老化を早める重金属汚染
全地球的規模でたれ流される重金属で、人類は急速に短命化に向かっている!!
水俣国際会議、グランジャン博士報告
水俣国際会議、 グランジャン博士報告
水俣病が公式発見されて36年、多くの尊い犠牲を経て、ようやく今、日本では、急性有毒金属中毒が姿を消しました。
しかし水俣の悲劇は、急速な工業化の波に乗る発展途上国で、再びくり返されようとしています。
先進諸国でも急性有害金属中毒はみられなくなったものの、長期にわたる微量摂取で、慢性有毒金属中毒がじわじわと広がっています。
この11月に熊本県水俣市で開かれた「産業、環境及び健康に関する水俣国際会議」で、デンマーク・オデンス大学のフィリップ・グランジャン教授(環境医学)は、「若い時期に重金属などの有害物質にさらされると、老化現象がそれだけ早く訪れたり、より重く現われたりするようになる」という見解を発表しました。
老化の果ては当然のことながら死です。水俣病の経験に照らしても、重金属は胎児は勿論、赤ちゃんに近いほど、つまり若い人ほど吸収されやすく、悪影響は強く出ます。
目下のところ日本では平均寿命は長くなる一方で、数年前から世界一の長寿国となりましたが、グランジャン博士の見解に従えば、公害物質の垂れ流しの悪影響を受けている若い世代は、老化現象が今の老年世代より早く出始めるということです。
重金属汚染に早急に手を打たねば、長寿記録は今後、急速に低下傾向を示すのは確実です。
体の予備能力を
消耗させる
重金属汚染
―機能低下と臨床症状―
老化が進むに従って、人体の多くの機能は低下し、それがある一定の水準以下に下がった時、初めて臨床症状となって現われてきます。
加齢に従ってある機能が落ち始めても、その水準以下になるまでは、症状としては現われないのが普通です。
グランジャン教授は、"未発症でいられるのは、体に予備能力がある"からだと捉え、重金属などの有害物質で機能低下が臨床症状として出るのは、"重金属の体内摂取が、生体が本来持っている予備能力を著しく消耗させる"からだとの認識を示しました。
若い時期に重金属などの有害物質にさらされると、予備能力はそれだけ早く消耗されてしまい、以後、他の人たちと同じペースで機能が低下しても、早期に水準を割り込んで、何等かの臨床症状がそれだけ早く出現するということです。
会議ではこの見解に対し、多くの参加者から肯定的な意見が発表されました。
原田正純・熊本大学助教授は、「水俣病の症状は、最近ではかつての急性で典型的な症状よりも、慢性で多様な症状を示すようになってきている」と述べ、さらに「非典型的な症状が予想外のケースで現われている現状を、グランジャンモデルで考えると合理的に説明がつく」という見解を発表しています。
慢性水銀中毒 の蔓延
水俣病というと過去の公害悲劇と思われがちですが、決してそうではありません。
水俣病と名付けられた、多量の水銀摂取による「急性水銀中毒」こそ見当らなくなりましたが、長期にわたる微量摂取による「慢性水銀中毒」は、むしろ広がりつつあると見た方が正確です。
例えば、この10月10日、熊本県は水俣湾内でとれた有機水銀を含むカサゴを11ヵ月にわたって猫に食べさせたところ、その一部に軽度ながら水俣病特有の病変が現われたと発表しました。実験用などの特別なカサゴではなく、水俣湾に生息し、人間も食べるカサゴです。
しかも、今は水俣だけが有機水銀に汚染されているわけではありません。各地で地元の魚で同じ実験をしたら、同じような結果にならないとは誰も保証できません。また今回の熊本県の場合は、実験として食べる前に精密に測った結果有機水銀が出たものですが、全国各地の魚屋で買求める魚もいちいち調べれば、水銀ゼロはありえないのです。
日本の沿岸は、かつて何万トンもの有機水銀を田畑に農薬としてまいたものが雨に洗われて流れ込んでいます。日本の有機水銀汚染は全国的なものと見なければならず、そこに生息する魚も程度の差はあれ、多かれ少なかれ、水銀を生物濃縮させているに違いないのです。
水俣病は今も…
深刻な発展途上国の
重金属汚染
天に向かってツバを吐く…、その行為の清算を迫られているのは日本だけではありません。今回の水俣国際会議に発表された汚染状況だけを見ても、全地球的な有毒物質汚染は目を覆いたくなる有様です。
特に、資金的、技術的困難によって無公害技術の導入が阻まれている発展途上国では、汚染は深刻化しています。日本ではみられなくなった急性中毒も、これらの国々では、今リアルタイムで進行している状況です。
〈ブラジルの水俣病〉
ブラジルからの報告は、アマゾン川流域の金採掘に従事している四十万人が水銀中毒の危険にさらされている|というも
のでした。
ここでは川の泥や山土に含まれる金を取り出すのに水銀を使っています。すでに中毒患者、死者を出しており、水俣と同様、川魚からも有機水銀(水俣病と同じメチル水銀)が検出されているので、採掘に携わっていない人にも食物を通じて有機水銀中毒が広がることが懸念されています。
〈中国の六価クロム汚染〉
中国は目下なりふり構わぬ産業起こしの真っ最中ですが、ここでも当然、重金属汚染が表面化しています。
この度の会議では、製革業、クロム鉱石処理工場、電気メッキ工場などから各種重金属を含む廃液が垂れ流され、周辺地域の地下水、河川、土壌、農作物などが汚染されつつあることが発表されました。
六価クロムを含む地下水を使用している地域では、シャワーによる皮膚炎、飲食による腹痛、下痢、頭痛などの症状を訴える人が目立ち、疫学調査では周辺地域のガン死亡者は他の地域より、胃ガンを始め多くなっていることが分りました。
〈台湾からの報告〉
お隣の台湾でも事情は同じ。カキを養殖する海域から亜鉛が異常高濃度で検出され、養殖カキは緑色に変色する程でした。調査の結果、亜鉛の他に、金属回収処理場からは銅が流入していたことも分っています。
亜鉛、銅は必須ミネラルとして読者にお馴染みかと思いますが、それは適正量であってこそ。過剰な摂取は、たとえ必須ミネラルでも有毒ミネラルと化してしまいます。
〈極北の妊産婦も水銀汚染〉
地球は既に極地までもが汚染されてしまいました。今回、これ以上の汚染を防止しようと、国際協定で南極調査の休止が決まりました。
極北のグリーンランド北部では、エスキモーの主食であるアザラシがメチル水銀に汚染され、アザラシばかりでなく、鯨や魚も年々有機水銀濃度が高くなっています。
北大西洋のフェロー諸島では、鯨・魚の摂取が多い妊婦ほど、新生児のへその緒に含まれる水銀濃度が高かった|とい
う懸念すべきデータが出ています。
昨年WHOは、妊婦の毛髪分析水銀値が10〜20ppmでも胎児に影響する可能性があるとの見解を出しました。(一般の安全基準は50ppm以下)。
胎児はごくごく微量の水銀汚染でも影響されやすく、精神の発達障害を起こすこともあるというわけです。
|胎児、子供、若者と、若ければ若いほど、有害物質汚染による被害は大きくなる|
今一度、このことを深く考えたいものです。
人口抑制の決め手と なってしまうか、 地球規模の重金属汚染
子どもというものは、生命力に満ちているし、その可能性は無限です。ただし、緑豊かな美しい地球あればこそ、の話です。
(『二十一世紀の君たちへ―ガラスの地球を救え』手塚治虫、光文社カッパホームズより)
先進諸国に多いハイパー・アクティヴィティー児童は、鉛との因果関係が非常に濃厚です。 アメリカを始めとする先進諸国の子供に一番多い重金属汚染は、実にこの鉛中毒なのです。
血液1リットル当り、250マイクログラム以上が鉛中毒の基準とされていますが、アメリカでは65万人の子供がこれを超すと推定されています。有鉛ガソリンと化石燃料の使用が大きな原因です。
これらの事情はアメリカのみならず、先進諸国ではどこも似たような状況にあると思われます。海水中の鉛濃度は、北米の他、日本周辺の東南アジア、ブラジル近辺、西アフリカ、西欧などあらゆるところで高くなっています。
今まで述べてきたことは、勿論氷山の一角ともいうべき地球の汚染です。
・重金属は全地球的規模で既に大量に垂れ流されていること、・若い人ほどこれらを吸収してしまうこと、
・それに従って体内の老化を遅らせ若さを保つ予備力が失われること|などを考えあわせる
と、長寿化が進行している陰で、突然の急速な短命化が準備されていることを悟らなければならないようです。
重金属汚染はエイズと並んで人口抑制、滅亡化の決め手となる可能性が大です。地球上の自然を次から次へ破壊して飽くことのない人間が受ける罰なのかも知れません。
しかし、だからと言って、このまま手をこまねいて、明日を担う世代にそのツケを払わせ、彼等を滅亡の歯車に巻き込むようなことは、絶対阻止しなければなりません。