抜群の吸収力を持つ植物性カルシウム・活性アミノ酸カルシウムの発見!!

―カルシウムの体内吸収の鍵を握る活性アミノ酸群―

栗原文男(医学博士)・武蔵野女子大学(生活科学科食物研究室) 教授に聞く

骨粗鬆症患者 500万人〜1000万人

 現在、骨粗鬆症患者は推定500万人、予備軍を含めると1000万人は潜在しているといわれる。骨粗鬆症になると、骨折しやすくなり、それが原因で寝たきりとなり、老人性痴呆も引起こされる。高齢化社会到来で急増が懸念される病気の一つである。
 急増の原因は、高齢者の増加と共にカルシウム(以下Ca)の摂取不足にあるが、Caはもともと吸収の悪い栄養素で、高齢になるにつれてさらに吸収力は落ちる。
 武蔵野女子大学(栗原文男教授)、放射線医学総合研究所(福田俊主任研究官)、兵庫中央病院(藤田拓男院長)らの共同研究グループは、ヒジキ、ワカメなどの海藻類からアミノ酸と結合した吸収率の高いCaを発見、このCaは「活性アミノ酸カルシウム」と命名された。
 「活性アミノ酸カルシウム」の発見は、食品による骨粗鬆症への有力な予防と治療が可能になったばかりでなく、生涯にわたって丈夫な骨や歯を維持出来る可能性も見えてきた。
 今回の画期的な研究について、共同研究者のお一人、武蔵野女子大学・栗原教授にお伺いした。

活性アミノ酸Caの発見
―食物連鎖の法則と カルシウム・サイクル―

植物性Ca、特に海藻のCaに抜群
の吸収力を持つCaを発見されたとのことですが。
栗原 自然界には、植物を動物が食べ↓動物の死骸が土壌(海中)に埋められ↓その死骸がバクテリアなどの微生物によって分解され↓植物に取りこまれるという食物連鎖の法
則があります。
 牧草を食べている牛に骨が出来る、藻類を食べている魚介類に骨が出来る。ということはCaもまた、同じように食物連鎖により、土壌や海中の鉱物性Caを植物が取り込み↓体内で動物が摂取しやすいように変化させ↓それを動物や魚が食べて骨格を形成し↓死して土壌や海に還るというCaサイクルがあるのではないか。(図1)
 となれば、人間も海藻や植物から相当量のCaを摂ることが出来、Caの摂取源として植物は非常に有効なのではないかと考えたのです。
 そこであらゆる食品の分析をしたところ、陸産性、海洋性の植物にもCaがある。しかも非常に面白いことに、植物性Caには7種のアミノ酸と結合したCa「活性アミノ酸Ca」が含まれていることが分かったのです。

海藻の活性アミノ酸Caと、 骨粗鬆症の予防・治療

活性アミノ酸Ca、特に海藻のCa
は非常に吸収率が高いのですね。
栗原 陸産性に比べ、海洋性植物には活性アミノ酸Caが約5倍も含まれていることが分かり、そこで海藻からCaを高温焼却抽出してさまざまな実験を行った結果、次のようなことが分かりました。
a各Caの活性アミノ酸Ca含有の比較(表1、図2)
・動物性Ca―1〜0・5%植物
性Caの活性アミノ酸群を消費して形成されたCaなので、極く微量しか存在しない。
・鉱物性Ca―0―無機Caのため。
b活性アミノ酸Caの腸管での吸収力(図3)
・動物性カルシウム(カキ殻、牛骨粉、牛乳など。従来、吸収率が比較的良いとされていた)の1・5倍
・鉱物性カルシウム(炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど主に医療用に使われる)の3倍。
c卵巣摘出で閉経状態にしたマウスへ3ヵ月間投与
 卵巣を持つネズミの骨とほぼ同じ強度を維持。与えなかったグループに比べ、骨の老化がはっきり抑制された。
dビーグル犬への投与
 骨の脱灰に関係する「副甲状腺ホルモン」の働きを抑制し、新しい骨の形成を助けるホルモン「カルシトニン」の分泌を促進した。
a、bの実験で、Caの吸収力は
有機体と結合していることが鍵となるといっていいですか?
栗原 そうですね。無機Caも成長期には有効利用できますが、30代を過ぎると加齢と共にCa吸収能力が衰え、特に閉経期以後の女性の利用は極めて低下します。有機体の中でも、Caの吸収促進と骨形成には活性アミノ酸群が重要なポイントであるということです。なお、生の海藻は難消化性の多糖類が多いので消化が良くないのですが、酢や熱を加えると消化しやすくなります。
そうしますと、c、dの実験結
果は、閉経期以降、極端に骨塩量が減る女性にとっては大変な朗報ですね。
栗原 女性は40歳以降、特に更年期に入り生理不順になる頃から、急激に骨からCaが抜け出すスピードが速くなり、男性に比べて骨粗鬆症に非常になりやすいのです。老化に加え、女性ホルモンがCa吸収に関与しているからです。
 外国では骨粗鬆症の治療に、女性ホルモン投与が多く行われていますが、副作用の心配もあり、食品から骨粗鬆症が予防・治療出来ることは、女性にとって本当に朗報だと思います。

欧米白人に多い骨粗鬆症
―伝統食の見直し―

日本では今まで、Ca摂取源とし
て牛乳が最大の評価を受けていましたが。
栗原 確かに牛乳はCaとPの比が1対1と理想的で、アミノ酸と結合したカルシウム化合物も含まれており、吸収率も悪くはありません。しかし、Caの必要量を乳・乳製品だけから満たそうとすると、脂肪、蛋白質の過剰摂取の弊害も出て来ます。
 高脂肪・高蛋白食を続けるとCaの体内利用が妨げられ、尿中にCaが排泄されやすくなることが分かっています。図4に見られるように、欧米人は日本人の約5倍も乳・乳製品を摂っているにもかかわらず、骨粗鬆症患者は日本人に比べて多く、米国では患者数2000万人ともいわれています。高脂肪、高蛋白食でCaの摂取が妨げられている可能性が大です。
 日本人は長い間、野菜や海藻、小魚を主要なカルシウム源として来たわけですが、今回の研究が伝統食の見直しの一つとなるとの評価も受けております。
私どもでは牛乳は日本人の最大
のアレルギー源ともなることから、乳・乳製品の摂取を勧めていないのですが、今回のご研究で大変、意を強く致しました。
栗原 東洋人には乳不耐症が多く、また、乳不耐症ですとアレルギーの問題が当然出て来るでしょうね。乳不耐症には骨粗鬆症が少ないという研究もあると聞きます。しかし牛乳は栄養的に優れた食品で、要は各食品をバランスよく摂ることではないでしょうか。

深刻な日本人のCa不足
―骨量貯蔵を阻む 現代型食生活―
それでも、日本人はやはりCa不 足?

栗原 もう、それは明らかに不足しています。
 厚生省の成人目標所要量600mgに対し、毎年の国民栄養調査では、平均摂取量は約90%、550mg前後と、常に下回っているのが現状です。
 しかも、厚生省の目標値は他国に比べてかなり低く、成人病予防の観点からは、体格などを考慮しても日本人の必要量は750〜1000mgが理想といわれています。こうなると、実に必要量の60〜70%位しか摂られていない。その上に平均摂取量は、損失率や吸収率など考慮していませんから、日本人のカルシウム不足はかなり深刻といっていいでしょう。
摂取量が少ない上に、吸収を阻
害するものが多い現代型の食生活は問題ですね。
栗原 新聞で今回の研究を知った教え子が「家でよく出されたヒジキご飯が嫌で抵抗があったのが、先生の研究を知って母の料理を見直しました」という趣旨の手紙をくれました。
 現代型食生活では、Ca吸収の良い海藻や野菜の摂取が少なくなった一方で、過剰摂取するとCa吸収を阻害するリン、脂肪、蛋白質などが豊富な、加工食品、動物性食品、白砂糖、食品添加物が過剰摂取気味です。
 高齢化社会到来で厚生省も骨粗鬆症の急増を懸念しています。また、昔に比べればCa摂取量が多くなっているにもかかわらず、子供や若者たちの骨が弱くなっている事実からも、今、食生活は真剣に見直される時期に来ていると思います。
 何といっても、骨粗鬆症の最大の予防は、若い頃から骨にCaを十分に貯蔵することにあるのです。

カルシウムと 他の成人病との関連
―カルシウムパラドックス―

――そんなにもCaが不足していると、Caは骨粗鬆症だけでなく、動脈硬化や高血圧症、ストレスなどとも関連が深いミネラルなので、心配ですね。
栗原 その通りです。実は、私は脂肪―動脈硬化の研究から、Caに興味を持ち出したのですが、動脈硬化になると血管壁には脂肪と共にCaが沈着します。
 Caの約99%は骨や歯にありますが、残り約1%は体液にあって酵素系の作用、神経の伝達、筋肉収縮、血液の凝固などに働いています。
 血中Caが多くなると動脈硬化や高血圧症が促進されますが、これはCaの過剰摂取によるのではなく、Caの摂取不足で軟骨端からCaが血中に放出された結果、Ca過多の血液になることが多いのです(カルシウムパラドックス)。
 体液はCaイオンによって常に弱アルカリ性が保たれていますが、Ca摂取不足だと副甲状腺ホルモンが骨からカルシウムを動員して血中のカルシウムを補う仕組になっているからです。
Caは過剰摂取の心配はないので
しょうか?
栗原 体内のミネラルバランスを崩す程過剰に摂取されれば問題ですが、大抵の場合、過剰摂取しても吸収が悪くなり、大丈夫です。
 先に申した通り、日本人の殆どがCa不足です。成人病予防ためにも、活性アミノ酸Caの摂取を心掛けて欲しいものです。
貴重なお話、有りがとうござ
いました。
(インタビュー構成・本誌記者功刀)