環境汚染・ゴミ問題も、活性酸素が元凶だった

強力な抗酸化力を持つ"EM(有用微生物群)”が、地球を蘇生する(環境浄化シンポジウム「こうして減らす、
みんなのゴミ――有効微生物群を使った減量とリサイクルを考える」基調講演より)

琉球大学農学部教授(農学博士)比嘉照夫先生

 農薬・化学肥料を信奉する農学者として農業を実践指導する中で、現行農法の抱える環境破壊、健康破壊などさまざまな問題点に直面する。土壌改良剤として微生物に目を向け、10年来の研究を経て後、EM技術を開発した。
 農薬・化学肥料を使わずに、農地・農作物の蘇生、収量の増大、人・機械力の削減――などさまざまな効果を生み出すEM農法は、地球を蘇らせる大きな可能性を秘めた画期的な農法として世界的脚光を浴び、日本はもとよりアジア、南北アメリカと広く海外で技術指導にあたっている。

崩壊から蘇生へ、EMは地球救済の礎となるか
食糧・環境・医療・エネルギー問題まで、本物技術のEM

 良いことばかりで、悪いことが一つも無い技術を「本物技術」と呼ぶのだそうだ。
 これ迄先端技術の殆どは、農薬にしろ化学肥料にしろ、生産性向上、便利の裏に、環境汚染、健康被害など、多くの矛盾、問題点をかかえていた。EM技術を開発した比嘉照夫博士は、EMこそは自己矛盾を起こさず、自己矛盾を自己増殖および自己完結的に解決する技術だとし、EM農法は理想農業の実現化に役立つとしている(表参照)。
 土壌改良剤として開発されたEM技術であるが、EMの「汚い物を好む」という性質から、農業ばかりか、その用途は日常の生ゴミ処理から、地球環境、地球生物全体の健康にまで大きく貢献すると期待されている。
 既に、岐阜県可児市では行政と市民グループが一体となって、EMボカシによる生ゴミの減量とリサイクルの成果を上げ、今多くの自治体が関心を寄せている。(可児市では、毎年6%ずつ増えていたゴミは平成4年度には8%減、毎年15%づつ増え続けていたゴミ回収費は15%減)
 93年12月2日、「こうして減らす、みんなのゴミ――有効微生物群を使った減量とリサイクルを考える」と題された環境浄化シンポジウムが、毎日新聞、(財)富民協会、(財)自然農法国際研究開発センターの主催で開かれた。
 比嘉博士による基調講演は「環境問題の元凶は活性酸素であり、優れた抗酸化物質であるEMは、環境汚染、ゴミ問題の解決策になり得る」ことが中心テーマであった。
 活性酸素を追求している本誌「微量栄養素最新情報」の今月は、比嘉博士の基調講演要旨を中心に、EM利用による環境汚染・ゴミ問題の解決を紹介する。
※EM(Effective Micro―organisms 有用微生物群)
 光合成細菌、乳酸菌、酵母菌、麹菌、有用放射菌など、嫌気性、好気性の5科10属80種以上の有用微生物を特殊な技法で共存培養した菌群。また、その培養液を指す。
 「EM培養液」は現在、農地改良、堆肥作り、汚水や工場排水の浄化処理などに応用されている。
 EM培養液で米糠、籾殻、糖蜜などを発酵させた「EMボカシ」は、家庭の生ゴミを強力に分解し、1〜2週間程度で簡単に生ごみ堆肥になる。さらに容器にたまった発酵液を下水、トイレ等に流せば、水を浄化し、悪臭を除去する。

環境汚染の元凶は 活性酸素
農業から環境問題への アプローチ

 環境問題は私達周辺の生ゴミから始まり、最終的には地球の炭酸ガス問題、オゾン層破壊問題につながっています。
 こういうリンクした環境問題に対し、それではどういう方法をとれば個々人の努力が地球環境にプラスになるか、まだ答えが見つかっておりません。
 ゴミ減量では、いろいろ努力して何とかしなければいけないという非常に大きな圧力になって来ている、そういう感じで取り組んでいるのが実態です。
 経済成長、生活レベルを上げていけば必ず汚染が生まれ、汚染が拡大すれば、そのためにまた膨大な処理費がかかる。それは、新しいことは何も生まずに全て無に帰し、ゴミを捨てること自体が膨大な予算の無駄使いにつながっています。
 環境問題についてはもう出尽くしたところまで来てますが、問題提起の状況のまま答えがない、実質的な答えが出なければならないのにずっと空回りしている現状です。
 私は農業の方から微生物の研究を進めていたわけですが、この微生物(EM)が土の中でどんどん活発化適合していくと、畑にかければ予期せぬ素晴らしい作物が出来、畑から出る水がとてもきれいな清水という感じになる、養鶏場にまけば大変きつい悪臭が消える、鶏に飲ませたところ病気が治る、肉質が良くなる、最後には私自身飲んでみたら無害であるばかりか健康面での向上がみられた。
 こういうことからEMは、生ゴミ処理、空気・水の浄化、下水処理、重金属問題と応用範囲が広がり、今では工業分野迄に広く活用されるようになって来ました。

崩壊(酸化)と 蘇生(抗酸化)

 何故こういう事が起きるか。 実験過程でEMを使うと鉄が錆びない、EMを使った作物中のビタミンCの変動があまりない・・などいろいろなことから、このEMが作り出す中に、抗酸化物質があることが次第に分かって来ました。
 抗酸化物質とは、物を酸化させない、腐敗させない力を持っています。
 全ての物質、生物は酸化し、酸化が広がっていくと最後は崩壊する・・つまり酸化とは滅びの構造です。逆に言うと、酸化を防ぐことが蘇生の方向を維持していくことになります。
 そういうことが段々分かっていくうちに、地球環境を含め、あらゆるものには蘇生と崩壊の2つの方向性があり、どちらかの強さによって健康度や生産力などの、あらゆる状況が決まると感じて来たわけです。

放棄した物が 強烈な酸化剤となって 地球に充満

 現在の生物状況は私達の思想の根源から出ている問題で、人類の思想を変えないと本質的な解決にはなりません。
 今出て来ている汚染は全て過剰な競争原理の結果、役立たないとして捨てられた物がマイナスを引き起こし、マイナスの除去に莫大なお金がかかるという問題点をかかえています。これは物質だけではなく、受験競争の落ちこぼれなども社会の環境問題に大きく影響しております。つまり今の社会はマイナスの受け皿がないわけです。
 技術面からは、処理すべき筈のものが放棄され、強烈な酸化剤となって地球に充満し、エントロピーの法則に従って回収不可能な汚染の拡大という状態になっています。
 これは非常に由々しき問題でこの酸化現象が広がっていくと、人間、植物、環境とあらゆるものが病気にかかりやすい、健康を損いやすいスタイルになることが分かって来ました。

崩壊を起こす元凶 「活性酸素」

 通常の(大気中の)、分子状の酸素Oは、直接的には物を酸化させる力はありません。
 これが活性化されてOという単元素になると、6つの反応基を持ち、あらゆる物と強烈に結びついて反応し燃やし、最後にはそれを駄目にする・・つまり酸化現象とは燃える現象です。鉄が錆びるのは緩やかな燃焼といえます。その酸化現象が重なって行くうちに、段々と崩壊が加速される状態が出て来ます。
 病気のレベルでは、遺伝子の健康度と生体の健康度はほぼイコールで、人間の病気は全て遺伝子の病気、遺伝子の損傷と思っていい。この遺伝子を傷つける物質の第一番目に上げられているのが活性酸素です。
 酸素はエネルギーを得るための大事な活力源で、私達は体の中に酸素を吸い込むと一部は活性化して活性酸素となります。生体にとってコントロール的な活性酸素は非常に大事な活力源となるものですが、コントロールがきかなくなってどんどん燃え広がり、山火事の様になると非常に危険なものになります。そこにあるものが皆焼けてしまう状態が、生体においては免疫力(自己治癒能力)を低下させ、ガンなどを誘発する、遺伝子の損傷を引き起こします。
 遺伝子損傷が何故いけないか。細胞は一年に何回も入れ替わり、自分と同じ様な細胞を同じ場所に作って交代して行きます。この指令官がDNAで、DNAが損傷すると歪んだ細胞をコピーし、元は元気だった細胞は変形し、変形がゆっくりなものはリウマチ性、急激なものではガンになります。
 生体は活性酸素をコントロールする制御機構(生体内の抗酸化酵素、抗酸化物質)を備えていますが、現在の生活基盤には沢山の酸化物があり、体の中の制御力の範囲を超えています。
 車の排気ガス、暖房の排気、農薬、化学肥料、日常的に飲んでいる医薬等も強烈な酸化現象を引き起こします。

崩壊(酸化)から  蘇生(抗酸化)へ
酸化現象の解消が解決の鍵に

 酸化現象は生活の中から全て出て来る、私達の呼吸も排泄物も、生ゴミも、農業も全てのものが酸化現象を生み出し、昔は大した病気は起こさなかったような病原菌が大きな病気を引き起こしたりと、予期せぬことが次々と現われ、今までの考えや技術では制御できない状態になっています。
 環境においても、この環境全体が強烈な酸化状態にあって、環境自身が持っているコントロール(自己浄化)範囲を超え、山火事のようになっているわけです。この酸化現象をどう解決していくかが環境問題の根底にあります。
 この状態をどうすればいいか。地球のスタイルを崩壊(酸化)から、蘇生(抗酸化)の方向に誘導すればいい。
 酸化‖崩壊は、まず腐敗があり、それから酸化に変って分解していくわけですが、この段階でいろいろなマイナスを減らしていくことが鍵になります。
 方法論としては極端に言えば抗酸化物質を作り出す微生物「EM」の培養液をかけるところから始めるといいのです。
 私達の1日に出す汚染、これをどの様に回転させるか、お金もかからず一石二鳥に管理できる範囲・・EMではそれが可能であるところから、生ゴミからあらゆるゴミ問題迄、現在、EMの応用が広がりつつあります。

嫌気・好気共存のEMは 汚染物質を消化して、 抗酸化物質を生む

 そもそもEMは、生物進化から言うと、地球が出来たての頃から存在した嫌気性菌といって酸素が嫌いで、炭酸ガス、アンモニアガス、メタンガスなどの有害なガスや物質が大好きなグループです。
 地球ができた当時、酸素は存在せず、地球は炭酸ガス、アンモニアガス、水蒸気だけの数百度の火の玉でした。炭酸ガスが減らなければ地球の温室効果は消えない。この温室効果を消してくれたのが「絶対高温耐熱性嫌気性菌」というグループで、炭酸ガスやアンモニアなどを消化し、温室効果を解除し、排泄物として水や酸素、窒素を作り出し、地球の大気は落ちつき、海ができたわけです
 この菌の大半は酸素に触れるとすぐ死ぬ、要するに酸素が害になるのです。
 その害を脱却するために、酸素に耐えるグループと、酸素をコントロールするグループに分かれ、酸素を上手にコントロールするグループが人間にまで、酸素に耐えるグループが病害虫のところに進化しました。そしてわずかに生き残った嫌気性菌は地球の片隅で辛うじて生きる様になったのです。
 嫌気性菌は悪いものと考えられがちですが、歴史を辿ると、味噌や醤油など食品加工に使われている微生物の大半は嫌気状態で活躍します。また、嫌気性菌は酸素の下でも生きていけるように進化し、炭酸ガスや水を出すという両刀使いのものも多い。さらに遡ると光合成細菌のように、本当に有害なものを良いものに変えていくというグループもいます。
 これらのグループを選び出し嫌気性、好気性のいろいろな有用微生物群の共存体制を作ったのがEMで、EM菌は5科10属80種以上になっています。

安全なEM

 このEMのグループは、アンモニア、硫化水素、メタンガスなどの汚染が大好きで、汚いところでも繁殖し、抗酸化物質を作り出し、水でも空気でも環境をどんどんきれいにしていく。
 きれいにしてしまったら、これらにとって酸素は有害物質ですから、酸素がだんだん増えて来ると活力が鈍り、最後は極端な言い方をすれば皆消えて行く、遺伝情報だけを残して消えるという性格、つまり自己消化能力を持っています。
 良い生物だからとどんどん使い始めたら、予期せぬ問題が起きるのではないかと心配する方も多いのですが、進化の立場から言うとEMはかなり昔の生物で、現在の環境条件がクリーンに戻った時にはもう生きられない、邪魔なものです。
 そういう意味で安全であり、今の汚染だらけの地球は、このEMにとっては大変御馳走がいっぱいあるわけです。

エントロピーを パワーとして 回収するEM

 エントロピーとは、いろんな意味で利用された熱が利用できなくなり、放出されて回収できないもの、大きな意味では回収できない汚染全てをエントロピーと言っております。
 回収不能では地球は汚染されていく一方ですが、抗酸化物質(EM)による抗酸化現象のレベルが上がって来ると、いろいろなところでエントロピーの回収が可能になって来る。現在、放出された汚染をパワーとして回収している事実が沢山確認されています。
 例えば生ゴミは堆肥になる。堆肥化の段階でたまった液を下水、トイレに流せば下水管も水も空気もきれいになる。それを川に流せばプランクトンなどの水生生物や魚が増え、最後に海に流せば海もきれいになる・・ということが成り立ちます。
 現実に実験をしておりますが全てその系が蘇生に変るということ分かって来ました。
 自然界は蘇生と崩壊のバランスに立っており、地球全体の進化からいうと、地球は火の玉のような無機物の状態からだんだん進化して豊かになり、途中の段階で人間が跳び出し、競争のためにいろいろなことをして、自己完結的に汚染のリターンを防ぐことを怠ったために、公害や環境問題が出て来ました。
 この原点を正すことが大きなポイントで、EMを使うと全ての段階で蘇生の方向に向い、環境、病気、衛生面の大幅な改善が(全て酸化、抗酸化のバランスの上に立っているので)、理論的にも実際的にも大きな結果として出ているわけです。
(以上講演要旨)
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再循環を可能にするEM
こんなにもあるEMの効用
・悪臭が消える(悪臭消去はクリーンになった1つの大きなポイント、証拠となる)
・川の汚れを分解し、酸素と水素を放出、汚泥もなくなり水が澄み、魚やザリガニなど水生生物が増える
・土壌中にはミミズが増えて土がほかほかになる、土は良くなるのでどんどん循環が始まり、農業はお金のかからない創造的な仕事になる
・生ゴミにかけて堆肥化すれば、ゴミ回収が少なくなる
・酸性雨の元である硫化物や酸化物は餌になり、重金属汚染の問題も解決できる
・工業水に使えば循環していつまでも使え、お風呂の水も1〜2年使える
・動物や人間が飲めば健康になる
・食物中に入り込んでいる農薬などの有害物質も中和される
・畜産水産加工の有害物質も除く
 EMボカシの購入
 「自然のものは人類の共有財産にすべき」とする比嘉博士は、将来的には技術を公開する考えであるが、一時公開して誤用悪用された苦い経験から、現在は(財)自然農法国際研究センターが、EM培養液、EMボカシの普及、頒布を預っている。
 財団の母体、世界救世教の教祖岡田茂吉氏は早くから自然農法を唱え、具体論として「土の本当の力を引出すと、土が作物を育てる熟練工となり、連作ができて、土が肥料のかたまりになる。化学肥料や農薬なしで経済的な作物栽培ができる。自然を守り医・食・環(環境)同根の世界をつくる」と述べている。実際にはその実現は困難であったが、EMを導入したことで可能になった。
(取材構成・本誌記者功刀)
EM、EMボカシの問い合せ
(財)自然農法国際研究開発センター
普及部
 〒413‐91熱海郵便局私書箱26号
   TEL0557―81―0558
FAX0557―81―0560
※参考資料
『地球を救う大変革』比嘉照夫著、サンマーク出版刊、1500円
『EMの全て(農業富民別冊)』比嘉照夫監修、富民協会編集、富民協会・毎日新聞社刊、1800円