この人に聞く 39

クラスターの小さい水は、おいしく、健康にいい 健康によい水とは
―新しい水の物差し―

ウォーターサイエンス研究会 松下 和弘さん

―新しい水の物差し、誕生―
松下和弘氏と水のクラスター理論

 水を評価するのに、この頃よく"クラスター"という言葉が使われる。「クラスターの小さい水はおいしい、大きい水はまずい」という具合である。
 粒の集り、房を意味する語、"クラスター(Cluster)"が、何故、水の評価に使われるのだろう。
 水はHOという単一分子がバラバラに存在しているわけでなく、「水素結合」という水の分子間に働く力によって、分子がくっついたり離れたりして、最低5個以上の塊り(集団、クラスター)を形成して存在する。葡萄でたとえれば、葡萄の粒がH2O分子にあたり、房が分子集団(クラスター)にあたる。
 しかも水のクラスターは微弱なエネルギーで絶えず変化しており、10のマイナス12乗秒(1ピコ秒)という極めて短い寿命で、作っては壊し、壊しては作る"動的構造"になっていると考えられている。
 物質の分子構造を知る上で、「NMR分光法(核磁気共鳴分光法)」は、試料を破壊しないで、a構造の解析―静的利用と、b状態の分析―動的利用ができる。食品の分析(特に味や熟成に関して)や、水の動的構造を捉えるのにはもってこいの方法で、有機化学はもとより、広い分野で利用されている。
 松下和弘さんは、昭和40年から、このNMRを使って生物化学、医化学の応用分野を研究、開拓している。研究を進めてきた中で「薬(医)食同源」の思想に突き当り、そこからさらに水の研究の重要性に突き当った。
|食品の基本材料であり、あらゆ
る生命体の基本材料でもある"水"の研究なしに、食品の研究は進まず、健康の意味も捉えられない|
 松下さんは水の研究を進めるうちに、水を評価する指標には、従来の化学分析やミネラル分析だけでは不十分※で、「おいしい水」、「人体生理学上よい水」、「食品の調理加工上よい水」を作るためには、新しい水の物差しが補完されなければならない、それには分子状態を考慮に入れなければならないと痛感した。
 そこでNMR(核磁気共鳴)装置を使い、水の動的状態―クラスターの大小を追っていった結果、「健康によい水、おいしい水は、水の分子集団が小さい」という成果が引き出された。
 ここに水を評価する新しい物差しが誕生した。
 水の「クラスター理論」は、「松下理論」とも呼ばれている。
※セラミックフィルターを通した水は確かにおいしくなる。通過前とミネラルイオン濃度は変らず、違いはクラスターが小さくなっていることだけである。

健康にいい水とは
―長寿村の水の、共通項は 唯一、クラスターが 小さいこと―

 「クラスターが小さい水が健康にいい」というのは、世界の長寿村の水を調べても分かります。
 表でわかるようにミネラルの成分値はマチマチです。ところが唯一共通しているのは、"クラスターが小さい"ことです。
 ところで自然食ニュースに尿療法の話が出ていましたが、クラスターの大きい水(水道水で平均13個)を飲んでいる人達の尿はアミノ酸や有機酸濃度が高く、小さい水(電気分解水―約6個)を飲んでいる人の尿は低いのです。病人の尿は一般の人よりさらに高濃度に検出され、それだけ体に有効な成分が尿に排泄されてしまうということです。また、代謝活動の盛んな健康な子供の尿にはアミノ酸や有機酸が殆どなく、水と変らない位です。ですから私どもは「尿療法」はありうる、決して荒唐無稽な話ではないと思っています。それと、尿のクラスターは電気分解水と同じくらい小さいんです。
尿中の酸が水素結合を切ってしまうためです。
 大便も、小さい水を飲んでいる人達は脂肪などがよく分解され、臭いも殆どしません。ところがクラスターの大きい水を飲んでいる人は悪臭がするんですね。小さい水は|体内の酵素活性をよくする、腸内の有用細菌を増やす|そこから体にいい水になると考えられます。

松下先生が教えてくれた お風呂をまろやかにする方法
―塩素が抜け、水が小さくなる―

・レモンスライス1枚を入れる。
(酸でクラスターが切れ、塩素ガスが消える。柑橘類なら何でもOK。ビタミンC一振りでもいい。)
・さらに自然塩コップ1杯入れる。
(アトピー性皮膚炎にもいい。市販の浴用剤は水質汚濁のもと)
・水を振動させる、よく湯もみを
するのもいい。(塩素ガスが揮発
し、クラスターも小さくなる)

健康によい水の6ヵ条

a生命体に有害な物質が含まれない。
 WHOで決められた有害物質の他、私達は塩素ガスも加えています。今の水道水はどんなにいい原水でも塩素が使われてますが、塩素が入っていては健康にいい水の条件は満たされません。
水道水の入ったコップに指先を一瞬入れただけで、指先の細胞が10万個も壊れてしまう程、塩素ガスの作用は強烈です。
bミネラルバランスがとれている。
 あらゆる生命は海から誕生していると言われているように、体液のミネラルバランスは海水とよく似ています。ミネラルバランスは健康にとって非常に重要です。ですから純粋水はダメです。「きれいな水」という言葉がよく使われますが、誤解を生みやすい言葉ですね。
cPHは弱アルカリ性(7.2〜7.4)
 体液と同じくらいのPHだと飲む時に抵抗がありません。また電気分解して弱アルカリ水にすると、塩素は酸性水の方に移行し、塩素の害もありません。ほぼこの電気分解水だけで病気を治療しているお医者さんもいます。
d水の硬度が高過ぎない。
 カルシウム、マグネシウム濃度が高過ぎないことです。日本の水ではまず問題ありません。
e酸素と炭酸ガスが十分に溶け込んでいる。
 魚の棲めない河川は、酸素も炭酸ガスも希薄になっています。
f水の分子集団(クラスター)が小さい。
 酵素活性をよくするので、アルコール(アセトアルデヒド)の分解も早くなります。クラスターの小さい水を十分量飲むことでアルコール中毒症を防げるのではないかと、目下、日本医科大学の法医学教室と共同研究中です。
 この6つの条件が満たされて初めて「健康にいい水」と言えます。おいしいというのは主観が入りますから必ずしもこの6ヵ条と一致しませんが、クラスターの小さい水が健康にとても良いことは確かです。

健康にいい水、 3つのターゲット

 人体の65%は水で、水は健康と密接な関係があります。特に「老化、痴呆症、赤ちゃんの代謝異常」、この3つは水が鍵を握っていると考えられます。
 老化は全体的な細胞の萎縮、痴呆症は脳の萎縮、つまり細胞が渇水している状態です。脳の場合80%が水で、健康にいい水を2〜3年飲み続けて痴呆症が治った例もあります。
 また、今赤ちゃんの代謝異常が増えていますが、これは母親の羊水が異常になっているからと考えられ、飲料水の劣悪化が大きく影響していると思われます。子供に増えているアレルギー性疾患も代謝異常の一種と考えられます。
 日常、どういう水を飲んでいるかは、健康にとって、とても大切なことです。

おいしい水とは

 水道水より井戸水、井戸水よりミネラル水がおいしいと言われますが、実際この順にクラスターは小さくなっています。井戸水は深ければ深いほどおいしく、クラスターも小さくなります。
 クラスターが小さくなると、味蕾細胞に水がすっぽりはまりこんでおいしく感じるのだと考えられます。
 ですから水をおいしくするには、水の分子集団の水素結合を切って、クラスターを小さくしてやればいいのです。
 水素結合を切るには、超音波の振動、電気分解、セラミック(遠赤外線)、磁気など、微弱なエネルギーを与えてやればいい。微弱なエネルギーは水にも人間にもいいのです。
 食物も基本材料は水です。作物は与える水が良ければおいしくなります。調理も、おいしい水を使わなければ素材の良さは引き出せません。カット野菜もクラスターの小さい水を与えると長く鮮度を保つし、ひからびたキューリなどもシャキッとなります。

山紫水明の日本に戻すには、 子供の時から水教育を

 水は生命の基本です。あらゆる環境問題は水を語らずには解決しません。
 山紫水明の国、おいしい水を誇った日本も遠い昔のこととなりました。
 よい水を取り戻すには、子供の時からの水教育が必要だと痛感します。
(取材構成・文責 功刀)
 松下和弘さんの連載始まる
 朝日新聞のウィークエンド経済欄に「ミクロの目」と題して、NMRを使って得られた研究成果を、松下さんが、分かりやすく解説した連載記事を御記憶の読者もいるかと思う。
 インタビューはのっけから、「飲尿をおやりなんですか?」という松下さんの質問で始まった。事前に読んで戴いた自然食ニュースに尿の記事が載っていたからである。科学者、研究者のイメージからは遠く、大変気さくな松下さんは、我々にも、難しい水の理論を分かりやすく、丁寧に説明してくれた。嬉しいことに、忙しい合間を縫って自然食ニュースの連載まで引き受けて下り、今秋から始まる予定となった。松下さんの「水と食物」に関する科学エッセイ、乞うご期待である。