多量のカルシウムが入り込むわけです。そういう状態というのが細胞の活性を低下させているわけです。
そうすると、細胞レベルでミネラルの栄養状態を良くしようというような考え方からすると、不足していたのは実はカルシウムではなくて、マグネシウムということになります。実際、骨粗鬆症の予防・治療ということで、カルシウムの摂取で骨密度の低下が抑えられるかというと、抑えられるというデータもありますが、大抵は抑えられない。一方で、マグネシウムを飲ませると骨密度が上昇するデータは少ないながらあるわけです。
骨粗鬆症に関してのミネラル摂取については、これから研究が進んでいくにつれてどういうふうになってくるかは分からないですけれども、少なくとも、細胞というものを考えて細胞の中に必要なミネラルはどういうもので、細胞が排除しているミネラルはどういうものかを考えてみると、マグネシウムは1つのキーミネラルになってくることが分ります。
そうすると、細胞内のミネラルが出て行ってしまって、その代わりにカルシウムが細胞内に入り込むような状態が「カルシウムパラドックス」の本態であり、カルシウムパラドックスというのは実はマグネシウムの欠乏そのものなのだと考えることができます(図5)。
ナトリウム・ カリウムポンプ
・・細胞膜の中にはナトリウム・カリウムポンプという機構があって、それを動かすのにマグネシウムが必要だと教わってきたのですが。
西牟田 ナトリウム・カリウム依存性ATP分解酵素(ATPase)というものがナトリウムカリウムポンプの本態で、マグネシウムとATPの存在下でそれがエネルギーを消費して細胞内のナトリウムとカリウムを交換することは分かっています。しかし、実際にはカリウム以外の他の細胞内ミネラルがどのようにして細胞の中に溜まってくるかという機構はまだよく分かっていません。
その機構はまだよく分かっていないけれども、実際にはそういうふうになっている。そこのところを研究しなければならないのですが、とにかく細胞にとって必要なものが細胞の中に集まってこないと、細胞の活性は維持できないのです。
・・一応、カルシウムも細胞の中に入ると排除されることにはなっているわけですよね。
西牟田 ちゃんと排除されていれば細胞内のカルシウムは増えません。生体内ではカルシウムは1つのシグナルとして、細胞の中のカルシウム濃度が上がることによって筋肉が収縮したりしますけれども、その収縮した後にはすぐまたリラックスして、細胞の中にあったカルシウムは細胞の外に出るか、細胞の中にカルシウムをため込むような器官があってそこに入るとかして、細胞の中のカルシウムの濃度は高くならないようになっているのが普通なのです。
ところが、その通りならば、いつまでたっても細胞の中のカルシウムは増えない筈ですが、実際には増えてきてるわけですから、その機構だけでは説明できません。
例えば筋肉などはその説明で良いわけですが、組織や臓器によっては、細胞内ミネラルを細胞の中に引き入れて細胞外ミネラルを排除するというようなやり方では、臓器の機能を維持できないようなものがあります。
増殖を繰り返す細胞の
キーミネラルは亜鉛
亜鉛と
慢性退行性疾患、ガン
・・それはどういうものですか。
西牟田 それは、活動すると活動した後に脱落するような細胞です(図2)。
例えば、腸管の上皮はいろんな物質を吸収する時に必要ですが、それはずっと存在しているわけではなくて、消化吸収した時には脱落してしまう。そういうような臓器もあるわけです。
そうすると、そういう臓器は細胞外ミネラルを排除して細胞内ミネラルを取り込むだけではなくて、細胞膜または臓器の機能を維持するために増殖するプロセスが必要になってきます。
筋肉などと違って、成長後もどんどん新しい細胞が出来て、その機能を維持しているような臓器の特長というのは、実は、癌になりやすいということなんです。
つまり、癌になりやすい臓器の特長は「増殖を繰り返す」細胞からできているということになります。そうすると、増殖を繰り返すような臓器が増殖をする時に必要なものが足りないと、分裂前の細胞の情報が分裂後の細胞に伝わらないということになります。
そこでキーミネラルとなるのは亜鉛なのです。
亜鉛が極端に足りなくなると、味覚障害が起きると言われますが、亜鉛の機能を考えてみると、亜鉛というのは細胞分裂を正しく行なわせて、遺伝情報を正しく伝達するような時に必要であるし、蛋白質を合成する時に必要なミネラルです。ですから、細胞の中で蛋白質の合成やDNAの合成をする時に亜鉛が足りないと、細胞は正常な分裂・増殖ができません。
また、実際に糖尿病になって褥瘡ができると中々治らないのですが、それは糖尿病という病気自体が亜鉛の尿中排泄を増やすようなファクターがあって、それで組織の亜鉛が低下して、組織の修復をする時にしにくくなるということが起こります。
それから免疫の場合も、免疫蛋白を造らなくてはならないですから、そういう場合でも亜鉛はキーミネラルになってくるわけです。
このように考えてみると、亜鉛が足りなくなると癌になりやすくなるだろう、免疫力が落ちるだろう、そういうことがまず考えられます。
また、亜鉛というのはインシュリンの中にも入ってます。さらにアルカリフォスフォターゼというような骨のミネラル化するのも亜鉛でできている酵素ですし、亜鉛でできてる酵素は山程あるわけです。
そういうものの働きが悪くなると、何か特異的な症状ではなく、全身的に細胞の活性が低下するような状況が起こるのです。
ですから、慢性退行性疾患とか癌だとかの原因不明の病気は、亜鉛が足りないと起きやすくなるだろうと私は言ってるわけです。
マグネシウムが 不足しない食生活を
西牟田 このようにミネラルを考えていくと、細胞の元気を維持し、ひいては体の健康を維持する食生活とはどういうものであるかが分って来ます。
マグネシウムも亜鉛もいずれも細胞内に分布しているミネラルですから、細胞をまるごと食べるような食生活であれば、ソコソコ供給されるわけです。
反対に、油だとか精製したような穀類だとかは、そういったミネラルの部分は大部分捨てられていますから、そういうものが多い食事では摂取量が少なくなります。
年をとってこういった食事を続けると骨もどんどん薄くなってくるわけですが、ミネラルに関してはただカルシウムさえ摂れば良いといったことしか殆ど言われない。そしてレントゲンをとって骨粗鬆症ということになれば、カルシウムが投与されるわけです。しかし、大抵の人は飲んでないと思う。というのは、カルシウムというのは便を固くする薬なんです。女性の多くは便秘傾向にあって、便を固くする薬を便秘の人に飲ませたら益々固くなってしまうわけです。ところがこの場合にも、マグネシウムというのは昔から便を柔らかくする薬として使
われてきた程、便秘には効果があるわけです。
動物実験では、カルシウム欠乏の動物にカルシウムを与え続ければそれなりに効果が見られるかも知れませんが、実際に生きてる人間達の栄養を管理して病気にならないようにするためには、少なくともカルシウムだけを考えていたのでは駄目なのです。ミネラル全体を捉え、それが体の中のどこに存在し、どのように代謝しているのかを考えなければなりません。
そこで、食生活で指標となるのはマグネシウムです。マグネシウムは精製加工食品、油脂類、アルコール、砂糖などには殆ど含まれず、反対に、無精白穀類、緑黄色野菜、海草類、魚介類といったものに多く含まれています。そうすると、こうした食品にはマグネシウムだけではなく、亜鉛など他の細胞内ミネラルも多く、カルシウムも多い。また、ビタミン類も多く含んでいるわけです。
食生活においては、こうした若さの素になるものを多く含む食品を積極的にかつバランス良く摂って、それらが殆ど含まれない食品を控えていくことが、細胞の若さ、元気を保つ上で重要になると思います。
(インタビュー構成・本誌功刀)